超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
夜のプラネテューヌは昼間の賑やかさは潜み、優れた科学技術によって発展を遂げた街並みが幻想的に照らされていた。ほろ酔い気分で歩く二人の火照った身体を冷やすにはちょうどいい心地よさの夜風が吹き抜けていく。それでも酔いがまだ足元をふらつかせるアーサーがエヌラスに寄りかかった。
「おぉっとと……す、すまぬ」
「気にすんな」
「…………エヌラス、このままでも良いか? 歩きにくかったら離す」
「ああ、このままでいい」
「そうか」
腕を組んで歩く。目的などない。ただ頭を冷やそうと外に連れ出しただけだ。少なくとも、エヌラスはそのはずなのだが――。
(う、うぅむ。これはいわゆるデートではないのか? 二人で夜の街を歩くなど……いや、確かに今までもチーカマと一緒に歩いたりはしたがそれとこれとでは違う)
異性と腕を組んで歩くという経験は、アーサーにとって新鮮なものだった。何もかもが初めてで、今の自分がまるっきり恋愛に疎い少女であると思い知らされる。顔を盗み見ると、左目の刀傷が気になった。その視線に気づいたのか、二人の視線がぶつかった。
「どうした、アーサー」
「お主の左目の傷が気になったのだ。気に障ったなら謝る」
「なんだ、そんなことか。よく聞かれるから慣れてる」
「そうなのか?」
「ああ。アダルトゲイムギョウ界じゃ「どこの組のもんですか」とか「自由業の方ですか?」なんて聞かれる」
「なんか、すまぬ……」
商業国家ユノスダスに至っては顔を見るなり子供が泣き出すこともある。そのせいでユウコに地面に頭を埋められたりもした。常人なら死んでいるところだが手加減無しでやるものだから非常に痛い。ギャグ補正とかそういうの抜きで。
「俺の妹を惨殺したやつがいてな。そいつと決闘してたら不覚を取って、このザマだ」
“狂い時計”のクロックサイコ――リセットを繰り返した世界線では真っ当な人形師であり時計職人として九龍アマルガムで生活しているが、それでもやはり過去の因縁は拭えない。今だに苦手意識がある。大いなる“C”の隷属として操られていたとはいえ、だ。
「結構ざっくりいってたみたいでな。治すのにすげぇ時間かかった」
「不便ではないのか?」
「最初はそうだったな。今はもう慣れた、しっかり見えてる」
ついでならば、と。色々と視覚強化をしたせいで左目だけがやたら視力が良い。それに合わせていたら人体改造ばりに身体強化に魔術回路を使用していた。その反面、最も回路を使用している右腕が魔力を喰い始めた。それでは食費と身体と燃費が悪いことから、ドラッグシガーを製造したのだが、今度はそれを手放せなくなったと本末転倒。
その経緯を歩きながら話しているうちに酒も抜けてきた。
「――と、まぁそういうわけだ」
「お主はそうまでして、ネプテューヌ達を愛しておるのか」
「まぁな。あいつに言うと調子乗るから言わないけどな」
「……私では、不服ではないか?」
「どうして」
「どうして、とは……それは、私が女神などではないからだ。それに、百万人いるアーサーの一人、アーサー王候補生なのだぞ」
「お前に不満なんてねぇよ、アーサー」
「自称王様でもか?」
「王様(予定)の間違いだろ。それに俺なんて、一時期国王の椅子に座ってたが内政放ったらかしにして自分の国滅ぼしかけたっつーか滅んだしな。まぁ気にすんなって!」
「いや、それは一大事だぞ!?」
笑い飛ばすエヌラスだが、アーサーはまだ酔いが残っているのかピッタリとくっついて離れない。
「うぅむ、大声を出したら気分が……」
「結構歩いたしな。どうする、適当に宿でも取って朝にでも戻るか」
「それはそれで問い詰められそうだが……良いのか?」
「俺の社会的な評価なんて微塵も残っちゃいねぇよ……このまま最底辺突っ走りながらどうにかする」
