※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード231 アゴウ式選抜試験:難易度測定不能

 

 ――ゲイムギョウ界でハァドラインによる戦争が蜂起していた頃、ベールはアダルトゲイムギョウ界の軍事国家アゴウにお邪魔していた。というのも、剣姫に呼ばれたからである。九龍アマルガムからユノスダスに戻り、それから来たわけなのだが……ユウコの怒りは凄まじかった。

 あろうことか剣姫の顔を見るなりゲンコツで殴り倒した直後に正座強要。説教一時間。

 

『――以上、わかった!? つるちゃん!』

『わかった! すまなかった! 許せユウコ!』

『ゆるす!』

 我らがユノスダス国王の懐は広かった。理解者がいるというのは良いことだ。

 剣姫がベールのためにアゴウの兵士を貸し出す、それにあたっての人選にぜひ立ち寄ってもらいたいということらしい。

 ともあれ、そんな理由によってベールはアゴウにお邪魔していた。

 

「……はー…………」

 思わず感心するほど、高い城壁。高い高い城壁。一体どこまであるのだろうか? 見上げるだけでも首が疲れる。ベールは改めて目の前の城門に固唾を飲み込んで近づく。

 軍事国家アゴウ。その国境をぐるりと囲う高い城壁。外敵からの侵入を防ぐために用意されたもののようだ。跳ね橋が下ろされ、アゴウより出迎えたのは三機の親衛隊。三叉槍のエンブレムに濃紺の機体色。アゴウでは通称エリートカラーと呼ばれるネイビーブルー。

 

《お待ちしておりました、別次元の女神様。御姫より言伝を預かっております》

《よろしければお荷物を。慣れない長旅でしたでしょうし》

「あら、親切にありがとうございます。ですが大丈夫ですわ」

《手短に自己紹介を。我々はアゴウ国王親衛隊、守護女神直轄のトライデント分隊。各個に名称はなく、ナンバリングで呼び合っています。自分がゼロワン、指揮官という立場です》

《ゼロツー。射撃が得意です。主に後方支援を担っています》

《俺はゼロスリー。切り込み隊長。突っ込むのは得意だし、大好きだ》

「わたくしは女神グリーンハート、ベールですわ。ゲイムギョウ界のリーンボックスを治めていますわ」

《そちらの事情も御姫より聞いています。立ち話も程々に、どうぞ背中へ》

「では、お邪魔しますわ。よい、しょ」

 屈んだゼロワンの背中にしがみつくと、城門を越えて中に入る。

 アゴウ国内――城壁に覆われた軍事国家の内部は、想像を遥かに超えて平和の一言だった。軍事演習が行われている平原を除けば。ユノスダスでも和洋折衷見境なしの街並みは見慣れていたが、あちらは商店が多い。その一方で、アゴウの中は住宅街。驚くほどまともな国だった。

 

「予想を裏切られましたわ」

《もっと物騒であると?》

「え、ええ。もっとこう、血の気の多い方が肉体言語を行っているばかりかと」

《まぁ無理もないですね。我々の国は、ほら。あの城壁のせいで外部からは内部の情報が得られないですし》

「あの城壁、どうしてあんなに高く?」

《ひとつは、外敵から国民を守るため。ふたつめは、アレは“仕切り”みたいなものなのです》

「仕切り?」

《ゼロワン。言うより見せたほうが早いだろ。跳ぶぞ、あんまり御姫のお客人とイチャついてたらケツをふっ飛ばされる》

《そうだな、ゼロスリー。ベールさん、しっかり掴まってください。上昇しますので》

「え、ええ」

 ゼロワンに言われるまま、ベールは離さないようにしっかりと掴まる。腰部に接続されている跳躍ユニットを点火。緩やかな加速の後に、浮遊感に包まれた。

 アゴウの機人……機械人類は、腰部のユニットによって短時間ではあるが空中飛行が可能とされている。その跳躍力にベールは驚いていた。

 

