超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ナチュラル犯罪には目を瞑り、エヌラスは早速コンソールを叩いて画面を呼び出す。以前、ここを使っていた人物がどんな相手なのかをノワールが話し始めた。
「R18アイランドで起きた事件のこと、知ってるわね」
「まぁ、多少は聞いた」
「ここを支配してたのが、アノネデスって凄腕のハッカーだったのよ。思い出すだけでも腹立たしいけど」
「ふぅん……凄腕のハッカー、ねぇ……?」
それならそれで、会わせてみたいような気もする。特にソラと。ただし、電脳国家国王と競いたいと思うのならそれは可哀想な話だ。あれはこちらがキーボードを叩いている間に、直接電脳空間を動き回る。
「わたしの盗撮とかしてたんだけど……」
「よし殺そう」
「ちょっと待って」
「オーケーわかった」
「殺意スイッチ入るの早すぎるわよ! もうちょっとこう、クッション入れて? いえ、というか殺そうとしないでよ。今はラステイションで拘束しているから大丈夫だけど」
「なるほどね。それでか。ここを使っていたのが凄腕ハッカーなら納得した」
「どうして?」
「見ろよコレ。プラネテューヌ、ラステイション、ルウィー。リーンボックス。全部衛星からの映像だろ? しかしスゲェな」
「そうね。…………」
「…………」
ノワールとディスプレイを見ながら眉を寄せた。何のためにこんなデータを?
「ねぇ、エヌラス。もっと詳しく表示できない?」
「やってみる」
「というか、あなた。意外に機械に強いのね」
「あたぼうよ。悪いことなら大抵やった」
「自慢することじゃないのよ、それ?」
「すまんかった」
即座に謝り、現在は悪行によって培われたスキルがこうしてゲイムギョウ界の為に活かされていることは喜ばしいことだ。……結局は犯罪行為なのだが。
「ネプギアの方が喜ぶんじゃないか、こういうの」
「何言ってるのよ。プラネテューヌの女神候補生にこんな危ない真似させられないじゃない。ユニの友達なんだし」
「俺はいいのかよ……」
「犯罪王が何言ってるの。ほら早く」
「急ーかすな、あと、あんまりくっつかれると……その、なんだ……手元が狂う」
「なんでよ?」
「胸、当たってる」
「…………――――い、いいから! 早く!」
ポカポカと頭を叩いてくるノワールに集中力を乱されながら、エヌラスは廃棄された大砲内部に残されているデータを漁っていく。要約してしまえば、ハァドラインは此処でゲイムギョウ界中の情報を収集していた。それを元にした戦略の構築も兼ねている。どうやら此処が作戦会議室と見て間違いない。
「何かわかった?」
「……この戦争、企てている大元はリーンボックスのハァドラインと見て間違いなさそうだ。女神代理戦争の計画自体は……だいぶ前からみたいだな」
「もしかしてハァドラインは、此処に残っていたデータを利用して計画を練っていたのかしら」
「可能性はあるな。それで、これなんだが」
「どれどれ?」
身を乗り出して画面に食いつくノワールの顔が真横に、胸が更に密着してくる。ふわりと香る甘い香水の匂いに思わず息を止めてしまった。エヌラスが表示した画面に集中しているのか、当人は気づいていないらしい。こんな薄暗い密室で男女が二人きり。
「……だから、な。ノワール? 近い、いい匂いする」
「ま、真面目にしてよ」
「できるかこんな状況で」
それでも一応、手は動かしている。エヌラスが表示するのは彼らの作戦ルート。リーンボックスからプラネテューヌとラステイションの国境沿いを進んで――最終的な目的地はルウィーに設定されていた。その進行ルート上にはラステイションで問題のアナグラが含まれていたことに眉を寄せる。
「んん? これってもしかして……配送会社を買収したのも含めて、アーマードソウルスの作戦だったってこと」
