※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード232 二十四時間フル稼働ハードワーク

 

 

 

 ――選抜試験開始から四時間後……。

 

「おいアルシュベイト! どういうことだ貴様! 一万の精鋭から俺は百名選ぶと言ったはずだが、おれに一撃当てた者は百名に満たないではないかっ!? 練度が足りんぞ。鍛え直せ! まだ八十七名しかいないぞ!」

 それこそアルシュベイトからすればどういうことだとこちらが言いたいところだ。それを相手に堂々と正面切って挑み、挙句に武装もなしで迎撃してみせる。合格した八十七名は既に作戦へ向けて破損した装甲の換装、装備の支給が行われていた。休む暇などない。

 ベールはトライデントの用意してくれた椅子に腰掛けて緑茶と菓子をいただいていた。

 剣姫はと言うと、アルシュベイトに兵士の練度について詰め寄ってくる。しかし、その背後で一人の機人が負傷を押して立ち上がり、背後から殴りかかってきていた。

 

《今だぁぁぁぁ――ァアアアアアアア!?》

 振り向きもしない裏拳で顔面を殴り飛ばされてフェードアウト。倒れている他の機人に足を引っ掛けたのか、何度も地面を転がった。ようやく立ち上がれそうな機人と抱き合わせで吹っ飛んでいく。

 

「お前が選んだ一万の精鋭だろう! おれの期待をよくも裏切ったな、アルシュベイト!」

《やかましい! 俺とてそう思っていたわ! それだけ集めれば百人くらいいると思ったが、そうもいかぬとあっては俺の監督不足だ、すまんな! 教育不足を痛感しているところだ!》

「いいだろう、その謝罪をもって許す! だがそれとこれは話が別だ、今回の脱落者には特別メニューを用意しておけ。残り十三名は陽が落ちる前に選抜する。立てぇい貴様ら! それでもアゴウの精鋭か。アゴウ国王たるアルシュベイトに選ばれておきながらなんという体たらく! おれが恥ずかしいわ!」

 叱咤激励、剣姫の言葉に闘争本能の塊のようなアゴウ軍精鋭は機体を軋ませながら立ち上がった。しかしそれでも二十人に満たない。剣姫は屈託のない笑みを浮かべて、拳を構える。

 

「応! それでいい、立ち上がっただけでも合格にしてやりたいが手を抜くわけにはいかん!」

《いくぞ、お前ら! お姫の期待だ、裏切るわけにゃいくまい!》

《腕一本ふっ飛ばされてでも試験突破してやらぁ!》

《チクショウ、帰りたい……》

『反国民だ、やっちまえ!』

《ぐわぁぁぁぁお前ら容赦ねぇぇぇぇ!!!》

 愚痴をもらした機人の一人が仲間にもみくちゃにされた。

 

《お見苦しいところをお見せしました! おい行くぞ!》

《申し訳ありませんでした! 録画していた『笑えばいいとも!』を観たいがあまりに口を滑らせて! 粉骨砕身の体で臨ませていただきます!》

「ずるいぞ! おれも観たい!」

『ウォォォオオオオオオオッ!!』

 またもや正面から衝突する機人と剣姫。その熱気はさながら格闘技観戦。

 ベールは緑茶を一口含みながら、経緯を見守っていた。

 

《ベールさん、おまんじゅういかがです? 美味しいですよ》

「あら、美味しそうですわね。おひとついただけます?」

《どうぞどうぞ。最近出たばかりの新商品、帝都印の焼き饅頭です》

「はむ、はむ……中の餡子もしっとりとしていて、これはお茶が進みますわね」

《お茶も残り少なくなってきましたね。おかわりはどうされます?》

「ええ。お願いできます?」

《もちろんです。少々お待ちを》

 トライデント分隊の縁の下の力持ち、ゼロツーのおもてなしを受けながら和やかに剣姫の様子を眺める。

 機人のハイキックを屈んで躱し、軸足を薙ぎ払う。宙に浮かんだ機人を立ち上がりながらさらに蹴り上げ、腕を掴んで引き倒しながら関節部を無力化。トドメと言わんばかりに頭部を殴りつけてカメラを破壊。問答無用に脱落。

