超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
大きなネプテューヌを教会メイドと共に寝室へ運び、ベッドに寝かせるとエヌラスは自室へ向かって歩き出す。その時、不意に教会が揺れた。外からの衝撃だ。剣姫と大魔導師のじゃれ合いはまだ続いているようだ。
剣姫の目指す王道。大魔導師の歩む覇道。両者は顔を突き合わせる度に国を落としかねない。それが幸いなことに九龍アマルガムでのみ勃発しているのだから、出不精な大魔導師に感謝ぐらいしてほしいものだ。
――記憶にある限り、剣姫が生存したことは一度もない。死因は必ず、アゴウの為に。国家大願成就の為に。誰よりも愚かな、誰よりも愛された唯一にして絶対の勝利の女神。
「……」
ドラッグシガーを懐から取り出して、エヌラスは喫煙所に腰を下ろす。自分は何度、この世界に手を掛けてきただろうか。数えるのも億劫になるほど駆け抜けてきた凄惨なコンティニュー。誰も救えず、何も助けられず、すり減っていくばかりの自分がようやく手の届いた――超次元。
それでも、何処にも、“絶望の妹”はいなかった。きっと、この世界の何処を探してもいないのだろう。アダルトゲイムギョウ界の住人ではない自分が、もしも……万が一、死んでしまえばどこに消えてしまうのか。今はただ、そればかりが恐ろしい。
もう二度と、この壊次元には戻ってこれないだろう。もう二度と、超次元の女神達に出会うことはないだろう。自分は、どこまでいっても結局は望まれない魔人なのだ。
「お、アンニュ~イ」
「なんだ、ムルフェスト」
「お風呂上がり? いいねぇ、のんびり肩まで浸かって朝までどっぷり」
「ゆでダコになってろ」
「ひどぅーい」
センチメンタルに浸っているエヌラスを見て、ムルフェストは相変わらずお気楽な笑みを浮かべた。隣に座ると、顔を覗き込むなりげんなりした表情。
「うへぇ、ヤク臭い……」
「うっせ」
「そのタバコさー、九龍アマルガム製でしょ? なんで柚子の香りするの?」
「どうでもいーだろが、てめぇには」
「そだね。でも、その香りで隠しきれない臭いがするんだよ」
「……」
「エヌラス。知ってる? 隠しても隠しきれないものを本性って言うんだよ。どう取り繕ってもどう足掻いても、どんな手で隠しても」
「なんだよ、いきなりだな」
顔を近づけて、ムルフェストは血のように赤い瞳を細める。
「ひどい臭い。魂が焦げ付いているような臭いにこっちがどうにかなりそう」
「…………」
無視して、ドラッグシガーを吸い込む。柑橘の香りに混じって、僅かに香る異臭。悪臭。死臭――きっとそれは、取り繕ってきた今までの自分の傷の臭い。大魔導師は確かに、魔術回路を調整してくれた。全身の不調を取り除いてくれた。しかし、それまでだ。傷跡までは治してくれなかった。
ムルフェストは、お気楽だ。能天気。まるで何も考えていない。怠惰を極めて、堕落を極めて、月面国家国王の矜持すら感じさせない奔放さ。しかし、だがしかし――この月の吸血姫は時折心の臓をえぐる程に鋭い時がある。本来は“そう”なのだろう。だが、なにもしない。何かを成そうとはしない。
「そうまでして、血と硝煙に塗れた手で掴みたいものは?」
「なんだろなぁ。今となっちゃ、漠然としか考えられない」
「えぇ~、そこはビシッと世界平和ぐらい言わなきゃ」
「無理言うな。俺にできることなんぞ悪党をしこたまぶちのめして、二度と社会に顔向けできない姿にしてやるくらいだ」
「むしろエヌラスが社会に顔向けできなくない」
「犯罪国家さまさまだぜ」
話をはぐらかして、ムルフェストもそれ以上は言及しようとはしなかった。しかし、そこで思い出したようにベールの名前を口に出す。
「そういえば、あの女神様。いいの? 此処に置いといて」
「明日には連れて帰る。剣姫もついて来るだろうが……まぁ、アルシュベイトが許さないだろ」
「でしょうねー、あーやだやだスポ根熱血体育会系は。むーちゃんはアダルトゲイムギョウ界でゴロゴロダラダラのんびり過ごしていたいのであった」
ゲイムギョウ界に興味はないのかとエヌラスが聞くと、悩む素振りを見せて。
「あぁんまりぃ~?」
全身を傾けながらそう答えた。
「知っちゃったら放っておけない。放っておかない。一番良いのは互いの不干渉。それが次元世界の戒律。基本中の基本。あっちもそっちもこっちもどっちもにっちもさっちもいかなくなっちゃうわけ、多次元宇宙は」
