超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ビッグボックスではスピカとカルネの二人がベッドメイキングや昼食の用意をしていた。時折掃除用ロボット、スィーパージェット君でカルネが遊び始め、その都度スピカによって場外へ放り出されては戻ってきている。
ベールは自室に篭って四女神オンラインを満喫。度重なる緊急メンテがあったものの、現在は問題なく稼働中だ。
ネプテューヌも同様に、プルルートと一緒になってぐぅたらと過ごしている。ネプギアはユニと一緒に遊んでいた。ブランは静かに読書に耽り、それぞれがおもいおもいの時間を過ごす。アイエフとコンパもまた、休暇を満喫していた。
ミリオンアーサーもお目付け役のチーカマと一緒に散策中だ。
そんな中、デンゲキコとファミ通の二人は何故か休暇中なのに仕事に追われていた。というのも、配送会社でトラブルが起きたらしく、新刊の発行が前倒しになったらしい。その為、大急ぎで新しい記事を書かなければならなくなった。タイムリミットは二十四時間。明日の朝までに完成させなければならない。突然舞い込んできたワークマンにマークスマンライフルをぶち込みたい衝動に駆られながら二人は真っ白の原稿を前に頭を抱えていた。
5pb.ちゃんはと言うと、予定していたスタッフの到着が大幅に遅れている為、単なる小旅行となってしまったからか手持ち無沙汰にしていた。しかし、機材は別便でホテルに到着している。誰かに撮影を頼みたいところだが、基本人見知りである為に声を掛けられずにいた。
「もぉぉぉぉ、なんでわたし達だけお仕事なんですかー!」
「ちょっと静かにしてねー、考えがまとまらないから」
「むむむむむ……、今週号だけアダルト特集とかダメですかね」
「怒られたいならいいんじゃないかなー」
間違いなく編集に叱られる。清く正しく、アダルトコンテンツはひっそりと身を潜めていなければならないのだ。
「そっちの筆の進みはどうですか」
「あんまり芳しくないかなぁ。そっちは?」
「ふふん、わたしも全然でっす!」
「胸を張ることじゃないんだけど」
頭を抱える記者が二人座るテーブルに、さりげなく置かれるのは冷えた飲み物。ホテル清掃に一段落区切りをつけたスピカが差し入れを持ってきた。
「よろしければどうぞ」
「ありがとうございます」
「キンッキンに冷えてますね」
それこそ冷気を漂わせるくらいには。
「冷凍庫で冷やしてから更に魔術でも冷やしました」
「そこまで冷やす要素あります!?」
「ちなみに冷やしたのはグラスですので迂闊に触れると火傷しますよ」
「なんで持ってきたんですか! あ、冷たっ!? これ持てませんよ!?」
「ご安心を。こちらにストローがあります。どうぞ」
「なんで飲み口二つにハート型なんですか」
「え、よくお二人が一緒にいるからてっきりそういう関係なのかと」
『違いますっ!』
「あら力強い否定」
すっかりスピカに弄ばれている二人だったが、時計を見てサッと顔が青ざめていた。遅々として進まない筆にも時間は刻一刻と迫っている。よもやこんな遊び呆けていて原稿落としましたとか言えるはずもない。
「あああああ!!! 絶対に間に合わない! 締切に!」
「おかしいなー、わたし達休暇申請したのになー……ぐすん」
涙ぐみながらも二人は結局ジュースを飲み始めていた。
「そうですねぇ、助け舟を出して差し上げたいところではありますが……なにかネタでもあればと……」
「それなりに選んでくれればいいんです!」
「……それでしたら、昨今のゲイムギョウ界の情勢でも」
「先週やりました!」
「で、では女神さまたちの記事は」
「毎週やってます!」
「……ホテルの宣伝は如何ですか」
「いや、うちそういうのじゃないので」
「お手上げですわ」
早々とスピカは両手を挙げて降参する。そこへ、ベッドメイキングその他掃除を終えてカルネがエントランスへ飛び降りてきた。吹き抜けになっているからと言って五階から飛び降りるのはどうかという疑問もあるが、まぁポンコツだから仕方ない。華麗に物音一つ立てずに着地する様はまるで暗殺者だ。
「ハァーイ、カルネさんのお掃除終了でござるよー!」
「ああ、ダメイド二号、ちょうどいいところに」
「サラリと聞き流す私のスルー能力いと高し。なに、スピカ姉」
「なにか記事に出来そうなネタを拝領します。出来なければしばく」
「うーん、人生難易度インフェルノ。受けて立とう!」
(あ、受けて立っちゃうんだ)
腕を組んで悩み始めるカルネ。しばしそのまま悩み続けること数秒、思いついたのか指を立てる。
「それでしたらホテルの」
「却下」
「はやーい!」
「はい次」
「ふぎゅー。んー……エヌラス様特集とか?」
