超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
エヌラス達が北方拠点ベルスクで酷い目に遭っている一方の、プラネテューヌ第三資源採掘場。
そこでは、アイエフが縛り付けられたまま問答している四人がいた。
《ふむ。やはり縛り方に問題があると思うんだ》
《腕と足だけだもんな、動きを封じようと焦りすぎた感は否めない》
《やはり、縛るならそれ相応にやり方があると思うが……》
《問題はどういう縛り方にするかだよな》
「いや、アンタ達ね……本人を目の前に何の話してるのよ」
《アイエフさんの縛り方です》
現在のアイエフは、後ろ手で縛られ、足首も縛り付けられている。ごく一般的な拘束方法だが、それに何が問題があるのだろう。武器もない今のアイエフは普通の女の子と変わりはないというのに、それ以上何を求めているのかと聞かれれば、彼らはためらいもなく応える――男の浪漫!
《やはりここは定番の、こう……あるだろ?》
「何の話?」
《まぁ、そうなんだけどなぁ》
《やってみるか……》
《でもコートどうする?》
アイエフの着ている厚手のコート、そして腰回りには携帯電話が九つ。流石に取るわけにもいかない。とはいえ、それはそれとしても――やはり、追い求めずにはいられない男のリビドーを止められるものはいなかった。
《ならば俺に任せてもらおうか》
《やるのか、セイン!》
《任せろ! ネットのアダルトサイトで培った『女性の縛り方百選通信カタログ』は伊達じゃない!》
《なんて頼もしいんだこの変態!》
「どうしようもない変態しかいないの!?」
《そして、この俺の性能を活かした目にも止まらぬ縛法! ゆくぞぉ!》
ロープの端を持ったセインのモノアイが光る。アイエフの身体をぐるりと一周したかと思うと、事態を飲み込むより先に全身が縛り上げられていた。
《まぁオーソドックスに亀甲縛りだな》
《ふむん、基本だよな》
「っ……!」
コートの下、器用な真似をするものだと感心しながらもそれが全くの無駄な知識であるがアイエフは手も足も出ない状態だ。控えめなスタイルを浮かび上がらせるようなロープの結びに、顔が熱くなる。
《縄がキツイとかあります?》
「そんな美容院の「かゆいところありますか?」みたいなノリで聞くんじゃないわよ、この変態!」
《……なんだろう、胸の奥から湧き上がるこの情欲は》
「いやー、誰かー!」
《ご安心くださいアイエフさん! 卑猥なことは一切しませんから!》
「亀甲縛りしておいてどの口が言うのよ!!」
《なんかちょっと楽しくなってきたぞ俺! 次いくぞ!》
「まだやるつもりなの!?」
勘弁してほしいが、相手はノリ気だ。
セインの手で、アイエフは宙吊りにされた状態で足を広げさせられる。俗にいう「M字開脚」だ。その姿勢で両手をつり上げられてクレーンに縛り付けられていた。みるみるうちにアイエフの顔が紅潮していく。股間の股縄に羞恥のあまりで涙目になっていた。
《ほほう。これはこれで……》
(こんな奴らにこんな格好させられて――! 一生ものの恥だわ……)
《徹夜明けのテンションってなんかタガが外れて今なら空も飛べそうな気がするよな!》
《いや、空は飛べないだろ》
《羽ばたけー、鳥になれ俺の頭ー! ヒャッホォーイ! 最高の眺めだぜぇーぃ!》
「しにたい……!」
いっそ許されるなら舌を噛み切ってやりたいとも思う。あられもない姿のアイエフだが、自分でも信じられないことに身体が熱い。まさかこんな仕打ちを受けて興奮しているなんてことがあるはずない、そんな趣味などないと自分に言い聞かせる。
セインが時計を確認すると、丁度いいタイミングでタイマーが鳴った。
《おっと、そろそろ頃合いか》
《完成なのか?》
《まぁな! 第一段階だから何とも言えないが、ドバルが持ってきてくれたルウィーで採取されたモンスターの体液とかなんか、こうよく分からない薬品とか混ぜたけど大丈夫だ!》
(……なんの、話よ)
ありったけの怒りの形相で睨みつけるものの、セインが坑内に設けられた個室に入るとすぐに出てきた。その手には試験官――しかし中身の液体がちょっと形容しがたい色彩を放っており、アイエフの顔が引きつった。他の三人もさすがにそれはドン引きしている。
《うわ、うわぁ……何だその色……!》
《仕方ないだろ。どう調合してもこうなるんだよ!》
「なによ、それ」
《これは男の浪漫を詰め込んだ欲望の結晶! 誰もが一度は考える「見れたら良いな」を叶える秘蔵のお薬! その名も――》
