※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード236 あなたの胃袋は宇宙? それとも外宇宙?

 神機整備室で、ゴッドイーターは自分の神機を得意げに振り回してみせる。自分の背丈ほどある長剣。銃身と盾も兼ねているが、とてもそうは見えない武器にエヌラスは疑問符を浮かべる。

 先程の説明を聞いた限りでは、銃身があるという話だが……それらしきものが格納されているのが覗いていた。

 

「これが、わたし達ラステイション防衛隊極東支部の扱う特殊な武器。神機です」

「はー……すごいな。どうなってんだこれ……?」

「わたしが扱っているのは、ロング・ショットガン・バックラーの組み合わせです。ロングっていうのは刀身のことで……って、説明は必要無さそうですね」

「バックラーはなんとなくわかるが、これ……銃身はどうなってるんだ? 格納されているんだろうが、どう展開するのか気になる」

「今お見せしますね」

 展開される銃身、それと同時に縮小するロングブレードが引っ込んで近距離から遠距離へと切り換えられた。その動きは機械的な動作というよりも、生物的なものを彷彿とさせられる。

 

「これで、変形完了です」

「……いや、すげぇな。こんなの九龍アマルガムでも早々お目にかかれない生体兵器だ」

「はい? どこですかそれ?」

「俺の地元。気にしないでくれ」

 確か資料で読んだ限りでは……そう、敵を捕食する。敵の細胞を自らのエネルギーにするという特性を持っており、神機使いはその腕輪で制御している。

 

「敵を捕食する時は?」

「こういう感じになりますね」

 今度は銃身と刀身が徐々に縮こまり、真っ黒な生物が神機から滲み出した。その姿が徐々に膨れ上がり、人間大ほどの大口を開けている。生きている、とは聞いていたがこれほどとは。

 

「さっきまで沢山食べたからアバどんもお腹いっぱいで、上機嫌です」

「……アバどん?」

「アバどんです。なんか、わたしの神機だけアラガミ細胞がそうなっちゃって……」

「空腹だとどうなるんだ?」

「えっ?」

「いやだから、空腹状態だとどうなるんだ? おーよしよし。かわいいなコイツ」

『キュキュ~♪』

 ゴッドイーターの神機から出ている黒いアラガミ、アバどん。その丸っこい頭を撫でると、まん丸の小さな瞳を細めてエヌラスに甘えてくる。機嫌がいいと触らせてくれるようだ。

 

「…………られ、ます…………」

「え、なんだって?」

「あの、そのですね……アバどんの大好物って……」

 歯切れが悪く、顔を真赤にしている。

 

「……女の子の服が、食べられます」

「…………アバどんに」

「ハイ……」

「服が」

「はい…………」

「……上下全部?」

「……丸裸になるまで」

「害獣じゃねぇかコイツ!? うわ、こわぁ! なんでお前そんなの使ってるの!?」

「そ、そんなのわたしが知りたいですよー!? わたしが今までどれだけアバどんに服を食べられたか知らないんですか! 任務中に食べられることだって……あぁぁ思い出すだけでも恥ずかしいぃぃ~……!!」

 神機に顔を埋めて、ゴッドイーターは耳まで赤くなって涙目になっていた。

 

(神機使いって大変なんだな……)

「うぅ、とにかく。神機は奥深いんです! 適合試験さえクリアすればすぐにでも神機使いになれますよ、どうですか!」

「その腕輪は?」

「これは神機を使うために必要なんです。もしこれが外れたり、壊れたりしたら……命の保証はないとされています。元々この神機もアラガミから造られたものですから」

「……なるほど、資料は軽く読んだことあるが。敵の細胞を捕食するってのはそういうことか」

 神機もアラガミも同じ細胞から造られる。それを扱う神機使いもまたアラガミ細胞を投与されて腕輪を介して制御。半ば、アラガミのようなものだ。

 

