超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「大、ピーーーーーーーンチ!!!!」
「きゃあぁ!? ど、どうしたのお姉ちゃん!? いきなり大声出したりして!」
「ねぷちゃん、どぉしたの~!? ビックリしたよぉ……」
「ピンチピンチピンチの連続だよ! 大ピンチなんだよネプギアー!」
「え、えっとなにがピンチなの?」
「主人公オブザ主人公オブザデッド! R18アイランドに来てからわたしの出番がめっきり減って影があまりの薄さにビックリなんだからー!」
「あー……」
「そうだよねぇ~……」
ネプテューヌ、ネプギア、プルルートの三人は部屋でのんびりとした時間を過ごしていたが、突如として気づいてしまった。そう、影の薄さに。ベッドの上で仁王立ちするネプテューヌが強く拳を握りしめる。
「んもー、あれだけケモナール大騒動でプラネテューヌを巻き込んだっていうのに、エヌラスってばいざオトナの楽園にたどり着いたと思ったら結局ノワールとか、ベールとかぁ、そういうナイスバディに行っちゃうんだから! ムキー!」
「でもぉ、ファミ通ちゃんとかデンゲキコちゃんとかもそういう感じだったよぉ~?」
「グハー! ココに来て被害拡大!? エヌラスの節操なしー!」
「でも、そういう人じゃないとお姉ちゃんに手を出してなかったような……あ、別に変な意味じゃなくて」
「まーあの時は色々事情マシマシだったからね」
「ん~、でもぉ。あたし達の影が薄いのは確かに~」
到着して早々にカオスなことをしでかしたのは置いておく。アレはアレ、コレはコレ。よそはよそ、うちはうち。お前のものは俺のもの。
「よーし、今日はわたし達でエヌラスを独占だー!」
「ねぷちゃ~ん、それならぁ代わりばんこにしようよ~」
「流石ぷるるんは格が違った! ナイスアイディーア!」
「えっと、いいのかなぁ……?」
エヌラスの知らない所で危険な計画が進行していた。
「……なんか、寒気が」
「おや、風邪ですかエヌラス様」
「いやぁ、生まれてこの方風邪なんて引いたことねぇしな」
「馬鹿なんですねエヌラス様って!」
「カルネ、伏せ」
「きゃふぅん!」
かかと落としが脳天を貫く。為す術もなく地面に頭から一点倒立しているメイドが一人。何事も無かったかのようにホテルの中を見回る二人。
雑務を任せている敏腕メイドとはいえ、マスターキーを持っているのはエヌラスだ。掃除も兼ねたビッグボックスの見回りをする際は同伴必須である。だが、どうにも仕事を増やしている気がしてならない。
「カルネ、ボサッとしていると置いていきますよ」
「ふぎゅぅ~、ギブミー優しさ~……」
「はよ立てダメイド二号」
「酷いですあんまりです辛辣ですエヌラス様ァ!」
「本音は?」
「もっとください!」
「オラァッ!!!」
「ありがとうございブァッハァ!?」
ノーモーションアクセルインパクトがカルネを今度こそ床に埋めた。パンツ丸出しでコレほど色気のないケツも珍しい。エヌラスは呆れながらスピカのベッドメイキングの様子を見守っていた。
「フゴー! ムグー!」
「うるせぇぞカルネ、静かにしてろ」
「ふごごごごご……」
もぞもぞ動くケツを叩くとカルネが大人しくなる。スピカは徹底して無視。
「エヌラス様、ダメですよ。構うと喜ぶんですから」
「お前、仮にも自分の妹をなんだと……」
「んー……そうですねぇ…………アホ可愛いダメで尻尾振るだけの従順な犬?」
「アホなだけだろ……」
「こう見えてかわいいところあるんですよ? 主に顔とか、顔とか、顔とかです」
「顔だけじゃねぇか! 面食いも大概にしろ!」
