※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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第九章 武装企業編:信仰こそ我が救い――
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 ルウィーで合流することになった女神たちは、ホワイトハートに現状を簡潔に説明した。エヌラスにも連絡をしておいたが、果たして。

 現在、超次元の救援要請に答えたのは――。

 電脳国家インタースカイ国王、琴霧ソラ。

 犯罪国家九龍アマルガム国王、大魔導師。

 軍事国家アゴウ国王、アルシュベイト。並びに、女神の加護を施された精鋭百名。

 ヒナグラシ教会職員、ドラグレイス。

 ……一部、非協力的ではあるが非常に心強い援軍である。

 

「――と、いうわけなのよ」

「なるほど。じゃあ、そっちのメガネと白スーツは協力者ってわけか」

「はは、どうも。こっちの次元はこんなに女神様いるのか……こわ……」

「……俺、帰ってもいいか? いらんだろ」

「じゃあ僕帰るからキミは残ってね、ドラグレイス」

「それが遺言でいいかクソメガネ」

 早速互いに喧嘩腰。とはいえ女神様達の手前、手を出すのは控えているようだ。

 

「こちらの戦況はどうなっていますか?」

「ルウィーにはまだ攻め込まれていないわ」

「……プラネテューヌとラステイションは、どうなのですか」

「こっちは首都目前まで侵入されて、教会襲撃手前だったわ。ま、アゴウ軍が救援に来てくれたおかげで盛り返したけどね」

「プラネテューヌはまだ首都まで侵入はされていないわ。だけど、防衛線は崩壊しているわね」

 パープルハートがチラリとソラに視線を向ける。それに愛想よく手を振り返した。

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。初めまして。電脳国家インタースカイ国王、琴霧ソラです。リーンボックス奪還作戦の間ではありますが、協力させていただきます。こっちはドラグレイス」

「……言っておくが俺は無理やり連れて来られた。仕事は期待するな。なんだその目は」

 パープルハートと、ブラックハートが目を丸くしている。知っている姿からかけ離れていたからだ。

 

「……ドラグレイス?」

「なんだ、人の名前を確かめるように。二度も名乗らせるな」

 懐から黄金のキセルを取り出すが、ソラに控えろと言われて渋々戻す。

 ――がらんどうの、白銀の竜騎士。それが知っている姿だった。しかし、今はまだ肉体を保っている。ということは“ティル・ナ・ノーグ”に足を踏み入れてはいないということ。

 それに、何故かホッとした様子で二人が胸を撫で下ろすのにグリーンハートとホワイトハートは首を傾げていた。

 

「そういえば、アルシュベイトは?」

「アイツなら最前線にぶっ込んだ」

「本人たっての希望で。まぁ、偶然にもエヌラスがいたようだけどね」

「は? アイツは馬鹿か? あぁ馬鹿なのは知っているがそこまで馬鹿だと思わなかった」

「はははバカ言うなよドラグレイスバカ野郎。バカをバカといったところでバカなんだからしょうがないんじゃあないか、このバカ」

「お前の遺言はそれでいいんだなクソメガネ野郎」

「喧嘩しないで会話できねーのかよ」

 金属バットに対して、タブレット端末を構える二人にホワイトハートが呆れる。

 

「……ところでもう一人足りないみたいだけど」

 心底嫌そうに、ブラックハートは会話を切り出した。それに、ソラ達も顔を見合わせて首を横に振る。

 

「なんだお前ら、そんなところに揃いも揃って。風呂はいいぞ」

「なんで平然と――ってなに温泉満喫してんだアンタ!?」

 ルウィーの国境付近に設けられた防衛拠点で作戦会議をしていたソラ達の近くを通過しようとしていた大魔導師が浴衣姿で声を掛けた。その顔を見てホワイトハートが戦斧を構える。

 

「テメェ……あたしの国で何をしてやがる!」

「温泉旅行だ。風呂はいいぞ」

「ロムとラムにしたこと忘れちゃいねーぞ!」

「風呂はいいぞ。ああ、そんなこともあったな。つまらんことをした」

 悪びれる様子もなく、微笑を浮かべて片手を挙げる。すまんな、という意思表示だが、それが逆にホワイトハートの怒りを逆撫でていた。というよりもどれだけルウィーの温泉を気に入ったのか、大魔導師の手には風呂桶とちゃっかり温泉まんじゅうが下げられている。完全にリラックスモードだ。

 

「大魔導師……あなた、何してるの? いえ、ほんとうに」

「正直な話。戦争などつまらんことに首を突っ込む気など欠片もなくてな。それならそれで、俺は別次元の温泉旅行を満喫しようと思っている。

 ――風呂は、いいぞ」

「いやいいよ。わかったよ。どんだけ気に入ったんだよ此処の温泉!」

「一応、確認のために聞いておきたいのだけれども。大魔導師、あなたもしかしてさっき……」

 ブラックハートからの問いに、大魔導師は鼻で笑う。

 

「ああ、私がやったことだが? それがどうかしたか」

「やっぱりね……。ベール。ついさっきなんだけれど、リーンボックスの海上に展開していた大艦隊が壊滅したわ」

「……はい? また、ご冗談を。どうせならもっと面白いジョークで」

「不足か、黒の女神? アレは疲れる。できればそう何度も使いたくないのだが」

 大陸間弾道狙撃魔砲。その気になればリーンボックスの教会だろうが武装企業本社だろうが、ルウィーから狙撃してみせると宣言するが、本人は一発限りと断言する。そんなデタラメな魔術を行使するのも条件があるらしい。