「お、いたいた。おーい、ふたりとも。飯の用意が出来たとさ。食堂に集まってくれ」

「はい、リントさん! それじゃ、戻りましょう。エヌラスさん」

 ゴッドイーターと一緒に整備室を後にして、夕飯の世話になることにした。

 

 元々食料や物資の搬入が難しい土地だけに豪勢な食事は期待していなかったのだが、ドバルが懸命に運搬を引き受けていたおかげで最近はだいぶ食糧問題も解決されつつある。だが、それでも余裕はないのが現状だ。だというのに、今日は客人もいる手前か出来る限りの贅沢を振る舞っている。

 壇上でグラスを片手に、リントは咳払いを挟んだ。

 

「よーし、それじゃお前ら! カンパーイ!」

『かんぱーい!』

 カラン。グラスを鳴らして、思い思いの食事を楽しむ。エヌラスはラステイション防衛部隊極東支部の実働部隊の面々と顔を合わせ、挨拶を程々に済ませると静かに楽しんでいた支部長のサカキに呼ばれたので足を向ける。

 

「どうだい、うちは。気に入ってくれるといいんだけどね」

「この食事会は……? 俺、まだ加入するとは一言も」

「うん、そのとおりだ。かといってうちも余裕はない。だが、今は蜂起した武装企業を相手にしている。士気の向上を目的とした食事会さ」

 なるほど。建前上は防衛部隊の士気向上。本質は期待の新星の親切心につけこんだ晩餐会、といったところか。

 

「ああ、それとコレを。女神様に届けてくれると助かる。こちらで現在起きている問題の要点をまとめたものだ。一部要望も含めてね」

「確かに受け取った。こっちは?」

「神機に関する資料だよ。こちらから開示できる、可能な範囲だけどね」

「ありがたく」

 エヌラスはサカキ支部長の隣に腰を下ろし、ソファーに体重を預けながら目を通す。その横顔が愉しそうにしているので、つられて口元が緩んでしまう。

 

「……第一部隊隊長が行方不明、というのは」

「客室に案内された時に、リントから」

「そうか。彼は実に優秀だった。リント君の後任として、第一部隊隊長に任命されて数々のアラガミを倒し、捕食し、順風満帆だった。あのアラガミが現れるまでは……」

「…………」

 エヌラスは神機資料から目を離さず、耳を貸していた。

 

「原因不明の赤い雨。それに伴う感染症の発生。新種のアラガミの発見……我々はそれを、感応種と呼んだ。他とは違う特徴を持った、特異個体の総称として」

「……今まで、その感応種が確認された事例は?」

「今まで、一度も。他のアラガミを率いることから、更に上位種であると考えられる。第一部隊隊長が引き受けた任務は、その感応種討伐のはずだったんだ……」

 サカキ支部長が握りしめるグラスが震える。当時のことを思い出して、怒りと後悔を滲ませながら呟く。

 

「……少数のアラガミを率いた、感応種の討伐。作戦は順調かに思われた。感応種を撃破して無事に作戦が終了。帰投命令を出した直後に――奴が現れた。感応種すら凌ぐ、遥かな脅威。もはや他のアラガミすら逃げ出す程に、生態系から外れた怪物が。討伐隊は全滅、辛うじて生き残ったのはリント君を含めた少数の者達だけ。新米のゴッドイーターちゃんは編成から外れていたおかげで被害を免れたけどね」

 楽しそうに仲間達に囲まれて大食い大会を始めているゴッドイーターを見て、支部長は少しだけ頬を綻ばせる。エヌラスは真剣な表情で神機資料のベージを捲くる。

 

「あれは、ゲイムギョウ界にとってあまねく脅威となる。ヤツだってアラガミの一種、それならば我々は諦めるわけにはいかない。第一部隊隊長はよく口にしていたよ――“生きることを逃げるな”とね」

「………………」

「通常のアラガミを凌ぐ感応種。それすら寄せ付けないアラガミを、私はこう名付けた。神をも喰らう新種の特異個体。すなわち、神蝕種(しんしょくしゅ)と」

「その隊長は、最後になにか言っていたか?」

「彼は、負傷したリント君達を撤退させ、一人でその神蝕種を相手にしていた。我々が聞いた彼の通信は――“諦めるな”と、それだけだった」

 エヌラスはサカキ支部長の話を聞き終えて、神機資料を返した。一通り目を通した、後は知識をどう活かすかだ。

 