「単騎でここまでの飛行能力が……」

《驚かれましたか? 軍事国家である以上は、戦闘技術体系は常に最先端テクノロジーを目指しています。それよりも、下の方を御覧ください》

「これがアゴウの全貌なのですね」

 仕切りと言っていた理由がよく分かる。今、ベールの眼下に広がるアゴウの全容は、五つの首都が城壁で分け隔てられていた。中央のアゴウ首都――帝都より四方に広がる首都。今自分が踏み込んだところが第一首都。それぞれが独立した統治体系によって成り立っていた。

 

「アダルトゲイムギョウ界では神格者……国王が治めていると聞いていましたが」

《ええ。アゴウには守護女神も存在しています。国の政治を取り仕切っているのはアルシュベイト様ですが、御姫は我らアゴウの民にとっての象徴》

《ある意味アルシュベイト様以上に、その存在は重要視されています。なにせアダルトゲイムギョウ界唯一の守護女神ですからね》

《まー、言っても聞いちゃくれないけどなー》

 ゼロスリーの砕けた口調を注意しながらゼロワンが降下を開始する。帝都中央にそびえ立つ純和風のお城。アゴウ教会、その天守閣から今か今かと待ち望んでいたのか、剣姫は袴姿で大きく手を振っていた。ベールはそれに手を振り返す。

 

《おー、集まってら。おいおい、ウチはマジで戦争でも仕掛ける気かね?》

《似たようなものだ。ベールさん、着地します》

「……あの、お城の前に集まっている団体は一体……?」

 ゼロワンは降下する、と言っていた。教会前の広場は整列した機人達によって降りる隙間を探すのに一苦労する。だが、トライデントの姿を見た者たちは率先して通路を確保していた。道が開けられ、無事に教会前へ着地する。

 

「……――――――ぉーい、ベェール! よくぞ来てくれたッ! おれのアゴウに!」

「きゃあ!? つ、つるちゃん!? 今、あの――えっ!?」

「んぅ? どうしたベール、驚いて」

「て、天守閣から……?」

「おう! 首を長くしすぎて、ついうっかりと()()()()()()()()()()()()!」

 明らかに落下して無事で済むような高さではない。自称、自由落下のプロであるネプテューヌならば無事で済むかもしれないが、二本の足でしっかりと着地してみせている剣姫の足元には小さなクレーターが出来ている。石畳が割れるほどの衝撃を、ケロリとしていた。

 今日は軍服を脱いで、袴に上半身はサラシで豊満な胸を抑えつけている。首には手ぬぐい。汗ばんだ身体から何か鍛錬を行っていたのかと勘ぐるが、何のためか。

 ニコニコ笑顔の剣姫を見ていると、そんなことがどうでもよくなってきてしまった。せっかく相手が上機嫌なのだから気分を害してはもったいない。ベールは咳払いを挟んだ。

 

「コホン。つるちゃん、お邪魔しておりますわ」

「うむうむ。おれも女神友達を城に招くのは初めてだ。おれのはじめての相手だな、ベール」

「誤解を招く言い方はやめてくださいませ!?」

「おれは女でも一向に構わないが?」

「そ、そういうのはもうちょっと親睦を深めてからにしませんこと……?」

「それもそうか。おれとしたことが、嬉しさのあまり自制が効かん。気を引き締めるとするか」

 自分の頬を何度か叩き、剣姫は大きく息を吸い込む。押忍。気合を入れ直す。

 

「それで、だ。ベール。先日の話を覚えているな?」

「ええ。リーンボックス奪還にアゴウが軍事協力をする、という件ですわね。……もしかしてこちらの方々全員……?」

「いいや」

 即座に否定した。その場に集められたアゴウ軍の全員が首を傾げる。

 

