※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード119 料理もドッキリも仕込みと下準備は大事な手順

 曇り空の下で午前中のうちに守護女神としての職務を終えたノワールは、雨が降り出す頃には教会に戻ってきていた。ラステイション中で騒ぎになっている情報を集めて、いつでも動き出せるように手配しておく。それに加えて、迫る女神の転換期に向けての対策チームも設立予定だ。

 キーボードを叩く合間に、思い出すのはプラネテューヌのケモミミ事件こと一連のケモナール騒動。まだ解決策が見つからないままだと聞いていたノワールは、一応、ネプテューヌに連絡を入れた。

 

『あ、ノワールじゃん。どうしたの?』

「例のケモミミ事件についての進展を尋ねようと思ってたのよ。どうかしら、そっちの方は。解決の目処が立ったの?」

『うん! 今朝ラステイションから送られてきた中和剤のお陰でなんとかなりそーだよ。ありがとねノワール。まったくぅ、なんだかんだ言いながら心配してくれたなんてやっぱりノワールってばツンデレさんめぇ、このこのぉ』

「はぁ? 何言ってるのよあなた。そんなの送った覚え無いわよ」

『えっ? でもいーすんが、今朝届いた小包には『差出人ラステイション』って書かれてたよ? ノワールが裏で進めてたんじゃないの?』

「そんなのしてる暇なんてわたしには無いわよ。それに、贈り物にしたってラステイションだなんて漠然と書くわけないでしょうが。ちょっとは考えなさいよ」

『なんかツッコミ厳しくなーい?』

「身に覚えのないこと言われたらこうもなるわよ」

 それにしたって、どこの誰が勝手にラステイションの名前を使って送ったのだろうか。考えるまでもなく思い当たる節は一緒だったのか、スカイポ通話の画面は押し黙っていた。

 

『……ねぇ、ノワール。エヌラス、そっちで見かけてない?』

「なんで? そっちにいるんじゃないの?」

『ちょっと前に、出て行っちゃったんだ。それでまだ帰ってきてないし、プラネテューヌじゃエヌラス指名手配されてるから難しいかなぁ』

「指名手配!? なんでそんなことになってるのよ、というか何したのよ!」

 B2AMを単独で壊滅させた。名目上は国境警備隊だ、その本部を文字通り消滅させたとあっては凶悪犯罪者に名が載るのも当然のことだ。それにこれはエヌラスからの頼みでもある。

 

「ちょっとネプテューヌ! あなたがいつまでもそんな風にしてるからでしょ!?」

『うぅ~、うるさいうるさいうるさいうるちゃーい! そんなのわたしが一番わかってるよ! 今回ばかりは本当に反省してるんだってば! わたしのことよりエヌラス! ノワール、ほんとに知らないの?』

「知るわけないでしょ! わたしだって女神の仕事で手一杯なのよ」

 むしろそんなことになっているのを今知ったばかりだ。

 

「仮にエヌラスから送られたとしても、それがどうしてラステイションからなのよ」

『う……そ、それはぁ……ホラ! もしかしたらそっちにいるかもしれないじゃん!』

「もしそうならなんでわたしに会いに来ないのか、スッゴク不満なんだけど! ゲイムギョウ界来てからずっとプラネテューヌにいたんでしょ!? そりゃ、ネプテューヌもネプギアもプルルートもプラネテューヌの女神だし? 邪神が出てきたり、色々あったかもしれないけれども音沙汰なくこっちに姿見せないってどういう了見なのかしら!? しかも連絡あったと思ったらルウィーでブランから連絡先教えてもらったとか、いくらなんでもわたしの扱いが不憫だと思わないのネプテューヌ!」

『えー、と。ドンマイ、ノワール!』

「んもー! これじゃ一体何のために頑張ってるかわかんないじゃない!」

 憤るノワールにネプテューヌも相手をするのが面倒になってきたのか、相槌を打つのもだんだん適当になってきている。すると、スカイポ通話が会議通話に切り替わった。

 

『あら、聞こえますか? お二人がログインしているのを見たものですから』

『ベール。やっほー! そっちはどう?』

『ええ、リーンボックスではいつも通り、平和なものですわ。ハァドラインも今のところはおとなしくしておりますし』

「それが怖いのよね。嵐の前のなんとやらって言うでしょ」

『気にしすぎですわ。そろそろブランも来る頃合いですし、そうしたらわたくしの方から伝えたい事があるのですがよろしくて?』

「いいわよ」

『わたしもいいよ』

 ベールが新たに加わった会議通話から、とりとめのない雑談を交わすこと数分。ブランが会議通話に入ってきた。

 

『ごめんなさい、ちょっと遅れたわ……』

『ヤッホー、ブラン。ルウィーの方はどんな感じ?』

『こっちもいつも通りよ。あなたに心配されるような事件は特に起きてないわよ……少なくとも、地図が書き換わるようなことはね』

『四人とも揃いましたね。では、わたくしからよろしいでしょうか』

「ええ。わたし達に話したいことってなに?」

『皆さんはご存知でしょうけれど、確認のため。R18アイランドを覚えてらっしゃいます?』

『もちろん!』

「ええ、当然でしょ」

『わたしも覚えているわ。……入国審査の屈辱は今でも忘れねぇ……!』

『ま、まぁブランはともかくとして全員覚えているのならよろしいのですが』

 R18アイランド――大人の為のリゾート地。ドレスコードは水着か、全裸というちょっとアレな場所。そこはかつてピーシェがイエローハートとして新興国家エディンの守護女神に覚醒した因縁深い土地でもあった。

