超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「やぁ、おはよー皆の衆」
「お、おはようございます……?」
「……エヌラスー。キミがさぁ、女の子囲うのも侍らせるのも別にぃーもう慣れたことなんだけど……どうしてそうホイホイ新しい子できるかなー……あ、私ユノスダス国王のユウコ。よろしく」
「私はノワール。よろしくね」
「あれ、あまり驚かないね。私が国王って言うと大抵の人、首を傾げるんだけど」
「まぁなんというか……」
「お前よりヒデェ女神様がいるからな、かわいいもんさ」
それがどこの国のどのような女神なのかまでは名前を出さなかった。それにはノワールも同意しているのかうんうんと頷く。そこへプルルートが戻ってきた。
「あれ~?」
「おはよ、ぷるちゃん。あ、今から朝ご飯だったんだ……ちょっとお邪魔だったかなー?」
「気にしないでいいよ~」
「あはは、ごめんねー」
「それで一体なんの用だよ……こんな朝っぱらから……」
「今日、アルシュベイトからの調査報告と照らしあわせて割り出したフォートクラブ生産工場の制圧に乗り出してもらうから頑張って!」
「……今日?」
「今日! お昼からミーティングだよ」
「……昼?」
「お昼十二時予定! みんなでテーブル囲みながら! 仲良くお茶でも飲みながらーご飯食べて」
ニコニコ笑顔の国王様は昼夜問わず元気ハツラツ。その活力が一体どこから湧いて出てくるのかは国民含めて付き合いの長いエヌラスとしても謎だった。しかし当人が吸血鬼なのだから人間の物差しでそれを測るべきではないだろう。
「マジで言ってんのか……?」
「な~に言ってんの? 私はキミのところに本当は真っ先に救援依頼出したんだよ? なのにいの一番に駆けつけてきてくれたのは誰だと思うのさ。アルシュベイトなんて二日と待たず来てくれたし、ドラグレイスはそもそもうちとは共存関係。バルド・ギアに関してはその気象情報やその他放送局のサポートと、うちは皆の協力で成り立ってるの! そりゃ、キミの国からのサポートもあるけどさぁ……?」
「そういえば、アナタの国ってどういうところなの?」
「あ~。それあたしも気になる~」
「うん? ちょっとー、エヌラス。彼女達になーんも説明してないわけ?」
「うるせ。俺の国の事情知ってんだろうがテメェ」
「まぁー、そうなんだけどね。時計に旋盤加工、装飾品とか……医療関係もキミのとこだし……いやね、私もキミに大きい顔できない立場だけど言いたいことは言いたいっていうか……」
事実である。緻密な作業や工程は全てエヌラスの治める地下帝国九龍アマルガムで加工されて出荷されており、それがユノスダスを受け口として各国に輸出されていた。
「じゃあそこのバカに代わって、私が説明したげよう! 地下帝国『九龍アマルガム』とは“犯罪国家”なのだ!」
「朝からうっせぇぞバカ」
パカァン! フライパンがエヌラスの頭に叩きつけられた。
「……犯罪、国家?」
「そう。財力が暴力によって脅かされ、権力が財力で賄われ、暴力が権力に制御される。金と暴力、女にクスリ。“悪徳に
「寝てねぇよ……」
逆に目が覚める。その顔が引きつっていた。犯罪国家――名前通り、何でもありだ。アンダーグラウンドの住人達は日々を暴力で乗り切る。
金の暴力。力の暴力。薬の暴力。性の暴力。ヴァイオレンスに満ちたゴッサム・シティ。スラムによって形成されるマンハッタンにして数多の犯罪組織や秘密結社、カルト教団に魔術結社を抱え込む闇の巣窟。それを束ねる“犯罪王”にして戦禍の破壊神こそがエヌラスその人であった。
一連の話を聞いていたノワールとプルルートが顔を見合わせ、視線がエヌラスに集中する。見た目は二十代前半という若さに対して、無類の非道さと残虐性と攻撃性を持ち合わせているにはそれなりの理由があってのことだ。
「昔に比べたらそりゃもう丸くなったよねぇ。初めて会った時を思い出すよ。襲われかけて返り討ちにしたっけなー」