「そりゃ……そうだが」
「向こうが危険、こっちも危機が迫ってたら、どっちも救う? そりゃ無理って話。どっちかにしなさいな。それが出来ないから、私はこっちでのんびり過ごすの」
「ムルフェスト」
短くなったドラッグシガーの灰を落として、火をもみ消す。
「そういうことなら、こっちは任せたぞ。何があるか分からないからな」
「はいはーい。ま、ユウコが何を言い出すかはわからないけど、引き受けましょ。じゃーねー」
「俺も部屋に戻って寝るか……外の喧嘩終わりそうにねぇし」
今も時々教会が震動している。外の様子が気になるが、台風直撃の最中に川釣りにいくようなものだ。好奇心旺盛な自殺願望ならばお好きにどうぞ。
エヌラスが自室に戻ると、部屋から溢れる蒸れた空気に顔をしかめる。
「あ、おかえりーエヌラス。遅かったね」
「……あー……」
すっかり忘れていた。
サヤにベールのおしおきを頼んでいたのを。部屋に戻ってくるまでの間、触手でいじめてやれと言っていたのだが――そこには、全身を触手でがんじがらめにされたベールが全裸のサヤの手で弄ばれていた。胸を揉みしだかれ、舌が首筋を這うだけで声を押し殺している。
肉の触手で四肢を拘束され、無抵抗を強いられたベールの足元には水たまりのごとく愛液が伝っている。立っているのもやっとの状態で、何度も秘部を触手に嬲られていたのか、脚を震わせていた。呼吸も肩で整えるほどに乱れている。
「エヌラスが来ないから、もうちょっと太いのいこうかなー、お尻を広げちゃおうかなー、とか思ってたところだったんだ。よかったね、おねーさん。エヌラスが相手してくれるみたいだよ」
「ふあ、あぁひぅ! そこ、やめ、も、だめぇ!」
「え~? おねーさんの身体はこぉんなに悦んでるよ? ほぉら、ビクビクって中で震えてるの手に取るようにわかるもん」
「んひゃぁ!? あっ、ひっ、イッ――中で暴れ、て、っ!」
「――イきそ? エヌラス見てるよ?」
「!? いやっ! ダメ、エヌラス、見なひ、で――! あっ、ん! んハァ! んっ、ひィィィァァッ!」
ベールのスカートの裾からもぐりこむ肉の触手。入り口を広げ、中に入るなり肉襞と絡みつくように脈動してかき回す。背中を仰け反らしながら、ベールはエヌラスの目の前で絶頂に達しただけでなく、小水まで漏らしだす。
「ぁ……ダメ、エヌラス。見ちゃ……! わたくし……~~~~!」
「あーあ。エヌラスのお部屋なのに、おもらししちゃって汚しちゃったね……おねーさん?」
サヤが触手の拘束を緩めると、ベールはその場にへたり込んで泣きじゃくる。
「わ、わたくし……こん、な……」
「女神の威厳もなにもないな……」
「こんな――リョナゲーヒロインみたいなポジションでいいんですの?」
「好きだろ?」
汗ばんだ身体に服が貼り付いて、薄っすらと透けている。すっかり腰が抜けたベールを抱えてベッドに放り込む。服を脱がせると、サヤに渡す。
「あぁ、きっとわたくし、この後は筆舌に尽くしがたいあんなことやこんなことまでされて……エヌラス無しではダメな女神に調教されてしまうのですわね……」
「疲れた。寝る。ベール、抱きまくらな」
「――――――――………………え? わ、わたくし今。とても信じられない一言を聞いたような気がするのですが」
「ぐぅ」
「…………」
ベールは、絶句していた。まさか、まさか。まさか! これだけ焚き付けておいて、これだけ人をその気にさせておいて、期待をさせるだけさせておいて! 事もあろうに!
よりにもよって、そのまま寝るとは――!
「え、エヌラス? エヌラス。わたくし、今ならどんなお仕置きでも受けますわよ? 身体が疼いて仕方ないですわ? 身体が火照って、どうしようもないんですのよ? ですから、あの」
「…………ぐぅ」
「エヌラス~~! 起きてくださいませぇ~! 生殺しだけはイヤですわぁ」
ベールの悲痛な懇願も虚しく、エヌラスは完全に寝落ちしていた。しかし、しっかりとベールの身体は抱きしめている。ちょっとやそっとでは抜け出せそうにない力で、離すまいと。頬を膨らませながら、ベールは仕方なく身体を抱きしめあって眠ることにした。
目を覚ませば、すぐにリーンボックス奪還の為にゲイムギョウ界に戻らなくてはならない。