超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ベールのマスターキーでネプテューヌの部屋の扉を開けてエヌラス達が入ると、そこではベッドの上で熟睡しているプラネテューヌの女神が二人ほど居た。しっかりと手を繋いで向き合うように寝息を立てている。それにアイエフが呆れていた。
「一応、慰安旅行なんだけど。こういうところはしっかりしてもらわないとね。ほーら、起きなさいネプテューヌ」
「起きろー、プルルート」
アイエフとエヌラスが起こそうとするが、一向に起きる気配がない。ネプギアとベールも身体を揺らして起こそうと試みる。しかし、二人は寝言を呟きながら寝返りを打つばかりだ。仕方なくエヌラスがシーツを掴んで呼吸を整える。
「起きろってんだろうがとぉりゃああー!!」
「ねぴゃー!?」
「ぷるー!?」
「まぁ。大胆かつ綺麗なテーブルクロス引きですわね」
「テーブルクロスというか、シーツ引き?」
空中で回転した二人が再びベッドに沈んだ。
「ねぷぅ」
「ぷるー……」
「よし、調子は良いみたいだな」
「身体の調子を確かめるのにお姉ちゃん達を吹き飛ばさないでください!」
「なんというかコレが一番感覚掴みやすいんだよ」
「それっぽい理由つけてネプ子達吹き飛ばさなくても」
「――あ、そういえば初めて会った朝もお姉ちゃん吹き飛ばしてたような気が」
「最初から今までどういう起こし方してるのよ!?」
こういう起こし方である。何はともあれ、無事に起きたので良しとする。寝ぼけ眼を擦るプルルートは頭を揺らして今にも二度寝しそうな勢いだ。
「ねむぅ~い~……」
「うぅ~、せっかくのおやすみなんだからゆっくり寝かせてくれてもいいじゃんかー」
「はいはい。そんなこと言ってると一日中寝て過ごしそうだから起こしに来たのよ。ちょっとは感謝しなさいよ」
「えぇ~、わたしまだぷるるんとダラダラごろごろして寝ていたかったな」
「朝飯のデザートにプリン出るわよ」
「ホント!? ぷるるん、プリン食べに行こー!」
「えぇ~……眠ぅい……」
ネプテューヌはプリンと聞いてすぐさま食堂へと走り去っていってしまう。その後を追いかけてネプギアが部屋から出ていき、エヌラスは眠そうなプルルートの頭を撫でる。
「ほら、プルルートも」
「うん~……エヌラスにちゅーして貰ったら目が覚めそうぅ~」
「……ホントか?」
「たぶん~」
「それは、惚気けたいだけなのでは?」
仮にそうだとしてもプルルートが嬉しそうなのでとりあえず頬に唇を寄せる。少しだけ不満そうに唇を尖らせるが、すぐに頬を赤らめて微笑んだ。
「えへぇ~、ありがとう」
「……」
のんびりほんわかとした笑みを向けられるとエヌラスは何も言えなかった。
「ムラっとしてません?」
「してねぇよ。いいから、はよう! 朝飯!」
「そこまでムキになって怒らなくてもいいじゃありませんか」
食堂に全員が集まっていることを確認して、現時点での情報と今後の方針について話し合うことにした。主にエヌラスが。補佐にアイエフが並び立つ。
「なんでホテルなのに会議室があるの?」
「それなのに全員が水着姿っていうのがなんとも言えない違和感ね……」
ユニの素朴な疑問にノワールが率直な感想を述べる。言えない。この部屋が「職場で情事に至るプレイ」の為に用意された部屋であるなど。
それはともかくとして、現時点までの状況。
「まずは、リーンボックス周辺に出没した所属不明の機影についてわたくしから」
「そんなこと起きてたのか?」
「ですがそちらはハァドラインの方々が片付けてくれたみたいですわ。ですが、しばらくR18アイランドの運行は見合わせている様子で」
「そうなると、ホテルに備蓄してる食料が気になるな」
