超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
一通りの調査を終えて教会へ戻ってきたエヌラスとプルルート、アイエフだったがネプテューヌ達の視線が普段は被らないフードを見るからに怪しんでいた。
「おかえりなさい、アイエフさん!」
「ええ。ただいま、ネプギア。ネプ子も心配かけたわね」
連絡を入れなかったことをイストワールにも詫びて、アイエフは足早にその場を後にしようとするが――そこは目聡いネプテューヌに捕まる。フードを押さえて慌てる様を不審に思ったアーサーがジロジロと値踏みするように見ていた。
「ふむ……一見するとどこもおかしくはない……」
「ならいいじゃない!」
「だが、私の美少女センサーがただ事ではないと告げておる」
「なんでそういうことに反応しちゃうのよ~!」
アーサーの手で引っ張られたコートからはみ出す尻尾に、ネプテューヌ達が目を丸くする。
「……あいちゃん、それなに?」
「あっ、しまっ――!」
「隙ありー!」
「きゃあああああっ!?」
フードを外すと、そこにはもふもふでフサフサのキツネ耳がピンと立っていた。慌てて隠そうとするが時既に遅し。イストワールも、ネプテューヌも、ネプギアも、ミリオンアーサーもチーカマも。果てにはユウコとピーシェまでもが絶句した。
もふっ、もふっ――揺れるしっぽに、ぴこぴこ動くケモミミに視線が殺到する。
「――きゃあーっ、あいちゃんかわいいぃぃぃっ! なにそれなにそれー!?」
「どうせそんな反応するだろうとは思ってたわよぉ! うわぁーん!」
「触らせてー!」
「ダメに決まってるでしょ!?」
「そう言わずにー! わたしとぉ、あいちゃんの仲じゃん!」
「ダメったらダメ!」
「もう~、照れちゃって!」
追い掛け回されるアイエフがエヌラスの背後に隠れた。すると、飛びかかるネプテューヌを片手で押さえる。身長差からか、両手を伸ばしてもそれが届く様子は全く無かった。
「エヌラス、退いて! あいちゃんモフれない!」
「モフらんでいいだろ」
「えぇ~!? だってケモミミだよ! あいちゃんが! ケモミミだよ!? これは堪らんでしょ!」
「気持ちは分かる。俺も思う存分モフモフしたい。一日モフりたい気持ちは分かる」
「ちょっとエヌラス?」
「ゲフンゲフン……今、話すのはそういうことじゃないだろ。問題はこれをどうするかだ」
『えっ?』
「は?」
満場一致のクエスチョンマークに、エヌラスが面食らってしまう。
「こういうのって放っておいたら治るんじゃないの?」
「いつ治るかもわからんケモミミ放置しとくわけにもいかんだろうが」
「そ、そうよ! わたしだってこんな耳と尻尾生やしてたら出歩けないんだから!」
「えー、いいじゃんいいじゃーん。なんていうかぁ、メジャーながらベストセラー? そういう萌えの王道を突っ走るのって大事だと思うんだよね!」
「まぁ……分かる」
「ちょっと!? エヌラス、わたしの味方なの敵なの!? どっち!?」
「何言ってんだ。俺は俺の味方だ」
コホン、とイストワールが咳払いを挟む。あまりの愛くるしさについつい我を忘れそうになっていた。なにせあのアイエフが。唯一の常識人と言っても差し支えのないアイエフが、まさかのケモミミを生やして戻ってきたのだから無理もない。
「とはいえ、これは由々しき事態です」
「あいちゃんのかわいさが?」
「はい。――あ、いえ違います! そうではないです! ネプテューヌさん、ふざけないでください!」
「いーすんさんまでメロメロになるなんて……」
ケモミミ、恐るべし……!
