超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――商業国家ユノスダスでは、久しぶりに国王が帰還してきたことによりパレードが開催されている。
「キャーユウコ様ァァァァァッ!!!」
「お帰りなさいませ国王様ァァァーーッ!!」
「アアアアァァァアアアッ!」
一部騒ぎたいだけの国民がいるようにも見えるが気の所為にしておこう。そんなユノスダス国民達の熱狂的な歓迎に、ユウコは相変わらずの快活さで手を振って答えていた。
「イェイイェイイェーイ、愛する労働者諸君、たっだいまー! 元気にしてたかなー、いい子にしてたかなー? みんな大好き国王様のおかえりだよー、歓迎しろー!」
『ウッヒョォォォォオオオオオッ!!!』
後の掃除を考えない紙吹雪。道行く露店もノリと勢いの割引セール。
「あっはっはっは、ありがとー! ありがとーうみんなー!」
「ユウコ様ぁぁぁぁぁ!!」
「お母さぁぁぁんッ!!」
「マッマァァァァァッ!!」
「国王様ばんざーい!」
「おっぱーーーいっ!」
「エヌラス、ゴー」
「どぉりゃあぁぁぁっ!」
不謹慎な一部の騒ぐ方々を蹴り飛ばす凶悪な神様一名。まとめて病院送りに処す。
「なぁ、ユウコ。大丈夫かユノスダス。なんかやべぇ薬でもキメてんじゃねぇの?」
「いつも通りだと思うけどなぁ。あっれ~?」
腕を組んで、体ごと傾げるユウコの疑問符に答える相手は今のところ居ない。
その二人の後ろからついて来るのは、ゲイムギョウ界の守護女神。リーンボックスのグリーンハートことベール。キャリーバッグを引きずって目を輝かせながら辺りを見回していた。
「ここが、アダルトゲイムギョウ界なのですね。思っていた以上に普通の街並みで少し緊張がほぐれましたわ」
「さすが四女神の中でも大人なだけあるな。ただしベール。条件が一つだけある。絶対にユノスダスから出るんじゃねぇぞ。何が起きてもだ」
「あら、なぜですか?」
「ここがアダルトゲイムギョウ界で一番安全だからだよ。というわけでユウコ、ベールの世話は任せた」
「まっかせて。例えゲイムギョウ界の女神様であろうとユノスダスで生活する以上は働かざるもの食うべからず!」
「貧乏人は死ね」
「死ななくていいよー、養うよー。働かせるから。お前はどーしてそう余計な一言付け加えるんだよ、この、この」
「いててて」
小突かれるエヌラスを見ていたベールが、そんな微笑ましい一面に思わず笑みが溢れる。
「お二人は本当に仲がよろしいですね」
「あ、でも女神様だろうとユノスダスで働いてもらうからね」
「んじゃ、任せたぞユウコ。時間があんまりないんだからな俺」
「はーい。それじゃ行ってらっしゃーい」
ユウコに見送られて、エヌラスはハンティングホラーで安全運転を心がけながらユノスダスから九龍アマルガムへと向かって走り去っていった。
「さーて、いつまでもお祭り気分なユノスダスのみんなー、私がいない間の経済状況どうなってるかなー? というわけでべるちゃん、教会に案内してあげる」
「これからしばらくお世話になりますわ」
「いいよいいよー、私もゲイムギョウ界じゃお世話になっていたし」
ベールが大通りから案内されたのは、ユノスダスの政治中枢。教会――遠目からでも分かる学園のような外装にベールは「まぁ」と歓喜の声をもらした。
「素敵ですわね。やはりアダルトといえば学園モノは外せませんわ」
「え、何の話? 制服が好きとかそういう話?」
「セーラー服とか良いと思いません?」
「うーん、セーラーねぇ。うちじゃ取扱中々ないよー? そういうマニアックなの」
「マニアック扱いですの!?」
「いやだって。古いし」
年代物となればちょっとやそっとじゃ手に入らない。ユノスダスはそういう意味でも時価の変移が早いため、一時の流行がそれこそ台風のように過ぎ去っていく。逆に根強いブームの場合は表に出てこないため探すのが手間。
