超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
生身で放り出されるゲイムギョウ界の青空。
「いやー。私、じつのところパラシュート降下って一度でいいから体験してみたかったのです」
「やったねスピカ姉! しかも無料体験という粋な計らいだよ!」
「言っている場合かバカ姉妹ぃぃぃーー!?」
切り替えの早いメイド姉妹は既に自由落下を楽しんでいるようだが、笑っていられる状況じゃない。このまま何の対策も取らなければ地面に激突すること間違いない。
「ええいチキショウ! さっきのエンジン音の時点で嫌な予感はしていたが上昇速度早すぎるだろ! ロケットエンジン式点火とはいっても!」
「ふふ、リーンボックス脅威の技術力の結晶ですわ」
「お前は落下しながら余裕そうに腕を組んでるんじゃねぇよベール! なんとかしろ!」
「あ、わたくしは女神化すれば飛行能力がありますので。変身」
「テメェ!」
「私も大魔導師からの餞別の品として受け取ったこのコントラバスがございますので。これを起動させるとなんと鎧騎士に」
「テメェもかスピカァァァーーー!!」
「あーれー」
「ユウコぉぉぉっ!?」
「あっはっは、いや私とか飛行能力何もないからさーーーー……」
「フェードアウトしてんじゃねぇぇ! ハンティングホラートリプルシックス!」
エヌラスが即座に無機物生命体である自動二輪を呼び出し、深紅の飛行形態でユウコの元へと走らせる。女神化したベールも5pb.ちゃんを抱えて落下速度を減速させていた。スピカもか担いでいたコントラバスのケースから無数の部品を展開させると、自身に纏う。左腕に身体を隠せるほどのクロスボウを装備した鎧騎士がそこには出現していた。背中に背負った噴射装置で飛行すると、カルネを背中に乗せて落下速度を緩める。
そうなると、目下自衛手段を持ち得ないエヌラスだけがぐんぐんとゲイムギョウ界の地面に向けて近づいていた。
「だぁぁぁーー!!
エヌラスは半ばヤケクソになりながら変神する。もはや青い香りすら鼻で感じ取れるほど地面に近づいている、反射的に
「――ゲホっ、えほっ。くそ……!」
戻ってきて早々の災難続きに毒づきたくもなる。
「エヌラス、大丈夫ですか!?」
「死んでも死にきれるか……! そっちは!」
何事もなく無事に着地するグリーンハートに抱えられた5pb.ちゃん。スピカの背中から飛び降りるカルネ。そして、地面近くまで滑空してきたトリプルシックスから駆け寄ってくるユウコがブラッドソウルを起こした。
「エヌラス、大丈夫!?」
「あぁ大丈夫だよこんちくしょうふざけやがってあんにゃろう! こっから空中ライブ会場ぶち抜いて沈めてやろうか!? やれってんならやるぞッ! 多少俺の全身の魔術回路が焼き切れたり半身不随になるか最悪植物状態だがそれでもいいってんならぶち抜くぞ! ベール。ゴーサイン!」
「完全完璧にノーですわ。やめてください」
「ちっ……そこまで言うなら止めておく。命拾いしやがって……」
「エヌラス、お前って変神するとホント好戦的ってか狂暴だよね……」
咳き込んで吐血しながらも変神状態を解除すると、エヌラスは膝を着く。
状況は、とにかく最悪だ。ハァドラインは武装蜂起する。魔術回路は不調を極め、全身が痛む。とにかく、リーンボックスの状況を他の三女神に知らせなければ――エヌラスがD-Phoneを取り出すが、画面がひび割れていた。タッチパネルが死んでいる。液晶画面を埋め尽くす蜘蛛の巣状の傷跡にエヌラスは怒りのあまり思わず地面に叩きつけた。
「ファーーーーッキューーー!!! もう無理だ! 限界だ! 俺にこの状況をどうしろってんだオラァン!!」
「落ち着いて下さいエヌラス様! おっぱい揉みますか! ユウコ様の!」
「寝言ほざくなメイドおらー!」
「すびばぜん!?」
ユウコの手によって地面にダイレクトキッスをかますスピカが沈黙する。状況についていけない5pb.ちゃんがグリーンハートに何か聞きたそうに視線を向けた。
「あの……」
「気にしないように。アダルトゲイムギョウ界ではああいうノリなのでしょうし」
「あ、はい」
「とにかく、今は教会に戻って――」
「ちょっと待ってべるちゃん。今スマホのニュースアプリに速報が流れてきた! リーンボックスの教会をハァドラインが占拠って大見出しが!」
