※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード283 肩まで浸かってどっぷり抜け出せないサウナ風呂

 

 

 

 リーンボックス近郊。シーシャ達の宿泊しているホテル、そのフロントの一角にはアルシュベイトが片膝立ちで鎮座していた。一室を借りようとした際に《休めるのならば置物代わりでもいいが?》という本人からの意見に、手持ち金が心もとないシーシャ達は申し訳なく頷いた。ホテルの従業員もそれには同意の上だ。しかしながら一国の王様が公に放送されて一躍有名人となっていてはさすがにリーンボックスの住民も黙っていない。

 一目見ようと集まった利用客が勝手にツーショットを撮ったりしていた。それに起き抜けのシーシャ達も冷や汗をかいている。

 

「みんな、ロボット好きだねぇ……」

「そりゃそうだよ、だって超合金だよ超合金。機械はロマンで動くんだよ!」

「いや、ビーシャのそれはなんか違うような気がするよ」

「興味ないね。ケーシャからの連絡は?」

 一足先に武装企業の警備網の偵察に行ったケーシャはまだ戻ってこなかった。そんな時、ホテルに運ばれてくるのは集荷の大きなダンボール箱。ちょうど人が入れるほどのサイズ。

 

「すいませーん、お届け物でーす」

「あら? 今日は集荷を頼んでいないはずですが……」

「え、あれ? でもこの積荷には確かに……」

 ホテルの名前が書かれている。その送り主も『アームドソウルス』になっていた。はて、なんだろうか。気味が悪い。疑問に思った直後、ダンボール箱が動いた。悲鳴をあげて人々が離れ、何度か揺れて──。

 

「ぷはぁ! ケーシャ、ただいま戻りました!」

「ケーシャ!? アンタなんでダンボール箱に入ってるんだ!?」

「これには深い事情がありまして」

 緩衝材を詰め込んだダンボール箱から出てきたのは、ケーシャだった。服に付いた緩衝材のクッションをはたき落としながらアルシュベイトに詰め寄る。

 

「武装企業の監視の目をかいくぐって玄関ホールまではなんとかたどりつけたんですが……運悪く見つかってしまいまして。そこで万能ダンボール箱の出番ですよ。運良く集荷場に逃げ込んで送り状を書いて身を潜めてました」

「結構雑な警備なんだね……」

「ロボットなら赤外線センサーくらい積んでいるものじゃないのか?」

「いえ、規定のルート以外の警備はされていませんでした。低コストってやつですね」

「ザル警備って言うんだよ、そういうのは……」

 呆れつつも、ケーシャが無事に戻ってきてくれたのは嬉しいことだ。そして、静かにアルシュベイトの網膜ユニットが光を灯した。機首を上げて、周囲を観察する。どうやら人だかりに囲まれているようだ。

 

《……ふむ。おはよう、リーンボックスの皆さん》

「あ、起きた。おはよー、アルシュベイト!」

「ああ、やっと起きたのかい? こっちもちょうどケーシャが戻ってきたところさ」

「おはようございます、アルシュベイトさん。ケーシャ、ただいま帰還しました」

《五体無事でなにより。報告を聞こう》

「はい。まず武装企業の警備網ですが──」

 起動したグランドマザーウィルの砲塔は、リーンボックス全土をカバーしている。だがその砲門は市街まではカバーし切れていない。つまりは接近してしまえばただのデカブツと化す。旧時代の遺産と言うだけはある。その足元をカバーしている機体の数はそう多くなかった。殆どが自動化されたガードロボ、決められたルートを巡回するだけらしい。

 

「なんとか辿り着いた本社ビルの正面ホールでしたが、内部の警備員はほぼ皆無です。報告は以上となります」

《ご苦労だった。感謝する》

「お役に立てたのならなによりです」

《十分に休息を摂ると良い》

 アルシュベイトは立ち上がり、機体のフィジカルチェックを開始した。各部関節部異常なし。機体損傷は相変わらず。推進剤残量も残り少ない。弾薬も決して楽観視出来ない。そうなれば最後に頼れるのは豪剣一本。

