超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「えっと、じゃあ……まずこの作戦の立案者は誰ですか? 突然プラネテューヌのギルドからモンスター退治のクエストを全部受注するなんて」
ネプギアは、サクラナミキでベンチに座るレオルド達に思いつく限りのことを尋ねた。まず、この大規模な作戦の提案は誰が行ったのか。
《総合特務班トライアドです》
「トライアド?」
《はい。各部署で個人成績が最も高い奴らだけを集めた、四人だけの少数精鋭部隊です》
「ケモナールなんてふざけた薬作ったのもそいつらよね?」
《ケモ、ナール? なんすかそれ》
「しらばっくれても無駄よ。こっちじゃもうとっくに被害者が出てるんだから」
《すいません。俺ら下っ端なのでそういう詳しい事情とか聞かされてないんですよ》
《うんうん》
ツキカゲの言葉に、バズが頷く。彼らもB2AM内では機動力から雑用係として働くことが多い。ただ上の指示に従っているだけに過ぎない。
《ただ、今まで国境警備隊としての働きを疎かにしていたからその汚名返上を兼ねて自分たちに出来ることをしよう、と》
「それで、モンスター退治を?」
《最近物騒でしたから。あの、なんか街中に出てきた化物の件とかで》
騎士甲冑の邪神。その一件のことだろう。――確かに、プラネテューヌの市民たちは不安がっていた。女神達の協力で撃破したと報じられてはいてもやはりまた来るのではないか、という不安は拭えない。それを少しでも解消しようとしている。
《それで、トライアドが提案したのがモンスター一斉駆除、という形での行動です。もしそれが女神としての仕事を奪うという形になったのでしたら申し訳ありません。謝罪します》
バズが頭を下げて、慌ててレオルドとツキカゲが平伏す。
「ねぇギアちゃん。この人達は悪い人達じゃないんじゃないかな?」
「ユウコさん、わたしもそう思います」
「と、なるとやっぱ元凶であるそのトライアドって連中と話つけるしかなさそうね」
ユニの強気な発言に《ぅわぁ……》と三人が同時に嫌悪感を隠そうともせずに唸った。怖いもの知らずな発言にはさしものレオルド達もラステイションの女神候補生といえど心配している。
《あ、あのー》
「なによ」
《えっとー……忠告しておきますが》
《トライアドの連中とは近づかないほうが……ほら、ちいさなお子さんもいますし》
「?」
視線が集中するピーシェが小首を傾げていた。
「ピィがどうかした?」
「うーんとね、ピィちゃんにはまだちょっと早いかなってお話」
「だいじょうぶ!」
「ほんとにぃ?」
「だいじょうぶったらだいじょーぶだもん!」
両手を振ってアピールするピーシェの頭をなでて、ユウコは視線の高さを合わせる。
《……あのー、本当に大丈夫ですかそこの親子》
「えっと、なんでだろう。だんだんピーシェちゃんとユウコさんが親子に見えてきた……」
《えっ、違うんすか?》
レオルドの素朴な疑問はもっともだが、今はそれどころではない。
「ていうか、そのトライアドって奴らそんなにヤバイの? 仮にもわたし達、女神候補生なんだけど。アンタたちの上司のロボット四体くらいどうってことないわよ」
《だからこそ、忠告しているわけですが……まぁどうしてもというなら呼びますよ……》
「まどろっこしいわね。直接話した方が早いわ。いいわよね、ネプギア」
「う、うん……ちょっと強引な気がするけど、いいかな……」
《聞こえっかートライアドー、こちらレオルド班だ》
気だるげに、それはもうやる気など微塵も感じられなさそうなバズのぐぅたらな通信に、そちらが素なのだろうと思う。うんざりとした態度でバズが通信を切る。
《……すぐにこっち来るって》
《マジか……》
《あー、あの。パープルシスター様、ひとつだけ注意点が》
「なんですか?」
《変人ですが、滅茶苦茶強いんでそれだけ注意してください。特に、女神様相手には》
「……? わかりました、気をつけます」
言葉の意味がよくわからないままネプギアは頷いた。
それからしばらくして――新たに接近するスラスターの駆動音が四つ。サクラナミキで舞い散る桜を切って走る機影に、レオルドが目を逸らした。ツキカゲがひらひらと舞う蝶を眺める。バズは空を仰いだ。なんでこんな奴らの作戦がこんなにもまともで指揮も十分なのに――変人なんだろう。それさえなければ、これほど有能なやつらはいないのに。
