超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「とにかく! 今回の作戦は仲間の命がかかってるんです! 真面目にしてください!」
《真面目って難しくね? どうすりゃ真面目なのん》
《本気モードで常にいろってことだろ》
《やだ! 小生疲れるのいやじゃ! 働きとうないでござる!》
《貴様らぁ!! 作戦行動中くらい静かに出来んのかぁ!!》
「……~~~~!」
「チヒロ、我慢して。泣いてもあいつら絶対にふざけるのやめないんだから……」
涙ぐみながら耐えるセイン達変態集団のオペレートに集中するチヒロは涙を拭う。唯一軌道修正を図るシャニだけが頼りだった。
《……毎度ながら疲れないか、あんな奴の相手》
《慣れたよ》
《そういうもんか》
それとなく尋ねたアスラにシュラが短く応える。あまり面識のないメンバーではあるが、両者の間を取り持つのがセインというのがなおさら頭の痛い話だった。
《そういうもんだ》
《そっか……君らも大変だな》
《そっちもか》
《毎度毎度、イライラしてる隊長についていく私達の身にもなれ》
《それを言われるとこっちもなんだが》
結論、両極端。ひたすらに頭のネジが緩くぶっとんだセインと、常にイライラしているシャニ。どちらの部下がいいかと聞かれたら――どっちもどっちだ。
「もう私、オペレーターやめてプラネテューヌで仕事探そうかな……」
「その時は私も誘いなさい、チヒロ。一人で逃げないで」
「そんなことは言われてもですよ、ヨルドさん――」
「待って、チヒロ!」
「へ?」
取り乱すチヒロは気付かなかったが、ヨルドだけは気づいていた。
セイン達がカタパルトから射出されて、現在はプラネテューヌを避けてルウィーとの国境を抜けている。引き返してくるには多少時間がかかるだろう。既に彼らは最大速度でラステイションに向かっていた。
「接近する反応があるわ」
「……確かに」
「でも、これって生体反応……?」
2MADの索敵範囲は決して広くない。それでも何か接近する反応があればすぐに対応出来るだけの戦力が常に待機している。
だから、つまりは全くの無防備で構えていた。“たかが人間一人の反応”ということに。
そして次の瞬間、膨大な魔力反応に要塞内の警報が一斉に鳴り響く。
「――総員、対ショック態勢っ!」
艦内放送で叩きつけるように叫ぶチヒロ。望遠レンズで拡大された敵性反応は、野太刀を担いであろうことか笑っていた。
犬歯を見せるように、それは笑っているというよりも憤怒の形相だ。牙を剥いている。その足場にしているのは赤いトライク。変形して浮遊能力を得たそれが彼の足場を支えていた。
そして、振るわれるのは閃刃。山すら穿つ閃光が大上段から振り下ろされる。それは愚直に、まっすぐに振り下ろされた。もとより移動要塞だ、回避性能などたかが知れている。だからこそ……その威力を真っ向から装甲で受け止める形となった。
衝撃で揺れる艦内。すぐに持ち直したチヒロが2MADの損害状況を確認する。
「正面装甲、大破。第三シャフトまで被害が及んでます!」
「右脚部の稼働率、半減!? 今ので!? サブジェネレーターに切り替えて!」
「姿勢制御、持ち直します!」
ギ、ギ、ギ――――!
