超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
イストワールに経緯を話すと、難しそうな表情で考え込んでいた。
「それは困りましたね。このままではアイエフさんのような被害者が増えてしまいます。ネプギアさん。一刻も早くネプテューヌさんと合流して、彼らの企みを阻止してください。ユニさん、ご助力お願いできますか?」
「はい。もちろんです。そのために来たんですから」
「ラステイションでは、どのような状況になっていますか」
「お姉ちゃんが街中でそれらしき取引がないか調べています」
「なるほど。ノワールさんらしいですね。とにかく今は」
「はい、分かっています。エヌラスさんがいないうちにこの事件を解決しないと……」
「ええ……」
どんな被害が起こるか想像もつかない。プラネテューヌが大惨事になりうる。
「ミリアサさんもでかけていますし、巻き込まれていないといいのですけれど」
「ん、どしたのー? あれ、ギアちゃんさっき出かけなかった?」
「あ、ユウコさん。あの、実は……」
ネプギアはユウコにも、ついでに言うと肩車しているピーシェにも事情を説明した。
「――なぁるほど。あの変態集団が……アイちゃん以外にも被害者増えちゃうのか……」
「ユウコ、それってわるいこと?」
「うーんそうだね。みんなが迷惑しちゃうかなー」
「むー。ならピィがやっつける!」
「それなら私も一緒に行くよー」
「えっ」
「えっ」
「ん? なんか変なこと言った?」
首を傾げるユウコに合わせてピーシェも一緒に傾く。
「あの、ユウコさんも一緒に来るんですか? もしかしたら戦闘になっちゃうかもしれないんですよ?」
「大丈夫大丈夫。こう見えて私、結構荒事とか揉め事には慣れてるから」
「本当に大丈夫ですか?」
「もし本当に危なくなったら、その時はよろしくね」
「は、はい」
「あー、でも……もし万が一にでも私達までケモミミになったら……」
もしそうなったら――九龍アマルガムで現在、大魔導師を相手に死闘中のエヌラスの苦労が全て水泡と帰すだろう。ちなみに既に地下帝国の被害は邪神災害レベルで拡大中。
「うーん、エヌラス怒るだろうなぁ。滅茶苦茶怒るだろうな……」
「ど、どれぐらいなんですか」
「……そうだなー。前、ソラとアルシュベイトがうっかりエヌラスの地雷踏んだ時は……確かこう、山が消し飛びそうになってドラグレイスがブチ切れて――」
「大惨事もいいところじゃないですか!?」
「その騒ぎ、結局どうなったんですか?」
「最終的に騒ぎを聞きつけたアゴウの女神様が三人まとめて土下座させてたよ?」
――女神様超こえー! あの三人をまとめて相手できるのなど大魔導師だけだとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい。流石軍事国家の守護女神。
「まーそんなことはいいから。早く行こ。それじゃ、イーちゃん。行ってきまーす!」
「いってきまーす!」
「ああ、待ってくださいユウコさん! それじゃいーすんさん、わたしも!」
「わたしも行ってきます!」
「はい。皆さん、相手は国境警備隊、くれぐれも注意してください」
「ぬらー!」
「ぬらぬらー!」
《こちらシャニ! そっちに行ったぞ! 重火隊!》
《任せろ!》
スライヌの大群が国境警備隊の強襲隊によって、追い込まれる。そこへ重火隊の砲撃がまとめて焼き払った。
《というかな! なんで強襲隊が私一人なんだ! お前ら多すぎだろうが、重火隊!》
《そう言うな、シャニ》
《そもそもだな! なんで人が機体再調整を終えた直後にセインの作戦に参加しなきゃならんのだ!》
《まぁまぁ》
《まぁまぁ》
《ええいもう知らん! 私が遊撃する、貴様らが撃破! 当初の作戦に変更はない!》
シャニが重火隊を率いてモンスターの大群を前に立つ。
セインの立てた作戦に参加する、それだけでもシャニには不服なようで不機嫌さを隠そうともしない。
《こちらはともかくとして》
《トライアドの連中はとんでもない速度で撃破してるぞ》
《なんでアイツらは毎度毎度余計なところで本気なんだ! 貴様らものんびりするな、セインに遅れを取るのだけは許せん!》
