超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「――――と、いうような修行をやらされてだな。それからというもの、海は修行の場所として俺に様々なトラウマを植え付けてくれやがりました。クソかよ大魔導師」
「あの、本音がダダ漏れていますわよ?」
「クソ以外の例えようがねぇんだよ! クソだろ! クソ・オブ・ザ・クソだろ! どう考えてもクソを塗り固めたクソのバウムクーヘンでしかねぇよ!」
「クソって言いすぎでしょ、どんだけクソなのよ」
「バウムクーヘンに失礼ですわ」
「良いんだよ、滅多に口にするもんじゃねぇし。あんな高級菓子」
「え?」
「え?」
「ん?」
なにか、一瞬ズレた発言があった。アイエフとベールが小首を傾げる。エヌラスもそれが不思議かのように首を傾げた。
「……バウムクーヘンが、高級菓子? 確かに、手間はかかりますけど」
「今時コンビニで買えるわよ?」
「え?」
「お徳用パックで詰められていたりしますわよ?」
「……俺はもしかして、ものすごく恥ずかしい嘘を吹き込まれているんじゃないだろうか」
「まさかとは思うけど……」
「どのようなこと、教えられたんですの?」
「……えっとな? バウムクーヘンの木っていうのがあってな? 樹齢を重ねると大きくなってな? それを切って……うん。もうわかった、お前らが笑いを堪えている時点でそれがもう嘘だっていうのがわかったから! この話やめようぜ! 笑うなぁぁぁぁっ!!!」
抱腹絶倒。アイエフとベールが笑いを堪えきれずにボートの上でお腹を抱えて笑っていた。エヌラスは括り付けた釣り竿が反応したので魚を釣り上げ、クーラーボックスに乱雑に投げ入れた。餌を付けて、再び針を投げる。
「あーもう、いい……わかった。下手なこと言うと恥をかくだけだな」
「はー、はぁー。こんなに笑ったの久しぶりだわ、それ誰に教えられたの? やっぱり大魔導師?」
「他にいるかよ!?」
「ユウコとか」
「……アイツに騙されたことがあるのは金勘定と利子の精算ぐらいだ」
「それ、騙されるのが一番怖いものではありません?」
「金なんていくらでも稼げる」
借金取りなら顔を見た時点で回れ右をする。名前を聞いた瞬間顔が青ざめ、出身を聞けば財布から有り金を置いて逃げ出す。
「まぁまぁ、その話は置いておきましょう。魚が釣れるまでの間、何もせずにいるのも退屈ですし……よいしょっと」
「お前どっからサンオイル出した!?」
「あら。もちろん谷間からですわよ?」
「どうして人肌に温めているんですか……」
アイエフが呆れる。胸の谷間からサンオイルを取り出したベールはエヌラスに差し出した。
「せっかくですし、塗ってくださいます?」
「ここぞとばかりにフラグ建築していくスタイルは嫌いじゃない」
「豊満なのは?」
「嫌いじゃねぇよ悪いかよチクショウ! あんまり俺をいじめると反撃するからな!」
うつ伏せに寝転がるベールが水着の紐を解き、エヌラスはヤケクソになりながらサンオイルをダバダバと両手に塗りたくる。アイエフは時折反応する釣り竿を手にして魚を釣り上げていた。
「悪い、アイエフ。ちょっとそっち、任せてもいいか」
「いいわよ。この辺り、結構釣れるみたいだし。たまにはこういうアウトドアも楽しいわね」
「あー、すげぇ旅行してるって気分」
エヌラスはベールの背中に触れる。肩甲骨辺りから無難に攻めて、背中全体に塗りたくる。
「マッサージされているみたいで気持ちいいですわぁ~」
「腑抜けた声出すなよ……」
「あぁ~ん♪」
「だからって喘ぐのも無しな!?」
からかわれていることに気づいているのか、気づいていないのか、ベールの悪戯に翻弄されているエヌラスを尻目に、アイエフは釣り針に餌を付けて再び海に投げ込む。そうしていると、反対側のロッドが反応していた。
「おっと、次はそっちね。……これもう、投網の方が楽なんじゃない? 漁船の一つ二つあったじゃない」
「いや、たしかにそうなんだが。投網くらいなら自前で作れる」
「そういえば拘束プレイに使えそうな糸を出してましたわね。手首から蜘蛛男のように」
「縛られてぇか」
「縛りプレイなら得意ですわよ?」
「ちがうそうじゃない!」
「遊ばれてるわねー……」
「ちくしょー! 俺にだって考えがあるからな! お前の水着なんてこうしてやる!」
「ひゃああああ!?」
大人げない大人の実力行使、ビキニのブラを器用にも抜き取ってベールの手が届かない場所に置いておく。
「ふっふっふ、これでお前は身動きできまい。覚悟しとけよベール。俺にサンオイル任せたことをメチャクチャ後悔させてやるからな」
「既にちょっと後悔しているので、その……水着を返してくださいません?」
「断る!」
今までにないほどハッキリとした拒絶。エヌラスはサンオイルまみれの手でベールの身体をまさぐり始める。背筋を指先でなぞり、そのままハリのあるお尻に向けて進路を取っていた。それには当人も察したのか、手で隠そうとするも身体を動かせば胸がはみ出そうになる。
「くっ、ここに来てわたくしの豊満なスタイルが裏目に出てしまうとは」
「あの、ベールさん? それ、手で隠せばいいんじゃないですか?」
アイエフの冷静なツッコミに、一拍の間を置いてベールは言われた通りに手で胸を隠しながら身体を起こす。エヌラスは遠ざけた水着を手渡した。
「……釣るか」
「そうですわね……」
「えっ、アタシが悪いの今の!? なんで急に冷めてるのよ!?」
「さっさと釣って帰ろうぜ。な、アイエフ。面倒だからもうこっから投網使うし」
「魚群探知機とか、いいんですの?」
「野生の勘で補う」
「説得力あるわ……」
その結果として、エヌラスの第六感が見事魚群を捕らえて大量の魚を投網で捕獲した。
――のはいいものの、持ち帰ってホテルに戻ってきてから気付く。
さて、どう保管してやろうか、この山積みの魚。
「あらまぁこれはこれは、大漁ですこと」
「でも保存する場所あるか……?」
「冷凍庫にでも放り込んでおきましょう。あ、そーれっ!」
「なんて雑な!?」
しかし。何はともあれ食糧問題はひとまずの解決。
「魚ばかりでは飽きますので山菜とかお願いできませんか、エヌラス様」
「テメェで行って来い! RPGの勇者じゃねぇんだぞ! お使いクエストなんかまっぴらゴメンだバァーカ!」
「著しくIQが下がってる……」
「人のトラウマ掘り返してくれた礼だ、こんにゃろぅ! 人を辱めてくれた借りは今夜返しに行くから身体洗って待ってろー!」
「貴方キャラ崩壊してませんこと!?」
走ってどこかへと去っていくエヌラスが捨て台詞を残して行ってしまった。
「……え、もしかしてアタシも含まれてるの?」
残されたアイエフが困惑していたが、それが分かるのは今夜のお楽しみというやつである。