超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ネプテューヌとネプギアはアダルトゲイムギョウ界に戻る準備を進めていると、教会のテラスにバルド・ギアが戻ってきた。どうやら全ての被害状況についてのデータの集計が終わったらしい。ちょうど二人ももう一度戻るという説明をすると、不思議そうに首を傾げていた。
《なぜ、そうも我々の戦いに首を突っ込むんですか》
「だって、放っておけないよ」
「そうですよ。それに――」
ネプギアはユニから聞いた話を思い出す。だが、それを本当に言ってしまっていいものなのか迷っていた。
アダルトゲイムギョウ界は崩壊へ向かっている。しかし、それは繰り返し繰り返し、何度も起きている事象だった。それは、今の彼らの戦いの全てが“無駄”だと言っているのと同じこと。それはとても残酷だ。命懸けで守ろうとしたものも、命懸けで手に入れたかった未来も、何もかも無に還る。そして何事もなかったように繰り返されていく――それはまるで終わらない“
《それに……?》
「……ごめんなさい、なんでもないんです」
言えるはずがなかった。
「あの、ソラさん」
《はい?》
「……ステラちゃんは、大切な人なんですか?」
《…………私にとって彼女は、ただの仲間だった。アプリケーション開発のね。だが、不慮の事故によって彼女の肉体は》
「仮想現実。電脳世界に……?」
《ええ。その肉体と精神の両方が、今は電脳世界に取り残されている》
「でも、インタースカイの技術力なら――!」
《私もそう考えていたよ》
途方も無い試行錯誤の果てに得られたのは、副産物である高次元転送システムだけ。彼に残されたのは莫大なジオラマのインタースカイ。そして、孤独な電脳国家の王座だけだった。
《それでもね。彼女の肉体だけは、こちら側に持ってこれなかったんだ……》
「どうして?」
《ネプテューヌ。二次元に行きたいと思うかい》
「ん~。まぁそういうのは私あんまり思わないかな。「楽しそう!」とは思うけれど、ゲームの世界はゲームだから私達が楽しめるんだもん。それがリアルになったら、つまらなくなっちゃうんじゃないかな。他人事だから笑っていられるんだよ」
《次元の壁を超える。それは簡単なことだ。だけど――“次元の壁に消えた肉体”を再構成するということは不可能に近い。私が見つけることが出来たのは、電子世界で漂っていた彼女の意識だけだった。肉体は見つからなかったよ》
「それを繋ぎ止める為の場所が、インタースカイのサーバーってことですか?」
《ネプギアは機械に明るいみたいだね。そういうこと。だから、インタースカイは彼女の庭であり、彼女の為の世界なんだ》
そこに、きっと想像を絶する苦労があったのだろう。ステラだけでなく、他の被害者達も同様にインタースカイのサーバーによって仮想現実で生きている。彼は、そんな肉体を持たない国民達に支えられている国王だ。
《実を言うと、私は変神出来なくてね》
『えっ!?』
《シェアクリスタルを仮想現実のインタースカイに置いてある。彼らからのシェアで私はあれだけの
次元を超えたシェアネルギーの確保。未知との邂逅。だがそれがよもや崩壊の共有という形で現れたのは皮肉以外の何でもなかった。
《私が次元連結装置を開発したのは、もしかすれば彼女の肉体が見つかるかもしれないという淡い希望からだったんだよ。もちろん、その基本となる思想はエヌラスからだったけれどね》
鋼の拳を握りしめて、バルド・ギアは機械の顔で怒りを滲ませる。
《彼は、それと知っていながら甘い話を持ち掛けて――最後に裏切った。その理由も明かさないまま……》
「エヌラスは知っていたんじゃないかな? 次元連結が失敗すること」
《――馬鹿な。再三の起動テストにも彼は同席し、最終チェックも完璧に作動していたのに?》
「でも、おかしいですよ。何か細工されていたことを知っていなかったら、そんなことしません」
《それでも私は、にわかに信じがたい……どうして彼はそれを話さない? それと知っていたら私に一言あるはずだ。そうでなくとも、アルシュベイトにすら!》
「きっと何か事情があったんだよ。何か心当たりとかない?」
《心当たり……?》
