超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――準備がある、と言われてノワールが部屋に入ってから数分。エヌラスは私室の前で突っ立っている。壁に頭を押しつけて、後ろ腰のホルダーに収納されているドミネーションで自分の頭をふっ飛ばしたいとか考えながら待っていた。
『……エヌラス、入ってきていいわよ』
「ああ……そういうことなら。邪魔するぞ」
私室に入り、一応鍵も閉めておく。
「なんの準備だったん……だ――――」
エヌラスは間違いなく、言葉を失っていた。もしかすると時が止まったかもしれない。そうでなければ心臓が止まった可能性も微粒子レベルで存在する。目の前の現実を受け止めきれなくなった時、人は思考だけが別世界へと飛んで行く時があるが今がまさにその時だった。
「ど、どうかしら……?」
そこには、名状しがたいかわいい生き物がいた。ピンと立った三角系のケモミミ、細長く揺れるふさふさの尻尾。猫耳ノワールが尻尾付きで立っている。猫の手で更に猫っぽさを演出しながら、着ている服もそれに合わせたものになっていた。黒の下着に、赤のベビードール。ノワールらしい情熱的な色合いで決めている。
エヌラスは足元がぐらりと揺れた気がして、踏み止まった。危うく卒倒しそうになる自分の気を確かめて、自分の頬を抓って殴って舌もちょっと噛み切って、頬を叩いて活を入れて深呼吸。目の前の現実を直視しようと限りなく思考をクリアにする。
「…………チラッ」
それとなく横目でノワールを見てみた。
「……にゃ、にゃーん」
ゴロゴロにゃおーん。
「ごふっ!」
吐血した。銀鍵守護器官による鎮静作用ですら無力だった。しかもその制御を誤って血流が乱れてエヌラスはそれこそ脳梗塞か心筋梗塞一歩手前まで陥った。急速に再生される体内の作用によって冗談抜きで死ぬ直前だったが、なんとか復帰する。
ベッドの上で寝転がるノワールは顔を真赤にしていた。仰向けになってお腹を見せている。猫の服従のポーズにエヌラスは、もうそれだけで理性が殺人級のダメージを負っている。
「ど、どう……? せっかくだからケモミミに合わせた衣装に着替えてみたんだけど」
「しぬ」
間違いなく死ぬ。耐えられるやつがいたらそいつはもう、鉄だ。鋼だ。人間じゃねぇ。断言できる。そいつは間違いなく人間以外のなんかだ。
ツインテールに猫耳が揺れている。尻尾もゆらゆらと振っていた。
「なんというか、その……言葉に出来ない」
ベッドに腰掛けて、エヌラスはノワールの頭に手を置いて撫でる。柔らかい髪の質感と、指先が振れると、くすぐったそうに猫耳が揺れた。
「んぅ」
「……」
「にゃおーん……」
猫の鳴きマネをしながら擦り寄ってくるノワールの身体を抱きしめて、深く息を整える。
「もう、なにか言うことないの。あなたの為にここまでしてるのに」
「メチャクチャかわいい」
「あ、当たり前じゃない」
「メチャクチャにかわいい」
「当然でしょ……」
「かわいい」
「わ、分かったから!」
「ノワール、かわいい。すげぇかわいい。今まで見た中で一番かわいく見える」
「~~~~!」
「いつもかわいいと思ってたが、なんかもう、他に表現のしようがないくらいボキャブラリーが死滅するレベルでかわいい。女神ってマジでいるんだな」
「わたし女神なんだけど!?」
もうそんなことがどうでも良くなるレベルには可愛い。今ならばライオンの気持ちがよく分かる。じゃれついて相手をうっかり殺してしまうのはかわいさの表現であるらしいが、エヌラスはそんな気分だった。
ノワールを押し倒して、キスをする。
「んにゃぅ……! ……強引ね。今日は」
「我慢しろって方が無理」
むしろ普段からかなり抑えている方だ。だから、今夜だけは――。
「ノワール。今日だけでいい……お前の優しさにおもいっきり甘えていいか」
「エヌラスの口からそんな言葉が聞けるなんて思ってもみなかったわ……」
それだけ、今の状態が追い込まれている裏返しなのだろう。ノワールはそれに、少しだけ考えてから小さく吐息をもらす。
「……ん。今夜は、あなたの好きにして……?」
押し倒したノワールのベビードールに手をかけて、ふと下着に目を凝らした。
「下着まで猫にしなくても」
「ちょ、ちょっと前に流行ったネコランジェリーって言うのがあったから着てみたのよ……せっかく買ったんだし」
「……」
言いがたい幸福感のようなものが胸を満たしていく。抱きしめている身体から伝わる温もりをもっと味わおうと、強く力を込める。
「エ、エヌラス……ちょっと。苦しいわ……」
「バカみたいにこれしか言えないけど、許してくれ。かわいい、かわいすぎる」
「もう、わかったからぁ! そんなに言わないでよ……」
エヌラスは顔を離して、ノワールの唇に触れる。ほんのりと赤く色づいた唇からはハリのある弾力と艶やかさがあった。顎に指を添えて、持ち上げながらキスをしていく。
