超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
個人種目となるビーチフラッグ。通常、二人で行うべき競技なのだが、なんとこの種目――ブロック毎の参加となる。参加人数が人数だけに当然とも言えた。その人数に応じて規模も拡大され、結果としてこのビーチフラッグ。原型を留めない謎の競技と化している。
「R18アイランドのどこかに隠されたビーチフラッグを探し出す種目って、これもうどういう競技だったかしら……」
「確かに旗を取る競技ではあるけれども、どういうことなの」
ブランは不満そうに呟いていたが参加する以上、先程のトライアスロンでの雪辱を晴らそうと気合を入れ直した。
「そういえば、ホテルに行ったベールとミリアサちゃんが戻ってこないわね」
「エヌラスも一緒に行ったけれど。まさか抜け駆け?」
「まさか。ベールに限ってそれはないわよ。だってエヌラスとのフラグまだ何も立っていないもの」
「さ、さすがお姉ちゃん。ここぞとばかりにメタい……」
「伊達にシリーズの主人公してないもの。どやぁ」
旗は全部で八本。そのどれか一つを持ってゴール地点に戻ってくれば晴れて次のステージに進出となる。
スタート地点の砂浜で参加者で全員がうつ伏せになっていた。
「……中々にシュールよね。この光景」
「傍から見たらみんなで日焼けしてるようにしか見えないんじゃない?」
ユニの言葉に、チーカマが率直な意見を述べる。
『さぁー、開催となります。R18アイランドイベント大会! 今回の目玉は初参加となる女神様チーム! 果たして無事に見つけられることが出来るのでしょうか! ルールは簡単、この島のどこかに隠されたビーチフラッグを見つけてゴール地点に戻ってくるだけ! もちろん障害物も進路妨害も有り! 法に引っかからないレベルでの最高ジャマーも大歓迎! ただしイベント妨害は勘弁です! では、開催となります! よーい、スタートッ!』
空砲によって一斉に参加者達が跳ね起きて走り出す。目指すはネクストステージへの切符のみだ。パープルハート達も我先にと駆け出す。
「何がなんでも、次のステージに立つのはこのわたしよ!」
「お姉ちゃんが珍しくやる気出してる。わたしも頑張らなくちゃ」
プラネテューヌ組はオーソドックスにまずは島の外周を見て回ることにした。
「お姉ちゃん、わたし達はどうする?」
「そうね。悠長に話してる暇はないわ。森の中へ行くわよ、ユニ。どこに置かれているか指定されていない以上、面積から考えてこっちの方が多い気がする」
ネプギアに対抗心を燃やしながらユニはブラックハートに続いて森の中へ入っていく。
「さて、どうしようか」
「当然ながらわたしはノワールさんの後についていきます! 相部屋もそれはそれで魅力的ではありますが、わたしとしてはR18アイランド特有のムフフなイベントの方が楽しみなんです」
「欲望が開放されてるなぁ。それなら……んー、わたしは海の方に行こうかなぁ」
デンゲキコはブラックハートの後を追い、ファミ通は海岸方面へ。
「先にホテルに行ったベールが気になるわね……」
「わたしも。アーサーが何か悪さしてるんじゃないかちょっと心配になってきた」
「じゃあ、わたし達はホテル方面の道を走りながら探しましょう」
「そうですね」
ブランとチーカマの二人はベール達の様子を見るついでに、ビーチフラッグを探しに走り始めた。
「あいちゃんはどうするですか?」
「そうね。人数のバランス的にネプ子達に加勢するのも気が引けるし、わたし達は別に行動した方が良さそうね」
「じゃあ、あいちゃんと頑張るですぅ!」
「そうね。せっかくだし、ネプ子達に負けないように頑張って探すわよ」
アイエフとコンパもそれぞれと別な方面へと足を運ぶ。
――とはいえ、参加人数だけに次のステージに進めるのは八名。ネプテューヌ達でもギリギリ足りない人数だ。そこから更に優勝者が選ばれる事となる為、激戦は必至。序盤とはいえ気が抜けない。油断をしていると足元を掬われることになるだろう。
そんなヒワイキキビーチから一斉に走り出す参加者達をホテルの屋上から眺めていたのは、中を見て回っていたベールとアーサー。そして、5pb.の三人。
