※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード197 虎の尾を踏んで引っ掴む怖いものしらず

 

 

 ――リーンボックスへ帰港した客船。二泊三日、エヌラスはスピカに半ば監禁状態で客室に閉じ込められていたが、それが功を奏して開きかけた傷口までもが癒着していた。このままの調子でいけば一月と待たずに完全復活できるだろう。両手の魔術紋様以外。

 港に到着したエヌラス達を待っていたのは意外な人物だった。

 

「あれ、ユウコだ。なになに、わたし達の出迎えー?」

「ねぷちゃん達、おっかえりー! いやー随分長い旅行だったみたいだね。どう? リフレッシュできた?」

「ええ、勿論よ。それに現地のレポートもちゃんとまとめたから、後はこれをハァドラインに提出するだけね」

「とはいえ、彼らも立場上はわたくし達女神の敵なのですけれども。今回は大目に見て差し上げますわ」

「そうね。そもそも、リーンボックスのハァドラインだもの。あなたが対処しなくてどうするの? ベール」

 うんうん、と一人納得した様子で頷くユウコの視線が、エヌラスで止まる。

 

「…………」

「……私はできる女だから、あえて深く聞く気はないから。そこんところよろしく」

「おう……」

「で。どう? 気は晴れた?」

「まぁな」

「……なんでちょっと疲れた顔してんの」

「男の辛い話は女にはわからんだろうよ……」

 遠くを見つめ、何かを察したユウコはネプテューヌ達を見渡した。

 

「お前一体何をしに旅行に行ったんだっけ?」

「怪我の治療です……」

「私が、今すぐ、集中治療室送りにしてやろうかぁ? んん? 面会謝絶で身動きどころか言葉一つ発せれないぐらいに」

「全責任を俺に押しつけるな」

 むしろ押し倒されてたわ。

 

「そんなことよりだ。なんでお前リーンボックスにいるんだよ。プラネテューヌにいたんじゃないのか?」

「ふふん、聞いて驚け。私がお仕事をすることによりゲイムギョウ界が全体的に活性化! 今やユウコさんの名前はゲイムギョウ界じゃちょっと知れ渡っちゃったところよ。いやー、有名人はつらいわ」

「鼻高い話のところ悪いんだが、それっていいのか?」

「? 何言ってんの、エヌラス。良いに決まってんじゃん。経済が潤う。教会が潤う。国民の生活が豊かになる。みんなハッピー、笑顔溢れる優しい世界じゃんか」

「いや、それはそうなんだが……」

 言いたいことはそうではなくて……。

 エヌラスの疑問を理解している人間がその場にはいなかった。ユウコの話を聞く限りでは完全に美味しい話だ。後は女神様達がそれぞれの国に戻ってお仕事をすればいい――しかし、だ。

 

「アダルトゲイムギョウ界の住人であるお前がそこまでするのは良いとして。その後釜、誰が引き継ぐんだ?」

「あー…………………………」

「あとお前、あくまでも女神不在の間、代理で仕事を引き受けるだけのはずだったんだが」

「えー…………………………」

「まさかとは思うんだがユウコ。途中からいつもの調子で仕事をしていたんじゃないだろうな」

 エヌラスの質問に、ユウコは静かに視線を逸らした。それとなく逃げようとする肩を掴む。

 

「そこんとこ、どうよ?」

「……ぴぃちゃんかわいくてね? そりゃもうどえらくかわいくて……」

「うん。母性本能がくすぐられた、と」

「一秒でも長くぴぃちゃんと触れ合いたくて――」

 もうその時点でエヌラスに嫌な予感がよぎる。

 ユノスダスの勢いで仕事をしていたのならまだ良いが、まさかこの商業国家国王は――!

 

「……超、がんばっちゃいました…………不思議だよね、私が仕事してたらシェアが上がったり下がったりして」

「経済効果の副作用は?」

「ごめんなさい。シェアが大暴落してます……」

「おまえぇぇぇぇぇっ!?」

 世論では「女神様、いらんくね?」という女神不要論ではなく「時代の最先端はこれ! 経済戦争!」という風潮にすげ替わっていた。つまりは、まぁそういうことである。商業国家国王が張り切りすぎた結果、ゲイムギョウ界の世論すら動かしてしまった。良くも悪くも平和的な方向へと。

 怒られるのではないかと涙目で怯えるユウコに、エヌラスは二人で頭を下げた。それに四女神は自分達が遊んでいたということもあり、代理で国を動かしてもらっていた手前大きく出ることはできなかった。

 

