※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード99 マジな奴ほどキレると怖い精神鑑定

 

 ネプギアのビームセイバーを一度受けて、刃に沿って受け流す。それとは別角度、ユニからのライフル射撃をスラスターを吹かして跳躍しながら避ける。

 

《ブラボー! おお、ブラボー! 流石は女神候補生! いつもと違う緊張感、このスリルがまじたまらん!》

「このロボット、動きが速い……! 装甲の軽量化だけじゃない!」

《ほう、そこに気づいていただけるとはやはり天才!》

「え、それほどでも……」

「なに照れてんの。メカ好きなのは分かるけどもこんな時にまで発揮しなくていいわよ!」

 ユニがリロードを挟む。

 

「背中の武器は飾りなわけ? それとも手加減かしら。見た感じ、エネルギー系統のライフル、グレネードランチャーのようだけど」

《そりゃあ、背中のこれ。人に向けたら危ないじゃない?》

「あ、うん……そうなんだけど……なんでかしら。コイツに正論言われると、すごい腹立つわね……」

「関節のシリンダーに、むき出しのフレーム……それに、レオルドさんに比べて大容量のスラスター……強襲型の機体みたいですね」

《ねっとりじっくり見てくれてもいいんですぞ! んん!!》

 ユニが撃った。弾かれた。手首の返しで続く二発目、三発目も切り払われる。

 

《それに、私はこの刀が一本あればいい。これを扱う為に作られたと言っても過言ではない》

 大きな鍔に、刃を包み込む緑のレーザー光。光学兵器でもあり実体剣としての性能も申し分ないソレは、本来であればビームセイバーの新ブランドとして世に送り出されるはずだった。試験型で打ち止めとなった開発企画。お蔵入りとなったそのレーザーブレイド、『LZ-ジリオス』と同じく、一代限りのブランド機体として開発されたセイン。姉妹機もおらず、後継機も存在しない隠密強襲機体。

 セインが刃を振るう、機械的な動作の中には刃物を扱うという見た目以上の精密な動きが要求される。それを叶える為の関節。軽量装甲。そしてプログラム。ネプギアのビームセイバーと火花を散らし、鍔迫り合う。

 

「くっ……」

《故にこそ、出力は決して多くはない。だがそれを補って余りあるスピードとテクニック! こう言うとセクハラ発言で事案待ったなし!》

「いや、そういうのはいいですから!」

《そう! 私は、パープルシスター様! 貴方と同じく、この剣を振るう為に作られた。ところがどっこいすっとこどっこい、結局は企画倒れになりました! なんでってそりゃあ私が色々やらかしたせいで! 主に製薬会社の媚薬垂れ流して以下略文字数!》

「なにやらかしてんのよ!?」

 制御AIに深刻な問題を抱えている。そう銘打たれてセインは開発プランとともに廃棄処分が確定した。ユニのライフルから放たれるフルバーストを避けて、或いは弾きながらセインはネプギアから距離を離す。

 

《特にすることもなく、山奥でこの剣を棒きれを拾った小学生のようにはしゃぎながら振るう日々……》

「アンタ楽しんでない、その人生。いやロボットだから人生かどうかはともかくとして」

《そんなある日、森の中で出会ったのはモンスターに襲われそうになっていたプラネテューヌの市民。私はもちろん助けましたとも、ええ。ぶっちゃけ素材狙いで》

「自分に正直すぎるでしょうが!」

《その時、私に電流が走った!》

「……それ、比喩表現?」

《そうだ、これだ! という謎の閃きと共に私は剣を振るい、悩んだ。ただガムシャラに振るうのではダメだと。そんな時に私は見てしまったのだ――そう、貴方を! パープルシスター様》

「え、わたしですか!?」

《守護女神、パープルハート様と共に戦う貴方の剣さばきに私は天啓を得た。それと同じくパープルハート様の剣技の数々……私はそれにひどく恥じた。私のしていた事は児戯にも等しいと》

「棒きれ拾った小学生のくだり、忘れてないわよね」

 ユニが半目で睨むも、引き金から指は離さない。

 

《シロトラ教官と出会い、私はこの組織に拾われた。女神信仰の狂信者集団ハァドラインに名を連ねようとも一向に構わん! 私の夢が一つ叶ったのだからな! 貴方と剣を交えることが出来た、ただもうそれだけで頭のネジを何本か取っ払った甲斐があるというもの!》

 

 ――あ、やっぱ頭のネジ足りなかったのかアイツ。他人事のようにツキカゲとバズはセインを眺めていた。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! どうしてですか、それならどうしてこんな事件を……」