 

「あの規模の魔術であれば、俺のシェアを消費した上で、かつ詠唱を含めて発動できる。先程のアレは、数千規模の魂を消費した。だから、何度も使いたくはないと言っている。面倒かつ手間がかかる。そのうえに、つまらん」

「本音は」

「暇潰しにもならん労力を俺に消費させるな――そんなわけで、俺は温泉旅行を満喫する」

 親指を立てて微笑むご機嫌な大魔導師は、ムカつくほど顔がいい。そのせいでホワイトハートも何も言えずにいた。グリーンハートはその戦略的効果を視野に入れて冷静に思考する。

 相手もまさか前衛艦隊が壊滅するとは思っていなかったはずだ。そうなれば、武装企業は総崩れも同然。現に、侵攻部隊は連携が崩れている。そこにアゴウ軍の強襲。完全に戦局は覆されていた。

 

「くっそムカつくが、今のところ一番働いたのがこいつだから何も言えねぇ……!」

「ブラン、落ち着きなさい。今の大魔導師は味方なんだから」

「なんだ、白の女神。お前の国に貢献してやるのが不満か?」

 そう言って、大魔導師は浴衣の袖から一枚のカードを取り出した。

 クレジットカード……? だが、それを見たホワイトハートが指を突きつけて驚いた顔をしている。

 

「そ、そいつは――!」

「ふっ……これがわかるな」

「なによ、そのカードは。説明しなさいよ、ブラン」

「温泉旅館フリーパスじゃねーか! 一週間だけだが入浴料金無料になる、会員様限定カード! ――って、まさかテメェ!」

「その通りだ。ただし無料になるのは入浴料金のみ、宿泊料金は別途必要になるが……俺にとってはどうでもいいことだ。営業時間外に戸を叩くようなど無粋の極み、どうせなら小粋な計らいで返してやろうと思ってな。ゆえ、ルウィー観光温泉会員に入会した」

 最初はそんなつもりなど毛ほどもなかったらしい。だが、紹介された露天風呂があまりに心地よかったもので全裸で狙撃してやった――それで壊滅的打撃を受けた武装企業が浮かばれない。

 

「もちろん、タダでとは言わん。入浴した温泉全てレビューを書いてやる。宣伝も広告もキャッチコピーも気が向いたら用意してやるとも。国内外問わずルウィーの温泉街の素晴らしさを広めてやる。それでも、まだ不満かね?」

「…………ぐ、ぐぐぐ……うぅ……」

「あのー、ホワイトハートさーん。大魔導師の好きにやらせておいたほうが良いと思います。この人、メッチャ気に入ってます。この国」

「いつだったか、閑古鳥の鳴くユノスダスの店を宣伝してやったら競合店に並ぶ売上だったな」

「おかげでうちの経営店が泣いてたけどね……」

 現在もその店は中堅の壁としてユノスダスで頑張っている。あのユウコですら月に一度は足を運んでいるという。元々素材は良かった、しかし様々な要因が絡まり、不景気が続いていたのを大魔導師がいつもの暇潰しにふらりと立ち寄った結果である。

 

「……他のお客様に迷惑かけんじゃねーぞ」

「誰がそんなことをするか。家の風呂ではなく外の風呂に浸かる至福のひと時、誰しも邪魔はされたくないだろう。風呂はいいぞ、身体だけでなく心も洗われる。疲れた身体に染み渡る効能、肌に潤い――」

「おい、大魔導師。魔術の詠唱を匂わせるその語りを止めろ。俺たちまで風呂に入りたくなってくるだろう」

「入るか?」

「断る」

 大魔導師の誘いを、ドラグレイスは一言で断った。まさに鋼鉄の意思。だが、女神たちはそうではないらしい。

 

「……そう言われると、わたし達も入りたくなってくるわね。ノワール」

「ええ。こっちは朝からずっと戦いっぱなしだもの。温泉でリフレッシュしたいわ」

「それなら、女神様達はどうぞお風呂でゆっくりしてきてくださいよ。ユウコから許可貰ってゲイムギョウ界の全域をカバーできるくらいにはインタースカイの電子網を広げてあるので。なにか戦局に動きがあれば、こちらから連絡させてもらいます」

「助かるわ、ソラ。あなたの情報処理能力に期待しているわね」

「――あー、そうだよなぁ。本来女神様って、これくらい懐広いんだよなぁ……!」

「やめろバカメガネ。思い出すな。俺も泣きたくなってくる」

 

 ――この二人。剣姫に「お前らも行け」の一言で送り出されている。当然、拒否権など有無を言わせない有言実行。文句の一つ言おうものなら力づくで来いの脳筋女神。二人がかりであったにもかかわらず無駄な抵抗に終わった。

 パープルハート達が苦笑いを浮かべている中、グリーンハートだけは同情している。なにせ、その現場を目撃していたのだから。

 

「お二人とも。これが終わったらリーンボックスでゆっくりしていってください」

「はは、ありがとうございます……がんばろ」

「ふん。それでやる気が出るほど俺は安くない。が、その申し出は快く受けてやる」

「ベール。あなたその二人とフラグ建てたの?」

「すいません、僕はステラ一筋なので」

「悪いな。守備範囲外だ。それと俺は教会職員だ、守護女神になど蚊ほども興味はない」

「ごめんなさい、ベール。変な期待させて……」

「あなた達、少しはこう……ないのですか?」

『ない』

 ハッキリと、ソラとドラグレイスはハモった。

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