超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
エピソード151 羽根を伸ばしてハメを外してエンジョイバカンス
青い空。白い雲。照りつける太陽の日差しを遮るものは少なく、R18アイランドは相変わらずの快晴。
四女神が待ち合わせ場所であるエントランスに集まっていた。
「やっほー、ベールー!」
「来ましたわね、ネプテューヌ。それに……」
いつもの快活さで手を振るネプテューヌに、笑みを浮かべるベールの視線の先。ノワールと腕を組んだエヌラスがいた。歩きにくそうにしているのは銀鍵守護器官で回復中だからだ。それだけあの戦いは死に瀕する程の重傷だったということ。
それを見て早速ネプテューヌとプルルートが頬を膨らませている。
「もー、ズルいぞーノワール! そんな風にイチャコララブラブ石破天驚な恋人ムードで来るなんて!」
「そうだよぉ~! エヌラスはノワールちゃんのじゃないんだからぁ~……!」
「いや、俺にも人権とか拒否権とかあるとか思ってくれると助かるんだけど……」
「しょーがないじゃない! わたしだってこんな風にしたくてしてるわけじゃないんだからね!? えっ、あっ、別に嫌ってわけじゃないのよ! ホントよ、信じてエヌラス!」
「あーうんはいはい……傷に響くからおねがいします、静かにしてくれ……」
そんな相変わらずと言っていいのかわからない状況にベールは頬に手を当てていた。
「でも、よろしいんですの? ノワール。確かに誘ったのはわたくしですし、出来ることならと言いましたが」
「心配しなくても大丈夫よ、ベール。実はケイさんが戻ってきたの。相変わらずビジネスで忙しいみたいだけど、たまにはってことで了承してくれたわ。貴方の方から送ってもらった援助物資も例の地域にちゃんと届けたし」
「でも、配送会社の方はハァドラインの手が掛かっていたのではなくて?」
「そうなんだけどね。ほら、例の脱走したっていうB2AMのロボットがいたじゃない」
「ドバルさんのことですね」
「うん。ソイツが出頭してきたのよ。それで――「自分にやらせてもらえないか」って言い出してきたの。まぁラステイションの配送会社は機能しそうになかったから、個人契約という形で雇用しているわ。可能なら情報収集も兼ねてね」
「さっすがノワール! その仕事っぷりに痺れる憧れる! でも真似しようとは思わない!」
「あなたはもうちょっと仕事しなさいよぉ!」
いつもの賑やかな空間から一歩、身を引いて遠巻きに眺めるエヌラスがネプギアとユニに向けられる。
「あー……その、ネプギア。そっちはいいのか?」
「はい。むしろいーすんさんが国政を担ってるので正直……」
「……何かすまんかった」
聞くべきではなかったかもしれない。申し訳無さで胸が一杯だった。それと罪悪感。
そして。目を輝かせている王冠かぶった少女とお供の妖精さんを見やる。
「ふおおぉ……ふおぉ……! ほ、本当なのか!? 本当なのだな! ドレスコードは水着オア全裸! マッパ! いたいけな少女達が裸体を衆目の眼前に晒すのが全面的に認められているという楽園!」
「そこのバカーサーの監視役だから、わたし」
「うん、わかってる。容赦なく引っ叩いて止めてくれチータラ」
「チーカマってあと何回言えばいいの?」
ミリオンアーサーとチーカマの二人も何処か浮かれた雰囲気だ。完全に地に足がついていない状態のアーサーの手綱は慣れ親しんだサポート妖精に任せよう。
「あ、あのー……」
「ん?」
「えっと、わたし達も良いんですか?」
いつもの溌剌さは何処へ行ったのか、しおらしいデンゲキコとファミ通の二人が大きなカバンを肩から下げていた。それにエヌラスは頬を掻く。
「まぁ、二人も情報操作……というか……事態の収拾には貢献してくれたからな。そのお礼って事で誘ったわけだから、気にしなくていいんじゃないか?」
「ハァ……ですが、そういうことでしたら遠慮無く!」
「うん。たまには記者としてじゃなくて、羽根を伸ばしてみようかな」
そんな二人を見やってから――エヌラスは、もう一人。何故か眉を吊り上げて口をへの字に曲げているブランにも声を掛けた。
「……なんで怒ってるんだ?」
「怒ってるように見えるかしら」
「いや、そういう風に見えたから声を掛けたわけなんだが……」
「怒ってないわよ。別に、これから待ち受けているであろう入島審査に引っかからないかどうか気にしてるとかそういうわけでもないから。貴方が気にするようなことでもないわ」
「…………そっか、ガンバレ」