「しかし、あいつも思い切ったことしたなぁ。べるちゃんをアダルトゲイムギョウ界に連れてくるなんて。条件付きとはいえ」
――あの後、ユウコの携帯からノワール達にベールをアダルトゲイムギョウ界で保護するとエヌラスが提案した。理由として、事件の発端であるリーンボックスの守護女神が余所の教会で保護されていたら加担者とみられる可能性がある。仮にハァドラインの言葉通り飲み込んでいたとしてもだ。それならばいっそのこと、という苦渋の決断。
エヌラスはアダルトゲイムギョウ界にネプテューヌ達を誰一人連れてくる予定はなかったようだが。
「たっだいま愛する教会で働くみんなー! おげんきー!?」
「きゃあ、ユウコ様!」
「ユウコ様のご帰還よー!」
「きゃーユウコ様ー!」
「ほ、本当に大人気ですのね……」
「そりゃあもう、国王様ですから!」
「これならばシェアエネルギーも不足ないのでは?」
「困ったことないねー。あ、ただいまー。私が居ない間の書類はまとめて執務室に持ってきてねー」
すれ違う教会職員に指示を飛ばしつつ、ユウコはベールを寝室に案内した。
赤を基本色とした室内に、天蓋付きベッド。備え付けられているソファーに、ローテーブル。加えてシャワールーム。デスクにはパソコンまでセットで置いてある。
ちょっとしたホテルばりの部屋の拵えにベールはユウコの顔を見ていた。
「えっ」
「ん? なになに、どうかした?」
「あの、わたくしはこちらで寝泊まりを? このような豪勢な場所で?」
「だってお客様だし。当然でしょ」
「しゅ、宿泊代とかおいくらほどで?」
「まさかそんな、お客様だよ。お金は取らないよ。あ、でも再三繰り返すけれども、ちゃんと働いてもらうからね」
気にしないきにしなーい、と笑いながら手を振るユウコにベールはなにかが負けた気がする。
「よよよ、胸だけでなく国を治める立場でも負けた気がしますわ……」
「余裕があればユノスダスの観光案内もしたいところなんだけど、私もお仕事溜まってるから――明日だね。明日までに区切りつけておくから、それまでべるちゃんはぁ。そうだねぇ……教会の案内でも職員にさせておくよ」
「教祖のような方はいますの?」
「うちは居ないかな。九龍アマルガムには最下層にいるらしいけど、謁見できるのは大魔導師だけだし眉唾。ちょっと待ってて、すぐ職員呼ぶから」
ベールが荷物を部屋に置いて一段落している間に、教会職員がユウコの元に到着した。
「お帰りなさいませ、国王様! なにか御用でしょうか!」
「うむ、よきにはからって! こちらの客人に教会の施設案内を!」
「かしこまりました!」
右手で敬礼する職員。赤髪、ケモ耳、軍服を着込んでいる。警備員を兼業している証明の真っ赤な腕章には大きくユノスダスの国旗が描かれていた。
「では、自己紹介させていただきます! 私はユノスダス教会職員兼警備員のアイルです!」
「わたくしはベール。諸事情によりこちらでお世話になりますわ。アイルさんの、そのケモミミは本物ですの?」
「耳も尻尾も本物です、はい!」
元気ハツラツなアイルと名乗った少女がたわわな胸を張る。やはりデカイ。国王に負けず劣らずに。
「じゃあアイル、あとはよろしく! 私は執務室にいるから何かあったらすぐ連絡いれてねー。いってきまーす」
「はい、お任せ下さい国王様! アイル、がんばります! ではベール様、教会のご案内をさせていただきますね」
「何分ユノスダスは初めてですので、よろしくおねがいしますわね」
教会の仕組みとしては、ゲイムギョウ界と大きな違いはないようだ。教会管理区が一般向けに開放されており、ユノスダスではそこが教会直売所として開放されている。限定販売の品も多数用意されているが、連日品切れ中で大繁盛大好評。
教会まで一直線の目抜き通り。教会通りとも呼ばれている道では時期によっては屋台が並ぶこともあるらしい。
「それにしても、教会は上ではなく横に広いのですね」
