超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
エヌラスに言われて、5pb.もカメラや照明のセッティングに手を貸す。新作の特典というのなら、やはり全身が映るようにしなければならない。余すところなく魅力を伝えるために。
「懐かしいな、カメラ持つと思い出されるバイト時代……」
「どんなバイトだったんですか?」
「ボディーガードも兼ねたカメラマン。ほとんどが機材の運搬とか雑用だったけどな。初めてのバイトだったんだよなー、いやぁ懐かしい。よく飲み物買いに行かされたな」
「経験者だったんですね。それならボクも少し安心しました」
「鬼のようなマネージャーだったな……背広から刀取り出すし、いやに強かったし……バイトだから倒すわけにもいかなかったし……」
「あ、あれ? 普通のバイトとちょっと違う気が……」
暴走するマネージャーを止めるのもアルバイトのお仕事。死ぬほどキツい初めてのお仕事の記憶がフラッシュバックする。夜の浜辺で刃鳴散らす旅行先――妙にデジャブる今の自分に寒気がした。
「どうかしたんですか? 突然遠くを見つめて」
「つかぬことを聞くが、5pb.……そちらさんのマネージャーとかに般若のお面付けた人とかいないよな?」
「いませんけど……」
「ああよかった、じゃあ大丈夫だな」
(そんなに危ない人なのかな、般若の人)
「でも楽しかったんだよな。担当したの可愛い子だったし。5pb.と共通点もあるしな」
「そうなんですか?」
「ヘッドフォン付けてるところとか。ライブとかもやってた」
元気にしてるだろうか、と考えながらも手は止めず、一人で固定できない物は鋼糸で留めておく。試しにカメラを構えて5pb.に向ける。キョトンとした顔をしていたが、慌ててポーズを決めようとした。
「ああいや、どんな感じに映るのかと思ったんだ。ポーズとかは大丈夫だ」
「は、はい。ごめんなさい」
「いや、こっちも突然カメラ向けて悪かった。にしても、いい奴使ってるな……」
一眼レフカメラで温室プールを一通り見渡し、ベストな撮影ポジションを探す。
「ふーむ、5pb.はなにかこう、ポーズの指定とか聞いてるか?」
「えっと……あまり、その……え……」
「え?」
「………………エ、エッチィのは、ダメって……聞いてます」
「そりゃあそうだよなぁ!? そっち方面で売り出してるわけじゃないだろ!?」
「そ、そうですけど! 当然です!」
「むしろ俺をそういう目で見て――、いや見られても仕方ないが」
自覚はしているが。5pb.もそれは謝罪していた。
「あ、あのごめんなさい……えっと、そういう風に聞いていたので」
「……一応聞くが、誰から?」
「えっと……そのぉ……アーサーさん、とか。女神様とか」
「心当たりしかねぇ、後でしばき倒す」
ノワールは除外。ベールとネプテューヌを心の復讐ノートに書き留める。
気を取り直して、エヌラスは5pb.の水着を見る。悪くない。かわいらしい。
「撮影用の水着とかないのか?」
「確か……ボクが今着ているのと、もう一着用意されてます」
「そうなのか。念のためもう片方も着てみてくれないか?」
「はい。ちょっと待っていてください」
5pb.が撮影用の水着に着替えに向かっている間、エヌラスはどういう写真を撮るか考えていた。やはりかわいらしさ全開極振りがいいだろう。それともセクシー路線も含めた方がいいだろうか。トップアイドルというのなら、ここはやはり小道具も活用して――。
あーでもこーでもどーでもない、考える事数分。5pb.が戻ってきたものの、様子がおかしい。顔を真赤にして、身体をタオルで隠していた。
「お、おまたせ……しました……」
「どうしたんだ?」
「えっと、着替えてきたんですけどぉ……」
目を合わせてくれない。はて、どうしたのか。人見知りなだけに肌を見られるのが恥ずかしくなってきたのだろうか。それも男に。無理もない話だが、仕事とプライベートくらい住み分けている。
「見せてもらわないと、撮影のしようがないわけだが……大丈夫か?」
「は、はい! お仕事ですし……」
「涙ぐむほど嫌なら他を当たってくれ……こころがしんどい」
「嫌、じゃないです」
呟きながら羽織っていたタオルをゆっくりと開いていくと――紐、だった。ほぼ紐。水着というか下着というか、隠すという概念すら隠しきれていない。最低限の装甲とはこういうことか。
まぁつまりは青のマイクロビキニを着た5pb.が泣きそうなほど顔を紅くしていた。
「いい、5pb.! 着替えてきていいから! さっきの水着で十分かわいいから!」
「似合って、ないですか?」
「逆! 似合ってるんだけどなんかもういいからはよう着替えてきて!」
とりあえず衣装指定したヤツは半殺しにしておこう。エヌラスは固く決めた。
撮影をするどころか、それ以前の問題である。
ひとまず落ち着く為にプールサイドでジュースを飲みながらゆっくりとした時間を過ごす。
「……」
「……」
(き、気まずい……!)
5pb.は着替えてくれたが、すっかり気落ちしてしまっている。エヌラスもマイクロビキニの破壊力によって撮影の構図が頭からすっぽ抜けていた。
「やっぱ、他の人に頼むか……俺だと色々キツいだろ」
パーカーの袖口に違和感を覚え、見れば5pb.が掴んでいる。少しだけ頬を膨らませて。
「……エヌラスさんがいい、です」
「そ、そうか。言い出しっぺだもんな」
「あの、ところで覚えてませんか? ボクのこと助けてくれたの」
「えっ? 助けた……?」
「はい」
言われて、エヌラスは思い返す。いつ、自分が5pb.を助けただろうか? 記憶を掘り返しても、思い出せない。
「すまない、ちょっと思い出せん。色々と切羽詰ってた頃とか、必死過ぎてな」
「仮面の邪神が初めてゲイムギョウ界で確認された時に」
「――あー……?」
確か――、助けた? 気がする。何しろ、あの頃は荒れていた。自分で言って思い出したのか5pb.が咳払いを挟む。
「それで、ずっとお礼を言いたくて。あの、ありがとうございます」
「えー、と。どういたしまして……」
照れ笑いからジュースを飲んで誤魔化して、その姿がどうにも小動物のようにも思えて。あー萌えってこういう……、エヌラスは胸の鼓動が聞こえないことを祈った。
「と、とにかく写真撮るか!」
「そそ、そうですね! はい!」
「トップアイドルってことでやっぱマイクだな! せっかくの水着だし、そういう魅力も余すところなく伝えようと俺は思うが異論は!」
「な、ないです」
「よし! ということで、用意するはこちらのマット。これをプールに浮かべて、と」
「はい」
「寝そべりながらマイクを持つ感じで」
「こうでしょうか」
「はい笑顔ー」
「イエー」
まずは一枚。5pb.のオフのバカンス、のようなイメージ。かわいらしさ爆発である。
(そういえば俺、これって結構ヤバイ案件じゃなかろうか)
女神だけでなくトップアイドルの写真撮影すらしている。刺されるどころか磔獄門。
まぁいいか! エヌラスは振り切ることにした。
「よーし、じゃあ仰向けになってー」
「はい」
「寝っ転がってー」
「はーい。ごろん」
「そのまま目線こっちにー」
「ちらっ」
「……セクシー過ぎるなコレ」
「えぇぇっ!?」
その後もエヌラスによる5pb.の撮影会――もとい、ブロマイド写真のお仕事は続き、後日編集者にメールで送信ということになった。