「すまない。君にこんな話をしてしまって。だが、あまりに似ていたものでね」

「俺が?」

「どこか、彼の面影を感じたのかもしれないね。リント君達は。だから気を許したのかもしれないよ」

「人違いだよ。俺はそんな立派な奴じゃあないさ。資料、ありがとうございます」

「どういたしまして。さ、つまらない昔話はここまでだ。付き合わせてすまなかったね。遅くなってしまったけれど、食事を楽しむといい」

 エヌラスは支部長に見送られて、皿の山に隠れたゴッドイーターの向かいの席に座り込む。既に驚くべき量の食事をかきこんでいたようだが、口の周りにお弁当を大量にくっつけていた。それを指摘すると慌てて口周りを拭う。

 

「――ぷはぁ、どうしたんですか、エヌラスさん」

「いや、大食いチャンピオンに勝負を挑もうかと思って」

「いいんですか? わたし、こう見えてものすっっっごく食べますよ? まだまだいけますし」

「名前に負けず劣らずの食いっぷりに感服した。敬意を表して、フードファイトだ」

「じゃあこうしましょう! わたしが勝ったら、エヌラスさんは極東支部に入隊はどうでしょうか?」

「よっしゃノッた。なら俺が勝ったら、そうだなぁ……」

 エヌラスとゴッドイーターのフードファイトに、せっせと周りの皿を片付け始める。ハルがテーブルを拭き、エヌラスに耳打ちした。

 

(やめときゃいいのに。でもそうだな、勝ったら一晩……というのもありだと思うぜ?)

(いいや。俺はそういうの趣味じゃなくてね)

 肩を軽く叩かれ、この状況にリントは面白がって声を張り上げた。

 

「おーしお前ら! ラステイション防衛部隊極東支部、きっての大食いフードチャンプ! ゴッドイーターに挑戦者だぁ! 相手はコイツ、俺の窮地を救った通りすがりの自称魔道探偵、エヌラス! ……ところで、おまえ探偵要素なくね?」

「そこ、ツッコムな」

 食事会で気が緩んでいたのだろう、食事の手を止めて、何事かと面白がってラステイション防衛部隊のみんなが集まってあっという間に囲いが出来ている。

 不敵な笑みを浮かべて腕を組むエヌラスに、両手を膝の上に置いて余裕の笑みを浮かべているゴッドイーター。

 

「それで、エヌラスさん。わたしが負けたらどうするんですか? 言っておきますけれど、わたし食べることに関して自慢ですけど、負けたことありませんよ」

「奇遇だな。俺に大食いで挑んだやつは大体同じ事を言う」

 ハウンドスーツの上着を脱いで、椅子の背もたれに掛けておく。

 

「おれが勝ったら、そうだな……こうしよう。極東支部から引き抜き、という形で借り受ける。まぁ言うなら剣術指南、武者修行のお供だ。これでどうだ? 条件としては似たような物だが悪くない話だと思うぞ。こう見えて結構手先は器用でな、武器の加工なり防具の強化なりは引き受けられる」

「むむむ、悪くない話ですが……そこのところどうでしょうリントさん」

「良い機会じゃないか? お前が強くなって帰ってくるなら願ったり叶ったりだ。なぁに新米一人くらいは欠員出てもどうにかするさ」

「ちょっとぉ、負ける前提で話を進めないでくださいよー!」

「さぁ張った張った! どちらが勝つか! ちなみに俺は後輩の肩を持つ意味でゴッドイーターに!」

 即席の賭博場に、怒られやしないかとエヌラスがサカキ支部長を盗み見るが、穏やかな笑みを浮かべてフードファイトの成り行きを見守っていた。

 まるでこの賑やかで平和な一時を惜しむかのように――。

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