「その名も……」
仰々しく掲げた手が、止まった。
《……考えてなかった。なぁ、なんか良い名前ない?》
《唐突だな。そうだな、うーん……》
《はーい》
《はいそこ、シュラ》
《ケモミミ生えーるお薬だから《ケモナール》ってのはどうだろうか》
《なるほど! タイトルコールは基本だな、決まりだ!》
「ネプ子ばりのメタ発言にわたしもビックリなんだけど」
というわけで名称決定、ケモナール――を片手に、セインが胸を張る。
《試薬第一号は邪神によって砕かれたが、今度はそうならないように慎重に保管しないとな》
《臨床実験とかしなくていいのか》
《モルモットでも捕まえてこいと? とはいってもハダカデバネズミぐらいしか俺ネズミの種類分からないしな》
「そのチョイスは限定的すぎるわよ!?」
うーん、と悩む四人の視線が……アイエフで止まった。顔を見合わせると、静かに頷く。それに自分の察しの良さを恨んだ時はなかった。
「ちょっと……まさかとは思うけれど……!」
《…………》
《ジリ、ジリ……》
「にじり寄らないでよ! やめなさい! 近付かないでってば!」
《いや、だってねぇ……》
《ぶっつけ本番で使うわけにはいかないし》
《そうなるとちょうどいい相手がいないんだ……》
《こうなる流れが自然なんだよなぁ》
嫌がるアイエフの身体を押さえ、セインが口元に試験官を近づけるが唇を固く閉ざして顔を背ける。
「むーっ! ん”ーっ!!」
《大丈夫、ちょっとだけ! 少しだけだから! 美味しいかもしれないから! 飲んでもケモミミが生えるだけだから!》
「んんんーっ!!」
それでも嫌がるアイエフに、ジーンがアイエフの身体を縛る縄をキツくした。擦れた股縄の刺激に驚いて身を竦ませた隙に、セインが試験官を口の中に入れる。ディルの手がそのまま頭を仰向けにさせた。
「~~~~!? ――、~~~ッ!!!?」
《全部か! 全部いくか!》
「ごっぶぅおぉぉええぇ!!? なにそれゲロまずいわ! 控えめに言ってもこの世のものとは思えないゲロのような味!」
《うわぁ、女の子とは思えない嗚咽……》
《そんなにマズイのか……味くらいは改良しておけ、セイン》
《今後の課題にしておくさ》
あまりのまずさに、アイエフが涙と鼻水まで垂らし、涎まで出てきている。それではあんまりにも可哀想なのでシュラがクレーンから下ろし――ついでに縛り方も直して――鼻と涎を拭い取った。椅子に座らされたアイエフは呼吸を荒くして玉のような汗が吹き出している。
《ど、どうですか……》
「最悪よ……頭はボーッとするし、身体は熱いし、変態しかいないし……はぁ……あっ、ハァ……」
《失敗か?》
《いや、そんなはずはない》
(なに……これ……めまいがする……意識、が――――)
世界が逆転するような、まるで海に揺られているような五感にアイエフの身体が傾いて椅子から転がり落ちた。呼吸が荒いまま唸る姿に、セイン達が慌てる。
《ほ、ホントに大丈夫なんだよな!?》
《大丈夫だって言ったじゃないか! 俺を信じろ、こと欲望に付き従った俺の成功率は九分九厘だ!》
《残りの一厘は?》
《良心》
それが失敗の種になるならドブに捨ててしまえと怒られたセインがしょげる。
《ど、どうするんだアイエフさん……》
《とりあえず安静にして様子を見よう》
《……ん?》
《どうした、ジーン。漏れたか?》
《死んでしまえ。いや、誰か来たようだぞ……?》
《確かに。俺のセンサーも生体反応をキャッチした。誰だろうな》
シュラが言うのなら間違いはないのだろう。
「こ、ここか……プラネテューヌ第三資源採掘場……」
息も絶え絶えになりながら鼻水を拭うエヌラスはくしゃみをした。ハンティングホラーの後部座席でエヌラスにしがみついているプルルートはと言うと上機嫌なのかニコニコと満面の笑みを浮かべている。心なしかその頬がツヤツヤとしている。
あの後、たっぷりとアイリスハートの手によってレオルドが再起不能となり、エヌラスまでもが毒牙によって倒れそうだったが、説得して本来の目的を思い出したことで何とか事なきを得た。今回の被害者は二名。エヌラスは胸中でレオルドに謝罪しながらも先を急ぐ身なので挨拶も程々にして逃げてきた。
「だいじょうぶ~?」
「大丈夫だよ、心配すんな……ちょっと疲れてるだけだ」
「帰ったらぁ、膝枕してあげるねぇ~」
「ありがたくって涙が出てくる……」
できることならその優しさを女神化した後にもお願いします、というのは無理な相談だろうか。