超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「あいちゃ~ん。どうしたです? そわそわしてぇ」
「あ、あはは! 別になんでもないわよ!?」
「?」
夜が更けていき、夕飯は相変わらずの騒がしさの中、エヌラス達が釣ってきた大漁の魚を使った豪勢な海鮮料理で皆の胃が満たされた。そんな中、約一名だけ姿を見せなかったのは、単に海のトラウマを思い出して食が進まなかったエヌラス。よっぽど心に深い傷を負っているようだ。
部屋に戻ってきたアイエフは念入りにシャワーを浴びて、身体を洗って湯船に浸かり、身だしなみを何度も整えた。しかし、それでも落ち着かない様子でいることにコンパが疑問符を浮かべている。
「もしかして、えぬえぬですか?」
「いやいやいやそういうのじゃ全然ないから! 関係ないから! コンパには関係ないことだから気にしなくていいからぁぁあはははは!」
「あいちゃん、おかしいです」
「はー、そうね。ちょっと待って。深呼吸させて……」
ゆっくり息を吸い、再び吐き出す。髪を梳いて、鏡を見て、今一度、気を引き締める。
「そういえばえぬえぬ、えっちな本を買ってたのを思い出したですぅ」
「ぼふぅー!? なんでこのタイミングで思い出しちゃったのコンパ!?」
「内容までは覚えてないですけど、やっぱりあいちゃんもえっちなことに興味あるです?」
「えー、あー、そのー……なんて言えばいいのかしら……それほど興味があるってわけじゃないのよ? 人並みにある、っていうか。間に合っているって言うか……ね?」
しどろもどろになりながらもアイエフは自分が引きつった笑みを浮かべているのが分かった。コンパは首を傾げている。
ドアがノックされ、アイエフは身体を強張らせた。コンパはいつもの調子で来訪者にドアを開ける。
(ちょちょちょちょっと待って!? アタシまだ心の準備が出来てないんだけど! ていうかコンパもいるんだけど!?)
「あ、えぬえぬ。どうしたです?」
「今大丈夫か?」
「はいです。あいちゃんもいるですよ。取り敢えずお話しがあるなら中で聞くです」
「お邪魔します」
部屋に入ったエヌラスは、ベッドに腰掛けて硬直しているアイエフに手を振った。
「い、言われた通りに身体洗って待ってたわよ?」
「マジでそうするとは思わなかった……けどまぁ、それならそれで話が早い。ほら、この間渡した魔術があるだろ? それ含めて色々と」
「って真面目かーいっ!?」
「なんで怒られる俺ー!?」
エヌラスとアイエフがベッドの上でくんずほぐれつと取っ組み合いを始めている。それを見てコンパがほんわかとした笑みを浮かべていた。
「やっぱりえぬえぬ、あいちゃんと仲良しで羨ましいですぅ」
「俺からすればこれ以上無いほどお前ら仲良しじゃねぇか。どの辺に羨望の眼差し向ける要素ある」
「ふしゃー!」
「どうどう、アイエフ。そんな猫みたいに唸るな威嚇するな爪を立てるな! 武器を出そうとするな頼む! この距離はさすがの俺も防ぐ自信がないからな!?」
鼻先数センチ、カタールの切っ先が部屋の照明を浴びて光っている。一瞬でも気を緩めれば間違いなく“ザクリ”と行くだろう。眉間に。左目に刀傷があるというのに、これ以上顔に傷を増やされたくはない。このままでは言い訳が出来ない顔にされてしまう。
現時点で既にそうだと言われても全力でノーコメント。
「あいちゃ~ん、危ないですよ」
「ぐ、ぐぬぬ……コンパが言うなら収めるわよ……」
「サンキューコンパ、助かった」
息を荒げながらアイエフがエヌラスから身を離して、ベッドの上で正座して待機する。
「ところで、何の話をしてたんだ?」
「へ? えぬえぬの事ですよ」
「そうか」
エヌラスの後ろ、コンパにだけ見えるようにアイエフがバツ印をしていた。首を横に振っていたが、それに理解を示した様子でにこやかな笑みを浮かべる。ホッと一息。
「えぬえぬがエッチな本を買っていた時のことを思い出したですぅ」
「え? あー、そんな事もあったな……」
エヌラスの後ろでアイエフが顔を両手で覆っていた。もうダメだ、という表情をしている。
「その時持ってた本の内容までは思い出せないですけど、なんだったですか?」
「踏み込んでくるなー、随分と……。えーっと、あの時買った本。なんだったっけな」