《マジで来たよアイツら……》
《来なくていいよ……》
「なんでそんなに嫌われてるのよ、トライアド」
ユニがバズとツキカゲの二人を横目で睨み……。
《待たせたな万年最下位ドベ太郎の部隊諸君、元気にハンティングしてるかぁ!》
「あ、ごめん察したわ」
セインの第一声で全てを察した。なんでそんな無駄にテンションが高いのか。
《うわー、本物のパープルシスター様だ……こんな近くで見たの初めてだ。すいません、写真撮らせていただいてもいいですか》
《おいシュラ! お前ズルいぞ!》
《焼き増すから! お願いだからどつくな、凹む! 凹む! 頭部センサーユニット凹むからやめろ!》
「えっと、写真くらいならいいですけど……」
《じゃああの、他の方はフレームアウトでお願いします》
「わたし達も急いでいるので、一枚だけですからね」
《じゃあパンチラでお願いしま――》
セインがレオルド達からボコボコにされた。
《すいません、気にしないでください。アイツ変な奴なんです》
「あ、はい……」
《普通にしてくださって大丈夫ですんで! 撮りますよー》
「はい。こんな感じでいいでしょうか?」
《バッチリです! パシャッと》
シュラが手にしていた携帯型撮影機のシャッターを押すと、その写りをひと目見ようとレオルド達が覗きこむ。
《うぉ、すごいなシュラ。お前写真撮るの上手いな!》
《ふふふ、セインに連れられて夏と冬の激戦区でレイヤー撮影会に毎年参加してるからな》
《だからお前年末の大掃除毎年未参加なのか! テメェ!》
《しまった、バレた! 勘弁してください!》
今度はシュラが他のメンバーから足蹴にされ、やはりセインも踏まれる。
《フ、フフ……この俺をここまで追い込むとは流石、女神様達だ……》
「……ネプギア。わたし達なにかした?」
「ううん、なにもしてない……」
何もしていないのにセインがボロボロになってシュラに修理されていた。
――疲れる。ネプギアとユニは心底そう思った。付き合いきれないというレオルド達の苦労が窺い知れる。たしかにこれは、辛い。
「心中お察しします、レオルドさん達」
《ありがとうございます……》
《女神様から同情してもらえた……》
《生きててよかった……》
(ロボットなのに……?)
ユニの心中のツッコミはともかくとして、シュラが撮った写真をネプギア達にも確認の意味を込めて見せる。それとなく横からユニも覗きこむ。
「わぁ、キレイに撮れてる……」
「……フン、まぁまぁいいじゃないの。一応敵対してるの忘れないでよ?」
それに、トライアドが大仰なため息を吐いた。
《ハァ~……これだからラステイションの女神候補生ってのは……》
《名前なんだっけ……興味なさすぎて覚えてない》
「なぁんですって!? ユニよ!」
《ウニ? いや、確かにツンツンしてるけど》
「ユ・ニ! 馬鹿にしてるでしょ!?」
《いや。ただ単に眼中に全くないってだけで別にバカにしてるとかでは》
「それをバカにしているって言うの!」
とうとう銃器を持ち出すユニに、ネプギアが止めようとするも既に焼け石に水。完全に戦う気満々のユニが銃口を向けるも、セインが背負っている刀を抜くだけで他のメンバーはまだシュラが撮ったネプギアの写真を飽きずに眺めている。
「うぅ、そんなじっくり見られると恥ずかしいなぁ……」
《あ、パープルシスター様。これ拡大してポスターとかにしてもいいですか?》
「えっ!? そこまでします!?」
《だって俺達みたいな奴らが女神様とここまで近づける機会なんてもう無いだろうし……それならせめてもの思い出に》
「そ、そんな今生の別れみたいなことを言わないでください。それくらいならいいですよ」
《モーターヤッターッ!! プラネテューヌで良かったーーーー!!!》
狂喜して天を仰ぐシュラの肩を叩いて、全員が胴上げを始めた。そして地面に叩き落とされて悶えている。
「ネプギア。撃っていいわよね」
「もうちょっと待ってあげようよ」
「いや、もう付き合いきれないから問答無用にしょっ引いていいと思うんだけど」
ユニの言い分はもっともだ。これ以上トライアドの話に付き合っていたら知能指数が死んでしまう。