超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
エピソード196 行きはよいよい、帰りがこわい
――楽しかった時間にも終わりは来る。どんなに願っても、どれだけ望んでも。
「いやぁー、楽しかったねー! もう女神様のお仕事これでいいんじゃないかなー」
「何言ってるのよネプテューヌ。遊び呆けてるわけにもいかないじゃない。ちゃんとレポート書いたの?」
「え? れぽーと? なにそれ?」
「あ・な・た、ねぇ~!!」
「ア・ン・タ・はぁ~! ごめんなさい、ノワール様。ネプ子にはアタシからも言っておきますし書かせておきますので」
「あいちゃん、ねぷねぷの保護者みたいですぅ」
「ちょっとコンパ、そんなこと言っていられる場合? 一応利用した以上はアタシ達も書かないといけないんだけど。ちゃんと書いてあるの?」
「もちろんですぅ~!」
R18アイランドを後にするネプテューヌ達。迎えの客船に乗り込んで、リーンボックスへ向かう最中も賑やかな空気は途絶えることはなかった。――約一名ほどを除いては。
「まったくもう、ネプテューヌは相変わらず遊ぶことで頭が一杯だったのね」
「羽休めにしても限度というものがありますわよ? もちろん、わたくしもきちんと書き終えてますわ」
「な、なんだってぇー!? じゃあ終わってないのってもしかして、わたしだけ! うわぁーピンチだよあいちゃーん! 助けてぇ手伝ってよぉ」
「はいはい。そう言ってくるのは目に見えてたわよ」
ブランもリフレッシュしたのか、心なしか機嫌が良さそうに見える。ベールも備え付けのパソコンでオンラインゲームをやりながらも旅行を満喫したようだ。
「お姉ちゃん、本当に遊んでばっかりだったんだ……」
「ネプギアもまさかとは思うけど」
「ちゃんと書いてあるもん」
できる妹は違う。ユニも当然ながら書いてある。これだけのレポートが用意されていれば満足してくれるはずだ。
ミリオンアーサーやチーカマ、デンゲキコとファミ通は部外者なのでレポート提出の課題は無し。それにネプテューヌがごねるものの、アイエフによって連行される。
「そういえば、エヌラスは? 姿を見かけないんだけど」
「エヌラス様は客室にて監禁中でございます。冗談として、自室療養中ですね」
「まだ怪我が治ってないの?」
「一体誰のせいだとお思いで?」
スピカの笑顔で空気が凍った。このメイド、必要とあらば豪華客船だろうがリゾートホテルだろうが単騎で爆破倒壊させる。現在はカルネが面倒を見ているらしいが大丈夫なのだろうか?
5pb.ちゃんも目的の特典ブロマイドの撮影も終えて乗船している。当然ながら客船は一般の客人も乗船していた。
「目下、問題としては私達の就職先くらいでしょうか」
「多分エヌラスがなんとかしてくれるんじゃないかしら」
「そうでしょうか。教会職員として雇ってくださってもいいんですよ?」
「ちょっと手に余るわ、ごめんなさい」
ノワールに断られ、ならばとぐるりと他の女神に期待してみるが、全員が静かに首を横に振っている。
「まぁ、リーンボックスに到着するまでのんびりと船旅を楽しみましょ」
「そうですね。では私は客船の巡回でもしてきますね」
出来るメイドは待機なんてことをしない。いついかなる時も臨機応変に迅速な対応をする。例えそれが主以外であっても。
「スピカって本当にキャリアウーマンって感じしますね」
「そうね。ベールのところなら映えるんじゃないかしら?」
「あら、そうは言われましてもあの二人にはエヌラスがいるのではなくて? それにわたくしはネプギアちゃんがメイドになってくだされば言うことはありませんわ」
「わ、わたしですか!?」
「あなたもいい加減諦めが悪いわね……」
なごやかな日常の時間が流れる一方、客室で静養中のエヌラスは傍らで待機しているカルネに看護されていた。
「静かですねーエヌラス様」
「そうな。騒ぐなよ?」
「ご安心下さい、このカルネ。待機します! ご命令とあらばいつでも上から下までお世話させていただきます!」
「メモ帳に書いとくわ。一発殴るって」
静かにしろと言った矢先にこれである。本当に脳味噌が仕事してるのかこのメイドは。ガイノイド、女性型アンドロイドの総称だが――その人格データには当然“元”になった人間がいたはずだが、エヌラスはカルネの大本を知らない。
