超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
何はともあれ、まずは入島審査を受けなければ入ることすらままならない。気を取り直して年齢のチェックを済ませていく女神達。しかし、ホワイトハートとプルルートは何故か通ろうとしなかった。コンパとアイエフはセーフだったようだが、それに何故かホワイトハートが不満そうにしている。
「おい、なんでアイエフまで大丈夫なんだよ!?」
「えっ!? そんな言われましても!?」
言われるままにミリオンアーサーが通ってみるが、問題はなかった。それに胸を撫で下ろす。
「中々に緊張するものだな……チーカマ?」
「あー、うん……わたしは大丈夫なのかな……」
モニターに表示される年齢チェックの「はい」の項目をタッチする。疑惑の視線を向けられるもギリギリオーケーということで通過。続けてネプギアとユニがパネルを操作すると難なく通過した。
「ふぅ……女神化してなければこんなもんよね」
「そうだよね。ユニちゃん、女神候補生の中でも大人っぽい方だし」
「ぐぬぬ……っ!」
ホワイトハートが躊躇するその一方で、さらにデンゲキコとファミ通が年齢チェックを通過する。
「ほら、早く行けって」
「分かってる! 今年こそ大丈夫、大丈夫だ……!」
意気込んで進むホワイトハートにプルルートが続く。
『年齢は十八歳以上ですか?』
「……」
タッチパネルの「はい」を操作する。しかし――。
『本当に十八歳以上ですか?』
「うぅ~……疑われてるよぉ……」
「チクショー! なんでだよ、おかしいだろ! あん時もそうだったじゃねぇか!!」
「……エヌラス。そこで待ってても進みそうにないから貴方も早くこっちに来なさいよ」
その様子を呆れながらブラックハートが見ていた。パープルハート達も苦笑している。
「むぅ~! エヌラス、あたしぃ女神化してもい~い?」
業を煮やしたのか、プルルートが頬を膨らませてエヌラスに聞くと、全員が青い顔をしていた。しかしそれにエヌラスは億劫そうにゴーサインを出す。
「ああ、いいぞ」
『えっ!?』
「やったぁ~!」
言われるままにプルルートはあっさりと女神化してアイリスハートが降臨した。女神化に伴って水着もスリングショットと艶めかしい色合いの物へと変化している。そのメカニズムは女神ゆえ致し方なし。あっさりとそれで切り抜けてみせるが、パープルハート達の表情が引きつっていた。
「ぷ、ぷるるん……」
「あら、なぁにぃねぷちゃん? もしかして、あたしにイジメられるんじゃないかと期待してるのかしらぁ?」
「そ、そういうわけじゃ」
「うふふ、だぁいじょうぶよぉ~? そういうのは後でゆぅっくりとエヌラス共々してあげるから」
「悪寒が……! 助けてノワール!」
「そこでわたしに振るのやめなさいよぉ!?」
「あらぁ、ノワールちゃんもご一緒したいのぉ? いいわよぉ、賑やかな方があたしも興奮するし」
「うひぃ~~っ!?」
一体何をしているのかとエヌラスは呆れながらも、ゴーサインを出した張本人は頭を掻きながら入島審査を受ける。
『貴方は十八歳以上ですか?』
「あ”?」
それに思わず片眉を吊り上げながら反射的に聞き返してしまった。
『……どうぞ、お通りください』
『まさかの顔パス!?』
むしろ審査員がエヌラスの威圧に負けたとも言える。まだホワイトハートがその審査に手間取っており、遂には堪忍袋の尾が切れたのか戦斧を担いだところでエヌラスが手を取って入ろうとするが、警告のブザーが鳴った。
『この先、十八歳未満のお客様のご来島はご遠慮させていただいておりま――』
「うるせぇ」
左手を審査の機械に当てて“電導”を回して紫電を奔らせる。次の瞬間には誤作動によって一時的に沈黙したシステムを無視してエヌラスは我が物顔で切り抜けた。
「さ、流石犯罪国家の元・国王……」
「犯罪王って呼ばれただけはあって鮮やかな手並みね」
「そこ、褒める所じゃありませんわよ?」
