超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
《いや、もう撃っちゃっていいっすよユニさん……》
「本当にいいんですか、レオルドさん」
《そうだそうだー。やっちまってくだせー》
《お願いします。あいつ等の凶行は目に余るんで》
「なんでアンタ達にまで応援されなきゃならないのよ! もちろん共犯として全員しょっ引くわよ!」
《ぅゎ、ラステイションの女神候補生容赦無い……》
《こわ。ラステイションに近づかんとこ……》
「なんなのよこいつらー! もー!!」
ユニが半ばキレながらレオルドを睨む。それに一瞬身体を竦ませるが、すぐに頭を下げた。
《す、すいませんすいません! 別に俺達悪気あるわけじゃないんです! ほら、ツキカゲさん、バズさん! ユニさんに謝って!》
《はいはいサーセンっすよー》
《すいませんでしたー》
「ホントにわたしとお姉ちゃん以外どうでもいいんですね……」
「うにゃああああっ!! ああもういいわよ! そこの変態集団トライアド!」
ビシッ、と指差す――。
《なぁシュラ。これポスターフレームどれにする》
《そうだな……俺達の組織名だけにB2でいいんじゃないか》
《いや、そこはそれ。もうちょっとこう》
「聞 き な さ い よ!」
《あ、スマン。どうでもよくて……》
「わたしからすればアンタ達の安否の方がどうでもいいわよ! 撃つわよ! いいわね!」
《えっ、マジで言ってるのあの女神候補生……》
セインが一歩前に出る。その背中を押すようにディル達が隠れた。
《お前ら、なんで俺の背後に隠れる?》
《ほら、この場に置いて責任者ってお前だし》
《部隊長らしく責任取ってもらわないと》
《こういう時ばかり人に責任押し付けるとか本当に最低だな!》
《お前にだけは言われたくない今世紀最高の流行語大賞待ったなし!》
「うがーー!!」
ユニがライフルのトリガーを引く。撃ち出される銃弾はまっすぐセインの頭部に向かっていき――チュイン!
「――え」
背中を押されて、やいのやいのと騒ぎあっているトライアド。その筆頭であるセインの振るった刃が見向きもせずに銃弾を弾いた。地面を転がる銃弾は、キレイに真っ二つに割られている。
《いや待て。今撃たれなかったか?》
《何言ってんだ。集団演習なんてマイトリックスばりに銃弾飛び交うだろう》
《それもそうだな》
《ほら、何一つ不自然なことはない》
《そうだな! ……うん、あれ? おかしくね?》
「…………」
ポカンと呆然としていたユニがレオルド達に視線を向けた。それに、誰も目を合わせようとはしない。
「えっ」
《……アイツ等、そういう奴らです》
《強いんだよな》
《うん、強いのに変なんだよな》
《絶対不良品だよな》
《頭のネジ絶対足りてないよな》
うんうん、とお互いに頷き合うツキカゲとバズ。それに、額に指を当てながら大仰に嘆くセインが深い溜息を吐いた(?)。
《おいお前らぁ! なんで、そっち側にいるんだ! 仮にも俺は、指揮官だぞ!? なのにどうしてラステイションの小悪魔系ツンデレ女神候補生と一緒にいるんだ!》
《普通に考えたらわかると思う》
《変人上司より、他国とはいえかわいい美少女の女神候補生側に付きます》
《俺も同じ状況下に置かれたら身投げするな! 納得したぞこの裏切り者ドベラ!》
『ドベラ!?』
――何語だろう。
ドベラ=ドベケツビリ太郎及びその類・その集団を指す言葉(トライアド、セイン脳内辞典より出典)
《嗚呼まったく実に嘆かわしい! 我がB2AMから貴様らのような裏切り者が出てくるとは思いもしなかった! 帰ったら反省文四百字詰め原稿用紙五枚以内で提出だ!》
「あ、思ったより優しいんですね」
《題目はこの俺を褒め称える文章で頼む》
「一枚目で心折れそう……」
なんの拷問だ。新手の地獄か何かか。
自慢の射撃を外した、もとい弾き落とされたユニがますますライフルのトリガーを引く。
《まぁ、落ち着きたまえ。まず私が何故このようなことを始めたかの経緯をだな》
「そういうのは! とっ捕まってからゆっくり聞くわよ!」
《――そもそも、プラネテューヌのシェアが最下位をキープしているという現状。それが私には不思議でならない》