「まぁまぁ、ユウコさんの経済手腕のおかげでわたくし達の世界が潤っただけではありませんか。目くじらを立てるほどではございませんわ」

「おぉー、流石はベール、おっとなー! わたしとしてはこのままプラネテューヌで家政婦やってもらっても全然オッケーなんだけどなぁ」

「お姉ちゃん、駄目だよ。ユウコさんもユノスダスでのお仕事があるんだから」

 そうなのだが、この国王。こと経済に関する手腕に関しては右に出るものはいないどころか頭一つ飛び抜けてぶっちぎりの独走状態である。

 

「ユノスダスなら大丈夫。国民に、もし経済が右肩下がりならその分の税率引き上げる通達してあるから」

「こわっ」

「私の予想では一%未満に治まってるとみた! もし裏切ってたら、血税で補ってもらうから大丈夫大丈夫。あっはっはっは、死ぬ気で働いてもらうし、私も働かせる」

 鬼か――吸血鬼である。

 ならば、悪魔か――吸血鬼なのだ。

 もしそれで上昇していたらどうするのか、税率でも引き下げるのか? アイエフがそれを尋ねると、笑いながらユウコは否定した。

 

「そんなわけないじゃーん。据え置きだよ。むしろそれなら、稼がせるから税金引き上げる」

「どっちにしろ国民が悲鳴あげるんじゃないの!?」

「泣いて喜ぶよー、税金収めてりゃ私は言うこと無いもん。ただし、犯罪者は根絶やしにする」

 その為のエヌラス。軍事国家アゴウ仕込みの警備隊並びに電脳国家インタースカイ仕込みの流通ルート。唯一の逃げ道は九龍アマルガムは、そもそもにして生活自体が最難関なので無問題。

 

「ただ、私もいい加減ユノスダスが恋しくなってきたなー。名残めちゃ惜しいけど一旦向こうに戻らなきゃ。そーだ、せっかくだしお土産とかも買っていこう、そうしよう!」

「お前は切り替えはえーなぁ……」

 いつもの姿を見ると安心する。

 

「それで、なんでリーンボックスにいるんだ?」

「なんでって、そりゃ出迎え――と、私の本来の目的はこっちかな。リーンボックスって軍事企業いっぱいあるじゃん? 例のハァドラインも含めて」

「ええ。わたくしのリーンボックスは他の三国と違って陸続きではありませんもの。中でも海運関連には力を入れてますわ」

「そう、それ。歩きながら話そうか」

 ユウコが港に来ていたのは、その視察も兼ねてだ。

 

「ハァドラインがほとんどの企業を買収していて、ラステイションの方まで手が伸びてたからそっちは私が押さえて一件落着したんだけどさ」

「ユウコ凄いわね……」

「あたぼうよー。経済打撃与えてやったらおとなしくなったよ?」

 サラリと怖いことを仰る。

 

「それで私も気になって見回りしたら、出てくる出てくる怪しい話がわんさかと芋づる式に」

「ベール、貴方そんな企業を放っておいたの?」

「むしろ今までおくびにも出さない動きをしていた企業の尻尾を掴んでいるユウコの方が恐ろしいと思うのですが……」

 ベールが冷や汗を流していた。この国王は金が絡むと途端に目の色が変わる。

 

「そこで片っ端から色々と表沙汰にしょっ引いてきたんだけどね、流石は大企業。あの手この手で金を湯水のように使ってもみ消してきてさぁ」

「それを相手に一人で立ち回ってるお前どうなってんだ、段々怖くなってきたぞ」

「各国の教祖様達を説得してそれなりに支援してもらってるよ? 大丈夫、私は一人じゃないから! どっかのバカと違って!」

「俺か?」

「そう!」

「俺は泣きそうだ」

「それで、話を戻すね。その中でも特に目を引いたのが、空中ライブ会場建設計画」

「それは――」

「リーンボックスで秘密裏に進めていた、5pb.ちゃんの為に用意していたライブ会場ですわね。四女神式典会場としてもインパクトのあるモニュメントとして建造させていたはずですが……もしかして」

「うーん、教会発注ならちゃんと視察した方がいいよー? 建築会社、横からアームドソウルスの手が入ってて殆どあっちの企業が好き勝手やってたみたいだから」

「ユウコってぐぅ有能だよな。俺いらなくね?」

「なーに言ってるの。こんなか弱い乙女に荒事任せようっての? 私が情報集めて、お前が解決! ツーマンセル、コンビネーション! というわけでお願いね」

 

 ――か弱い、乙女……? 一同が疑問符を浮かべた。

 

「か弱いって、どういう意味だったかしらね……」

「言うな、アイエフ。か弱いって言ってるならか弱いんだろう、あいつん中では」

 ともあれ、戻ってきて早々に女神様達は仕事に困らないようだ。

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