超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――プラネテューヌ国境付近。
《おい、なんだここ!? 地雷原じゃねぇか!》
《気をつけろ! スナイパーだ! スナ――》
《迫撃砲、いや違う。榴弾砲か! 回避、回避ー!!》
《どうなってんだ! 話と違うじゃないかよぉ!》
最前線は地獄と化している。絶え間ない榴弾の雨あられ。一条の狙撃によって頭部を的確に撃ち抜かれていく僚機。辛うじて抜けた先には守護女神。積み上げられていく機能停止した機体。それを足場にして抜けても――待ち構えるB2AM残党。国境防衛部隊。
資金援助によって装備を一新したレオルド達が主兵装によって蜂の巣にされていく。
《フフフハハハ、ハーッハッハ! 支援兵装舐めるなよ貴様ら! こちとら防衛戦に特化した兵装だ! そーれピピッとな!》
《おーおー敵さんが面白いように吹っ飛んでく》
《砲撃する、巻き込まれるなよ! 着弾まで八秒、敵を足止めだ!》
《……一機撃墜。リロードする》
「……アンタ等、真面目にやれば十分働けるじゃない。どうして普段からそう出来ないのよ?」
お目付け役、監視役兼指揮官であるアイエフが腕を組みながら頭を悩ませていた。確かに、彼らには相応の実力が備わっていたはずだが……聞いているだけで頭が痛くなってくるテンションの高さはどっからきているのかと。ゲイムギョウ界を震わせる一大事件を前にしておきながら。
「むしろ前の事件の時、どこで何してたの?」
《プラネテューヌの隅っこで縮こまってました》
「臆病か!」
《だって国ごと浮かぶとか思ってませんでしたしー、どうにもならなかったんですぅ》
「ま、まぁそれはそうだけども。ほら、敵が来てるわよ」
《ドスコーイッ!》
《張り手ッ!?》
接近していた機体の頭部を鷲掴みにすると、すかさず蒸気圧によって射出される杭が撃ち抜いた。そのままアイエフの前に出ると、撃破した機体を盾に銃撃から庇う。
《ジーン、七時の方向。三機確認》
《無理を言うな。せいぜいが二枚抜きだ》
後方支援に徹しているジーンは見晴らしのいい高層ビルの階層から光学迷彩を使用して狙っている。ディルのセンサーに映し出された敵影が重なった瞬間に大出力の光学狙撃銃で敵機の頭部を二枚抜きするが、撃ち漏らした敵が真っ直ぐにこちらへ突っ込んでくる。
背面に光学狙撃銃を折り畳みながら収納すると、両前腕部に接続した大口径ハンドガンを抜き取り、セーフティを解除。後ろへ下がり、ガラスを突き破った機体へ突きつける。
《んなっ!?》
《ウェルカム》
大口径ハンドガンの連射を受けて、反動による機体制御が困難となった相手を押し出す。ビルから落下する相手に今度はシュラが貼りつく。その胴体にショットガンを突きつけて。
《いらっしゃいませ、お帰りください! ヒャッホーウ!》
無数に広がるベアリング弾が敵機のコアを粉砕する。ポンプアクション式の新型を排莢して、まじまじと眺めた。
《さっすが最新鋭の散弾銃。言うことなしだ》
《こちらゴウ。砲撃で三機同時撃墜、どんなもんだ》
「さすがね。この調子で防衛できればいいのだけれど……」
《そうはいかないのが戦場の常。アイエフさん、増援が接近中。先程までとは毛色が違う》
「なにか見える?」
《……虫?》
「……――はい? なんですって?」
ガサガサと揺れる木々の奥。現れたのは、ジーンの言うとおり虫だった。だがサイズが規格外過ぎる。二メートルは超えた巨体。無害そうに歩いていた。
「……虫ね」
《まるまると太ってますね》
《チョコチョコ歩いててかわいいですね》
《貴重なタンパク源だ。きっと美味い》
「言うこと他にないのか!? いいから撃破しなさいよ!」
《えー? おいジーン。かわいそうだが一匹だけ撃ち抜け》
《持ち帰っていいか?》
「アンタ等の趣味がわからないわ……」
ディルに言われ、貴重な一発を装填すると先頭を歩いていた一匹を撃ち抜く。そして、次の瞬間――動きを止めたと思えば爆発した。爆発したのだ。隣の一匹もその爆風に巻き込まれて誘爆する。その誘爆を逃れた虫達はかわいらしい(?)動きでピョンピョンと跳ねながらアイエフ達に向けて接近していた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ……まさか、アレ……全部爆発するっていうの!?」
