超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ノワールに連れてこられたのは、殺風景な一室。ホテルの倉庫にしても、上階に設置するのは変な話だと眉を寄せていたが、目を引くのは天井に設置された全天周型カメラ。それでも不思議な部屋だと思っていたエヌラスに、ノワールがリモコンを見せる。ますます怪訝な表情を見せると胸を張った。
「この部屋、なんだか分かるかしら?」
「……いやまったく」
「なんとなくでもいいから、ホラ」
「リモコンを操作すると拷問部屋に早変わり、ソフトからハードまで命に関わらないレベルのプレイにお答えします?」
「…………」
ノワールからの冷ややかな視線に、エヌラスは頬を掻く。自分で言っていてなんだが、そういうのはまず有り得ない。仮にあっても地下にしてくれ。
「そ、そういうの好みだったの?」
「いや、興味がないわけじゃないが……そこまで好きでも」
「……したい?」
エヌラスは眉間を押さえる。
「お前にそういう風に聞かれるとな、股間に悪いから勘弁してくれ。答え合わせ、はよう」
「そうね。ほら、開発元がリーンボックスのハァドラインというだけあって流石の技術力よ」
ノワールがリモコンを操作すると、室内がホログラム映像によって切り替わる。
部屋の中は殺風景な光景から一変して、街の中のような風景へと変わった。エヌラスはまだ足を踏み入れたことはないが、リーンボックスの街中だとノワールが説明する。
「ほー」
「こんな感じで、お好みのシチュエーションで楽しめるって感じね。最新技術を惜しみなくつぎ込んでいるみたいよ」
「ほほう。結構リアルだな」
防音は気にする必要はないようだ。ノワールが映像を切り替える。
「服も用意してあるみたいだし、カメラもあるわ。結構充実してるのよ、この部屋」
「レイヤー大歓喜だな」
「えっ……」
「え?」
「え、ええまぁそうね! でもせっかくこういう部屋見つけたんだし? こういうのって貴重な経験だし、一人で使うのも心細いからエヌラスも一緒にどうかと思ったんだけど!」
「そういうお誘いなら歓迎するが」
「……ち、ちなみにどういうシチュエーションが好み?」
「ふむ――そうだな」
エヌラスは水着の上からパーカーを羽織ったノワールを上から下まで眺めて、自分が見てみたい服装をリクエストしてみた。
「メイド服とか」
「……」
「できればゴスロリミニスカートで頼む。フリル増しで」
「スピカとカルネの二人がいるのに?」
「お前のメイド服が見たいんだよ! 新鮮さが欲しいんだよ! むしろアイツ等いつメイド服脱いでんだよ!」
スピカとカルネは替えのメイド服を持ってはいるが、全部同じ柄である。ちなみに今回は替えの服の用意ができなかった為、一張羅だ。そんなお着替え事情はともかくとして、メイド服というリクエストを受けたノワールは頬を真っ赤にしながら目を逸らす。
「え、えぇ……メイド服ってことは……そういう、事よね……?」
「ちなみに思いついただけでも後三つはあるぞ」
「多くない!? わたし、そこまで体力保たないわよ!?」
「えっ?」
「え?」
耳まで真っ赤にして涙目になったノワールは、自分がとんでもない勘違いをしたことから逃げ出すように服を探し始めた。
「……こ、これで良いかしら?」
「うむ、眼福」
エヌラスの注文通りノワールはメイド服に着替えている。殺風景な室内は、どうやら壁面が収納も兼ねているらしく、引き出せば椅子やベッドなどの家具のホログラムも使えた。どこまで周到なのかとエヌラスは感心する。
ノワールはモジモジとスカートの裾を掴んで必死に下げていた。
「恥ずかしいのか」
「当たり前でしょ……」
「一回転してみてくれ」
「はぁ!? べ、別に、いいけど」
くるりとその場で一回転してみせる。ゴシック風のミニスカートの裾を下げてはいるが、隠しきれない太ももが眩しい。水着よりも布面積が増えているのに恥ずかしがっているノワールに疑問が浮かびながらも、ヒラリと翻るスカートに静かに頷いた。眼福。
「水着より恥ずかしそうにしてるのはなんでだ?」
「恥ずかしいに決まってるでしょ! なんでこんなに短いのよ、このスカート」
「……」
普段から着ているドレスもそれぐらい短いじゃないか、エヌラスは言おうとしたがやめておいた。しかし、それにしても気にしすぎである。
「それに……」
「それに?」
「……下着、かわいくないし」
「そう言われると見たくなるな!」
「なんでよぉ!?」
「いや、そりゃあ見てくれと言わんばかりのリアクションだったから」
うんうん、仕方のないことだ。こればっかりはもう、他に選択肢がない。
「ホンットウに、変態! バカ! なんでそう自分の欲望に正直なのよ!」