バルド・ギアが考える素振りを見せた。何か思い当たる節があったのか《まさか……》と呟くが信じられない様子で押し黙る。
「何かあるんですね」
《…………――彼に、直接聞いてくれ。私には聞く勇気がない》
「どうして?」
《……エヌラスには、妹がいた。恋人がいた。だが――殺された》
「――――え」
「殺され、た……?」
《彼の妹は神格者の一人、私達の間では“狂い時計”のクロックサイコと呼ばれている奴に手を掛けられた。……忘れたくても忘れられないよ、あの凄惨な現場は》
「恋人は、誰に?」
《――――エヌラスが、自分で》
愛する人を、自らの手で殺める。それは悪鬼の所業に違いない。愛するものを失うということは、捧げていた心を殺すこと。自分を殺すということだ。
「なんで、そんなことを!?」
「朝からする話題じゃないよ! こういうのはしんみりした夜にするべきだと思う!」
「お姉ちゃん!?」
「それで傷心の二人が慰め合うっていうのがエロゲで定番なんだからね!」
「お姉ちゃんッ!?」
《えーと、まぁ、そうですけれど……》
「ソラさんまで!?」
しかも満更でもなさそうに頭を掻いている。カリカリと金属音が鳴っていた。
「そんな話されたら私達、エヌラスにどんな顔で会えばいいのさ」
《……あくまで、彼と行動するつもりですか》
「はい」
《そういうことならば私は引き止めません。ですが、それは我々と敵対するという意味であるということを忘れないで下さい。アルシュベイトに、今話したクロックサイコに、ドラグレイス。そして、ムルフェスト》
「最後のは?」
《真性の吸血鬼です。遭遇しないことを祈りますよ》
そう言うと、人間体へ姿を変えてメガネを直す。
「しかし、そうも簡単に国を空けていいものなんですか?」
「大丈夫大丈夫。私はプラネテューヌを信じてるよ! それに、頼りになる仲間もいることだし。ベールやブランもいざって時は駆けつけてきてくれるよね」
「肝心なところは他人任せですか……」
「あ、もちろんバルド・ギアもだからね」
「ボクまで? どうしてですか」
「だって、本当は悪い人じゃないんでしょ? そうじゃなかったらステラの為に建国までしないよ。次元連結装置だってわざとじゃないみたいだし」
「それにゲイムギョウ界に私達を送ってきてくれました。災害の調査だって」
「だから、信じるよ。エヌラスも見た目悪人で最初こそすっごく怪しかったけど、良い人……か、ともかくとして?」
「お姉ちゃん、そこは断言しないと説得力が……」
「いや、だって今でもちょっと会いたくないって思うもん。投げられたりパンツ可愛くないって言われたり馬鹿って言われたり叩き起こされたり……散々だったんだもん。あ~あ、アレがなければちょっと好感度上がるのに。ツンデレのデレがない人なんて、カラメルのないプリンと同じだよ」
思い出したのか、肩を落として深い溜息をつくネプテューヌにソラが意外そうな顔をしていた。
「珍しいですね」
「普通、そこまでされたら誰だって近寄りたくないよね。でも私達が頼れるのは……」
「いえ……そちらではなくてですね。さきほど話した通り、彼は恋人も妹も失っていますが――その事件以来、女性と行動を共にするなんて今までなかったんですよ」
『えぇぇぇぇっ!?』
「まぁ、敵対していた我々としては彼がシェアエネルギーの回復手段を絶ってくれて助かりましたし、消耗させていたんですけどね。てっきりシェアの回復の為に連れてきたのだとばかり……」
「~~~~、で、でも、ほら、それってつまり……!?」
エヌラスの行動は、全てデレの裏返しだった――?
“うわ、ぅわぁ……! どうしよう、なんか、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた私! あぁぁぁどうしたらいいのこれぇ、助けてエロい人! じゃなくて教えて、いーすん!”
「お、おねおね、お姉ちゃん。顔真っ赤だよ? 風邪かな、あはは……」
「なんでネプギアまで顔赤くしてるの!」
「へっ!? 私は普通だよぉ!?」
「あーほら、暑いからねーあはははは」
「そ、そうだよねぇ。災害のせいだよねぇあはは」
「……いえ、快適な気温なんですけど…………言うのは野暮ですか?」
「そうですね、いーすんさん……」
気まずい空気の中に、イストワールが入ってきて困惑していた。