「失礼ですね。私はちゃんと相手の内面にも目を向けていますよ、コレが例外的に外見以外褒められるところが存在しないだけなんです」
コレ(床に腰まで埋まったケツメイド星人カルネ)扱いしながら、ケツを引っ叩く。それに反応してモゾモゾしているが、一向に抜ける気配がない。仕方ないのでエヌラスが引っこ抜いた。そこには名状しがたい至福の包まれただらしない顔のカルネ。
「うえへへ、うへへへ、気持ちよかったかも」
「……」
「……」
スピカとアイコンタクト。無言でバルコニーを開けると、ジャイアントスイングから外へ向けて放り投げた。尾を引く悲鳴を遮断するようにピシャリと閉める。時計の音が心地よい。
「……さて、此方の部屋はこの程度でしょうか。特に使用された形跡はないので簡単な掃除で十分でしょうし」
「そうだな、次の部屋行くか」
何事もなく部屋の掃除を終えていく二人だったが、ホテルの廊下でデンゲキコとファミ通が何やら話し込んでいた。エヌラスの顔を見るなり駆け寄ってくる。
「おはようございます、エヌラスさん!」
「朝から元気だな、デンゲキコ」
「はい! 元気が取り柄です!」
「スピカさんもお疲れ様です」
「気にしないでください、野良メイドの習性みたいなものですので」
「そんな野良犬みたいな……」
割と九龍アマルガムでは珍しい話ではなかったりするのだが。使い捨てられた自動人形は大魔導師が回収業者に手を回し、その後は教会で雑用を任されていたり警備任務に就いていたりと人間不要の二十四時間管理体制が完成されている。性能はピンからキリまで、とはいえ数と稼働時間の暴力によって圧倒していた。
「あ、あの~、エヌラスさん」
「ん?」
「えーっと……ていっ!」
「ん」
目一杯背伸びしたデンゲキコがエヌラスの頬に口づけすると、駆け抜けること電撃の如く。颯爽と消えてしまった。ポカンとしている横で、ファミ通も逆の頬に挨拶代わりのキスをすると耳元で囁く。
「ちゃんと、責任取ってくださいね?」
「……あー」
「それじゃあわたしもデンゲキコさんを追いかけないと。それでは」
「はい、お気をつけて。……エヌラス様?」
「なんだ、スピカ……」
「羨ましい限りです」
「どっちが」
「両方ですよコンチクショウ?」
「そうかよバカヤロウ!」
「あら、エヌラス。それにスピカさんも」
「おはようございます、ベール様」
「おはよう、ベール。お前は部屋に篭ってゲーム三昧かと思ってた」
「失礼ですわね。それはつい二分前の話ですわ」
「徹夜かよ!」
ゲーム廃人と聞いていたが、これほどとは。慰安旅行に来てまでゲームとは、流石にエヌラスも驚きを隠せなかった。
「あら、アイエフ様とコンパ様も。今日は良い朝ですね」
「おはよう、スピカ」
「おはよーですぅ、スピカさん」
「今朝は平和だったな」
「……ジロリ」
「な、なんだアイエフ……人のこと睨んで」
「じぃ~……」
「コンパもどうした。俺のことそんな熱を込めた目で……」
「……変態」
「変態さんですぅ」
二人は去っていった。ベールの哀れんだ視線がチクチク痛い。スピカはノーコメントノータッチ。その優しさが痛い。
「ふふ、エヌラスったらお盛んですのね」
「そうなんですよ、ベール様。お望みとあればオールでも付き合うのがエヌラス様なのです。それを可能としている銀鍵守護器官は現在活動休止中ではあるのですが、ねぇ?」
「そういうことを聞いてしまうとつい、わたくしはこう、胸の辺りが……」
「身の危険を感じてきたぞ俺!」
朝っぱらから何やら不穏な空気。エヌラスは逃げることにした。このままではマズイ、本能的に察した。多分、あの二人の玩具にされること請け合い。それはそれで魅力的な話なのだが、たまには休暇を満喫させてほしいのだ。
