※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード58 突っ走れ、アウトロー。守れインサイド

 

 

 

 エヌラスはギルドでクエストを受けて、ネプテューヌの代わりに仕事を終えると報酬を受け取って夕焼けに染まるプラネテューヌを歩く。そこに、ちょうど見慣れた後ろ姿があったので声を掛ける。

 

「コンパ」

「あ、えぬえぬですぅ。どうしたですか?」

「今ちょうど、ギルドで仕事終わって帰るところ。そっちは」

「はい、わたしもお仕事終わって帰るところですぅ」

「そうか」

 ごく自然と、二人で肩を並べて歩いて教会に向かう。帰り道で互いに話すのは、他愛のない雑談。それでもコンパは話の内容に一喜一憂、少し天然なところはあるが、それが不思議と嫌味にならない。それどころか癒やしにさえ思える。

 

 きゅっきゅっ、とプラネテューヌの街の中を歩くネズミが一匹――その大きさはそこいらで見かける野生のネズミとはまた違う。子供ほどの大きさがある。二足歩行で歩く黒いネズミは、手に持っている札束を数えながらほくほく顔をしていた。

 

「チュッチュッチュッ、オバハンのナス農園の手伝いだけじゃ稼ぎが悪いっちゅからね。根っからの悪党のオイラにはこれが一番似合うっちゅよ」

 ワレチューは、売りさばいたゲーム機などを横流しして得た金銭を数えて懐にしまう。もちろん、この稼ぎに関してはオバハン――ナス農家のマジェコンヌには秘密だ。

 

「オバハンはすっかりナス農家としての生活が馴染んでるみたいっちゅがオイラは違うっちゅよ。土いじりばっかのオバハンなんかと一緒にしてもらっちゃ困るっちゅ」

 悪態を吐きながら歩くワレチューが小石を蹴飛ばす。

 

「大体、人が優しさを見せてやったというのに人使いの荒さは変わらないんじゃ、付き合いきれないっちゅよ……」

 重い溜息と吐いて、ふと顔を上げるとそこには灰色の世界を歩く高嶺の花。愛しのコンパが道路を挟んで歩いていた。楽しそうに笑っている顔を見るだけで、ワレチューの心臓が胸を突き破りそうなほど高鳴る。

 

「コ、コ、コ――コンパちゅわん……今日のオイラはツイてるっちゅ!」

 今すぐ行き交う自動車を無視して飛び出したい気持ちを抑えながらワレチューは信号機の前で待っていた。一応毛並みを整えて、意気込む。こうして立ち止まっている間にもどんどん遠ざかっていく姿にもどかしさを覚えるも、しかしやはりその距離を詰めるまでの高揚感は抑えきれない。はちきれんばかりの胸の鼓動に急かされてワレチューは信号が変わるやいなや猛ダッシュで横断歩道を渡り切る。

 そして――。

 

「コンパちゅわ――――――…………」

 そこで見たものは、見知らぬ男と二人で仲良く笑う愛しの人の姿だった。

 

「コン、パ……ちゃ……?」

 頭を金槌で殴られるようではまだ浅い。平衡感覚どころか現実感すら喪失したワレチューの手から財布が落ちた。

 気づく様子もなく、笑顔を向ける相手は見知らぬ男性。高嶺の花に寄り添うのは一匹の獣、それは真っ黒な猛獣。漆黒の狂犬のような人間。

 

「ふふ。えぬえぬのお話は面白いですぅ」

「そうかぁ? 話してるこっちとしては、えらい迷惑だったんだぞ?」

「でも、話している時のえぬえぬ。嬉しそうですぅ」

「うーむ、そんなつもりはないんだけどな……」

 遠ざかる。嗚呼、遠ざかっていく。ワレチューは声をかけようとするが、喉の奥からヒューヒューとした息しか出てこなかった。

 

「ちゅ……コン……コン、パ――ちゅわ……」

 ワレチューに振り向く素振りすら見せず、コンパは曲がり角に消えていく。伸ばした手が虚空を掴み、しばし呆然と立っていた。

 やがて、我に返ったワレチューは財布を拾い上げて帰り道を歩く。

 

 

 

「遅いぞ、ワレチュー。買い出しに行くだけでどれだけ時間を掛けているのだ、ノロマめ」

「…………」

「おい、聞いているのか」

「オバハン。オイラ、今日限りでもう手伝いをやめるっちゅ……」

「なにぃ? 貴様、それはどういうことだ」

 エプロンを着けたマジェコンヌの言葉にも茫然自失、魂此処にあらずどいった様子で財布からいくらかのクレジットを置いて、ワレチューは荷物をまとめていた。

 

「おい、何をしている」

「オイラ、気づいたっちゅ。真面目に生きるなんてバカのすることだったっちゅ……やっぱりナス農家なんかよりオイラは悪の道で生きるのがお似合いっちゅよ」

「待たんか、オイ! ……全く、今日の夕飯は茄子カレーだというのに一人では食いきれんではないか」

 様子がおかしいのはそうだが、ワレチューの言葉にも一理ある。マジェコンヌはルーの味見をしながらふと思い悩んだ。果たして自分は本当にこれから先、ナス農家のままでいいのかと。有り金をはたいて買い占めたナス農園も経済は潤っている。だが、何のためにここを買ったのか。女神に復讐する為だ。

 

「…………」

 グツグツと煮立つカレーのスパイスが鼻をくすぐる。カレーに合うサラダの材料を買いに行かせたはいいが、中々戻ってこなかったので完成してしまった。テーブルの上にはカレーだけが空しく置かれる。

 スプーンで口に運ぶ。マジェコンヌは考えていた。果たしてこのままでいいのか、と。だが自分に世界をどうこうするだけの力は無い。女神がいる限り、自分はどうしようもないのだ。そう考えるだけで途端に自分がみじめに思えてきて仕方がなかった。

 

「……私は一体、何をしているのだろうな」

 真っ当に生きる意味さえ分からなくなっている。ナス農家としてその筋の相手に名が売れてきたが、それでもやはり胸を満たす充実感が、何かが足りていなかった。

 

「くそっ」

 テーブルに拳を叩きつける。何年か前に女神達を捕らえ、その妹達すら追い込んだというのに結局は失敗した。今度こそはと女神パープルハートの嫌いなナス農園まで買い占めて、あしらわれている。それから――脳裏にノイズが走る――なにがあった?