突然、まともな口調で話し始めたセインの話を遮ろうとするライフルの射撃音が続いた。だが、その何れもがセインに当たることはなく、刃の軌跡によって地面へと落ちていく。
「この! この!!」
《プラネテューヌはいいぞ。実に過ごしやすい。科学技術は優れ、商業の流通も良い。加えて他国との関係も良好。それでいて女神様も実にプラトニックだ。馴染みやすく、そして寛容な心の持ち主。まぁ仕事をサボりがちなのは珠に瑕だが、そこは我々でサポートすればいい。そのための国境警備隊だ》
「なんで当たんないのよ! こうなったら……!」
マガジンを取り替え、徹甲弾から切り替えて榴弾を装填する。貫通力ではなく、破壊力でセインを黙らせようという魂胆だ。
「これならどうよ!」
《しかしながら》
射線に対して斜めに刀身を構えて、鍔元にあるトリガーを押す。刃を包むように蛍光色の光が榴弾を焼き切り、払いのける。
《現状。シェアトップはラステイション、それに揺るぎないのは誠に遺憾である。とはいえ何もいきなりトップに躍り出ようというつもりなど夢物語》
「な……なんなのよ、アンタ一体!?」
《俺はB2AM総合特務班トライアド班長、セイン。プラネテューヌのシェアを上昇させるべくこの“もふもふ作戦”を立案した!》
「ネーミングセンスだっさ!?」
《…………。邪魔立てするならば、例え女神候補生と言えど致し方ない。すまないがここで相手を務めさせて頂きますとこちらとしては光栄極まりなく幸いです》
《お願いします! 勝負してください!》
『お願いします! お願いします!!』
「え、ええー……なんでわたし、こんなに頭下げられているんだろう」
「ネプギア。相手してやりなさいよ。わたしだけにやらせるつもり?」
「そんなつもりはないよ。えと、それじゃあ、手加減しませんからね!」
『ありがとうございます! ありがとうございます!!』
トライアドが揃って頭を下げる――が、前に出るのはセインだけだった。
《が、しかし。ここは部隊長として私が二人のお相手を務めさせていただく》
「女神候補生を二人も相手にするつもり? 随分な自信じゃない」
《あれだけ撃っておきながら俺にまだ一発も当たっていないのだが?》
「……へぇ」
「ユ、ユニちゃん! ちょっと女神としてしちゃいけない顔してるよ!」
「もう我慢の限界よ! こうなったら風穴開けるまで撃ち続けてやるわ!」
《お前らは手出しするなよ》
《わーセインがすげぇ隊長っぽいこと言ってる》
《珍しいな。頑張れ、できれば死ね》
《録画しとくか》
《お前たち仮にも俺の部下だよね!? もうちょっとこう、さぁ!?》
《あ、ユニさん。撃っちゃっていいですよ》
「アンタに言われなくても撃つわよ!」
レオルドに言われるまでもなくユニは既にセインに向けて射撃を始めている。ネプギアも愛用のビームセイバーを装備して構えた。
「本気でいきます! 覚悟はいいですね!」
《無論だとも!》
セインの刃は正確にユニの射撃を切り払っている。それが当たる様子はない。
「ネプギア! 今のうちにやっちゃいなさい!」
「うん!」
《ハッハッハ! 女神候補生とこうして手合わせできるとはこれは僥倖! 全力で臨ませていただく!》
レオルドとユウコ、ピーシェが顔を見合わせる。
「んー、向こうがそうなら。私達は残りの部下たち?」
《え、戦うんすか》
《やめといたほうがいーっすよー。仮にもあいつら組織内で最優秀戦績連覇していた変人共なんでー》
《うんうん》
止めようとするバズとツキカゲの制止を振り切ってピーシェはグローブを用意していた。
「ぴぃがわるものやっつける!」
「ほら。ピィちゃんこう言ってるしさ。遊んだけないと」
《え、俺らあの親子相手するの……》
《良心が痛む》
《マジ勘弁したいわ。パープルシスター様の勇姿、録画しときたいし》
「なんで撮ってるんですかぁ!?」
「ちょっとネプギア! よそ見しない! この、チョコマカとぉ!」
《HAHAHAHAHA! エイム
「ムキーー!! 何が何でもギャフンと言わせてやるんだからぁー!」
《ギャフン!》
「くぉんのぉぉぉっっ!!」
ますますムキになってライフルのマズルフラッシュが激しくなる。セインにいいように遊ばれているユニは顔を赤くして当たらない悔しさから涙目になっていた。