――で、泊まるのは良かったのだが……。
プラネテューヌのホテルは質もサービスも良い。働く人々の為に開放されていたビジネスホテルは片っ端から全滅。どこも満室だった。アーサーが気分を悪そうにしていたのでエヌラスが急いで駆け込んだ先はネオンの自己主張が激しい、俗に言うラブホテル。なんであるんだプラネテューヌと首を傾げたが、それはそれ。ホテルの一軒や二軒、探せばあるだろう。無いほうがどうかしている。そもそもネプテューヌ達のような国を治める女神がラブホテルを利用していたらそれは大問題だ。
エヌラスに関しては論外。受付が顔を見るなり引きつった笑みを浮かべた。一泊、一部屋と間髪入れずに言うなり代金を支払って無言で出された鍵を受け取る。
さて。室内はと言うと――まぁ、そういういかがわしいお店である以上はそういう拵えになっているのだが、アーサーの顔色がいよいよ危ない。それもそのはずだ。エヌラスが自分用に買ったワインは陳列されていた中でもキツイ方の部類に入る。ほろ酔い気分は最初だけだ、後から押し寄せるアルコールが胃袋の中身をかき回していた。
トイレの扉を開けて、アーサーを座らせる。
「うぅ~、目が回るぅ~」
「大丈夫かよ、本当に」
「喉の奥から熱い何かが込み上げてくる……だが、ここで吐いてたまるものか……」
「……」
エヌラスがスキットルの蓋を開けて、中身を一口だけ舌の上で転がす。唾液と混ぜ合わせて、口内が痺れを訴える。アーサーの顔を捕まえると、舌を入れて唾液と一緒に口の中に流し込む。
「んふぅ!? ぁ、んぅ……う……」
ごくり、と飲み干す音にエヌラスは顔を離してアーサーの背中を擦りながら便器に顔を向けさせた。
「何をす――うぅっぷ!!」
――あまりにショッキング&ミリオンアーサーのプライバシー保護のため、入浴するピーシェとユウコの様子を御覧ください。
「ほら、ピィちゃん暴れない暴れなーい。ごしごし~」
「はーい!」
ピーシェの身体を洗い、ユウコは自分の髪を洗い始める。その様子を眺めていたピーシェの手がバスタオルで隠している胸を掴んだ。
「ユウコ、おっきい! ぼいんぼいん!」
「こらこらーあはは。ピィちゃんくすぐったいからやめようねー」
「でも、ピィもおっきいよ?」
「そうなの?」
女神化――その言葉が脳裏をよぎり、ユウコがそう聞く前にピーシェは胸を張る。
「見ててね! へんしーん!」
光りに包まれて、身体がみるみる成長して……女神イエローハートが全裸で腰に手を当てていた。
「どう、ユウコ! わたしもおっきいでしょ!」
「私よりでけぇじゃん!?」
「そーだ! これならユウコと背中洗いっこ出来るよ! 洗ったげるね」
「え、いや今はちょっと髪洗ってるんだけど」
「いいから。洗うよー、それー!」
言うなり手にとったボディシャンプーを泡立たせてユウコの背中に塗りたくる。それから、自分の胸を押し当てて洗い始めた。未だ経験の無い未体験の感触と流し方にユウコが髪を洗っていた手を止める。
「えっ!? なに!? なんで背中に柔らかいのが!? あれ、そういうお店!? どこで覚えたのこんなの!?」
「べるべるが教えてくれたんだ。おっぱい大きい人はこうするんだって」
「そっかー。じゃあ後でベルちゃんにはお仕置きだな、しばいとこ」
それが別次元のべるべるであることは敢えて触れないものとする。――その頃ベッドではホワイトハートが鬼のような形相をしていた。
「どーお、ユウコ。うまく洗えてる? んしょ、んしょ」
「気持ちよくって嬉しいんだけどねー、ピィちゃん。背中の流し方、後で私がちゃんと教えてあげるからちょっと待ってねー?」
「うん、わかった!」
(絶対にエヌラスと一緒にお風呂入らせないようにしとこう……)
自分のアイデンティティが若干危機感を覚え、それがベールも通った道である事をユウコは知らない。