 

「浮遊要塞に突入する機影があった、とも報道されてたけれど」

《トライデント分隊。我が親衛隊だ。ならば要塞攻略は任せてもいいだろう》

 腕部稼動率、問題なし。脚部稼働率、問題なし。胴体稼働率、問題なし。

 ──心鉄、燃焼率異常なし。五体満足。

 

《さて、それではこれより武装企業本社ビルへの突入作戦を開始する》

「警備ルートはこちらになります」

《助かる、ケーシャ》

「ご武運を」

《アルシュベイト、出撃するぞ──の、前に。記念撮影を希望の者は?》

 それに手を挙げるリーンボックスの住民多数。アルシュベイトは深く頷いた。

 

 ────そんな記念撮影をしていたのが、つい三十分ほど前。時間にしてトライデント分隊がジョッシュとの交戦を開始した頃と一致する。

 そして現在。アルシュベイトはリーンボックス首都を警備する武装企業の大型多脚メカを粉砕していた。続けて自律機兵が六体。ことごとくを片刃型長刀で両断していく。しかし、最後の一体だけは長刀で胴体を突き刺して、即席の壁にしながら武装企業本社ビルへ向けて駆け出していた。

 

《敵機猛進撃中! 直線より突撃してきます!》

《分かっているのなら撃退しろバカども!》

《警備隊長! 第三防衛ライン突破されます!》

《どいつもこいつも役立たず共め! 最終防衛ラインへ戦力を集中させろ! 第二防衛ラインは捨てる!》

《狙撃部隊沈黙! ダメです、止められません!》

《サイレントアバランチの連中は何を見ているんだ! 減給ものだぞ!》

 銃声のけたたましく鳴らされる本社ビル正面防衛ラインでは、赤い機体色の警備隊長の怒鳴り声が止む気配がなかった。

 

《警備隊長!》

《今度は何だ馬鹿者!》

《スカベンジャー、並びにフライリング撃沈しました!》

《どんな勢いだ! 交戦時間一分も保っていないぞ!》

 ビルを切り崩しながら、アルシュベイトが黒い機体を持ち上げて突撃してくる。その背後では黒煙をあげながら円形の自律兵器が地面へ激突して爆散していた。

 

《チェェェストォォォオオオオッ!!》

 そして。自分の全長を超えるスカベンジャーを投げて、アルシュベイトは跳躍ユニットの推進剤を使い切る勢いで蹴り飛ばす。

 生物的な自律兵器が悲鳴をあげて本社ビル警備部隊の前列を崩し、体勢を立て直すより先にアルシュベイトは切り込んだ。手短な一体を掴み、弾除けにしながらの大立ち回り。それを遠巻きにながめていた警備隊長はとうとう堪忍袋の尾が切れた。

 

《どいつもこいつも! 私の邪魔をしおって! 構わん、味方ごと撃ってしまえ!》

《しかし!》

《少しでも多く奴を消耗させろ!》

『あーあー、もしもーし。警備隊長~? 聞こえてるかーい?』

《社長!? 申し訳ありません、こちらも》

『おいおいおーい、何を野暮なことを言っているんだ。あれは俺の客人だ、丁重にもてなせと言ったはずだがねぇ?』

 既に、アルシュベイトは本社ビルの足元。その目の前まで来ている。最後の猛攻を前にしてさしもの相手は足が止まっていた。

 