 

「次!」

《もし百名に満たない場合は?》

()()()()()()!」

《――――寝てるやつ、全員叩き起こせ! 可能な限りだ! 起きろてめぇ等!》

 焦りの見える電子音声。倒れている仲間をガンガンと殴りつけて、シャットダウンしていた意識を文字通り叩き起こす。

 

「精鋭一万。それより選ばれる百名。アルシュベイトの眼に適わなかったとあれば、貴様ら全員不合格だ。それならばいっそおれが出る。百戦錬磨、足らぬならば万物不当の実力を持ってして一昼夜で終わらせてやるとも。時間が惜しい。立てぬならば寝ていろ」

《あぁクソッタレ、なんて実力主義だ! 押忍! オレが挑ませていただきます!!》

「その意気や良し! 加減は無用だ、参れ!」

《ドォリャアァアアアアア!!!》

 気迫、鬼気迫る迫力で剣姫に接近する機人。跳躍ユニットの出力を全開にして拳を引き絞り、正面より殴りつける。それを避けるのは容易だ。腕を取り、そのままに投げ倒すことは、それこそ赤子の手を撚るがごとく。

 しかし剣姫は逃げなかった。避けなかった。足を開き、腰を落とし、拳を引いて、正面から受けて立つ。その上で、機人を粉砕した。

 

「良し! 合格! 次!」

《っしゃオラァー! やってやったぞこんちきしょ》

「退けぇい、後がつかえる!」

《サーッセーーーーン!!!》

 右前腕部が大破した機人が回し蹴りでアルシュベイトの足元まで蹴り飛ばされる。

 

《大至急出撃準備。右腕の換装も同様にな》

《り、了解っす……》

《ほれ、掴まれ。ドーック、一個至急開けてくれー!》

 ゼロスリーの肩を借りながら一名追加。

 

「……元気、有り余ってますわね」

《ああ。他にすることがないからな》

「執政は?」

《俺が全て担っている。外交を含めてな》

「……あの、つるちゃんのお仕事は……」

《………………強いて言うなら、暴れないことくらいだ》

「あぁ……」

 自室で待機が出来ない。一度目を離せば、ご覧の有様。大惨事である。現にこの守護女神、城内警備の監視の目を全て掻い潜った“お忍び”でユノスダスまで遊びに出かけてしまう。その上で九龍アマルガムまで出張してきてしまった。それも、一度や二度ではない。アルシュベイトが目を離したその隙に雲隠れ。一度城から出てしまえば、国民すら欺くほどの隠密スキルで国外逃亡を平然と繰り返す。超・問題児女神。そのくせべらぼうに強いので手がつけられない。

 アルシュベイトの心労は如何程なものか……。とはいえ仕事が出来ないわけではなく、ユウコとは賑やかな談笑を交えながら良い方向へ政治の舵を執ってくれる。

 

 ――――まぁ要するに、大魔導師とは間逆なベクトルで暇を持て余している超人女神なのだ。類は強敵(とも)を呼ぶ。

 

 アゴウ軍とは満面の笑みで殴り合うほどに。国民の皆様からは畏敬の念を送られ、愛されている。そして無条件に愛してくれている。

 

《俺とて、御姫を城に閉じ込めるのがどれほど本人にとって苦痛かなどわかっているつもりだ》

「それでしたらどうして」

《……今のアダルトゲイムギョウ界の情勢を鑑みれば、致し方ないことだ。どのような邪神が現れ、遅れを取るかなどわからん。俺もそれで一度は命を落とした身だ》

「……そうでしたか」

《今にして思えば。つまらんことで不覚を取ったものだ》

 まだまだ未熟だな、と。アルシュベイトは付け加えて、メチャクチャになった教会敷地に見慣れた姿を見かけた。それは琴霧ソラ、インタースカイ国王その人である。手土産を持参して惨状を見ないふり。

 

