超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ファミ通とデンゲキコの部屋を後にしたエヌラスが何気なく厨房を覗く。一応見回りも兼ねてはいるのだが、そこではスピカが顎に手を添えて悩んでいた。黙ってさえいれば美人なのは認めるが、口に出すとカルネがすっ飛んでくるので黙っておく。食材を前にしてどうしたというのだろう。献立が決まらないのかもしれない。一声かけることにした。
「どうしたんだ、スピカ」
「あら、エヌラス様。実はですね、備蓄している食料が心もとなくなってまいりました」
「そうか。心当たりしかない」
主に自分がアホみたいな量を食べていた気がする。
「女神様達だけならば余裕はありますが、何分……」
「もういい、皆まで言うな」
「誰もエヌラス様が原因であるとは一言も仰っていないのですが、まぁいいです。ともあれ、こうなると」
「自給自足か。というか借り物のホテルの食料を空にするとかちょっと自重する」
「食糧の調達に?」
「そうするか」
だが、エヌラスの顔が明らかに苦い。
「どうかされました?」
「いや、海嫌いなんだよ」
「それを今更!?」
「正確には海産物が嫌いなんだ。俺の私情はどうでもいいとして、とりあえず何か獲ってくる」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
狩りは得意だが、それが海産物相手ともなると話は別だ。なんせ海にろくな思い出がない。インタースカイはともかくとして、トラウマレベルの思い出しかなかった。とはいえ。
自分が原因で招いた食糧難。何とかしなければ。森林部で食べられそうな山菜やキノコを探してもいいのだが、ここはR18アイランド。その辺りは期待しないでおく。
「エヌラス。なにしてるの?」
「アイエフか。いや、実はな」
海に出る準備をしていたエヌラスは、通りがかったアイエフに事情を説明する。
「じゃあ、漁に出るつもりなのね」
「期待しないで待っててくれ」
「手伝うけど、いいの?」
「ハプニング映像待ったなしだと思うが、それでもいいなら」
「あら、わたしを舐めないでもらいたいものね。これでもれっきとした諜報員なんだから、毎度毎度しくじってもいられないわ」
「だといいんだけどな」
「ま、名誉挽回だと思ってくれていいわ」
「そうか。そういうことなら頼るぞ。でも、二人か……」
せめて、まともなの(ココ重要)がもう一人くらい欲しいところだ。エヌラスは誰か捕まえられないかとビッグボックスを見て回る。
すると、飲み物で喉を潤していたベールを都合よく発見した。
「ちょうどいいところに。ベール、少し良いか?」
「あら、エヌラス。なんですの?」
「実はだな――」
事情を説明すると、すんなりと承諾してくれる。
「そういうことでしたら協力いたしますわ」
「助かる。魚でも獲ろうかと思ってて」
「一言断っておきますと、わたくしの槍は銛ではないんですけど」
「え?」
「まさかそのつもりで誘ったとか思ってないでしょうね、エヌラス」
「そんなわけないだろ」
人選的にこれほどベストなチョイスもない。何故なら他のメンバーが加わればココから先は完全にトラブルが待ち構えている。早々にホテルを後にしようとしたエヌラスだったが、玄関前で掃除をしていたカルネに見つかった。
「あれ、エヌラス様。どちらに? ふむ、ふむ。アイエフ様とベール様の二人を連れて、両極端な属性を並べることで相乗効果、二粒で四倍美味しい展開とシチュエーション狙いですね! 流石です、私もご一緒してもいいでしょうか!」
「ハウス」
「真顔で言われると、それはそれでメス犬扱いで興奮します」
「カルネは大人しく待機していてください」
「掃除は終わらせておきなさいよ」
「うわぁい、雑な扱い! ありがとうございます! 行ってらっしゃい!」
アイエフとベールからの冷たい反応にもカルネは決してめげない。折れない。面倒くさいことこの上ない。
停泊していたボートをエヌラスが拝借して沖に出る。その顔がどうにも不機嫌そうだ。
「それにしても驚きですわ」
「なにがだ?」
「エヌラスがボートも運転できることに」
「免許持ってるの?」
「持ってるわけないだろ」
『えっ!?』
一気に青ざめる二人に、エヌラスは注釈する。
「免許は持っちゃいないが、向こうで色々とやってきたからな。船の運転くらいならできる」
「まぁ、転覆しない程度にお願いしますわ」
夕飯までに戻りたい。日が暮れるまでにどれだけ釣れるだろうか。エヌラスが釣り竿を用意して船に固定する。アイエフとベールも竿を取り付けて――、暇になった。
「あとは釣れるのを待つだけ、と。これでいいのかしら?」
「ん。まぁな。かといってすぐに釣れるわけでもないし、日光浴でも楽しむとするか」
「そうですわね。ダイビングとかしないんですの?」
「ベール。さっきも言ったけどな。俺、海が嫌いなんだよ」
「あら、それはどうして?」
「……海産物にいい思い出がない」
「詳しく聞いてもいいかしら」
「あー……うん」
事の始まりは九龍アマルガム、修行時代のこと――。