《パープルシスター様。一つお聞きしたい。ケモミミのパープルハート様が見たいとは思いませんか》

「えーっと……その、どちらかと言うと見てみたいですけれど、なにもそこまでしなくても」

《ガッッッッッッッデムッッッ!!!!》

「ひぃ、ゴメンナサイ!」

 怒りを沸騰させたセインが地面をジリオスで薙ぎ払う。その剣幕に思わずネプギアが涙目で謝ってしまった。

 

《わかってない! 何一つ分かっていない、これっぽっちもひとりぼっち! アダルティなショップで売っている付け耳カチューシャ? お尻に挿すプラグ付き尻尾!? そんなものでは到底味わえない、可憐で、キュートで、プリティーで、なおかつひとつのアイデンティティーであるケモミミを“生やしている”というのが重要なんだッッ!! わかっちゃいない! 何一つ! 脳波で動くネコミミとか知ったこっちゃない! 私は、生のケモミミで! もふもふキュートな耳と尻尾をゆらゆら動かすパープルハート様が見たいんだッ! きっと誰もがそうだ! 特にパープルシスター様も!》

「あ、えと……その。見たいですけれども……」

《プラネテューヌのシェアを増大させるのにはこれしかない! その姿をゲイムギョウ界中に流せば誰も彼もが悩殺待ったなし! 想像してみれば容易い……ケモミミパープルハート様……》

「お姉ちゃんの、ケモミミ姿……」

 ――凛々しくて、澄んだ瞳。女神らしい艶美な肢体。女神としてこれほど相応しい人はいないと思っている。ユニちゃんには悪いけれども。そんな自慢のお姉ちゃんが、ケモミミ……。ネプギアは想像する。

 いつもの姿。憧れのお姉ちゃん、それにケモミミとしっぽが生えて揺れ動かす姿を。

 

『ネプギア。どうかしら、これ。似合ってるかしら? にゃおぅん。あら、でもこれイヌミミ? じゃあ、わんわん? わぉーん』

「コフッ――!」

 萌え死ぬ。危うく致死ダメージを食らう所だった――! ネプギアは辛うじて踏み留まる。ありがとう理性、ありがとう女神としての自覚、ありがとう鍛えあげられた常識。そしてなにより恐ろしい旧神様。二重の意味で死にそうになったネプギアが鼻血を抑えながらセインに顔を赤くして向き直る。

 

「ネプギア、大丈夫!?」

「だ、だいじょうぶ……おねえちゃんのけもみみ想像して、ちょっと……鼻血が出そうになっただけだから……」

「なんでそんなの想像するのよ!?」

「だって見たいんだもん! ユニちゃんだってノワールさんのケモミミ見たくないの!」

「それは……見たいような気もするけれど、そんなのお姉ちゃんじゃない! わたしの知ってるお姉ちゃんはケモミミなんて生やしてないし、そんなの許さないんだから! 騙されないでネプギア。アイツ等は結局、自分たちの見たい物を守護女神に押し付けてるだけのテロリストよ。そんなのがゲイムギョウ界中に流された日には女神の評価なんてガタ落ちよ」

「う、うん! そうだよね! ダメだよね、ケモミミなんて!」

「ネプギアを誘惑しようったってそうはいかないんだから!」

《……はぁ》

 セインはやれやれと首を振り、切っ先を下げた。呆れ、嘆き、落胆している。

 

《せめてもの同感さえ得られれば、私は嬉しかったんだけどな……しょせんはラステイションの女神候補生か……》

「なによ、その言い草は」

《背中の武器は飾りかと聞いたな。ユニ》

「っ――」

 ふざけていた風ではなく、声色からおちゃらけた様子が消え失せていた。それにはさきほどまでの道化じみた感情が微塵も見られない。打って変わって鋭利な刃物を突きつけられた威圧感にユニが息を呑む。

 

《そうまで言うなら“本気”でいかせてもらうぞ》

 マウントのロックを解除して、セーフティも同様に外して一歩踏み出す。チャージングシステム起動。最高速度で切迫する一閃がネプギアのビームセイバーを弾く。片側のスラスターだけを吹かしながらその場で回転して、返し刃のジリオスが背中でユニのライフルを跳ね上げる。

 

「なっ――!」

「ユニ、ちゃ――」

 そして、喉元にはジリオスの切っ先。ネプギアの胴体にはピタリとグレネードランチャーが向けられていた。両手を広げる形で静止したセインは微動しない。

 

《……女神候補生と言えど、俺を甘く見ないほうがいい。俺はハァドライン、女神信仰の狂信者のひとりだ。本気でかかってこないと痛い目を見るぞ》

 スラスターを逆噴射させて、その場から離脱したセインがグレネードランチャーをマウントする。

 

《どうした? 変身しないのか。女神候補生》

 狂気の沙汰ほど面白い――そんな言葉がネプギアとユニの脳裏を掠めた。

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