超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
教会に留置されているトライアド。そして特務隊のメンバー。
《……暇だな》
《ああ暇だな》
《暇を持て余す》
《我々の遊び!》
《そう、それは!!》
『オワタ式しりとり!』
とても暇そうには思えないトライアドの面々に、沈み込む特務隊のシャニ。イライラが治まらないどころか思考回路がショートしそうなほどやかましい騒がしさには辟易していた。
「な、なんですかそのオワタ式しりとりって?」
彼らとは少し離れた場所に隔離(保護)されているオペレーターのチヒロが眉を寄せる。それに説明するのは無粋と言わんばかりにディルとシュラがオワタ式しりとりを開始した。
《ならば俺からだ! しりとり、だから「り」から行くぞ!》
《おう!》
《リボン!》
「終わったーー!?」
開幕一秒で終了した。
《次はお前だ、シュラ!》
「え、続けるんですかそれ!?」
《ボンボン!》
「また終わった!?」
だが彼らは気にすることなく続行する。
《ならば、ボーン!》
《なにくそ、ボディコン!》
《コーン!》
《ディル、セコいぞ! コロン!》
《ふはははは、なんとでも言うがいいさ! ロン(マージャン用語)!》
《ローン! これでどうだ!》
《ロン(龍)》
《この腐れ外道ぉぉぉぉっ!!》
さっきから聞いていれば、しりとりをやる気があるのだろうか。口を開けば終わるしりとり……、ああ。だからオワタ式なのかと、チヒロは納得した瞬間にツッコミを入れる気がなくなる。
セインがいなくなって、だというのに彼らは全く沈んだ様子はなかった。
《お前ら、いっつも元気だよな……》
《テンション高くてついていけねー……》
特務隊のダウナー系テンション、フォーミュラとグラーフが呟く。
《貴様ら毎度毎度騒ぎ立てて、少しは黙るということが出来んのか》
《シャニ、お前も混ざるか?》
《誰がやるか、そんな馬鹿な遊び》
《プークスクス》
《プークス》
《……イラッ》
『プックス!』
《ああいいだろう! 貴様らのそのバカに少しばかり付き合ってやる!》
――ちょれぇ。そんなことを思いながらディルとシュラはシャニを交えてオワタ式しりとりを始めた。
それを片隅から見守るレオルドは、一言も喋らない。あれからずっと、事情聴取以外にレオルドは一言も発さなかった。
そんな妙な盛り上がりを見せる場所へ、口をへの字に曲げたアイエフがやってくる。
「……ちょっとは反省してるかと思ったけど、それどころか元気が有り余ってるようで安心したような、呆れたような……」
《アイエフさん……》
「ちょうどよかったわ。レオルド、話があるの。いいかしら。今後のあなた達の扱いに関する話よ。よく聞いて」
アイエフは、そこで自分の立てた仮説と、B2AMへ送られている莫大な金額についてレオルド達に説明を始めた。
その後で、自分達がどうするか決めて欲しい。最後にそう締めくくって。
《…………》
「わたしやイストワール様はアンタ達の意思を尊重して。その上で処遇を決定するわ」
《それが何故、そこの万年最下位ドベ太郎なんだ》
「少なくともこの中で一番話が通じて、まともだからよ。文句ある」
キッパリと言い張るアイエフにシャニは横を見る。
《やったな、俺達と同列だ》
《これでお前も変態狂人集団の仲間入りだ、シャニ》
サムズアップをしながら両肩に手を置くディルとシュラ。今度背中から撃ってやろうか、そんなことをシャニは考えた。
《……俺、プラネテューヌを守りたいっす》
「そう」
《俺は……シロトラ教官を止めたい。あの人は俺に、戦場で会うまで命を預けると言ってました。だから、自分勝手かもしれないっすけど……俺達を国境警備隊として復帰させてください。お願いします、アイエフさん》
《おーい、レオルドー。お前俺達の意見なにひとつ聞いてないのに決定かよぅ……》
それに特務隊のグラーフが呟くも、反対する気はさらさら無いようだ。
《ほい、多数決ー。レオルドの意見に賛成は挙手。のいーっす》
