※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード103 腐れ縁は爛れ落ちても切れない

 

 上機嫌なプレジレントと、それとは正反対に冷淡な秘書キャロライン。そこに外部からの通信が入った。

 

『こちらアーマードカンパニア本社、キャロラインです。どうかしましたか?』

《ラステイション企業連盟、アームドソウルス。オペレーターのフィオナです。つい先程、B2AMの構成員と思われる機体がブラックハート様に連行される姿を見ました》

 それにシロトラが顔を上げる。

 

《どういうことだ、シロトラ?》

《ラステイションへの配送を受けた部下だろう。他意はない》

《どうだかね》

『報告を受けています。配送会社を回っていたようですが……』

《その機体の特徴は》

 キャロラインから聞いた話で、すぐにそれがドバルであることが分かった。

 

《買収したラステイションの企業から聞き込みをしていました》

『そうですか。我々の動きを嗅ぎつけた様子ではありませんが、果たして……どうされます、プレジレント? ブラックハートがこちらの動きを察知して動いた場合、計画に支障が出るのでは? どちらでも構いませんよ』

《それは厄介だ》

《……私が行こう》

《いいのかい、シロトラ?》

 預けていた両刃の剣を手にして、シロトラは立ち上がる。

 

《構わない。そちらへの信用もある、それに私の部下だ》

《なら任せるさ》

『ですが、万一の為に貴方の所でも待機をお願いしますよ。傭兵派遣会社、アークのオペレーター』

《わかりました。“彼”に任せます》

『くれぐれも、我々の信頼を失わないように』

 シロトラは無線越しの秘書官からの警告を聞いて、背を向けた。

 

 去っていく背中がいなくなってから、プレジレントは本社からリーンボックスを見下ろす。

 

『よろしかったのですか、社長? 彼に任せてしまって』

《ラステイションにわざわざ出向くこともない。そこまでの労力で得られるものもな。それにまだB2AMはシロトラの離反を知らない》

『それもそうですか』

 カタカタとキーボードを叩く音が通信機越しに聞こえてくる。

 

《組織の経営難を建て直すために、頭目自らこっちについてくれるならいいじゃないか。まぁジョッシュは何を言うかわからんけど、まぁいいか!》

『適当ですね、プレジレント』

《そうかい? ハッハッハ、振った賽の目がいくら出ようと知ったこっちゃないさ!》

『会社の経営を引き受ける立場の方が言っていい発言ではないと思いますが?』

《いつでもクールだねぇ、キャロリンは》

『恐れいります。それとキャロラインです、社長』

 

 

 

 ――シロトラはリーンボックスの海上を駆ける。背中のブースターと一体化させた複合形態にサーフボードのように乗りながら波しぶきをかき分けながらラステイションを目指していた。その道中でアーマードカンパニア海上開発企業、ギガフロートを見かける。それに合わせた護衛艦のギガベースも数隻。まるで海上決戦の様相で並ぶ様は壮観だった。

 胴体のブースターを吹かしながら海上で外壁の点検を行っているロボット達がいる。それはアームドソウルスから生え抜かれた機体であり、シロトラを一瞥するとすぐに作業に戻った。

 

 シロトラが海上横断をしながら眺めるプラネテューヌ。それは、確かな場所だった。記憶にある姿と瓜二つだ。――だが、彼の脳裏を駆け巡るノイズはこの数週間で日に日に増している。それは決して無視できないほどに。

 ラステイション領土である海岸へ到達し、シロトラは剣を分離させて背中にブースターを背負う。ドバルの救出、もとい身柄を引き渡してもらわなければならない。先を急ごうとする目の前で空間が揺れ動く。

 それは黒い霧。モヤのようなものだった。咄嗟に剣を構える。

 

《…………》

 それにシロトラは何か既視感のようなものを感じていた。“知っている”と記憶容量のどこかが叫んでいる。

 その中から現れたのは、黒い仮面の男性だった。黒ずくめの制服で、日本刀を片手に携えている。

 

《誰だ、貴様は》

「……なるほど“引っ張られた”か、そういうこともあるのか」

《答えろ》

 まるでシロトラのことなど意に介さず、その相手は自分の掌を見つめていた。

 

「こちらの話だ。それよりもお前、この次元のロボットじゃないな?」

《――――》

「どちらかと言えば、アイツに近い。……嗚呼、そうか。歴史そのものすら改変されているから覚えているはずもないか」

《質問に答えろ、誰だ貴様は》

「お前と同じ“此処にいてはいけない存在”だ」

《……デタラメを言うな。私は先を急いでいる》

 静かに怒号を飛ばすシロトラだが、その男性が持つ右手の上で揺らめく黒い霧にデータがパンクしそうな情報量が叩きだされている。

 