「作戦は着々と進行中ってことか」
「じゃあ今回の旅行も」
「……作戦のシフトには『此処で慰安旅行させて疲労を回復させておく』って書いてあるな」
「なんか敵から塩送られてる気分なんだけど」
目を伏せながら睨んでくるノワールに、エヌラスは俺に言うなとでも言いたげに視線を返す。
「だけどどうして? それならわたし達が国に居ない時に始めればいいのに」
「……」
確かに。女神不在の時に自分達で勝手に始めれば計画自体はスムーズに進行するだろう。それなのに何故か彼らの計画に女神は必要不可欠の存在とされている。
「あいつら、詰まるところ――自分の信じている女神が最強、ってことを証明したいんじゃないか?」
「なによそれ!? そんなの言われなくてもわたしが一番に決まってるじゃない!」
「どうどう」
エヌラスは女神代理戦争を企てているハァドラインがリーンボックスを拠点にしていることから重点的にそちらのデータバンクを探る。過去の戦闘の痕跡からか、時折画面がチラついており眉間にシワを寄せていた。
「大丈夫? なんならデータだけでも抜き取って」
「いや、それは難しいだろうな。下手に負荷かけるとそれこそぶっ壊れかねん」
ノワールが思っている以上にこの砲台内部のデータ欠損は著しい。ロボットが中心のハァドラインが扱うからか、外部からの接触にはあまり手が加えられていないようだ。
「……なんだ、このデータ」
「何か見つけたの?」
「多分関係ないだろうが、リーンボックスで建造途中のライブ会場みたいだな」
あとでベールに聞いておこうと留意しておく。エヌラスはハァドラインの企てている作戦を大まかに把握して記憶に留めると、電源を切る。
「しかし、休暇だっていうのに頑張るな」
「休暇と言えど気は抜けない状況なのよ。特にうちはね」
「それは……そうだな」
「ま、あなたのせいじゃないわよ。これくらいの危機乗り越えられなくてなにが女神様って感じよね」
自信満々に胸を張るノワールだが、エヌラスとしてはゲイムギョウ界での拠点をラステイションを中心にする予定なので早急に問題の解決に出るのが望ましい。しかし――。
「ノワール」
「なによ」
「俺もちょっと話があるんだ。今後のことで」
「えっ……? えっと、それって」
「いやー、そんな頬を赤らめて期待されるような視線を向けられてもご期待に添えられないと思うぞー?」
「ち、違うから! 別にそんな関係の進展とか望んでたわけじゃないんだからね!? 万が一ってこともあるでしょうからちょっと身構えたっていうか、そういうのだから! コホン、それで。話って?」
エヌラスはノワールに自分の今後について話し始めた。
一度アダルトゲイムギョウ界に戻ること。大魔導師の下でもう一度修行し直すこと――どれぐらいの時間になるかは分からない。そのことを話すと、ノワールは深く頷いた。
「……そう。でもアナタが決めたことなら、いいんじゃないかしら。邪神の一匹や二匹くらいならわたし達でもなんとかなりそうだし」
「だといいんだけどな」
「エヌラスはわたし達ゲイムギョウ界の守護女神に過保護なの。ちょっとは信用しなさい」
「うい……」
なんだか怒られた気分になってしょげるエヌラスに、ノワールは小さく笑みを浮かべる。
「そういう風に心配してくれて嬉しいわ」
「……まぁ、そりゃあ? 俺も、守るって言った手前、嘘つけないし……」
「なんで照れるの?」
「口にするの恥ずかしいんだよ! 察しろ言わせんな!」
「そういう可愛げが普段からあれば、わたしも助かるんだけど」
「むぐぐ……」
なんとも負けた気分になるが、さりげなく腕を組んできたのでそれで帳消しとした。
「今日はお前に付き合うって決めてるんだからな」
「ええそうよ。今日はとびっきり遊び倒すんだから覚悟してよね」