「そうね。後で確認しておくわ」
ホワイトボードに書き込むアイエフ。続けてデンゲキコとファミ通が挙手する。
「はーい! では次はわたしからです! ノワールさんが気になるであろうラステイションの情報です!」
「うちのだけ?」
「はい!」
「正直で素直なのは褒めてあげるわ……」
「ありがとうございます!」
「他の情報でしたらわたしの方からも提供するのでご安心ください」
さすが記者というべきか、情報網の広さと早さには驚かされる。それとは別にデンゲキコの贔屓ぶりもだが。
「えー、ではまずラステイションから。以前ノワールさんが危惧していた例の場所に関する流通ですね。そちらの状況はまずまず、といった感じです。安定した流通ルートの確保は今後も難しいと見解されていますね」
「そうなの?」
「はい。なんでも最近はますます周辺地域のモンスターの活動の活性化が見受けられるようで……現地の特殊部隊も手を焼いているようです」
「情報、ありがと。戻ったらすぐに対策を立てないとね」
「では次はわたしから、ルウィーの情報を」
続けてファミ通がメモ帳を開いてまとめた情報を読み上げる。アイエフもホワイトボードに書き込んでいた。エヌラスは腕を組んで話に耳を傾けている。
「ルウィーは特に目立った動きはないですね。モンスター退治もハンターさん達が精を出しているようで、問題はなさそうですね」
「そう、情報ありがと」
「いえいえ。では次にプラネテューヌですけれど」
「そっちはアタシも昨日のうちに情報を仕入れてたわ」
「じゃあアイエフさんにお譲りします」
「悪いわね、せっかくの情報」
「気にしないでください」
アイエフがホワイトボードにプラネテューヌの情報を書き込んでいく。少々不安そうな表情をしている男性が一名。
「ま、あれだけの事件があったにも拘らず相も変わらずといった感じよ。B2AMの残党も教会で保護……もとい拘束してるし。例のケモナール事件も今は影も形もないわ」
「え~、ケモナール無くなっちゃうの?」
「そりゃあね……」
アイエフがチラと盗み見るのはエヌラス。それに「んん?」と眉を寄せる女神達だったが、プルルートだけはどうしてかニコニコと笑みを浮かべている。
「そうだよねぇ~、アイエフちゃん」
「はいストーップ。それいじょういけない!」
「そ、そうですよプルルート様! お、おほん。気を取り直して! えーっと、あんな大事件が起きたけれどもプラネテューヌは概ね平和ってことよ。わかったエヌラス! わかった!?」
「いや、分かった。わかったからそんな必死にならなくても……」
「気にしてるんじゃないかって、あいちゃん心配してたですよ」
「……あー、気遣いどうも」
「ちょっとコンパ! あーもう、いいわ。そういうことで」
ともあれ、一番状況が危ぶまれているのはラステイションのようだ。
「続いてリーンボックスの情報ですが――」
「ハァドラインの方々の動きも気になるところですわ」
「大々的に宣伝してます」
何の? と全員が首を傾げている。
「自社の製品を。ネット販売とかで」
「……概ねいつも通りですわね」
「とりあえず、いつもどおり平和なゲイムギョウ界ってことでいいのか?」
「はい、そういう認識でいいです」
現在の状況をまとめると、もうしばらくはユウコに経済を任せても大丈夫そうだ。念のためにエヌラスが連絡を入れることに。
「よし、じゃあこっちは俺からユウコに連絡入れておくから会議はこれで解散。この後は自由時間だ。慰安旅行とはいえ羽目をはずし過ぎるなよ」
「おぉ、なんかエヌラスがものすごく年長者っぽいこと言ってる!」
「お前は相変わらず女神らしくないこと言ってるな……」
その場からネプテューヌ達が去っていくのを見送ってからエヌラスはD-Phoneを取り出してユウコに連絡を入れた。