「エェェェェヌラスさむぅぁああああああああ!!!」
「ほんぎゃーダメイド二号の逆襲!」
咄嗟に召喚したのは無銘の倭刀。緋色の太刀と火花を散らし、間近にカルネの笑顔があった。犬歯をむき出しにした野性味丸出しの表情に冷や汗が一筋。
「ふふ、うふふ、ふふふふふふ、気づきました私。馬鹿なので時間かかりましたけど」
「うーんこのバカメイド廃棄処分したい」
「愛情表現ってこういう感じでよろしいのではないかと! バーニングハァァァートッ!」
「付き合ってられっかぁぁぁぁっ!」
炎を纏うカルネの太刀を払い、捌き、蹴り返してその場から全力で離脱する。
「スピカ、パス!」
「あらまぁお任せを」
「どいてスピカ姉! エヌラス様と遊べない!」
「遊びたければ言えばいいじゃない。私がいるのに?」
廊下を走り抜け、曲がり角をレースゲームも真っ青な人間ドリフトをかましてエヌラスはカルネから逃げ出していた。脳筋ステータス極振りのカルネを真正面からまともに相手しようものなら三日戦争が待っている。誰だあんな性能調整加えたの。一人しかいねぇ。大魔導師だ。
「あら? エヌラス――」
「ふんぬぅおぉあ!?」
突然出てきたノワールに、エヌラスは咄嗟に跳躍して、宙返りしながら銃を突きつける。ノワールも同時に細剣を向けていた。ピタリと睨み合う白銀の回転式拳銃と細剣に緊張感が流れ、やがて武器を下ろす。
「な、なによ? どうしたの?」
「ハァ、ハァ、ハァ。いや、悪い。話せば三秒で片付くんだが時間が惜しい!」
「そう? まぁ足を止められないみたいだからまた後で話しましょ」
「サンキューノワール! マジ良妻!」
カルネの気配に、エヌラスは再び全力で走り出す。魔術を使わないのは、銀鍵守護器官の補助が得られない以上手間が掛かるからだ。背中を見送ってから、ノワールは呆れた溜め息と共に腰に手を当てる。
「まったくもう、ネプテューヌばりにトラブルで忙しそうね」
…………――――。
「――――えっ?」
言葉を理解してからノワールの顔の温度が急上昇した。壁に手を当てて、額を押しつけて誰にも見られないように口を押さえる。
(え、えぇぇ!? さっき、え、なんて言って。いやいやちょっと待って落ち着きなさい! 少なくともエヌラスはわたしのことをそういう目で見てるということよね? で、でも色々と階段飛ばしてるっていうか、いや確かにわたしもエヌラスとそういう手順飛ばしてたりもしてたけど――)
「お姉ちゃん?」
「みゃあああああああああっ!?!?」
「にゃあああああっ!?」
大絶叫に声を掛けたユニまでもが悲鳴をあげてしまった。その時のノワールの顔は、筆舌に尽くしがたいくらい幸せな表情の緩みっぷりだったというが、ラステイションの女神達だけの秘密である。
「アァァァアアアアアアッ!!! ほんぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」
そして、自分が何を口走ってしまったのかを自覚した一人の男が、あまりのこっ恥ずかしさに数秒前の自分を可能な限りぶち殺してやりたいほど後悔して悶絶している。通りすがりのアーサーがチーカマと一緒にドン引きするほどに。
「な、何が起きているというのだ……」
「わかんないけど、とりあえず大変なことになってるみたいね。今日の水着を選んでいた間に」
「アーサー、数分前の過ちを犯す前の俺を殺す魔法とかないか」
「いやそんな無理な相談しないでくれないか!? そんな大魔法が使えたらとっくにわたしはブリテンを救っているぞ!?」
「ファッキンちくしょう!!!」
「泣くほど後悔してるのか?」
「死ぬほど恥ずかしいんだよッッ!!」
後悔後先に立たず。