小さく声を漏らしながらも受け入れて、緊張して強張る身体をほぐすようにエヌラスは何度も唇を重ねた。身体に触れていき、下着に手をかける。
「ん……ぁ、脱がしちゃうの……?」
「……せっかく俺の為に着てくれたんだもんな」
下着はズラすだけに留めて、ノワールの胸に吸いつく。舌先で乳首を転がしながら、もう片方を空いた手で擦るとくすぐったそうに身体をよがらせていた。
「胸、好きなの……?」
「胸が好きというか、お前が好きだ」
「――――」
「なんだよその顔……」
「だ、だって……えっ、ごめんなさい。ちょっと待って……」
「俺がこういうこと言うのはやっぱり変か?」
「そうじゃないの」
そんな風に甘えてきて、こんな風に優しく抱きしめられて。幸せすぎて怖いくらいだ。こんなに幸福であっていいのだろうか? 好きな人と一時、身体を重ねていられる。互いを想い合っているというのが、こんなにも胸を満たすものだとは知らなかった。感極まって涙が溢れてくる。
「ノワール……?」
「ごめ、ちょっと待ってもらえないかしら? 嬉しすぎて、もう……」
「そういうお前はどうなんだ、ノワール」
「バカなこと聞かないで。好きに決まってるじゃない。そうじゃなければこんな風に頑張ったりしないわよ」
「そ、そうだよな。悪い……」
なんでそこで謝るのだろう。
エヌラスは、自己認識力が低い。それもそうだ。“誰も助けてくれなかった”から。誰も教えてくれなかったから。だから絶望的なまでに自分のことに無頓着であり続けた。だが、そうじゃない。教えてあげればよかった。支えてやればよかった。だけど不幸なことに、エヌラスに物事を教えたのは、犯罪国家九龍アマルガム国王その人。そして育て上げられた環境でさえも劣悪を極める地下帝国。悪徳の坩堝の中で育ったエヌラスは、ソレしか知らなかった。それより以前は絶望の魔人として務めを果たしてきている。
そんな人がどうして真っ当な人生を歩めるのだろう? 知らないのだから、無理な話だ。
優しさに甘える。それだけでもエヌラスには難しいことだ。彼に優しさを与えた人は、その師によって奪われたのだから。
「エヌラス――」
手を握り、ノワールは目尻に涙を溜めながら微笑む。困った表情で見つめるエヌラスが、子供のように思える。この人は、子供だ。ネプテューヌのような無邪気で天真爛漫なかわいいものではない。路地裏に打ち捨てられた野良犬同然の、小さな子ども。だからこんな風に、優しさに戸惑う。身体の芯から熱くなってくる――それがケモナール第一号の作用であることは言うまでもないことだが、ノワールはそれを受け入れていた。
今はそれ以上に、胸が熱い。
「お願い、もう挿れて……? わたしも我慢できないの。あなたを感じたい」
「――ノワール……!」
いきり立つモノをノワールの濡れた秘部に当てて、腰を落とす。膣へと挿入される先端から伝わる熱さに背中がくすぐられる。
「ん、ぅキテる……! エヌラスのぉ!」
肉襞が絡まり、それだけでも射精しそうなほどの快楽に襲われるが、それを堪えながらノワールを犯していく。根本まで挿入を果たすと、身体を震わせて恍惚とした笑みを浮かべていた。ネコミミがピンと立って震える。尻尾も毛先が広がって嘘偽りのない快楽を示していた。
「ひぅ、あぁぁ! 入ってる、エヌラスの……わたしの奥まで、キテる……!」
「ノワールの膣中……すげぇ熱い……気持ちいいか?」
「うん……ん! ずっとつながってたいくらい!」
腰を浮かして中で擦れる熱さに身体を震わせて、すぐに達してしまったノワールは力の入らない笑みを浮かべてベッドに身体を投げ出す。
「あっ、イッたぁ……イッたから、あぁ! 待、ってぇ!」
「悪いが、無理。このまま、出すぞノワール……!」
「んぅ、ぁ――!! イク、だめ、それだめぇ! イッちゃ――ん、ふぁああああ!!」
それでも腰を掴んで動くのをやめないエヌラスが、容赦なく中で射精を果たしてノワールはすぐに二度目の絶頂を迎えた。
「ふぅ……はぁ……あ、もう……」
「ノワール……尻、こっちに向けてくれるか」
「えっ? こ、こう?」
言われるまま、ノワールはベッドに四つん這いになってエヌラスにお尻を突き出す。足を広げて、尻尾を揺らしてみる。
「やっぱり、ネコっぽくここは後ろからしてみたくてな」
「……あなたも十二分にケダモノじゃない」
「それを言うなら、ノワールもだろ。こんな格好で」
「そ、それは――あなたを喜ばせようと」
「わかってる。だから、それがすげぇ嬉しいんだ」
腰を掴み、程よく肉のついた尻を撫でながら尻尾の根元を擦りながらまだ萎えることのないモノをあてがい、再び挿入を果たした。二度目の行為にノワールがシーツを掴む。
「んぅ、にゃあぁぁ!」
「どうしたんだ、ネコみたいに鳴いて」
「ふぇ……? だって、ネコミミ、あるし……エヌラス、こうしたかったんじゃないの?」
「……うん、まぁ、そうなんだけど。そこまでサービスされると鼻血モノだ」