超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――プラネテューヌで迎える朝。そこでは、いつものように賑やかな団欒が……。
「うぉらぁぁぁぁい!!! たっだいまぁぁぁ!!! ピィちゃんただいまー!!」
「あー、ゆっこだー! うきゃーい!!」
「ひゃっほぉぉぉぉい!! おはよう、みんなっ! ただいまプラネテューヌ!」
一回りも二回りも加速して地獄車よろしく、太陽より眩しくやかましいユウコがユノスダスで溜まりに溜まった仕事を終わらせて遊びに帰ってきた。その手にはべまもん饅頭。
「キモッ」
アイエフの第一声がそれだった。もう既にパッケージの時点で顔にモザイクが入っている。開けてみれば、キモかわいらしくデフォルメされたべまモンが――。
「ってこれ肉まんじゃない!?」
「ん? 当然でしょ。だってべまモンって肉が絶品なんだし」
「てっきりこう、大福的なものかと」
「ゆず饅頭あるよー?」
それにイストワールが満面の笑みを浮かべていた。どうやらお気に入りらしい。その姿を見てアイエフが早速お茶の用意をする。
「おかえりなさい、ユウコさん。でも、エヌラスさんがいないのによくユノスダスからプラネテューヌに戻ってこれましたね」
「あー、それなんだけど……」
「なにか、あったんですか?」
「まぁ、ぶっちゃけると――大魔導師がやってくれました、一晩で」
「ぅ……ものすごく嫌な予感……」
事の経緯は、こうだ。
ユノスダスに戻ったユウコが書類仕事を片付けていると、何やら見慣れたメンツが昼間っから国政サボって人の国でくつろいでいた。そこに見慣れないけど見覚えのある女の子がいたのはこの際後回しとして、何故か珍獣――もとい歩く未確認生物がユノスダスにやってきた、とのこと。それが誰かと聞かれれば、大魔導師以外に居ない。
なんの用? そう尋ねると、いつもの調子で淡々と。
次元旅行の感想が聞きたい。とのことだったのでユウコは雑感として「楽しかったしまた行きたい」と答えた。
「ふむ……そうか。エヌラスはどうした」
「にゅい? エヌラス?」
超次元から壊次元に戻るのはユウコがソラの携帯に電話を掛けて、ポイントを指定して次元間転送をしてもらったからだ。とはいえそのせいでインタースカイの電力がえらいことになっている。
それにソラが頭を抱えていると、大魔導師が笑った。
「ああ、その問題なら俺がどうにかしよう。電力くらいどうにか出来る、うちの教祖ならな」
「僕はあのチクタクマンが嫌いなの知ってて言ってるのかい、大魔導師」
「お前の好き嫌いは知らん。勝手にやらせてもらうぞ」
それから一晩で。
「出来たぞ、次元間テレポーター」
「もうやだよこの国王!!」
たった一晩で自分が築き上げてきた努力の次元プログラムを越されたソラが泣きながらインタースカイに帰ったという。
「……うわぁ、ソラさん可哀想……」
「あー、いいのいいの。あのメガネなんて毎度のことだしさ」
「でも大丈夫なんですか? その、大魔導師が作った次元間テレポーターって」
「万が一にでも失敗なんてことは無いと思うけど、なんていってもあの大魔導師だからねぇ。どうにも言えないかな……」
「では、大魔導師という方が作られた次元間テレポーターによって自由に行き来できるようになったということでしょうか?」
「そう考えてもらって大丈夫かなー。あ、でも所有権に関しては私が買い占めたから大丈夫! 自由に使わせてたまるかっての」
それにネプギアがあまり良い顔をしなかった。大魔導師、そして次元間テレポーター……どうにも嫌な記憶を彷彿とさせられる。ユウコは既にピーシェに挨拶代わりの頬ずりをして、肩車をしていた。
「だから利用者は私が認めた人にのみ、限られるから早々自由には使わせないよ。ところでネプちゃんとプルちゃんは?」
「えっとー、まだ寝てます……」
「にゃんだとぅ? よーし、起こしてやろう。いくぞーピィちゃん」
「れっつごー!」
ネプテューヌとプルルートが眠っている私室にユウコがピーシェを肩車しながら突撃していく。その姿を止める暇もなく、あっという間に消えた。
「イストワール様、例のロボット達の処遇はどうしますか?」
「そうですね。そちらも含めて、アイエフさんの考えを聞かせていただけますか」
「と言うと?」
「例の行方不明となった首謀者、シロトラ。彼の目論んでいるという、国家解体戦争――女神信仰の代理戦争についても」
「……あくまでも、わたしの仮説に過ぎませんけれど。それでもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ」
「まず女神信仰の代理戦争というのは、その名前どおりなら。友好条約を結んだ守護女神達に代わって、自分達が戦争を行うということですよね」
そう。そのはずだ。武力によるシェアの争奪。それをまだ彼らは望んでいるということになるのだが――そもそも自分達が信仰している守護女神が望まないならば、そんなのは不利益でしかないはず。何故、そんなものを望むのか。願うのか。そうまでして他の女神を排他しようと考えているのならば、間違いなく彼らは狂信者だ。
「なら、当然。彼らが狙うのは他国の女神ということになります。もしそうなら、ルウィーを除いた三カ国が戦争するということになりますよね? そうなると、ハァドラインによる代理戦争からはルウィーが取り除かれるはず……」
今は壊滅したが、B2AMはプラネテューヌのために。合併企業のアームドソウルスはラステイションとリーンボックスのために。そうなると最早、二カ国を相手にプラネテューヌはどう立ち回るべきかという話になる。何故ルウィーだけが蚊帳の外なのか。アイエフはそれだけが疑問だった。
「結論から言うと、恐らく彼らの矛先は……ルウィーか、プラネテューヌ。その国家としての機能不全。解体戦争の狙いはソレだと思います」
「ありがとうございます。わたしも、それなのではないかと考えていました」
だからこそ、彼らをどうするべきか。このまま解放してしまえばB2AMとしての組織は無くなり、いつもの平和な暮らしに戻るはず――。だが、そうなると企業連盟の矛先がどこに向かうのかが分からなくなる。ゲイムギョウ界で全面戦争となるのだけは回避しなければならない。
「……実は、B2AMはまだ“企業”として存在していることになっているんです」
「正式な解散手続きを済ませていないからですか?」
「はい。そして、その権利を持っているのはシロトラです。彼が存命している間、プラネテューヌにはB2AMという組織が存在している、ということになります」
国境警備隊は形骸化、彼らが戦争を仕掛けてくる理由には充分過ぎる。
「そして、資金援助までもがされている。その金額は膨大なものです、組織を再建するには十分でしょうね」
「その出処は?」
「リーンボックス企業連盟。アームドソウルスです」
敵に塩を送ってでも彼らは戦争がしたい。自分達の信仰が正しいと証明するために。
「それで、彼らをどうするべきか……まだ決めあぐねています」
「……イストワール様」
「この資金を用いて、彼らの組織を再興するべきかどうか」
アイエフ自身、あまり良い思い出はない。良い顔もしなかった。彼らの引き起こした事件、その最大の被害者であるのはアイエフだからだ。しかし、それはそれだ。決して許すわけではないが、決っして。決っっして。断じて!! ケモナールの被害を忘れたわけではない。
「わたしは彼ら自身の意思を尊重すべきかと」
「そうですか。では」
「はい。話を聞いてみましょう。決めるのはそれからでも遅くないと思います」
正直な話、アイエフは顔を合わせるのも話をするのも嫌だったが割り切るしかない。今はそんなことを言っていられるような状況でもないのだから。