グリーンハートのツッコミもむなしく、本来であれば咎めるべき立場であるのだが今回だけは無礼講として黙認した。沈黙したシステムもすぐに警備員がチェックに入ると、誤報であることとして片付けられたので一件落着。首を傾げながら戻っていく姿に一同が安堵していた。
「ヒヤヒヤさせないでくれ、エヌラス」
「そりゃ悪かった」
両手もテーピングされており、エヌラスは右手をポケットに入れる。
「あ、あの。エヌラスさん」
「ん?」
「えっと、大丈夫……なんですか? その、手」
「……右手は使い物にならないな。ただでさえ今まで魔術回路で無理やり動かしてたのを、師匠にぶっ壊されたせいで指先の感覚も無くなっちまってるしな」
特に手のひらに刻印していた炎を表わす魔術刻印が壊されたのがでかい。手首から先は繋がっているのかも危うかった。
「それってものすごく大事なことなんじゃ」
「その治療と静養も兼ねて、遊びに来たんだろうが。応急処置で動かせるくらいにまでは快復させる」
「せっかくのバカンスなのに、それでいいんですの?」
「いいのよ、ベール。こうでもしないとエヌラスってば自分の身体無視して戦いにでも行くんだから」
「ぬぐ……」
「今回だって、水着がないーとか。怪我に障るー、とか。留守の間守ってるー、とか。何かと理由つけて逃げようとしてたのよ? だからわたしが水着を買って、怪我の手当もして、ケイにラステイションの事を任せて無理矢理連れてきたの」
ドクターストップがあったにも拘らず、というのはブラックハートの為に黙っておくエヌラスだった。
「その、ケイって人のこと俺はよく知らないんだが……」
「神宮寺ケイ。ラステイションの教祖ですわ。まぁ、普段からご多忙な方というのはノワールから聞いておりますけれど」
「いーすんほどじゃないわよね」
「それ、あなたが原因なの分かってて言ってるのかしら」
「折角のバカンスなんだから細かいことは言いっこなしよ。さぁ、遊ぶわよ!」
「ホント、遊ぶこととなると人の話を聞かないんだから」
何はともあれ、全員無事に入島審査を切り抜けることが出来たのだ。後は時間の許す限り遊び倒すだけである。浮足立つ一行が急かす足に、ブラックハートはエヌラスを肘で小突いた。
「ちょっと」
「……」
「いいの?」
「……よくない」
「なら、早いところ言った方がいいわよ。足踏みしてると言いにくくなるから」
「そうだな」
頷きはするものの、声を掛けにくそうにしているエヌラスに業を煮やしてブラックハートはパープルハートに声を掛ける。
「――ネプテューヌ。エヌラスが話があるそうよ」
「あ、おい。ノワール」
「見ててじれったいのよ! ほら早いところ言いなさい」
それきり顔を背けて、ブラックハートはグリーンハート達と先に行ってしまった。残されたエヌラスはパープルハートと向き合う。
「なにかしら、エヌラス」
「えっ、あー……その……」
水着が似合っているだとか、そういう他愛の無い話がしたいわけでもない。らしくもない会話の逃げ口を探しているのが面倒くさくて、結局、自分なりに不器用ではあるが口にすることにした。
「ネプテューヌ」
「?」
「その、悪かった……色々酷い事した、よな……」
「……気にしてないわよ」
「それでも、悪い。謝る」
「急にどうしたのよ」
「……師匠に――大魔導師に言われてな。俺に世界は救えないって。そりゃそうだ。俺は終わらせるぐらいしか出来ない。あの時の塔争だってお前たちの力があったから起きた奇跡だ。それをまるで自分の手柄のように履き違えてた」
それに、気付かされた。気づくまで、こんなにも時間が掛かってしまったけれど。
「だから――」
言葉を続けようとするエヌラスの唇に、パープルハートの指が添えられて言葉を遮る。
「エヌラス。わたし達が此処に気た理由を忘れてないかしら? 女神達の慰安旅行なのよ、バカンスよ?」
「むぐ……」
「な・の・に、そんなつまらない話持ちだされても困るの。悪いって思っているなら――」
パープルハートはエヌラスの手を引いてみんなの後を追いかける。
「思いっきり遊び倒してもらわないと」
「わ、ちょ――ネプテューヌ」
「さぁ、遊ぶわよ!」
「怪我人を走らせんじゃねぇぇぇ……!!」
「あ、ごめんなさい」