「どこまで脳みそ沸いたポンコツメイドなのですか貴方は。大丈夫? 熱消毒しますか、脳?」
「末恐ろしいこと言ってませんか!?」
呆れ顔でしっかりと頭をガッチリとホールドしているスピカに、カルネは涙目で抗議していた。一体何がダメだったのかと。しかし、意外にもデンゲキコとファミ通の二人は神妙な面持ちで何かを考えていた。
「なるほど。そういえばエヌラスさんの特集とか考えてもいませんでした」
「アダルトゲイムギョウ界の記事とか面白そうかも」
「え?」
「泥舟になったりしません? 黒船、黒船ですか?」
自分で言っておきながら不安そうにしているカルネに、二人がそんなことはない、と首を横に振る。
「いえいえ。エヌラスさんはゲイムギョウ界でこれから生活していくようなので」
「あら、初耳」
「そういうことでしたら、どういう人なのかを取材しておこうかなと。うん、面白い記事になりそうかも」
「あ、ズルいですよファミ通さん! そういうのはわたしに譲るべきでは!?」
「早い者勝ちですよー。そうと決まればお先に」
「それならわたしはユウコさんのことで色々取材させていただきますからねー!!」
二人はメモ帳とペンを持つなり席を立って走り去ってしまった。残されたジュースを口にするカルネに、スピカも一口。ハート型ストローが有効活用されていた。
「やぶへび?」
「……まぁ、ナイスフォローということで勘弁してあげましょう」
「あ、そういえばスピカ姉。さっき掃除してたときに倉庫で面白いもの見つけたんだけど――」
ビーチで休憩中だったエヌラスとノワールのもとへデンゲキコとファミ通が突撃してくる。二人が事情を説明すると、申し訳なさそうに断った。そも、今日はノワールと一日遊ぶ予定だったのだから当然。意気消沈した二人に、仕方なさそうに深い溜め息を漏らす黒の守護女神。
「仕方ないわねぇ。エヌラス、ちょっとだけ二人の取材に協力してあげて」
「いいのか?」
「いいのよ。その二人には借りがあるでしょ?」
「ソッスネー」
ゲイムギョウ界の混乱を未然に防いだ実績があるだけに二人には何かしらの形で恩を返さないといけないのは、ノワールも同じだった。
「しかし、取材と言われても何を話せばいいのか分からんぞ、俺」
「大丈夫です、簡単な質疑応答みたいなものですから」
「いざって時はこちらで面白おかしく脚色しますので」
「はっ倒すぞ」
「ずびばぜんッ!」
割と――いや、ゲイムギョウ界においては凶悪な人相のエヌラス。それに本気で睨まれるとなれば一介の記者であるデンゲキコは竦み上がるのも無理はなかった。その迫力は流石アダルトゲイムギョウ界の住人と言える。
「別にノワールも一緒で良くないか?」
「いやぁ、そういうわけには」
「一国を預かる守護女神様と一緒にインタビューとなれば、良からぬ噂も出てきますからね。現状でもかなり怪しまれてますし」
「そうだろうな……」
多少とも自覚があるだけにエヌラスは少々凹んだ。こころがしんどい。しかし、世間的には自分がどういった目で見られているのかと聞いてみる。
「えーっとですね。一応は、女神様の護衛ってことになってます。特別な教会職員って皆さんは良い方向に誤解してくれているようですよ?」
「ありがてーわー平和ボケ」
「なのでそういう方向でインタビューしていきます」
「あ、それとユウコさんに関する記事も書きますので出来る限りお願いしますね! 今ゲイムギョウ界の経済を一手に担っている方ですので」
こうしてエヌラスへのおもしろおかしいインタビューが始まり、それらを終えてホテルへ戻る頃にはすっかり日が暮れてしまっていた。だが、デンゲキコとファミ通の二人が大急ぎで記事を書き始めたので重畳と言える。結局、ノワールと二人きりという約束は半々で終わってしまった。それに恐る恐るエヌラスが横目で盗み見ると、決して口には出していないもののノワールは見るも明らかに不機嫌そうにしている。
「……怒ってる?」
「怒ってなーいーわー」
「いや、おこじゃん」
「……だってこんなに長くなるとは思わなかったんだもの」
それはそうだ。エヌラスとてああも長時間インタビューを受ける羽目になるとは思わなかった。律儀に答えてしまった自分に原因があるのだが。
「まぁそう言うなって。まだ時間あるわけだし」
「それは……まぁ、そうだけど」
「大丈夫だ。日付変わるまでお前に付き合うから!」
多分日付変わるだろうけど。エヌラスはそうとは言わなかった。それに、ノワールがちょっとだけ機嫌を良くしたのか、笑みを浮かべる。
「そうね。そういうことなら――ちょっと気になるところがあるから来てもらえる?」
そう言って、ノワールはエヌラスの手を引いてビッグボックス内のとある一室へと連れ込んでいく。