「生憎と俺もそうだ。さて、どうするかな――なぁ?」

 その黒い霧に向けて語りかける男性の声色から、笑っているのだろう。嘲笑っているのかもしれない。

 

「……そうか。なら、今しばらくは泳がせておくか。俺も少し、思いついたことがある」

《誰と話している……?》

「なに。プラネテューヌの女神だよ。それじゃあな、ブリキ野郎――」

 シロトラの目の前に現れた男性はすぐに黒い霧とともに消え去った。その場には名状しがたい不快感を残して。

 

《……何者だ? いや、確かあの男は……》

 セレモニーの日に現れたもう一人の男だったような気がする。しかし、すぐに思考を打ち切ってシロトラは駆け出した。

 

 

 

 

 ――ネプギアユニがセインと戦闘をしていた背後では、九龍アマルガムでエヌラスと大魔導師の死闘が繰り広げられている。その規模は天変地異レベルにまで登り詰めており、そして戦いも終局に向かいつつあった。

 地下帝国は荒れに荒れ果て、すでに半分近くが廃墟と荒野と化している。しかし奇跡的に被害を免れた区画がまた一つ、吹き飛んできたブラッドソウルの身体を受け止めて崩壊を始めていた。ビルを四棟ほど倒壊させて地面を転がり、ようやく止まったブラッドソウルは顔中血まみれになっている。血の入った左目で睨み上げる上空。

 神格者――神に値する者。守護神として国を治める者が立っていた。だがこの破壊の坩堝はほぼ彼の行った魔術によるものが大きい。純粋なシェアではなく、濁った信仰心。凍りつくほどの怨恨、怨念、畏怖、畏敬。異形にして偉大なる犯罪国家国王、その真の姿。

 大魔導師、ネクロソウルは今この場において完全な征服者として君臨していた。それはブラッドソウルの知る大魔導師であり、これまでも戦ってきた相手でもある。統計で言うなれば、正面から挑んでの勝率は五分。旧神であろうともだ。

 

「どうした、エルダーゴッド。少しは目が覚めたか」

 銀鍵守護器官による超速度の再生。それが徐々に鈍りつつあった。“再生が間に合わない”速度で叩き潰されていては過負荷で銀鍵守護器官よりも先に身体が壊れる。

 地上最強の魔術師として名を馳せる、稀代の国王。それがなんの戯れか犯罪国家を治めているのだから悪い冗談としか思えない。

 

「ああ。なんとかな、クソが。何なんだよ、アンタは毎度毎度トチ狂った術式編みやがって」

「言ったはずだ。俺は暇で仕方がない。だから、つい」

 深紅の自動式拳銃が放つ魔弾の爆炎に呑まれてもケロリとしている。その周囲には黄衣のボロ布から黒く変色した布が蠢いていた。

 

「こんな物まで作ってしまった。元はカルコサの地の黄衣の王が纏うボロ布だったんだがな、退屈しのぎに霊魂入れてたら“聖骸布”にまでなってしまった。やはり凡俗な魂でも百も集めれば多少はマシになるな」

 浮かび上がる魔術文字は恐らく霊魂を逃さない為の術式だろう。法衣のように肩に纏う姿には禍々しさを通り越した吐き気すら込み上げてくる。

 

「敗北を認めるか、ブラッドソウル」

「俺に勝利を諦めろと? ネクロソウル。墓場で死体とダンスでもしてろ」

「ならお前は、地獄を這いつくばれ」

 心底、愉快そうに笑うネクロソウルは退屈という言葉を忘れて戦闘に没頭した。

 それから決着が着いたのは、二日後のこと――ジリ貧のイタチごっこからブラッドソウルが盛り返し始め、地下帝国が完全に荒野となる手前でようやく引き分けに持ち込む。被害総額は何千億という末恐ろしい金額となったが、それでもまだ生易しい。

 

「建て直せるなら生ぬるい」

「まだ地盤残ってるしな」

「究極のバカなんですかあなた達!?」

 アサイラムのクイーンに説教されても何処吹く風。二人はどれだけ腐っても師弟関係だけは切っても切れない縁なのか、結局は似たもの同士だ。

 エヌラスも大魔導師との戦闘でようやく落ち着いたのか、あれから教会に戻ってきている。

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