《御姫、よろしいでしょうか!》

「許す! なんだ!」

《我々は、緊急事態と聞いておりました! 今回の召集は一体……?》

「緊急事態だ! こちらの御仁、別次元の守護女神である! そして今、国の危機を迎えている! 愛国心の暴走、乱心だ! お前たちも覚えはあろう、第三首都の叛逆! あの戦乱が今再び女神グリーンハートの国、リーンボックスに起きている! よっておれは、ここに共同戦線を結ぶ! 異論はないな、ベール」

「わたくしとしては、感謝の極みですが……いいのですか」

「おれが良いと言っているのだ」

 剣姫の言葉に、誰ひとりとして異論はなかった。だが、自分たち全員をそのリーンボックス奪還作戦に参加させるためでなければどういうことだろうか?

 一万に及ぶアゴウ軍の精鋭を集めたというのも、教会より姿を見せるアルシュベイトの号令があったからこそ。腕を組みながら見守っていたが疑問を口にする。

 

《御姫、お前に言われた通りに集めたが……これからどうするつもりだ?》

「おお、アルシュベイト。なに、ここから百人選ぶ」

《……一万人集めさせておきながら、どうやって》

「名簿で実力は推し量れん。実践だ」

 剣姫が口角をつり上げ、不敵な笑みを浮かべる。それにアルシュベイトは声にならない声で固まった。ベールは、なんとなく察する。

 そう。一万の兵から百人の精鋭を、女神自らが選抜する――実力行使で。

 これほど軍事国家“らしい”やり方はあるまい。

 

「最前列。運がなかったと諦めろ――」

《ハ……?》

「これより抜き打ち実践テストを始める! おれに一撃当てた先着百名をリーンボックス奪還作戦に着任させる! ――総員、構え」

 声のトーンを落とし、首にかけていた手ぬぐいを捨てる。

 アルシュベイトはさりげなくベールを自分の後ろに控えさせた。

 

「あの?」

《万が一にでも怪我をされては困る》

「……一体、なにが始まるんですの?」

《……――――大惨事だ》

 心っ底、渋い声で。アルシュベイトは呟く。

 

 狼狽え、困惑していた最前列の機人も無理はない。なにせ、自分が愛する国の女神に歯向かえと、女神直々に言っているのだから。

 

《いや、あの――おひ》

「チェストォォォォッ!!」

 一喝と共に放たれる掌底。受け止めた最前列の機人は、後列を巻き込みながら戦線を離脱していく。その破壊力たるや、凄まじい。

 残心、後に息を大きく吸い込む。

 

「さっさと掛かってこい腰抜け共! 夜が明ける、埒が明かん! まとめて掛かってこんか玉無しめがッ!!」

《オ、オオオォォォォッ!!》

「応、その意気やよし! 正面より受けて立つ、チェェェェストォォォォォォオオオッ!!!」

 

 大惨事。嗚呼、大惨事。精鋭一万名が次から次へと木枯らしの如く宙を舞う。

 機人。戦闘用に調整された機械人類はまるで、等身大の玩具がごとく振り回され、蹴り飛ばされ、殴り飛ばされ、投げ飛ばされ……それも無手で装甲がひしゃげている。

 機人の拳と正面より衝突して、機人の装甲が音を上げる。回し蹴りの直撃を受けた二メートルに及ぶ機人が真横に吹っ飛ぶ。肩口より体当たりをかまして、相撲よろしく投げ飛ばされ、地面の熱い抱擁に脱落。

 

「…………あの、教会前の広場が大変なことに」

 覗き込むベールの言葉に、アルシュベイトは両手で顔を覆ってその場にしゃがみこんだ。

 

《……なにもいわないでくれ》

「……大変苦労してますわね」

 アルシュベイトの電子音声は、泣きそうな声色をしている。あの護国の鬼神がこうも弱っている姿はアゴウ国内、教会敷地内でしか見られない。なお、アルシュベイト本人は既にリーンボックス奪還作戦の陣頭指揮を執るべく剣姫によって指揮官に編成済みである。

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