確か、こう。中々にハードな内容だった気がする。
「R18アイランド特集的なやつだった気がする」
「なぁんでそんなピンポイントな内容を思い出すのよー!?」
「仕方ねぇだろそういう内容の本だったんだから!?」
「じゃあやっぱり、あいちゃんとそういうことするんです?」
「なんで目を輝かせてるんだコンパ!?」
「どうして目を輝かせるの!? コンパだってそういうのはちょっとこう、抵抗あるんじゃない!?」
「あんまりないですよ?」
『えぇぇぇっ!?』
エヌラスとアイエフの驚きが重なった。あっけらかんとしたコンパが不思議そうな顔をしている。
「だってあいちゃんとねぷねぷがえぬえぬとエッチなことしてるの、ズルいですぅ」
「ごめんちょっと混乱しそうだ! ゆるふわ系な発言に慣れてないんだ俺!」
「あいちゃんとセックスするのズルいですぅ、えぬえぬ」
「わかりやすく俺の心をへし折りに来てくれてありがとう! そうね、俺そういう名目でもここに来たんですゴメンなホントもう!」
魔術のレクチャーもついでのつもりだったのだが、コンパが思いの外ノリ気でいる。
「え、えーと? なんかアタシ、嫌な予感がしてきたんだけど」
「そうだな。俺も嫌な予感が回避できる未来がまったくと言っていいほど見えない」
ベッドに腰をおろしたエヌラスに、コンパが身体をすり寄せていた。アイエフもその反対側で背中を預け、なんともいえない緊張感に包まれている。これはもう魔術の講義どころの話ではない。
「えぬえぬ、おっぱい好きです?」
「はい」
「触ってみたいです?」
「触らせてくれるなら」
「はい、どーぞですぅ」
パーカーを開けて、豊満な胸を晒すコンパにエヌラスは遠慮なく下から軽く持ち上げるようにして胸を触る。
「どうです? どうですぅ?」
「……ふわっふわだな」
「う……ず、ズルいわよエヌラス。アタシだって触ったことないのに」
「あいちゃんも触ってみたいですか?」
「ほへ!? い、いいの!?」
「はいですぅ!」
「あー、でもその、なんていうかアタシも色々とそういうのは心の準備とか気持ちの整理というか抑えが利かないというか我慢できなくなるというか」
「コンパ、ゴー」
「了解ですぅ」
「ほおひゃ!?」
エヌラスの指示通り、身体を乗り出してアイエフの手を取ると、自分の胸に当てる。何が起きたのか分からずに固まるのを余所にして、顔を紅くしながらもコンパはアイエフの手を離そうとはしなかった。
「あいちゃん、どうです? ドキドキするですか?」
「ど、どどどドキドキっていうかなんていうか柔らかいわね、ふわふわしてて。えっと、あの、これいいの? 触っていいの? も、揉むわよアタシ?」
「目に見えてテンパってるアイエフもかわいいな」
「待って、やめてエヌラス! 今のアタシ結構キャパ容量限界なの! コンパのおっぱい触れる機会なんてもうこの先二度とないかもしれないじゃない!」
「言ってくれれば、あいちゃんならいつでも触らせてあげるですよ?」
「…………きゅ~」
ばたっ。
「おーい、アイエフ。おーい。……ダメだこりゃ、嬉しさのあまり気絶してる」
「でも、あいちゃんの手。わたしのおっぱい触ったままですぅ」
「すげぇ根性と気合だな……」
しっかりとコンパの胸を鷲掴みにして、気を失ってもなお離そうとしない気概にエヌラスは思わず感心してしまった。だが、可哀想ではあるがアイエフの手を引き離す。
「ふー……さて、コンパ。アイエフがこの通りなわけだが」
「あいちゃん、えぬえぬ達と出かけててお疲れだったみたいですしぃ」
「おすしぃ?」
「えぬえぬ~、あの……」
「?」
「お手柔らかに、お願いしてもいいですぅ?」
指先を合わせながら、頬を紅くしながら上目遣いで懇願してくるコンパに頼まれたら断れるはずもなく。
「すまん無理我慢の限界」
(俺も出来るだけ手加減する)
「本音と建前が逆になってるですよ!?」
「知った事か! 誘われたら全力で乗る! 例え毒を盛られた据え膳だとしても、俺の胃袋は状態異常無効化ついているから問題ない! コンパ、頑張ろうな!」
「えっ、あの、はいですぅ! せいいっぱいごほーしするですぅ!」
もはや勢いで誤魔化している感が否めないが、エヌラスも割と一杯一杯だった。