超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――ゲイムギョウ界に朝が訪れる。ラステイションの女神が不在のまま迎える朝は国民の不安を煽るには十分すぎるほどだったが、しかし、それでもプラネテューヌに訪れる朝は変わらなかった。ネプテューヌをネプギアが起こして、イストワールの三人で朝食を摂っているとNギアに着信が入る。相手はノワールの妹、ユニからだった。
「もしもし、ユニちゃん?」
《あ、おはよう。ネプギア》
「うん、おはよー。こんな朝早くからどうしたの?」
《えっと、お姉ちゃんに言われてちょっと調べ物してたんだけど……》
「そうなんだ。何を調べてたの?」
《アダルトゲイムギョウ界についてよ。調べたら、ゲイムギョウ界の一種には間違いないらしいんだけどね……》
紙の擦れる音から、何か文献を参照しているのが窺える。言葉には何か疑問、というよりは理解の範疇を超えた様子でユニは続けた。
《その世界、何度も消滅を繰り返してるみたいなの》
「えっ?」
《ずっとずっと大昔の話なんだけど、元々はもうひとつのゲイムギョウ界として存在してて、それがある日を境にしてパッタリと消えちゃったんだって。ほら、R18アイランドあるでしょ? あれはその名残みたいなことが書かれてるの……っていうかコレ、ホントに私が読んでていいのかな……?》
「え、えっと、それで?」
《あ、あぁうん。えーと……そこでは守護神達による闘争が周期的に起きてて“戦い抜いた最後の一人”の願いを叶える塔があるの。ただそれは、シェアエネルギーをゲイムギョウ界に還元する為の戦いだったんだって。世界に存在できるシェアの限界に応じて彼らは戦いを繰り返し、その度にゲイムギョウ界そのものの均衡を保ってたって書いてあるのよ》
「ゲイムギョウ界の均衡……?」
現在のゲイムギョウ界に存在するシェアエネルギーは四人の守護女神が治める国ごとに差はあるものの、その上限は一律している。世界を守る為に自らが犠牲となる戦い。ネプギアの脳裏に浮かぶのはエヌラスの姿。バルド・ギア。アルシュベイト――。
「それってつまり“間引き”みたいなもの?」
《そうだと思うけど。でも、どうして突然消滅したのかっていう記述が何処にも載ってないのよ……お姉ちゃんから突然調べてくれって頼まれたんだけど、なにか心当たりない?》
「あー、えっと……一応あるけれども……」
果たしてどう説明するべきか。
「ほ、ほら。もしかしたら例の災害に関係あるかもしれないって思ったんじゃないかな?」
《そう……なのかな……でもこれ、すっごい大昔の話だけど……》
“あぅ、鋭い……”
《でも確かにそうかもしれないわね。こんな規模の災害なんて絶対不自然だもの。まるで地面が盛り上がってるみたいな――》
「ユ、ユニちゃん? 今なんて?」
《え? だから、地面が盛り上がっているって言ったのよ。地震って言うのは普通そういう現象のことでしょ? ちょっと違うけど……》
地層プレートの“ズレ”や“歪み”が元に戻る際に起きる振動――それがもし“次元を挟んだもの”によって起きているのだとしたら……。
《って、ネプギアに言ってどうするんだろ私……お姉ちゃんに会ったら教えてあげて》
「うん、ありがとう! ユニちゃん!」
《あ、ありがとうって……べ、別にアナタの為に調べてたんじゃないわよ!?》
「でも、教えてくれてありがとう!」
《――――話は、それだけ! じゃあね!》
「うん、またね」
ネプギアが通話を切る。
「お姉ちゃん、今の話――」
「へ?」
「もー、ご飯食べるのに夢中で全然聞いてなかったのー!?」
もごもごと口を動かすネプテューヌに、ユニから聞いた話を噛み砕いて話すと理解しているのかどうなのか疑問符を浮かべていた。
「つまり――どういうことだってばよ?」
「だからぁ、元々“こっち”と“あっち”のゲイムギョウ界は一つのゲイムギョウ界だったの! それが、何かが原因で別々な世界になっちゃったってことなんだってば! それで、これは仮定なんだけど、今まで起きてた頻繁な災害は二つの世界の“歪み”によって起きてるんだとしたら、大変な事なの!」