2MADが軋んだ音を立てながらバランスを崩そうとしていた体勢から持ち直そうとしていた。生体反応を確認する。すぐに崖上に着地してこちらの様子を窺っていた。
……エヌラスは懐からドラッグシガーを取り出して、出力を全開にした右腕の魔術回路を抑える。野太刀を電気に分解して、それを魔術で炎と風の二属性に分けると二挺拳銃として具現化させた。それでも掌には炎が渦巻き、霜が降りる暴風を纏う。
「クトゥガ。イタカ……」
エヌラスはドラッグシガーを吐き捨てて、踏みにじりながら想像する。――魔術は創造だ。最も原初の基本を思い出す。
ゲイムギョウ界で、こうまで全力を出すのは初めてだ。
「神銃形態――」
それは、杖とも砲ともつかない形状をした螺旋状の物体。混ざり合い、融け合い、相反しながらその二つの属性は純粋な破壊力としてエヌラスの手の中に収まっている。いや、それは抑えつけられていた。
「
先の一撃。それで損傷を負って黒煙を上げ始める移動要塞の右脚部を狙う。
放たれる純粋な破壊の奔流は、エヌラスの銀鍵守護器官から精製される魔力は魔術回路を介して際限なく持っていく。当然ながら、魔術を使う側も体力を浪費する。
“超電磁”抜刀術・零式から間髪入れずに放つ大技、二発目。エヌラスの目論見通りにそれは右脚部を着弾点から蒸発させながら貫通した。
白煙が漂う。異様に熱を持つ右腕と、体内。
「……開戦の狼煙にゃ丁度いいだろう国境警備隊。テンカウントくれてやる、俺がカチコムのはそれからだ」
ハウンドスーツの裾が潮風を受けてはためく。今頃内部では大混乱だろう。
あそこにはレオルドがいる。ロゼもいる。それは、知っている。理解している。だが、だからこそ尚更、腸が煮える思いだった。
徐々に傾いていく移動要塞は海洋に沈み込んでいく巨大な体躯を持ち直していく。砲台が稼働してこちらに照準を定めているが、エヌラスは後ろ腰からドミネーションを引き抜いた。
《ユーザー認証、完了。セーフティを解除します》
コイツを使うのは初めてだが、大魔導師が手がけた逸品。万に一つも疑う余地はない。
《脅威判定更新。デコンポーザー・モード起動。対象を完全排除します》
“電導”を回しながら、音声案内に従ってドミネーションは変形する。外部装甲に覆われていた内部機構を解放した。抑えこまれていた怪物が牙を剥く。
それは、移動要塞から発射された砲弾を撃ち抜いた。螺旋状に纏わせた荷電粒子が砲弾と接触した瞬間に消滅させている。
予想以上の反動に右腕が跳ね上がった。骨身が軋む、それに成る程とエヌラスは笑う。
「ハッ――ハハハ! バカか大魔導師! こんなん公安局の正式採用なんざ、目じゃねぇ! つくっづくイカれてる!」
今度は左腕で右腕を押さえ込みながら二発目を放った。
銀鍵守護器官から生成している余計な熱量を、口から排熱する。それはまるで冬場に吐く白い息のように風で流されて消えた。
「十秒だ――覚悟は良いな。もっともテメェらの都合は聞いてねぇがなぁ!」
崖から飛び降りながらエヌラスは壁面を蹴って2MADへと突入する。砲弾の雨の中を片足で魔術障壁で防御しながら、突入地点に向けてドミネーションのデコンポーザー・モードを発射。対象の防御力を無視した破壊、分解作用はあっさりと侵入者へ出入り口を開放した。
案の定、内部は緊急警報が鳴り響き、けたたましいサイレンが赤く点灯している。
「邪魔するぜ、国境警備隊」
不法侵入上等、器物破損などお構いなし。デコンポーザー・モードを解除して後ろ腰に収納した。首を慣らしながら銀鍵守護器官からの余剰な熱を吐き出す。
《侵入者!? どこのバカだ!》
「ここのバカだ」
《んなっ!?》
重量級の機体が曲がり角から出てきた直後に顔面を強打されて廊下の壁に埋まった。
《貴様――あの時のか。まさか、あの日の仕返しだとでも》
「ちげぇよ。人様の迷惑考えない犯罪集団を潰しにきた!」
見るからに砲撃型。重火力型の機体はスラスターを吹かしてタックルしようとするが、すでにエヌラスの手には倭刀が握られていた。膝の関節部を狙った斬撃は動力パイプを引き切り、一瞬で崩れ落ちる。
前のめりに転んでくる機体の頭に手を押し当てて、エヌラスは二度目の拳を叩き込んだ。頑強なはずの頭部装甲が凹み、歪んでひしゃげている。
《なっ――お前――……なぜ》
「俺の友人にな、バッカみてぇにクッソつえぇ化物みてぇな機械の身体がいるんだよ。だからな……俺は、テメェら機械に負ける道理なんざ欠片もねぇんだ!」
紫電を纏わせた左手を叩き込んだ。全身の回路がショートして一体が沈黙する。
「俺の目的はな、お前らを潰すだけだ。死にたきゃ勝手に死んでろ。だが――」
幾重にも響くスラスター音が接近してきていた。エヌラスはその場を動かない。その中には当然、レオルドの姿もある。
《ゴウさん!?》
「全身の回路パンクさせただけだ」
《……なんで、ですか。どうして!?》
「国境警備隊とはいえやってることはハァドラインだ、お前ら。バカしかいねえのか」
《いやー、やってんのトライアドです》
「知らん」
《やべぇぞあの人、目がマジだ!》
「片っ端から潰してやるから、遠慮無くかかってきやがれブリキ野郎ども!!」
エヌラスの手には倭刀。そして、レイジング・ブルマキシカスタム。
獲物の群れに放たれた黒い猟犬が牙を剥く。