「現に、こうしてアイエフさんが被害に遭っている以上は被害の拡大を防がないといけません」
「このままではプラネテューヌの美少女という美少女達がケモミミになってしまうのか……確かにそれは由々しき事態だな。一刻の猶予を争う。そんなことになってしまってはケモミミの価値が下がってしまいかねん」
「ちょっと、アーサー?」
「しかしそれはそれで見たい気がする……! ケモミミだらけの美少女パラダイス、捨てがたい……!」
「そ・こ・の、アーサー!?」
「私は、私は一体どうすればいいのだエヌラス!」
「おいチータラ。とりあえずアーサーひっぱたいていいか?」
「いいわよ。あと、わたしの名前はチーカマだから」
ペチン、とエヌラスがアーサーの頭を軽くチョップで叩く。そんなケモミミパラダイス、俺だって見たい。そう言いそうになるのをぐっと堪えながら。
「あうー、お主なら分かってくれると思ったのにぃ……」
「あほたれ。それどころじゃねぇっての。解決策もないのにそんなパンデミックお断りだ」
「見たくないのか! ネプテューヌやネプギア、私やチーカマ!」
「わたしまで!?」
「のみならず、プルルートやユウコ! 果てはイストワールに、ピーシェの! ケ モ ミ ミ が!」
「ッ――――!!」
見たい! すごく見たい! 分かる! 今すぐにでも握手してその素晴らしい考えに賛同したいのは山々だ。だがしかし、今の自分の立場上からそれに賛同するのはあまりに危険過ぎる。賛成八割、反対がたったの二人。エヌラスと被害者のアイエフだけという状況があまりにマズイ。誰かが歯止めをかけなければ、あの変態集団の思うツボだ。
それだけは絶対に防がなければならない。
「……、だが! 今は! 何よりもあの連中をとっ捕まえるのが先だ!」
「そうね。エヌラスの言うとおりだわ。何が何でも捕まえるわよ」
「えー? むしろ、わたしとしてはケモミミキャラになれる絶好の機会だと思うんだけどなぁ……」
「お姉ちゃんのケモミミ……見てみたいかも」
「でしょー? そうなったらむしろシェアが上がると思うんだよね!」
「ですから、ネプテューヌさん? 女神のお仕事を日頃からコツコツとですね――」
どうも、この場でまともなのは三人だけのようだ。まさかネプギアまでもがケモミミに抵抗がないとなると、解決に乗り出せるのはエヌラスだけになる。アイエフはケモミミを生やした状態で外を出歩きたくないようで、それを無理に連れ回すのも気が引けた。
「仕方ねぇ……こうなりゃ俺がどうにかするしかなさそうだな」
「えぇ~! エヌラス、アイエフちゃんのケモミミ治しちゃうのぉ~? そんなのやぁだぁ~!」
「あのな……!」
これ以上ここで時間を食っていると事件解決に乗り出そうとする決意が揺らいでしまう。自分までもがケモミミの誘惑に負けてしまう――既に一度負けた身としては二度も負けるつもりはない。
「とりあえず現時点で有力な情報、手がかりとしては……トライアドがルウィーから仕入れた薬品か」
聞けば、ルウィーでは魔法文化が中心らしい。プラネテューヌは科学技術。ラステイションは工業。リーンボックスは軍事産業、ここ最近は萌え文化を取り入れている。そうなると魔術を科学技術で解明というのは難しいだろう。
「場合によっちゃ、九龍アマルガムで仕入れるか……」
「でも、解毒薬の調合とかどうするの?」
「ネットで検索しても、ケモミミを治療する薬なんて出てきませんし」
「う~ん、切っちゃうとかぁ~?」
「ひぃ!? それはやめてください、プルルート様!」
「あは~。冗談だよぉ、アイエフちゃん~。そんなに怯えなくていいよぉ~?」
多分、やる。本気でプルルートはやるだろう。身の危険を感じたアイエフのしっぽが丸まっていた。無意識のうちに動いているのだろうが、それに女性陣が悩殺されている。
「うーん、手入れとか普通にしていいのかな。シャンプーとか」
「ユウコ?」
「でもほら、抜け毛とか生え変わりの時期になるとカーペットの掃除もやり方変えないと……」
着眼点はやはりそこなのか。というよりも既にそっちの方針で固まりつつあるのも危機感を覚える。
「いや、成分とかさえ分かれば薬剤の調合は俺がやる」
「え!? エヌラスさん、そういうの出来るんですか!?」
「なんで驚いてんだよ……そうでもなかったらドラッグシガーなんて自前で作らねぇよ」
「あ、そうですよね……」
「自慢じゃないが俺は真っ当に生きていく上で必要のない知識には自信がある。人形作りとかな」
「じゃあじゃあ! わたしにケモミミ生えるお薬とか作れるの!」
「作らねぇよ」
即答した。なんというか、それをやったらあの連中と同じになってしまいそうだ。しかし目を輝かせながら期待の眼差しを向けてくるネプテューヌ達に、エヌラスは小さく「……気が向いたら」と呟く。
「とにかく。俺はルウィーに行って、取引を当たってくる」
「うん、いってらっしゃーい!」
「……お前たちはどうするんだ?」
「そうだな。とりあえず私はプラネテューヌを見回ってみよう。もしかするとそのロボットの仲間がいるかもしれんからな、見かけたら話を聞いてみる」
「それでしたら、隣町のハネダシティにある喫茶店マグメルに行きましょう。ジンガさんなら何か知っているかもしれませんし」
「よし。ならば私とネプギアはその喫茶店へ向かおう。ネプテューヌはどうするのだ?」
「じゃあミリアサちゃんの代わりにわたしがプラネテューヌを見回りするね。ぷるるんも一緒に行かない?」
「うん、いいよぉ~」
それに、ユウコと一緒にいたピーシェが元気よく手を挙げた。
「ねぷてぬ、ぴぃも行く! ユウコ、いい?」
「いいよー。怪我しないでね、ピィちゃん」
「はーい!」
全身で返事をすると、ハイタッチをしてユウコは手を振る。
「エヌラスさん。おひとりで大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。子供じゃないんだから」
「いえ。私が心配しているのはむしろ相手方の方ですけれど」
「事と次第によっちゃ、本部に
「そういうところがあるから、不安なんです……」
聞く耳持たず。アーアーキコエナーイ、エヌラスは聞こえないフリをして教会を後にした。