超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
そりゃあどうするかと聞かれたら、エヌラスの今の性格上。
――武力行使。
教会で執務に精を出すイストワールを見つけ、エヌラスは声を掛けた。
「あら。お戻りになっていたんですね、エヌラスさん。実は今、大変なことになっていて」
「ネプギアとチーカマから聞いた」
「そのご様子ですと、相当頭に来てますね」
「当たり前だ。アイエフには中和剤飲ませてきた」
「それで、わたしに何か御用ですか?」
「ああ。俺はこれからB2AM潰してくる」
「えっ!?」
「仮にも連中はプラネテューヌの国境警備隊だ。その本部を襲撃、壊滅させるとあったらタダじゃ済まないだろ。特に、俺はここに出入りしているしな」
「……考え直してはいただけませんか?」
そこまで思いつめていたとはつゆ知らず、イストワールはなんとか引き止めようとするがエヌラスは深々と嘆息した。
「無理。もう限界。だからイストワール。ネプテューヌに灸を据えると思って、俺を指名手配する用意をしておいてくれ。しばらくプラネテューヌには来れないようにな」
「……本気なんですね」
「ハァドラインはそっちでも邪魔なんだろう? それに表立って動けないなら俺が丁度いい。汚れ役なら慣れてる」
「B2AMを襲撃した、その後は?」
「適当にほとぼり冷めるまでゲイムギョウ界でもふらつくさ」
特にラステイション方面。
「まかり間違っても、国際指名手配はするなよ」
「分かっています。国境警備隊とはいえ、今回の件は度が過ぎていますので早急に手を打たなければと思っていたところです。しかし」
「説教を聞くつもりはねぇよ。潰してくる」
「…………エヌラスさん」
憤るその背中を止めようにも、イストワールにはどうすることもできない。トライアド、その班長であるセインは守護女神の技すらもコピーしていた。ネプテューヌとネプギアでは勝ち目は薄く、かといってアーサーやユウコ、プルルートやピーシェでは不利だろう。それに、既に相手の要塞である2MADは移動しており、足取りが掴めていない。
イストワールは息を吐いた。
「……無理もありませんか」
常日頃から邪神狩りをしていた、凄惨な日々。そこからは思いもしないような平和な日常。それは、エヌラスには耐え難いものだったのだろう。そんな平和を脅かす犯罪組織は後を絶たず、かといって旧神である自らが動くわけにもいかず――守護女神ですらあの体たらくぶり。失望どころか幻滅しても無理はない。
しかし、自分からプラネテューヌに指名手配を要望を出すということは、相当な被害を出すつもりだ。
「はぁ。今から頭が痛くなりますね……」
――B2AM本部、移動要塞
《エッホ、エッホ!》
《おーいツキカゲー、こっちだ急げー!》
《おいバズ、お前はホバー型だからいいけど俺は走らないといけないんだからな! ちょっとはペース合わせてくれ!》
《そう思うならチャージングシステムでも使えばいいじゃなーい! お先だー》
スラスターで走るツキカゲ。だがそれを追い越すバズ、その二人をあっさりと追い抜いていくのはシャニだった。その背中には武装をマウントしている。
《シャニ、お前どこに行くんだー!》
《あのバカ野郎がモンスターの誘引剤を造ったとかほざいたから俺まで同行する羽目になったんだ! 分かったら早く荷物を運べ!》
《うわー、あいつ俺達に当たり散らしてるよ》
《みっともねーよなー》
《やかましいっ! 今回の作戦はセインが隊長というのがなおさらムカつくんだ!》
作戦参加人数は少数名。よそ見をしていたシャニに、ツキカゲが声を掛けた。
《おい、シャニ。レオルドにぶつかる!》
《は? おぉわぁぁぁああああ!?》
《ほぎゃあああああッ!? 何するんだよシャニ!?》
《ええいうるさい! 貴様こそ廊下をちんたら歩くな馬鹿者が!》
《廊下を走るなって張り紙されてるの知らないのか!》
《それくらい知ってるわ! この万年最下位ドベケツビリ太郎!》