 

「っ……なんだ、今のは……待てよ――?」

 私は、ただナスの収穫と出荷に精を出していただけではない? 何かが引っ掛かっていた。そう、それは例えるならば記憶の一部に引っかかるささくれのようなもの。パズルのピースがはめ込まれていないような空白。気に留める程でもない、だが気にしだすと止まらない感覚にマジェコンヌは眉を寄せながら自慢のナスカレーを食べる。

 

「…………宝玉、だったか? 私はアレをどこで拾ったのだ……」

 そして、それは一体どこから来たものなのか。

 

 

 

「ただいま」

「ただいまですぅ」

 エヌラスとコンパが戻ってくると、ネプギアが顔を出した。

 

「あ、おかえりなさい。エヌラスさん、コンパさん」

「おう、ネプギア。出迎えご苦労さん。頭撫でてやる」

「わ、わ……! ちょっと、恥ずかしいですよぉ」

 嫌がる様子を見せず、だがその心地よさを振り払うようにネプギアが頭を振る。

 

「って、そうじゃなかった。エヌラスさん、実は――」

「あー! えぬらすだー! おかえりー!」

「ん、ピーシェか。なんつーか、元気だよ」

「どーん!!」

「なっぼぉあぁ!?」

 全身を使ったタックルがエヌラスのみぞおちを直撃。それが狙ったものなのか、果たして無意識によるものなのか。どちらにせよ、天性の才能だろう。早々狙って虚を突きながら急所を一撃など出来るものではない。

 

「こらー、ピィちゃん。走っちゃダメって言ってるでしょー? おかえり、穀潰し一名とコンちゃん」

「ただいまですぅ。えぬえぬ、穀潰しです?」

「んー、まぁ正直こっちで真っ当に生きようとしているのが驚きかな。まぁいいや、コンちゃん。帰ってきて早速で悪いんだけど、お料理手伝ってくれると嬉しいな」

「はいですぅ」

「ほらー、ピィちゃんも行くよ」

「はーい!」

 跳ねるように移動するピーシェがいたずらっぽく笑いながら、ユウコに向かってエヌラスと同じように有り余る元気をぶつけようと飛びつく。

 

「どーん!!」

「おっとー! そうはいかないぞー!」

 両手を突き出して飛びかかるピーシェを受け止めて、ユウコはそのまま一回転、二回転――メリーゴーランドから、流れるように肩車に移行した。

 

「…………」

「ふふーん、ピィちゃんは元気だね。でも私だって元気さだったら負けないぞー?」

「――ユウコすごいすごーい!! もっかいやって! もいっかい!!」

「もう一回? いいよー! よっしゃこーい!」

「ぐるぐるぅ、どーーーん!!」

「どすこーーい!!」

 腕を回してから殴りかかるピーシェの拳を受け止めるだけでなく、そのまま振り回して抱きかかえるとユウコは頬ずりする。

 

「んもー、ピィちゃんかわいい!! くぁいいよぉー!!」

「ユウコすごいすごーい! ぴぃのパンチ受け止めた! ねぷてぬよりすごーい!」

「そーお? んふふ、ピィちゃんも一緒に晩ごはんつくる?」

「つくるー!」

 ――爆裂最強元気コンビが結成された事に、エヌラスはみぞおちの痛みに耐えながらただ恐怖した。

 

「ユウコとピーシェとか、俺でも無理だぞ……!」

「あの、エヌラスさん。だいじょうぶですか?」

「俺は大丈夫だが……ネプギア、さっきなにか言い掛けてなかったか?」

「あ、そうだ。忘れるところだった。あの、実はアイエフさんがまだ戻ってきてないんです」

「アイエフが?」

「はい。それで、着信があったんですけれどわたしも全然気づかなくって……それでこちらからかけ直しているんですが中々出てくれないみたいで……」

「……」

 それは、確かに気になる。

 

「それに電波も良くないみたいなんです。着信音が鳴っても、たまに切れたりして……何かあったのかなって。わたし、心配で」

「そうだな……とりあえず、飯を食ってから考えよう。今動けるのは俺とネプギアと――」

 アーサーは? と聞こうとして、のそりと出てきたのはすっかり気力を無くした少女の姿。

 

「あぁ、エヌラス……帰ってきてたのか……」

「だ、大丈夫かお前……」

「夕飯時ということでようやくチーカマが解放してくれたのだ……すまぬが私はもう、今日はダメだ……心が折れそうだ」

「ゆっくり休め……ごめんな、なんか」

「なに、お主が気にすることではないさ」

 どうやら現時点で動けるのはエヌラスとネプギアしかいないようだ。

 

「うぇ~、きもぢわるいよぉ~……」

「うぅ~……まだ頭いたいぃ~」

 ネプテューヌとプルルートに関しては、もう論外である。

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