「なんですって!?」
「お前、ゲホ。すっかりゲイムギョウ界に染まってんな……」
中継が繋がっているのか、映像が流れている。その画面を覗き込むエヌラス達だが、いかんせん見づらい。
内容は、見ての通り。女神不在の教会を守るようにハァドラインのロボット達が輸送ヘリから降下していた。その教会強襲組を率いているのは五体の軍事ロボ。アームドソウルスの幹部達がリーンボックスの教会を占拠している。
「んー、これは……」
「完全にテロ成功してますね」
「これでは教会に戻れませんわ」
「お、犯行声明。というより演説始まるみたい」
『ゲイムギョウ界の皆ぁ、元気にしてるかぁ! リーンボックスのハァドライン、軍事企業アームドソウルスのプレジレントだ! 今頃ゲイムギョウ界ニュース速報で見てる諸君もいるだろう! 見ての通り、リーンボックスの教会は俺達が占拠した! だが安心してくれ、なにも危害を加えようってんじゃない。だが万一に備えて避難だけはしておいてくれよ!』
大仰な身振り手振りを交えて、カメラに向けてプレジレントは自分達の目的を明らかにする。
『ゲイムギョウ界の四女神。和平協定が結ばれて以来、武力によるシェアの争奪は禁止された! それ以来というもの平和そのものだ。実に喜ばしい――だが、俺達には戦争が必要だ! そのための女神代理戦争! それ即ち、信仰する女神こそが最高であると証明するための戦いをここに宣言する! 聞いているだろう、プラネテューヌのB2AM! 聞こえてるか、俺達の大本ラステイションのハァドライン! 今は俺達がアームドソウルスを名乗っちゃいるが、アーマードカンパニアが社名だ、そこんところよろしく! だが、それじゃあ仲間はずれがいるな――そう、白の女神の治めるルウィーにはハァドラインが存在しない! ああまったく嘆かわしい』
エヌラスの記憶では、アイエフからそう聞いていた。プレジレントはそこで一度演説を区切ると、背後のスクリーンにゲイムギョウ界の地図が映し出される。
『俺達の戦争に、ハァドラインの存在しないルウィーは不要だ! ここまで言えば分かるだろう、賢明な視聴者のことだ。そこで――俺達の作戦を公開しよう! なんせこうでもしなきゃ意味がない。このままじゃただのテロ行為だ! あまりにナンセンスすぎる。とはいえ俺達も火急のことで用意が出来ていない! まず一週間は猶予を与えよう! 俺達がルウィーを目指して侵攻するのはそれからだ! 聞こえてるかぁーい、パープルハート! ブラックハート! ホワイトハート! 我らの信仰するグリーンハート様は教会に戻ってこれないだろうからなんとか面倒見てやってくれよぉ、ハハハハハ! それじゃあゲイムギョウ界の視聴者諸君、ごきげんよう! グッドラックだ!』
最後にサムズアップして演説の映像は途切れた。
猶予は一週間。重い沈黙が流れる。
「今頃ブランはブチギレてるでしょうね」
案の定。教会に到着するなり、映像を見て今にも暴れだしそうだった。
「どうするの、エヌラス」
「予定に変更はない。向こうが一週間の猶予をくれたんだ。俺とユウコはアダルトゲイムギョウ界に戻る」
一週間で自分がどこまで鍛え直せるか分からないが――大魔導師のことだ、なんとでもしてくれるだろう。ただし地獄に首を突っ込むはめになるだろう。
「スピカとカルネはラステイションに向かってくれ。デンゲキコかファミ通に聞けば俺の買い取った廃工場に案内してくれるだろうし、リフォーム頼んだ」
「分かりました。行きますよ、カルネ」
「はいほいへーい、スピカ姉」
「ベールはどうする? 教会に戻れないんじゃどうしようもないだろう?」
「ええ、そうですわね。このままノコノコと戻っても勝ち目はありませんもの。とはいえ、他の国に泊まるのも気が引けますわ」
「そりゃまたなんで」
「だって、今回の慰安旅行に誘ったのはわたくしですし。事件の発端であるリーンボックスがこの有様では面目が立ちませんもの」
確かに。
「5pb.は?」
「ボクは事務所がリーンボックスですから、無理に離れるわけにも……」
「そうだよなぁ。上からの指示待ちになるよな……大丈夫だとは思うが」
そうなると、今自分達が取れる最善の行動は限られてくる。
「……しかたねぇかぁ……?」
無理やり自分を納得させるしかなかった。