 

『過去の因縁はともかく、現在も大人による大人の為のアダルティーな観光名所として雑誌にも載るほどなんですわよ?』

「それで、R18アイランドがどうかしたの?」

『実はリーンボックス企業連盟の観光会社が最近そこに新しくリゾートホテルをグランドオープンする、という情報を掴みましたの』

『企業連盟って確か、あなたのところのハァドラインじゃなかったかしら……?』

『と、いうよりは……情報を流されたというか、送られてきたと言いますか……』

「どういうことよ」

 それにはベールも困惑している様子を見せている。まさか警戒している相手からこうも無防備に情報を渡されるとは思ってもみなかったからだ。

 

『教会宛てに送られた電子メールの一文には、そう書かれていたんですから仕方ないじゃありませんか。それで、新しくオープンするにしたがって是非とも守護女神様のご意見ご感想を聞きたいと……ご丁寧にチケットまで用意されていたんですのよ』

 個人名義と団体名義で。好きな方を使ってくれ、という意図らしい。団体名義は十名までの利用者が対象のようだ。

 

『そこで。今はハァドラインや、邪神などを忘れてたまには気分転換にリフレッシュしに行きません? というお誘いがわたくしからのお話ですわ』

『おぉ~いいねぇ! 気分転換にパーッと遊びに行く行くー! ちょうどこっちも色々自粛ムードとかでわたしもげんなりしてたんだよねぇ』

『そうね。最近物騒な話題ばかりだったから、たまにはいいんじゃないのかしら? ……今度こそあの入国審査を抜けてみせるわ……』

「ベール。それ、日程とか決まってるの?」

『今月中であれば、無期限利用可能と太っ腹なチケットですわ。こればかりは流石に守護女神と言えど届かない権限ですわね』

 国政を担う女神と違い、なにかと行動範囲に融通が利く民間の企業としての権力を見せつけられている気がするものの断る理由が見つからなかった。ただでさえ邪神騒ぎだのケモミミ事件だのとゲイムギョウ界は慌ただしい。そこで羽根を伸ばしてゆっくりとしないか?ということ。

 確かに魅力的な誘いだ。だが――。

 

「悪いけど、わたしはまだちょっと予定を空けるわけにはいかないの」

『あら。そうですの? 残念ですわ』

「ラステイションでも最近、妙なことが起きてるから守護女神として放っておくわけにはいかないのよ。異常気象に、謎の伝染病が流行り始めてるし」

 それは、プラネテューヌ側の国境から始まっていた。特定地域のみの被害で治まっているものの、感染が拡大するようなことだけは避けたい。

 

「ラステイション防衛隊極東支部からの連絡でね。最近その周辺だけ“赤い雨”が降るようになったの。それと同じくして、今まで見たことのない病気まで流行り出したら放置しておくわけにはいかないの。ただでさえ物資の搬送でさえままならないのに……」

『……思ったよりも、ラステイションは大変みたいね』

『ええ。ノワール、リーンボックスからも援助物資を送るように手配してみますわ』

「ありがと、ベール。でも心配しないで。わたしの国だもの、すぐ解決してみせるわ」

『それにしても、おかしいと思わないかしら……?』

『ブラン? なにが?』

『最近のゲイムギョウ界よ。邪神とかそんなにホイホイ出てくるような環境だったと思ってるの、ネプテューヌ』

『うん、割と。裏ボスとかそんな感じで』

 そんなわけがあるか――そう言いたげな他の三人のため息が重なった。

 

『そんなはずがないでしょう。バカなのあなた……』

『バカなのは自覚あるけど、それとこれと何か関係あるの?』

『エヌラスよ。彼が来てから、何かが狂ってきている気がするのよ。ただでさえ、感謝祭セレモニーで邪神と戦ってた人だもの。超次元にいるだけで危ないんじゃないかしら』

「――――」

『……それは、確かにそうですわね。今はプラネテューヌにいるのでしょう? ……ネプテューヌ?』

『…………いないよ』

『……どういうこと? そんな危険人物から目を離して、放し飼いにしてたら何が起きるかわからないのよ。どう責任取るつもり』

『いないのはしょーがないじゃん! わたしだって止めようと思ったよ!? でもダメだったからわたしなりに考えてるの! ブランに言われなくたってどうにかするよ!』

『なに怒ってるのよあなた……言い方は悪かったかもしれないけれど……』

「とにかく。エヌラスを見かけたら、保護してあげて。なんか、今ちょっとおかしいみたいだから」

『……邪神と独りで戦ってる時点で頭のネジおかしいと思うけれど。わかったわ』

『こちらでも見かけたら連絡しますわ。それと、R18アイランドの旅行プランについてはわたくしの方で進めさせていただきますわね』

「そっちはよろしくね、ベール。それじゃ切るわよ」

『頑張ってくださいませ』

 会議通話が終了する。

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