「あらあら、ネプテューヌ達は張り切りますわね」
「あそこまで頑張る姿を見るのは久しぶりだな」
「そうなのですか?」
「ああ。エヌラスと一緒にいた時は何かと張り切っていたぞ。それが裏目に出てしまったようだが……まぁ、それは前の話だ。今なら心配ないだろう」
「むしろ心配なのはエヌラスの容態ですわね。困りましたわ」
大人のためのリゾート地、と言えば聞こえはいいがR18アイランドは絶海の孤島。当然ながら重病人などを治療する為の施設も設備もあるはずがなく。エヌラスは自前の再生能力だけでどうにか乗り切ってもらう他にない。それにも限界はある。そうなれば、折角の休暇も楽しめなくなってしまう。
「あら? ブランと……」
「あれは、チーカマだな。こちらに向かってきているようだが」
「どうしたんでしょうね?」
「とりあえずフロントに戻ってみよう」
フロントに戻った三人は、ブランとチーカマが周囲を見渡している姿に首を傾げた。
「どうしたんですの? まだ競技の途中ではなくて?」
「ええ、そうよ。一応ベール達の様子見も兼ねて来たの」
「別に何も変なことなんてしてませんわよ。ねぇ、ミリアサさん」
「うむ。ただ先立ってホテルを見て回っていただけだ」
「そう。ならいいんだけれど……ところで、エヌラスはどうしたの?」
「実は傷口が開いてな。ひとまずわたしの回復魔法で応急処置は施しておいたのだが、何分勝手が違う身体の仕組みに手間取ったのだ」
「じゃあ今は安静にしてる、ってことでいいの? アーサー」
アーサーが頷き、それにチーカマは困ったように水着のフリルを弄る。
「アーサーの回復魔法でもダメかぁ……」
「やはりちゃんとした病院に連れて行くべきだと思うが」
「ですが、魔法で治せない身体を一般的な病院で治せるとも思えませんわね……」
「そうなると、やっぱり専門家が必要になるんじゃない?」
記憶に新しい人物の顔を思い浮かべて、ブランは苦い顔をした。大魔導師――。
「……呼びたくはないわ」
「かといって、療養の為にあちらの世界に帰らせるというのも難問ですわね」
ゲイムギョウ界で起きている問題はまだ山積みだ。アダルトゲイムギョウ界に至っては、邪神災害が起きているだけに危険性が高い。結局、エヌラスの身体を治すにはゲイムギョウ界が最適解となる。人材マネジメントに融通の利く最大の戦力であろうユウコに協力を仰ぐのが手っ取り早いだろう。
「ベール達の様子見もあるけれど、実はビーチフラッグ争奪戦。この島のどこかに隠されてるらしいのよね」
「それ、本来の競技からかけ離れていると思うのですけれど……いえ、言うだけ野暮なのはわかってますわ」
「とりあえずユウコに連絡すればいいの?」
「そうなるな。連絡先は教えてもらっているからそちらで掛けてもらえると助かる」
「とは言われましても……わたくし、携帯持ってきていませんわよ?」
「わたしも」
「実はわたしもなんだ」
ベール、ブラン、アーサーとチーカマが顔を見合わせる中、おずおずと手を上げたのは今まで静観していた5pb.だった。
「え、えっと……ボク、携帯持ってきますけど。スタッフとの連絡用で」
「まぁ、本当ですの? それでしたら、お願いしてもよろしいでしょうか」
「はい。じゃあ、番号の方いいですか?」
アーサーに言われた通りの番号にかけて、5pb.は携帯を手渡す。コール音が鳴ること三回、すぐにユウコが出た。
《はいもしもしー、どちら様?》
「わたしだ、ミリオンアーサーだ。今5pb.ちゃんの携帯を借りて電話をしてるのだ」
《ああ、そうなんだ。5pb.ちゃんってアレだよね。ゲイムギョウ界のアイドルでしょ? さっきコンビニ寄った時に週刊誌買ってきたら名前が載ってたよ。それで、どうしたの?》
「実はだな……」
ユウコに事情を話すと、何故か深い溜息が返ってくる。
《あー、うん。まぁそうだよね。実はちょっと前に先回りされたんだ》
「先回り? どういうことだ?」
《大魔導師に。心強い人材をそちらに二名ほど送ったから、夕方頃には到着するんじゃない? 予定通りに船がそっちに出てれば。その二人が空を飛んだりしなければ》
「……不安を煽るような言葉を並べないでくれ、ユウコ。一体どのような人物が飛んで来るというのだ」