それに、シャニを除いた全員が即座に手を挙げる。
《断る! 俺が何故、レオルドの意見に賛成など》
《ふんっ!》
《ごぼぉあ!? で、ディル……貴様……》
《空気を読め。ほーらシャニも賛成だぞー》
重量級の拳をまともに食らってシャニがダウンした。その手を取って、挙手する。
《ディルさん》
《俺も、シュラも、ジーンも。特務班トライアドは賛同だ。セインは俺達の隊長だった。頭おかしくてキレッキレの変態ぶりには流石に病院を勧めたかったが、あんな奴でも最高の仲間だ。違うか、レオルド》
《……そうっすね》
俺達は――いや。俺は、這い上がる。勝ち残る。何が何でも。何があっても。自分が知る、最強を止めたい。シロトラの凶行を、暴走を止めなければプラネテューヌは守れない。
《ま、組織が壊滅したんじゃ特務隊とか名乗ってもらんないしなぁ……》
《……そうなるな》
フォーミュラ、ジーンが頷く。壊滅した組織の特務を名乗っても仕方ない。
《言い出しっぺの法則ってやつだ。お前が俺達を率いるんだぞ? 覚悟はできてるか》
《……至らない点はこっちでサポートすればいい話だ》
《ま、そうなるな。よろしく頼むぞ、レオルド》
全員が満場一致の賛成。約一名、反対意見があったような気がするものの黙っているので賛成ということにしておこう。
「意見はまとまったみたいね。そっちのオペレーターの人達はどうしますか?」
「そうですね……まあ、彼らの監視役には誰か必要ですし」
「わたし達も賛成よ」
「メカニックも当然、必要になるなら手を貸すぜ。どうせ行く宛ないしな」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべるグラさんに、アイエフは笑みを返した。
「そういうことなら、イストワール様と相談してくるわ。その後で、処遇が決定したらまた来るから、それまで大人しくしてなさいよ」
《はい》
《よーし、じゃあみんなでオワタ式しりとり第二回戦やるか!》
『よっしゃー乗った!!』
「おとなしくしてろって言ったでしょうがぁぁぁぁぁっ!!」
人の話を聞いてくれ。アイエフはそう思いながら怒鳴りつける。
「とぉりゃああああ!! ピィちゃん、ダイナマイッ! ボンバァー!」
「どかーん!!」
「ねっぷぅぅぅぅぅぅっ!?」
「ぷりゃああー!?」
ネプテューヌとプルルートの二人が気持ちよさそうに二度寝しているところへ、ユウコがピーシェを振り上げて叩き落とす。幼児虐待? いえ違います。加速したピーシェのフライング・ボディプレスによって寝ていた二人が跳ね起きていた。眠そうに目蓋をこするプルルートが頬を膨らませる。
「もぉ~! ゆうちゃん朝から元気過ぎだよぉ~……」
「うぅー、ユウコが帰ってきてたなんて思わなかったなぁ……」
「私も今朝帰ってきたばっかだからね。ほらほら、お布団干しちゃうからどいたどいた」
「ねぷてぬ、おはよう!」
「おはよー、ピーシェ」
ぐりぐりと頭を撫でるとピーシェは嬉しそうに笑った。
「ん? なーんか、ネプちゃん元気なさげ? 大丈夫? 気分悪いの?」
「ううん、そうじゃなくて。エヌラスのこと考えてたんだ」
ユウコに話すべきかどうか。プルルートを見やると、すでにうつらうつらと頭を揺らし始めている。さすがゆるふわ天然系。マイペース街道を地で行く。
「あー……そう言えば喧嘩別れしたんだっけ」
「喧嘩別れって、そんなんじゃ……ない、かもしんないけど」
時間が解決してくれる問題でもない。かといって放っておくわけにもいかない。
「例の中和剤、ラステイションから送られてきたんだけど。あれってやっぱりエヌラスからだよね。ノワールは自分じゃないって言ってたし」
「そう考えるのが自然だろうね。なんだかんだ言ってやっぱネプちゃんのこと好きなんだねーアイツ」
「ねぇユウコ。エヌラスのこと、なんとか出来ないかな?」
「そうだねぇ……」
腕を組み、眉を寄せて悩む素振りを見せるユウコ。
「どうにか出来ないことはないと思うけど、そういうのって私達じゃどうにもならないと思うよ?」
「どういうこと?」