《いや、部隊構成的に難しいぞ》
《謀ったなあのヤロォォォッ!!!》
強襲部門特務隊としてB2AM内で名を馳せるシャニの単独戦闘能力ならば部隊を率いての戦闘など朝飯前だ。どんな部隊編成であろうとも戦績に揺らぎはない。
モンスターの群れに飛び込み、突撃銃と伸縮式のスピアを手にして敵を追い込むように立ち回る。砲撃ポイントまで敵を誘導して離脱。直後、重火隊の砲撃が着弾した。
一方で、トライアド――。
セインがジリオスを片手にエンシェントドラゴンの鉤爪を捌く。腕を足場にして片目を奪い、着地様に尻尾に剣を突き立てる。
動きを止めている間に接近したシュラの散弾がさらに傷口を抉り、暴れるドラゴンの腕をディルが身を挺して庇う。腹部に打ち込まれるスチームパイクでもんどり打って、その場を逃げ出そうと翼を広げる翼膜を二枚同時にジーンが撃ち抜いた。
最後に首を刎ねて、倒れこむ。
《目標、撃破。次に行くぞ》
《了解!》
《素材の回収は任せたぞ、シュラ》
《わかった。損傷があったらこちらで修復しておくが》
損傷は軽微。まだ修復を必要をするほどではない。
《他の部隊も追い上げてきている、特にシャニがな》
《ハッハッハ、脇腹痛くて大盲腸!》
《機械だから病気にならんけどな》
ジーンの冷ややかなツッコミにめげないセインはスルーした。
《最下位は?》
《レオルドの部隊だ。まぁ予想通りというか何というか……》
《あればっかりはどうしようもない》
《ふふふ、シャニに預けた部隊は重火隊。一網打尽で戦果を稼ごうという魂胆――だがしかぁし! あいつに任せた区域に生息するのは小型モンスターだらけだ! 面倒な上に数が減れば戦果が上げにくくなるって寸法よ!》
《お前セコいな……そうまでしてシャニに成績抜かれたくないか》
《だってアイツいつも俺と話す時は上から目線なんだぞ? ひどくないか?》
それが当人の性格に対する風当たりだとは心優しい仲間達は言わずにおく。
《うん? セイン、レオルドの部隊から通信だ》
《なんて言ってる》
《……女神候補生と遭遇した、と言っているが》
《なんて羨ましいんだ万年最下位ドベケツビリ太郎……》
《アダ名を地味に増やすな》
レオルドの部隊がモンスター達を狩り、そのついでに素材の採集をしていると呼び止められた。誰だと思い、振り返った軽量級の強襲隊の視線の先。そこにはネプギアとユニ、そしてユウコとピーシェの四人が立っていた。それに一同がざわめく。
「あの! レオルドさん!」
《あ、パープルシスター様。どうも、こんにちわ》
「はい。こんにちわ。って、そうじゃなくて! なにをしているんですか」
《なにって……国境警備隊のモンスター退治っすよ?》
レオルドは真相を知らされているのか、それとも聞かされていないのか。首を傾げていた。その様子に、他の強襲隊と重火隊がからかうように肩をつつく。
《おいー、レオルド。お前いつのまにパープルシスター様とお近づきになったんだよー?》
《そうだぞー、このこの》
《や、やめてくださいよ! ツキカゲさん、バズさん! そんなんじゃないっす!》
ツキカゲ――軽量級の装甲を極限まで削られた二脚型だろう。ツインアイが嬉しそうに細く光っていた。バズと呼ばれたのはこちらも軽量級。蜂を髣髴とさせるフォルムのホバー型脚部で双方共に強襲部隊のバックパックを背負っている。緊張感の欠片もない雰囲気に、まるで学生同士のやり取りが思い浮かんだ。
それにユニが眉を吊り上げて地面を踏みしめる。
「ちょっと、アンタ達ね! こっちは真面目に聞いてるんだから真面目に話を聞きなさいよ!」
《ヒィ、怖い!》
《すいませんでした! ガタガタ……》
《ラステイションの女神候補生怖い!》
ヒシと抱き合って身を寄せ合う三人に、ますますユニが声を荒らげようとするのをネプギアが止めた。
「ま、まぁまぁユニちゃんも落ち着いて。ね? まず話し合おうよ」
「ネプギアが言うなら、もう少しだけ我慢してあげるわ」
「ありがとう」
《ああ、パープルシスター様マジ天使……》
「なによ、わたしはまるで悪魔みたいな」
《どちらかってーと、小悪魔系?》
《ツンデレ系だな》
「ギロッ」
『ひぃ、ごめんなさい!』
ツキカゲとバズが再び身を寄せあってユニからの威圧に怯える。