「エヌラス様、林檎食べます? バナナ? マンゴー? パイナップル?」
「お前のチョイスが嫌がらせしか感じられない」
「フルーツポンチとかどうですか!?」
「テメェは……! ほんっとうに脳味噌どうなってんだ……! ぬか漬けにでもされてんのか」
人の話を聞けとあれほど。とはいえ、黙っていても退屈なのは事実。エヌラスは全身の古傷も癒やすように魔力を回す。体中を巡る血管に乗せて魔力を循環させることで代謝を促進させる。当然、その魔力量によっては治癒速度も段違いになるのだが、老廃物も体内から出てきてしまう。汗をかいたり、催したりと。生理現象とは切って離せない関係。
身体が発熱して汗ばむエヌラスに冷やしたタオルを当てて身体を拭き取るカルネ。決して悪いメイドではないのだが、姉が“出来すぎている”が為に比較的ポンコツ……訂正、完全にポンコツダメイドだ。
「病は気から。なので元気になりましょう。そーれ、がんばれ♡がんばれ♡」
「お前は俺をどう元気にさせたいんだよ……」
「……女体を夜明けまで貪り尽くす状態?」
「怒りのあまり痛みも忘れそうなんだが」
頼むからカルネ以外の人選で俺を看病してくれ。出来るだけまともな人選で。そんなエヌラスの願いが叶ったのか、扉をノックする音。
部屋に訪れたのはコンパとチーカマだった。
「えぬえぬ、様子を見に来たですよ~」
「怪我の調子はどうなの?」
「俺神様信じる」
「神様が何言ってるの」
パーカーの下はまだ包帯だらけだ。体組織の再生も決して楽ではない。コンパなら看護師として頼りになる、ただし注射を除いて。チーカマもあのメンバーの中ではまともな部類に入る。助かった、と胸を撫で下ろすエヌラスの一方、カルネは頬を膨らませていた。
「むー、なんですか。あれですか。私では不安ですか。ダメイドって言うんですか、ぷー」
「そういうわけじゃないです。単に暇を持て余していただけなんです」
「えぬえぬの看病のお手伝いですぅ」
コンパの手には救急箱。消費しているであろう消毒液などの補充も兼ねて来てくれたようだ。
「いや、悪いな。俺も早いところ怪我を治したい。というか治すつもりだったんだが」
「そこから先は言わなくていいわよ。みんな知ってるから」
向こうに到着したらちゃんと怪我を治すように釘を刺されたが、それについてエヌラスは一度アダルトゲイムギョウ界に戻る旨を伝える。理由としては大きく二つ。
ひとつ、怪我の治療。どうしたってゲイムギョウ界よりもアダルトゲイムギョウ界の方が馴染む。
ふたつ。大魔導師の下で修行をし直す。両手の炎と風の魔術紋様が壊されている以上は電導だけでこの先の戦いを乗り越えなくてはならない。それは至難の業。自らの力不足は嫌というほど身に染みているので、それも含めて。
コンパは包帯を巻きつけながらエヌラスの話に耳を傾けていた。
「えぬえぬも考えてるですねぇ」
「悩みのタネが多すぎて解決しきれん」
「カルネですか、エヌラス様!」
シャラップ。
「そういえば、スピカとカルネの二人はどうするの? 一応あなたの関係者でしょ?」
「……行く宛は?」
「スピカがそれとなく四女神に聞いてみたけど、結果は全員ノーね。癖が強いというか、アクが濃いというか。他の教会職員にとってあまりよろしくないって理由ね」
「まー、そりゃそうだろうなぁ」
「そんなぁ。このままじゃゲイムギョウ界の有名野良メイドとして大道芸人やっていくしか」
「将来設計出来てんのかよ」
「目指せゲイムギョウ界の名物!」
「荒野をさすらえ馬鹿野郎」
「殺戮のギャングみたいになりますよ?」
「やらかすんじゃねぇよ!?」
こうなれば――予定調和と言うべきか。元の鞘に収まるしかないのだろう。ちょうど人手が欲しかったところだ。
「仕方ねぇな。カルネ。スピカと一緒にうちに来い。仕事がある」
「え、でも万年根無し草、浮浪者同然放浪神様のエヌラス様って雇えるだけの甲斐性ありますか? お賃金は? 週休何日ですか? 有給とれます? 産休とか」
「首から下をコンクリ詰めにして九龍アマルガムの漁村に捨てんぞテメェ」
「勘弁です!」
「家のリフォーム手伝え。詳細は向こうついてから話す」
ラステイションの廃工場地帯、その一角を格安価格で買い取ってそのままだった。急ぎの用事でも無かったからいいのだが、ちょうど暇をもてあます野良メイドがいるのなら手間が省ける。人間、楽したい時は楽をするべきだ。神様でも以下同文。