「ああ、それはですね。ユウコ様が昇るより走った方が早いからです。何かあったらすぐに駆けつけられるように、だそうですよ」
「もっともな理由ですが、なにかおかしいような……」
「全力疾走すると小一時間くらいでユノスダス横断しますよ」
「足が速いにもほどがありませんか!?」
吸血鬼ですからねー、と笑いながらアイルは教会の案内を続けた。商業国家というだけあり、資料室だけでなく地下には過去に押収した品々が隔離されている。世に出回らないように。
「他にも教会では家屋賃貸サービスや教会印の特産品やブランド品等などを他国へ輸出入しております、はい! アダルトゲイムギョウ界の台所と呼ばれていますからね、美味しいもの沢山で困りますよホントにもう。特にドーナツですね! 絶品です!」
「紅茶と一緒に食べてみたいところですわね」
「紅茶と言えば、オススメのカフェテリアがありますよ。電脳国家インタースカイ国王もお気に入りなのか、よく見かけますし。お仕事してるんでしょうかね、あの眼鏡の人!」
「インタースカイ……?」
海上に建設されたドーム状の電脳国家。国内は半自動化が進められており、インタースカイの住人たちは大半がユノスダスで生活をしている。――現世では。
「どういった方なのでしょうか、インタースカイ国王様は」
「そうですねー、これといってパッとしない見た目で中肉中背、特徴らしい特徴がメガネくらいの面白みのないいじられキャラです」
「言われたい放題ですわね……」
「あとお人好しです、はい! 良くも悪くもお友達以上にはなれない方ですね、私は!」
カフェテリアで盛大にくしゃみをしている国王が約一名、当人である。
「他にはどういった国々が?」
「北方には山間の小国、ヒナグラシがあります。そこから少し離れた島には魔女が住んでるとかなんとか。後は南方に軍事国家アゴウですね。ユノスダスで見かける輸送ロボとかは大半、アゴウ産です! 機会があればご紹介いたしますね!」
「その、くーろんあまるがむ? というところはどういったところなのでしょうか?」
「知りません! 私行ったことありませんし、生きて帰ってこれる自信もありませんです!」
アイルが嘘を言っているようには思えない。というよりも裏表とか策略とは無縁のように見える快活さだ。
「犯罪国家、地下帝国。アダルトゲイムギョウ界の災厄権化、犯罪の苗床。凶悪犯罪者が泣いて逃げ出せず死屍累々。国訓が『生きた人間より死体の方が価値がある』ですからね、命が惜しければ近寄らない方が身のためですよ、絶対!」
「そうまで言われると怖いもの見たさで一度くらいは……」
しかし、そんなところへ行ったエヌラスもそうだが。そんな国を治めている大魔導師はやはりとんでもない相手なのだとベールは思った。そして、やはりアダルトな女神としてはこのゲイムギョウ界を踏破してみたいとさえ思う。
――その頃、エヌラスはと言うと、九龍アマルガムに到着するなり例のごとく犯罪に巻き込まれていた。しかも地下帝国で。
「いつ来ても変わらねぇなここの住人共はぁぁぁぁぁっ!!」
扉を開けて三秒でマフィアの抗争勃発、流れ弾で一般市民が逃げ惑い、鉄砲玉が抱えた手榴弾でトラックが脱輪して歩道に突っ込む大惨事。騒ぎに乗じて食い逃げとひったくりと強盗が同時多発。おまけに破壊ロボ。混乱と混迷と騒乱と乱痴気騒ぎが挙を成して襲い掛かってくる雪崩のような怒涛のクライム・アクション。エヌラスは最低限切り抜けつつ、教会までの最短ルートを突っ切ろうと意を決してアクセルを踏み込み――騒ぎを聞きつけた大魔導師に見つかった。
「散歩の邪魔だ」
一区画まとめて重力崩壊に巻き込まれてビルが倒壊したりしているが概ねいつも通りである。一般市民が潰れたヒキガエルになってたりするが多分気のせいだ。気の所為にしておく。気のせいにさせてくれ。
ちなみにエヌラスもその余波でハンティングホラーごとひっくり返っていた。
「……なーにをしているんだお前は?」
「全身全霊十割テメェのせいだよっ!!!!」