「ネプギアさんのお話は分かりました」
「いーすんさんは信じてくれますか!?」
「ええ、勿論です。でも、だとするとどうして突然こんなことに? あちら側での戦争の影響と言えど……」
「……」
『次元連結装置の不完全な起動!』
ネプギアとイストワールが同時に思い当たる。元々ひとつの世界であったというのなら、別次元のゲイムギョウ界と繋がっている今の状態で更に不完全な状態に陥っていてもおかしくない。そこへ不完全な形での次元連結ともなれば、この現象にも納得がいく。だが、何故それらが地震という形で表れているのかまではやはり分からない。
「あのさー。それだったら案外ゲイムギョウ界の下で起きてるんじゃない?」
「へっ、下?」
「うん!」
「どうなんだろ……」
「んもー、ネプギアは固いな~。常識に囚われちゃダメだよ、もっとクリエイティブな思考でいこうよ! 次元の壁を隔ててるんだったら、それが上でも下でも左でも右でもBでもAでも関係ないって!」
「なんだろう、凄くトンデモないこと言われてるのに納得しちゃう私がいる……」
「それに、結局は向こうで起きてる戦いを終わらせないことには私達のゲイムギョウ界に平穏が訪れることもないんだし、やることは一緒だよ。そういうわけだから、いーすん。私達またちょっと留守にするね? これも女神のお仕事だと思ってさー」
「はぁ……分かりました。でも、お二人はどうやって再びあちらの世界へ?」
「あー、それは考えてなかったなー……またあの亀裂から落ちるのもやだし……」
バルド・ギアに頼もうにも、あまり良い顔はされないだろう。亀裂から落ちて辿り着いたのは戦場のど真ん中だった上に、嫌な思いをした。そうなれば――。
「あの、ステラちゃん」
《…………?》
Nギアを起動して、登録されたインタースカイのサーバーに通信を繋ぐ。仮想現実でも時間の流れは一緒なのか、ステラはパジャマ姿で眠そうにしていた。それでも呼び出しには即座に応じてくれる。
「私達、もう一回アダルトゲイムギョウ界に行こうと思ってるの。だけど、ソラさんに頼むと断られそうだから……お願い、できます?」
《……》
二度、三度頷いてステラの服装が光に包まれた。それからいつものワンピース姿――ではなく、スーツ姿に変わっている。彼女なりの仕事着らしい。
「あとさ、私達が転送される場所ってやっぱりインタースカイ国内に限定されるの?」
《……》
ネプテューヌの疑問に、ステラは否定のサインを示す。アダルトゲイムギョウ界のマップを表示して、インタースカイを叩いた。それからゆっくりと指を動かして、もう一点――商業国家ユノスダスを叩く。ステラの説明では理由はともあれ、その二箇所にのみ転送が可能のようだ。
「でも、こんなに離れてたんだ……」
「ねぇねぇ、ステラ。エヌラスの国ってどこ?」
言われて示したのは、何もない場所。時計塔の周囲は灰色の瓦礫に埋もれていて街と呼べる代物ではない。位置はちょうどインタースカイから真逆だった。その中間地点辺りにユノスダス。そして更に南方へ進めば軍事国家アゴウ。北方は山々に覆われている。
自分達がアダルトゲイムギョウ界に落ちたあの日、エヌラスと出会ったのはインタースカイとアゴウを結ぶ森の中だった。
「どうしよっか、お姉ちゃん?」
「ここはユノスダスって国の方がいいんじゃないかな。地図を見た感じだと大体中間地点だし、インタースカイからだと遠いし」
「そういうことらしいので、お願いできます?」
うんうん、とステラが頷き、デジタル表示される時計を取り出す。
「えっと、いつ行くか……ですか?」
「ご飯食べたばっかりだしな~……じゃあ、お昼くらいがいいかな」
「座標は以前と同じ場所でお願いします」
二人に言われて、確認のスケジュールを見て時間を調整する。
昼の十二時。座標は以前と同じ場所。アダルトゲイムギョウ界への転送先は、商業国家ユノスダス。
「エヌラスさん、また会えるかな……」
「案外ユノスダスって国で合流できたりして」
「それはちょっと都合が良すぎる気が」