「話を盛るんじゃねぇ。テメェとは初見で殴りかかってきたじゃねぇか」
「だって普通、キミみたいな人が迷子の少女と一緒にいたら助けるじゃん!?」
「否定しねぇけどテメェ後で覚えてやがれよ!?」
完全な濡れ衣からエヌラスとユウコは出会い、その後お互いに国王である事実が発覚してからというもの奇妙な関係を築いている。とはいえ、エヌラス自身はユウコに会うつもりなど毛頭なかった。それでもユノスダスに来る度に絡まれてウンザリしている。
「ね~、朝ご飯冷めちゃうよ~? あたし、頑張ったんだよぉ」
「ああそうだな。ソコのいつ寝てんだか分からねぇ四六時中元気な国王様は無視してさっさと飯食っちまおうか」
「失礼な、私はもうねむねむだよ! おねむだよ、いっつも朝礼の時間まで起きててそれからお昼まで寝るんだから!」
「いちいち声がデケェ。ベッドの上でもそうなのかテメェは」
ユウコからの反論はない。その代わり、顔がみるみる真っ赤になっていく。
「べ、べべべべべべ――ベッド、の上だと、私は静かだよ……!? ぐっすり寝てるよぉ……それはもう、子猫のように……!?」
明らかな動揺を見せながらどもるユウコを無視して、エヌラスは手を合わせてプルルートの作った朝食に箸を伸ばしていた。その顔が徐々に不機嫌さを隠そうともしない。
「プルルート」
「なに~?」
「美味しい。そんだけ言いたかった」
「えへぇ。ありがと~」
「飯食ったらそのまま仕事行ってくる。昼に教会集合でいいんだろ、ユウコ」
「……ぇ!? あ。うん、うんうんそうだよ! じゃー、あの、私待ってるから、じゃーね!」
せっかく出された料理に手をつける前にユウコはドタバタと早足で宿を後にする。それをまるで風が吹いたような涼しい顔で見送って、エヌラスが嘆息した。朝から騒がしい奴だと呆れつつも、記憶に新しいそっくりさんの顔を思い出す。
そこで、どうして自分が“アレ”に向かってだけ複雑な感情を抱いていたのか分かった。
「ネプテューヌそっくりだ、アイツ……」
「そうね。無駄に元気なところは似てると思うわ……」
「そうかなぁ~?」
朝食を口に運びながら、プルルートが笑い出す。
「どうしたの?」
「なんかぁ、こうしてると家族みたいだな~って思ったのぉ」
「…………」
「エヌラスが旦那様でぇ、ノワールちゃんが娘~」
「ぼっぶぁ!?」
味噌スープ大氾濫。エヌラスの鼻に塩分が降り注ぐ。むせる。ひたすらにむせる。鼻から気道への侵入拒否された汁が逆流してきた。あたかもそれが当然であり、その反応が不思議そうにプルルートが首を傾げている。
「おま、お前……!? お前、この、プルルートテメェ……! ゲッホゲホッ! どちらかと言えば立場逆じゃねぇ!?」
「……エヌラスが奥さんの方がよかったぁ?」
「違うそうじゃない! わざとか!?」
「だぁって、あたし子供じゃないもん~」
「わ、私だって子供じゃないわよ!」
「なんで朝からこんな騒がしいんだよごちそうさまでした仕事行ってくるチクショウ!!!」
「あ、逃げた! いってらっしゃい!」
「いってらっしゃ~い」
半ギレになりながらエヌラスは修羅場の予感から逃げ出した。ハンティングホラーのエンジン音が遠ざかっていくと、残された二人が静かに箸を動かす。
「……新婚さん、憧れてたんだよね~」
「気持ちは分かるけど、私が娘っていうのはちょっと……」
「え~? いいと思うんだけどなぁ~……」
「そこはほら、せめて姉妹とか。私もエヌラスも黒髪だもの、似てるじゃない。眼の色も」
「…………じ~」
値踏みするようにプルルートが箸をくわえてノワールを眺め、頷いた。
「じゃ~ね~、後でぇエヌラスに『お兄ちゃん』って言ってみてよ~」
「へっ!? べ、別に一回くらいならいいけど……」
「どんな反応するかなぁ、楽しみ~」
どうせ慌てふためいて否定するに決まっているが、それを想像して――反撃してみるのも悪くないとノワールは意地の悪い笑みを浮かべる。