超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
プラネテューヌ国境、そしてラステイション国境の防衛部隊からの報告を耳にして、パープルハート、ブラックハートは我が耳を疑った。
リーンボックスは島国だ。それに一週間の猶予が与えられた間、こちらから打撃を与えていたにも関わらず――なんだあの馬鹿げた物量は。おまけにベールはまだ帰ってこない。
「ちょっとエヌラス! 本当にベール帰ってくるんでしょうね!」
「うっせぇ知るかそんなこと! 話が違うじゃねぇか何だあの馬鹿げた艦隊総数!」
「なんでちょっと嬉しそうなのよ!」
「漢の浪漫!」
「黙ってなさい!」
「うぃっす!」
《こちらラステイション防衛隊――ブラックハート様》
「聞こえているわ。どうしたの」
《空が――なんだ、アレは! まるで――流星だ! 鋼鉄の流星群だ!》
「ハァ!? 何を寝ぼけたことを言って……いえ、こちらでも目視したわ! ネプテューヌ、聞こえる!」
《ええ、プラネテューヌでも確認しているわ。まさかこんな方法で一直線にルウィーを目指すというの……?》
ブラッドソウルが目視した敵の前衛部隊は隊列を組んでいた。直線的な軌道ながら、しかしその速度は音速を超えている。防衛隊の奮闘もむなしく、遙か上空を突破されてしまえば為す術もない。その上、前衛艦隊からの支援砲撃が飛んできていた。今頃防衛隊は上陸作戦さながらの戦場に身を投げている。
「ユニ! 迎撃できる!?」
「やってみる!」
ブラックシスターが照準を定めた矢先――先陣を切っていた機体の中から黒煙が吹き出した。最初は一機、それから二機と徐々に増えている。
「さすが!」
「ち、違うわ! わたしまだ撃ってない!」
「……もしかして、整備不良か? 適当な仕事しやがって」
こちらとしては有り難い話だが。しかし、先頭の部隊が続々と背面の大型ブースターをパージしてラステイションへと降下していく。それを見たブラックハートが迎撃に向かう。既に住民は避難済み。静まり返った街に着地した機体総数、十二体。
左肩のエンブレムはいずれも十二星座を象った物。
《――お初にお目にかかる、ブラックハート。我らは武装企業戦闘実働部隊、ゾディアック隊》
「御託はいいわ。無断で領空侵犯のみならず、土足で人様の土地に入り込んでいるのだもの」
《フッ、話し合いの余地はないか――》
《おしゃべりは早々に切り上げるぞ、ナンバーⅡ》
《始めるか》
「ええ、かかってきなさい。たかが十二機、三分もあれば十分よ」
上空でブラックシスターとブラッドソウルによる迎撃が始まっているが、効果は薄い。弾幕を切り抜けてルウィーにまで到達しようとしていた。だが、まだ少数だ。
「聞こえるか、ブラン! 何体かそっちに抜け――」
《ぶっ潰れろぉぉぉぉっ! あぁ!? なんだって!?》
「なんでもありません!」
ラステイションからでも見えるほどの土煙と爆発が見える。どうやらホワイトハート様はご立腹の模様だ。怒髪天を衝くとはこのことか。あの調子ではルウィーの国境を越えるのはほぼ不可能に近いだろう。見たところ、ロムとラムの二人も地形を活かした氷の魔法で防壁を形成。即興的ではあるが、相手の進路を制限するという点では有効なようだ。
「こりゃ、こっちものんびりしてたらぶっ飛ばされそうだな」
「エヌラスさん、敵の増援です!」
「そらきた! おい、スピカ、カルネ! 地上はどうだ!」
《空よりも地上の方がどえらい数で行軍中ですわ、オホホ》
《むせる!》
「地上は大丈夫そうだ」
「今の通信のどこに安心感が……」
通常運転であるということは、まだ余裕がある。とはいえ、ラステイション上空がこれではプラネテューヌの方が心配になってくる。確認しようにも、今はそれどころではない。
「ユニ、直接当てるより背中のブースターに被弾させろ! 掠めるだけでも十分だ!」
「わかりました!」
「イタクァ!」
左手の白銀の回転式拳銃から放たれる六発の魔弾。それぞれが独立した術式により飛行している六機目掛けて飛来する。
《なんだこの弾丸! ダメだ、避けられねぇ!》
「ハッハッハ逃げろ逃げろ! そいつは食らいつくまで離さねぇぞ!」
「どっちが悪役なんだろう……」
絶対必中の魔弾によってブースターに被弾した機体は全て落下していく。相当な突貫工事で数を揃えたのだろう。それがいつまでも続くとは思えないが――。
「そこ! 一機撃墜、次!」
(高速で突撃してくる部隊は今ので打ち止めか。そうなると、次は地上のほうが気がかりだな)
「エヌラスさん、輸送ヘリが接近しているみたいです。国境防衛隊から通信で、とてつもない数らしくて」
「物量に物言わせた波状作戦とかクソッタレって思うわ。こんな調子じゃ一日保たねぇぞ」
敵の艦隊を片端から撃墜させてもいいが――今は防戦に徹するしかない。ここで自分が抜けた穴を誰が埋めるというのか。そうでもなければラステイションでブラックハートと肩を並べていない。
「輸送ヘリ? またそんな悠長な――って多すぎるわ馬鹿かッ!? 壁かよ!?」
「さっきの倍以上の数が接近中……こんなのって……」
大型ブースターの突入部隊、数にして三十機以上はあった。その半数以上は撃墜し、ブラックハートが今、市街地で三機を撃墜している。だが、らしくもなく手間取っているようだ。
そして現在、ブラッドソウルとブラックシスターの前に接近してきている輸送ヘリの総数――ざっと見て百は超えている。一機ずつ撃墜していたら年が明けてしまう。
「ユニ、上空は俺がやる。ノワールを手助けしてこい、手こずってるようだ」
「でも……」
「俺の隣に立ってると火傷するぞ? あんな馬鹿正直に突っ込んでこられると、薙ぎ払ってやりたくなる。クトゥグア、イタクァ!」
両手の魔術刻印がより鮮明な殺意と敵意を持って輝きを増していく。それは、隣に浮かんでいたブラックシスターすらも焼きかねない勢いで。
「なぁにボサッとしてる」
「任せましたよ?」
「任されてやんよ――神獣形態!」
果たして、ブラッドソウルの両手より解き放たれる二柱。クトゥグアとイタクァが空を駆ける。輸送ヘリの機動力では決して逃れられない凶悪な神性が牙を剥く。
《な、なんだ――ブレイク、ブレイク!!》
《被弾した! 被弾した! 不時着するぞ――!》
《バケモノめ……!》
「そうら、もう一発行くぞぉ! ギャーッハッハッハ!」
(エヌラスさん、ものすごく楽しそうだけど……)
地上で撃たなくて本当に良かったと思うブラックシスターだった。馬鹿げた物量での侵攻作戦は、今ではその隊列のど真ん中がぶち抜かれている。一部の機体は輸送ヘリが撃墜されて止む無く地上へと降下。逃れた部隊はブラッドソウルによる遠慮無用の無慈悲な魔術砲撃によって確実に数を減らされていた。