「男の悩みなんて女じゃどうしようもない時があるの。男ってバカだから」
「そうなのぉ~?」
「うん。だからそういうのがどうにか出来そうな人を探してくるしかないんだよね」
「でもぉ、エヌラスの悩みどうにかできそうな人って~?」
相手は旧神。どうにかできそうな人……――――思い当たる節があった。それはどうやらユウコも、ネプテューヌもプルルートも同じ人物を思い描いたらしい。
その人物を果たして本当にゲイムギョウ界に呼んでしまっていいのだろうか? 目に浮かぶ大惨事にピーシェ以外が青い顔をしていた。
「ま、まぁなんとかなるし……」
「ユウコ、声震えてるよ?」
「だってなんとか出来そうな奴ってそれぐらいしか思い浮かばないんだよっ! 時間の都合とかその他諸々でさ!」
「う、うん分かるよ!?」
「ええい全部あの野郎が悪い! はい決定事項! 異論は認めない!」
「そ、そんなー!?」
そして、その日のうちに恐らく最大最強の暇人がプラネテューヌへと招かれることとなった。
紳士服をしっかりと着こなしたその成人男性は、丁寧に頭を下げる。その細かい髪も、しぐさ一つとっても紳士的ではあるのだが、どうにも拭い切れない不安感。心を掴んで止まぬ感情が湧き上がる。
「私は地下帝国九龍アマルガム国王、大魔導師。お見知り置きを、別次元の女神方々」
その隣で胡散臭そうに睨むユウコが額に手を当てている。
「おい、大魔導師。なんでお前そんなバッチリ決めてきてんの?」
「旅行先に迷惑かけるわけにはいかんだろうに。何言ってんだお前」
「うわー、まともなこと言って違和感しかねぇのお前ぐらいだよマジで。いいか、大魔導師! 絶対に余計なことすんなよ!? 変なことすんなよ! 間違っても生態系いじったりとか環境汚染したりするなよ!? 災害レベルで問題起こすなよ!?」
「………………ふむ」
顎に手をやって考えこむ大魔導師は、遠くを見ていた。
「考えもしなかったな。ただ普通に街を歩いたり、食べたり飲んだりぐらいしか俺は考えていなかったのだが」
「おみゃーはよぉ、ホント面倒クセェやろうだなぁ!!」
それに噛みつくユウコは、怖いものしらずというか命知らずというべきかなんというか。非常に頼もしい。
「まぁ、そういうわけだ。俺のことは大魔導師とでも気軽に呼んでくれ」
「は、はぁ……どうも。プラネテューヌの教祖、イストワールです」
「わたしはアイエフ」
「ぴぃはピーシェだよ!」
それぞれが自己紹介を済ませていく中で、大魔導師はアイエフを見て眉を寄せる。
「な、なによ……?」
「……手を見せてもらってもいいだろうか」
「手……? なに、手相でも見てくれるの?」
「死相ぐらいならいくらでも占ってやれるが」
「遠慮するわよ!?」
とはいえ、アイエフはおずおずと手を差し出した。掌をじっと見つめていた大魔導師は軽く魔力を通す。すると、それに呼応してアイエフの両手に赤と白の紋章が浮かび上がる。
「なるほど。アイツが気にかけていたのはお前か」
「えっ?」
「人の倉庫をひっくり返したと思ったら、魔導書と模造品の拳銃を二挺も持ち出した。それだけで一体いくらの金が飛ぶと思う」
大魔導師が両手に出す拳銃は、アイエフがエヌラスから譲り受けたものと全く同じ形をしている。しかし大魔導師の持つ銃から放たれている魔力は、より強力なものだ。むしろ魔力そのものと言っていい。
「俺が書いた魔導書だけで家一軒建つ。加えて、俺の拳銃のレプリカ品。他に誰が作れる?」
「…………」
「まぁ金額はどうでもいい。大事に使ってくれ」
アイエフは自分の手を見つめる。そんな高価な物が今、自分の身体の中に眠っていると考えると気恥ずかしくなってきた。
「どうせ倉庫で埃かぶっていたしな」
「おいこら、余計なこと言ってんな。大体お前の書いた書物、ユノスダスじゃ超高級品だからな? 市場に出回ることあるかないかだし」
「お前は暇潰しで書いたノートに値段付けて売るのか? 大体、俺は金などどうでもいい」
「ははは、ぶっ殺したいくらい憎たらしいコイツ」
ユウコと大魔導師は、どうにもあまり仲が良くないようだ。