「誘ったのはお前だし。期待してたみたいだしな!」
「なんで今日はそんなに開き直ってるのよ……クスリでも盛られたの?」
「自前」
ああ、そう言えばそうだった。ドラッグシガーを片手に見せるエヌラスに、ノワールはどうするか少しだけ考えて――スカートの裾を僅かに持ち上げる。
「……見、せるだけだからね……」
「ああ。見るだけ」
「ホントにホントに、見せるだけだから! そこのところ勘違いしないでよね!」
スカートを捲り、ノワールは肩を震わせる程の羞恥心に耐えながらエヌラスに下着を見せた。
無地の白いパンツ。オーソドックス。王道を往くスタンダード。確かに、いつも履いている下着に比べれば可愛さは劣るかもしれない。
「……前に履いてたネコのランジェリーに比べれば確かに見劣りするな」
「~~~~! なんで覚えてるのよ!」
「いや、だって可愛かったし」
「あ、アレは特別だったの! ほら、落ち込んでたし元気づけてあげようかなと思って!」
「特別ってことは勝負下――」
「にゃー!! もういいでしょ下着のことは!」
「いってぇ!?」
恥ずかしさのあまり、エヌラスの頭を叩きながらスカートを戻すノワールが頬を膨らませていた。無防備な背中を見せられるとどうにも悪戯したくなる。なにげなくスカートを持ち上げてみると変な声を挙げながらスカートの裾を下げようとしていた。
「ひゃわぁ!? ちょっと、なにしてるの!?」
「いや、なんとなく。ふむ、バックプリントに黒猫か……」
「だから見ないでって言ったのにぃ!」
「かわいいじゃないか、黒猫。ノワールっぽくて」
「…………」
押し黙り、肩を震わせている。怒っているのだろうが、抵抗してこないのをいいことにそのまま下着越しに触れてみると、少しだけ体を震わせて反応した。
「んっ……」
「……」
「す、するの? しないの……?」
「そんな風に期待されるとな、俺って男は馬鹿正直に答えるものなんだ」
主に身体で。
「うぅおぉぉおおおおおお!!!! できたぁぁぁあああ!!! やったぁー!!」
「そこ、間違えてますよ。デンゲキコさん」
「校正早すぎじゃないですかやだぁー!」
「ん~……と、後は……」
「そこの文脈。句読点抜けてますよい?」
「あ、ホントだ」
デンゲキコとファミ通の人知れないハードワークは、緩やかに終着点が見えてきた。スピカとカルネの二人が付きっきりで修正や差し入れを用意してくれるおかげで、苦のない缶詰状態。まるで真空包装、鮮度そのまま。
二人はやりきった表情で額の汗を拭った。
「今度こそ!」
「本当に」
『終わった!/終わりました!』
「お疲れ様です。それでは後はこちらから送っておきますね」
「後はごゆっくり! エンジョイ休暇を満喫でっす!」
ビシッ! と親指を立てて二人を見送るスピカとカルネを置いて、デンゲキコは一人気分転換にラウンジで夜風を浴びることにした。
「仕事からの開放感と言いますか、この清々しい夜風は身に沁みますねぇ」
脱稿した後の清涼感、達成感は筆舌に尽くし難い。自由とはこういうことかと毎度ながらに思い知らされる。すっかり夜は更けこみ、他の女神達も寝静まったと思われる時間――デンゲキコが廊下でふと見かけたのは、夕飯にも顔を出さなかったベールだった。コソコソと隠れるように曲がり角から覗き込んでいる姿に、眉根を寄せる。しかし、なにかが告げている。
そう、此処で声を掛けるべきだと。驚かせないように、声をできるだけ静めて遠くから呼びかける。
(あのー、ベールさん。何をしているんですか)
(あら。誰かと思えばデンゲキコさんではありませんか)
(なにか覗いている様子ですが……)
(ええ、わたくしもふと気になってしまって……あそこの部屋)
言われて、デンゲキコも廊下から覗き込んでみる。ベールが示しているのは、恐らく『VRルーム』の事だろう。――ちなみにVRとは『ヴァーチャルレイヤー』の略である。
(あの部屋がどうかしたんですか?)
(エヌラスを誘おうと思っていたのですが、ネット環境があったから時間を忘れてしまって没頭してしまって……)
ほぼ一日中やってたということだが、そこは置いておく。
(話によれば、エヌラスとノワールが一緒にあの部屋に消えてから戻っていないとか)
(むむっ、これはスクープの予感です!)
(あら、飲み込みが早くて助かりますわ。こちらにあるのは、非常用のルームキーですわ。これでこっそりと中の様子を見てみようという魂胆ですの)
(わぁ、女神様とは思えない中々にアレな発言ですね! お供しますけど!)
いざ、秘密の花園に――!
次回よりR18アイランド短編方式になります。ぶっちゃけ尺足りぬんティウス。目指せ全キャラ性……制覇。