「やぁ、アルシュベイト。なんだいこの騒ぎ。大規模軍事演習? 災害対策?」

《見ないふりをしているだろうがそうは問屋が卸さんぞ》

「お土産渡したら帰っていいかな!」

《御自慢の電脳国家まで御姫が追いかけてもいいなら逃げてもいいぞ!》

「勘弁してくれないかな、夢に出る……」

 実体験済みである。いつもより小型のタブレットをショルダーバッグから取り出す。

 

「おっと」

 御姫が吹き飛ばした機人がソラめがけて飛んでくるが、タブレットの画面を数回タップすると電磁シールドで防いだ。その場に落下した機人は震えながらサムズアップすると動かなくなる。

 

「おいソラ! そいつは合格者だ、丁重に扱わんか! 残り十名だ、誰ぞおらぬかー!」

「あ、はい、ごめんなさい……」

《ゼロワン。連れて行け》

《了解しました。さぁ行くぞ、寝てる暇などないんだからな》

 剣姫の強気な態度につい謝ってしまうソラだが、気を取り直してアルシュベイトと向き合うなり肩をすくめた。

 

「相変わらず元気ですこと……我らのお姫様は」

《いいことだ。例の件、引き受けてくれるのか?》

「どーせ首を横に振ったら酷い目に遭うからね。加えて、僕じゃないと出来ないんだろう? なら仕方ない」

《無理を言ってすまないな》

「いつものことだろうに」

 ベールの元にゼロツーがおかわりのお茶と菓子を持ってくる。そこにソラの姿を見るとお互いに会釈して銃器に関する話し合いを挟み、すぐにタブレットの操作に切り替えた。

 

「さて、と。そこで美味しそうにお茶とお菓子を食べているところ申し訳ありませんが」

「……もぐ? わたくひ?」

「はい。お姫様からの無茶振りを受けまして……あー、まぁ簡単な説明をさせていただきますとですね。本来なら一人用の次元間テレポーターを大規模改修で百人同時転送可能にしろと言われました。無理だよね、一週間の猶予どころか二十四時間以内とか」

《可能なのか?》

「はは、アルシュベイト。僕を誰だと思ってるんだ。一晩で大魔導師がやらかしてくれたデータの解析を進めてきたからね。相当な負荷がかかるだろうけど――結論としては、できる」

 電脳国家国王は伊達ではない。そのための選抜試験だったのだ。

 

(つるちゃん、ああ見えて動いてくれていたのですね……見ず知らずの女神の危機に、ここまで親身になって)

「おかげで僕は徹夜だし、フォートクラブは一台用意しろと言われるし、大至急調達してこいと言われたし、その穴埋めも任されたし、ユノスダスじゃユウコに怒られるしで散々だけれども僕は元気だよ! 信じられます!? この後も喫茶店の売上計上とクレジット伝票発送とインタースカイで大規模メンテナンス予定で寝れないんですよあっはっは!」

「た、多忙ですわね?」

「忙しさで死ねない人体って不思議ですよね……」

 あまりの忙しさに入浴すらままならなかったのか、髪はところどころ跳ねている。全体的に疲労感が滲んでいた。だが、それはそれとして仕事には矜持があるのか決して手は抜かない。

 

《ソラ。その、悪い報せなのだが……》

「なんだい。今更驚かないよ」

《この後、お前を含めてミーティングだ……》

「…………」

《選抜メンバーは残り八名だ。出撃は明朝になるだろう》

「あのさぁ……本当にさぁ……君らは僕をなんだと思ってるんだ…………?」

「えっと、喫茶店の国王様?」

《苦労人》

「血も涙もないのかアルシュベイト!?」

《無い》

「ちくしょーーー!!!」

「うるさいわ、そこなメガネ! 四の五の女々しいことを言わずにお前の仕事を終わらせろ!」

 剣姫からのお叱りに、ソラは肩を落とす。これだから体力ばかり有り余る熱血体育会系脳筋女神様は……。渋々といった様子でメガネの位置を直し、タブレットの画面を操作する。

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