《おいジーン。持ち帰りたいか?》
《前言撤回だ。全て撃破する》
《こいつら近づいても爆発するぞ! アハハハハやべー何だこれ! アハハハハハ!》
約一名ほど爆発する虫にわざと近づいてブースターを吹かしている。シュラだ。その後ろをピョンピョン跳ねながら追いかける虫、起爆虫と仮命名。
「なーにを遊んでいるかアンタはぁぁぁぁ!」
《いやアイエフさん。アイツああ見えて結構考えて動いてます》
《あ、転んだ》
《たぁすけてくれぇぇぇぇぇぇ!!!》
《了解。十秒後にまた会おう》
ジーンは容赦なくシュラごと起爆虫を撃ち抜く。続々と爆発し、そこから吹き飛んでくる軽量級機体をディルが受け止めた。直撃を受けた機体は関節部から煙を吐き出している。
《人でなし!》
《人ですらなし。いいから下がれ》
《レオルド、こちらディル。シュラが名誉の負傷だ。ロゼと交代する。そちらの様子はどうだ》
《こっちはまだ大丈夫っす! そっちが頑張ってくれているおかげで損害軽微》
《はは、頼もしいことだ》
《い、いやぁ俺なんかどうってことないっす……むしろロゼとかが……》
《しっかりしろ、隊長殿。今はお前が俺達のリーダーなんだから》
再編された国境防衛隊はレオルドを筆頭に、アイエフの指揮下で動いている。上空を通過しようとする機影は全てパープルハートとパープルシスターによって撃墜。市街地へ逃れた機体は強襲部隊によって残らず撃破済みだ。
セインを失って尚もこれだけの連携能力を損なわない。いや、失った仲間が大きいだけに彼らの連携は更に隙がなくなっていた。
「武装企業との戦争は始まったばかりよ。プラネテューヌは通過点とはいえ、ルウィーへ突破される前に出来る限り撃墜するのがアタシ達の仕事、わかってるわね」
《どうしたんですか、突然?》
「一応確認の為に言っておいたのよ。忘れてないならそれでいいけど」
《――なるほど、これほどとは。しかしながら、ワタクシ単機でも敗北はほとんどありません》
新たな敵影。その反応にディルが機関砲を向ける。ジーンは既に狙撃銃の装填を終えていた。アイエフも両手のカタールを握り直す。
ぞろぞろと起爆虫を引き連れて現れた敵影は、極限まで機体の軽量化を図ったような細身の機体だった。まるで骨と皮。
「……知り合い?」
《いいえ。初めて見る機体です》
周辺の地形、残骸をスキャンすると一人納得したように頷く。
《なるほど、良い傾向です。これならば良いテストケースになるでしょう》
「まるでこちらが実験台みたいな言い方、気に入らないわね」
《申し遅れました。ワタクシ、イエローマッド隊の》
《今だ撃ちまくれぇぇぇぇぇ!!!》
「自己紹介ぐらい聞いてやりなさいよ!?」
《先手必勝って知りません?》
「銃声がうるさすぎて何言ってるか聞こえてないんだけどー!?」
ディルはシュラを担いでいたが、敵の増援を前にして投げ捨てる。双門機関砲の銃身を接続して即座に狙い撃つ。だが、起爆虫だけが撃ち抜かれて爆発の中に細身の機体はいなかった。
《ぬぅぅ、何処に行ったあの骨っ子!》
《なんと礼儀知らずな……ですがそのような遅さでは》
《いたぞ、撃ちまくれぇぇぇぇぇ!!》
まさかの二度目にアイエフも驚いていたが、一瞬だけ見せた回避行動に弾丸はあらぬ方向へと消えていくばかりだ。
「……気をつけなさい、一筋縄じゃいかないみたいよ。ディル。あんたはシュラを連れて撤退、ロゼが来るまでの間はあたし達で維持するわ」
《くっ、アイエフさんに任せてここは退きます。おい起きろシュラ、お前が起きないとまともな支援受けられないんだからな》
《ジーン、絶対にゆるさねぇ……》
《頭ふっ飛ばすぞ》
「いいから早く行きなさいよ! さて、イエローマッド隊の誰だかしらないけど、此処は通すわけにはいかないのよ!」
《構いませんよ。後続の皆様がくるまでにワタクシもデータを集めることができれば。申し遅れました。ワタクシ、イエローマッド隊のフランジールと申しま――》
胴体を掠める一条の狙撃。それにジーンが舌打ちをもらす。
《チッ。フラフラと飛んでて狙いにくい相手だ……それになんだあの細さは。ろくに当てられる気がしないな》
「……自己紹介、必要かしら」
《いえ、もう結構です》
淡々としながら、どこか落ち込んでいるような気さえする。アイエフはなんだか申し訳が立たなくなり、気を取り直して起爆虫を率いるイエローマッド隊のフランジールと交戦する。