「今の間はなによ?」
「なんでも」
なんと言ってやればいいのだろう。とりあえず励ましの声援でも送っておく。
「これで全員かしら?」
「みたいだな。にしてもアイエフもコンパも仕事はいいのか?」
「ええ、心配ご無用。わたしもコンパも、ちゃんと休暇の申請は出してあるわ」
「なら気兼ねなく遊べそうだな」
「ネプ子は忘れてるでしょうけど、一応これからわたし達が泊まるホテルはリーンボックスのハァドライン、一大軍事企業のアーマードカンパニアが作った物なのよ。何があるか分からない上に何が起こるかもわからないのよ。気を緩めるのも程々にしておきましょ」
「はいですぅ」
(コンパは多分、遊ぶことしか考えてないんだろうな……)
しかし。ここまでの大所帯ともなるとかえって不安になるのが、それぞれの国家が女神不在という事態だ。それもアイエフに尋ねてみるが、杞憂に終わる。
「ああ、そっちも大丈夫よ。各国の経済に関しては、イストワール様を通してユウコが張り切ってたから」
「ユウコが?」
「ええ。まー、何というか……」
「母は強し、ですぅ」
「うへへへへへほほほ! ひゃっほぉぉい! ピィちゃんとふたりきりでお仕事だぁっ!」
「ゆっこー! あそぼー!」
「いいよー! メッチャ頑張ってお仕事終わらせちゃうよぉ! あぁもうちょれぇ、マジちょれぇ帳簿! アハハハハ!!」
「……えっと、張り切り過ぎないようにお願いしますね」
「――まぁ、ユウコなら大丈夫だろ」
商業国家国王を舐めてはならない。自分の脚で直接現地までひとっ飛びして査察に入っているような吸血鬼だ。各国の経済状況の把握と帳簿のにらめっこは朝飯前である。そうでもなければ犯罪国家九龍アマルガムと公の場で交易など出来ないのだから。
治安維持に関しても、善良なゲイムギョウ界の市民様方が頑張ってくれると信じよう。
「信頼してるのね」
「んー……まぁな。アイツが居ないと、色々とダメなんだよ。向こうは。そんなことはさておいて、だ。そろそろバカンスを満喫したい」
「そうね。堅苦しい話はここまで。ネプ子ー!」
「ねぷっ? なぁにー、あいちゃん!」
「そろそろ着替えましょ。遊んでいられる時間も限られるんだから!」
男性用と女性用の更衣室に分かれて、エヌラスは男性用の更衣室に入る。当然ながら。
水着に着替え、年齢の疑われる女神――まぁ主にネプテューヌ等――は女神化した上でエントランスに集合していた。
「エヌラス、遅いわね」
「どうしたんだろぉ~?」
「そうね、確かに……」
「女性を待たせるなんてデリカシーに欠けますわ」
「今日は大丈夫今日は大丈夫今日は大丈夫アタシはやれるアタシはやれる大丈夫……」
「……ブツブツと唱えているブランさんもそれはそれで大丈夫なのかなって心配なんですけどー……」
敢えて誰も触れなかったというのに。
しかし、ようやく水着に着替えたメインディ――主役が出てきた。
「…………なんだよ」
水着は黒のハーフパンツタイプ。その左足の裾にトライバル柄がプリントされている。白と黒で彩られた流れる炎の軌跡。そして、惜しげも無く晒される肉体! ――を、期待していた女神を大いに裏切る結果となった。
そう、上着を羽織っている。防水仕様のパーカーにはパープルハート達が深く息を吐いた。
「残念よ」
「ガッカリだよぉ……」
「なんで着てるのかしら……」
「ドレスコードは水着か全裸ですけれども」
「え、えと。似合ってますよ、エヌラスさん!」
「ありがとうネプギア。俺の味方は常識だけだ」
ただでさえ身体が不安定な状態なのに、更に魔術回路の修復までしなければならない。だというのに潮風に身体を晒せとは拷問の一種かと。着ているパーカーはそれの補助として急拵えではあるものの魔術的加護を施術した衣服。何も無いよりはマシだ。
理由としては、もう一つ。ネプテューヌ達は見慣れているかどうかはともかくとして、理解がある。しかし、これから自分が行くのは公共の場。それもバカンス気分でいる人々だ。そういった方々にはお目汚しもいいところ。気にする必要がないといえばそうかもしれないが、エヌラスも目立つのは避けたかった。
いや、既に現状から目を背けたい状況であるのは否めないが。どんなハーレム天国だというツッコミはこの際、不粋と一蹴させてもらう。
「俺だって一応周囲に配慮してんだから、文句言うな」
「……ということは」
「ええ、つまりは周囲の目を気にする必要のない場所で」
「脱がせってことね、一糸まとわぬ裸に!」
「お前らの頭って本当に幸せだよな……」
エヌラスはちょっぴり泣きたくなった。