何故か珍しく機嫌の悪いレオルドが突っかかっていく。それには流石にケモナールの運搬をしていたバズとツキカゲが止めた。
《どうどう》
《せいせい》
《ふんっ! まぁいい。俺の戦果報告でも期待して待ってるんだな!》
《どうしたんだよ、レオルド。珍しく不機嫌で》
《別に、なんでもねっすよ……》
レオルドはこの数日、ずっと考えていた。だがそれでも答えが出ない。
《……シロトラ教官は何のために俺達に居場所をくれたのか、ずっと考えてたんですよ》
《まぁ確かにな。あの人、ここ最近は様子がおかしいし》
《どこに行ってるのかも全然教えてくれないしな。でもそんなものだろ、組織の創設者なんて。組織の運用にかかる維持費とかもあるし》
《そうそう。予算の都合内で俺達は好きに働くだけだ、気にしないでいいんじゃないか?》
《……でも、なんだか……気になるっすよ》
そうこう話している間に、セインを含めたトライアドのメンバー。並びにシャニが2MADから出撃する。外部へ向けたカタパルトから五人が射出され、スラスターを吹かしながら着地してその勢いのまま遠ざかっていった。
《バカなのに難しいこと考えるからダメなんだ》
《そうそう。セインぐらい頭のネジ緩め――なくていいな、うん》
《もう少し気楽にいこーぜ。な?》
《う、うぅん……だってそれを言ったらシロトラ教官って俺達とは全然違うじゃねっすか。デザインも、性能も、全部。俺達の系譜にだって載ってないから》
《まー。いいんじゃね? そういう人もいるさ》
グラさんですら首を傾げている。どこの技術体系にもない機体だと。
《セインの言っていた代理戦争、覚えてます?》
《あー、アレか》
《……俺は、そんなの嫌っす。平和なままのプラネテューヌが一番いいです》
《そりゃあ俺達だって同じだ。今みたいに馬鹿やってアホやって》
《たまに真面目に働いて》
《プラネテューヌ万歳っ! って感じの毎日がいい。わかったらほら、お前もこれ持って雑用を手伝え》
ケモナールの試供品、その追加生産分をバズから渡されてレオルドがよろける。
《うわ、とと……》
《ほれ行くぞ》
バズとツキカゲの二人は仕事よりもこうして仲間達を交流して悪ふざけをしている姿が散見されていた。戦闘よりも、ゆるいプラネテューヌでダラダラと過ごすのが性に合っている。それにはレオルドも同意見だった。
司令室ではオペレーターのチヒロとヨルドが通信用インカムで他の部隊に指示を出しながら周囲に映し出されるモニターとにらめっこをしている。そこには当然、トライアドの姿もあった。
「ディル、調子はどう?」
《こちらディル。不備はない! まったく毎度ながらグラさんの腕には驚かされる》
《同じくシュラ。感度良好! 感謝の極みだ!》
「そう。なら、今回の作戦目標を再度表示するわね」
トライアドのメンバーを含めた少数精鋭での作戦行動。そこには現在の特務隊メンバーであるシャニと彼の率いる高機動型の強襲部門達が並んでいた。
特務隊隊長、シャニ。並びにホバー型のフォーミュラ。二脚のグラーフとアスラが続いている。合計八機による高速機動戦闘。
「今回の作戦内容は、ラステイションの国境越え。そこでセインの開発したモンスター誘引剤の使用による混乱の誘発よ」
《ぶっちゃけバイオテロだな! あっはっは、楽しみだなぁ!!》
「……そこで、重要なのはプラネテューヌは避けて通ること。現在ドバルがラステイションで拘束中であることは既にこちらでも調査済みよ」
《なにをしたんだ?》
「貴方達のせいで嫌疑でもかかったんじゃないですか? ケモナールの関係者として」
セインに対してのみ、やけに冷たいオペレーターのふたりだがセインは泣かない。だってロボットだもの。
「とにかく、今回の作戦は電撃戦よ。最悪の場合は守護女神ブラックハート並びにブラックシスターとの交戦も想定しておいて」
《その点に関しては貴様らに任せるぞ変態セイン》
《任せておいてくれ! ダメだったら連帯責任で腹を切ろうな、みんな!》
『全力で嫌だよ!!』
「……頭痛くなってきました」
「我慢してチヒロ……」
頭痛に襲われるオペレーターの苦悩は計り知れない。