《ですからこうして我々が》

『ハハハ、警備隊長~。お前はアレか? 客人に鉛玉をしこたまぶちかますのが礼儀か?』

《し、しかし……》

『いいから攻撃を止めろ。お前達の仕事は、アルシュベイト以外を本社に近寄らせないことだ』

《────》

『それともぉ……()()()()してやろうかぁ、ギャハハハハハ!』

《攻撃、止めぇ! 攻撃をやめろと言っているんだバカども! 聞いているのか!》

 社長からの通信に、防衛部隊は一斉に攻撃を止める。静まり返る本社ビル最終防衛ラインにアルシュベイトが長刀を突きつけていた。猛攻を前にしてまだ足を止める気配はなかった、本社突入も時間の問題だったが、なぜ急に攻撃を止めたのか。それが分からなかった。

 

《…………、業腹だが、通れアルシュベイト。我ら警備部隊は貴殿を歓迎していないがな》

《ならば、その厚意に甘んじるとしよう》

 

 アルシュベイトが警備部隊に見送られて、グランドマザーウィル──武装企業本社ビル正面フロントロビーへ到着する。

 そこは、無人のロビーだった。周囲を見渡しても警備ロボの姿は見えない。フロントには受付嬢もいない。無人のカウンターを挟む形で大型のエレベーターが見える。そして、そのひとつが一階に向けて降りてきていた。

 

 そして、間もなく一階ロビーで止まると扉が開かれて──。

 

《よーぉ、アルシュベイトォ! ウェールカム、ウェルカム! ようこそ俺の会社へ、武装企業へ、リーンボックスの誇る一大軍事企業アームドソウルスへ! 歓迎するぜぇ、盛大にな!》

《────》

 あろうことか、大手を広げてプレジレントが直接歓迎していた。硬直するアルシュベイトに首を傾げている。

 

《お前が目と鼻の先まで来ていると知ったらいてもたってもいられなくなってな! こっちから直接出迎えることにした! さぁて、ご対面となったわけだ! 自己紹介は基本だろう、俺の名前はプレジレント! あぁ飽きるほど聞いた? そりゃ結構だが挨拶は基本だ! 武装企業代表取締役、まぁ社長ってわけだ。ハハ!》

《──────》

《名乗れよ、俺もお前を知りたくてたまらない》

《軍事国家アゴウ国王、アルシュベイトだ。アダルトゲイムギョウ界を代表してリーンボックスの守護女神、グリーンハートに協力している》

《オーケィ。スタンダード、かつ簡潔な自己紹介だ! ちと個性に欠けるがうちはそういう会社じゃないんでね、実力主義だ!》

 グッ、とアルシュベイトが腰を落とす。長刀を担ぎ上げて、踏み込もうとした瞬間。

 

《ストォォォップッ!!!!!》

《ぬっ……!?》

 プレジレントの一喝によって間を外された。手を突き出して、人差し指を立てたかと思えば左右に振る。

 

《チッチッチッ……。アルシュベイト。アァルシュベイトォ。お前はここを何処だと思っているんだ?》

《無論、武装企業本社ビルだ》

《そうだ。つまりは俺の家だ。俺の寝床だ──俺の、会社だ。オーケー、アンダスタン? 自分の格好を今一度見直したほうが良い》

《……?》

 アルシュベイトは、言われたままに自分の身体を見下ろす。

 肩部装甲破損。胴体損傷。脚部装甲軽微。残弾は尽き、推進剤も枯渇している。塗装は剥げている箇所が無数に見られる。だがそれが何だというのか、名誉の負傷。兵士の勲章だ。

 

《この姿が、どうかしたのか。プレジレント》

《いいか? 俺はビジネスマンだ。オーケィ? そしてお前は、俺の大事な大事なお客さんだ。お客様だ、言っている意味がわかるな? 客人は歓迎しなきゃならない。アポは取った、今日はお前のために。お前の為、だ・け・に。俺は予定を空けた。フリーってわけだ。いいな?》

《…………》

《ちなみに有給申請は秘書から却下された、嘆かわしいね。ま、そんなこたどうでもいいんだ俺には、さ。本題だ、アルシュベイト》

 バチィン! 手を叩いて、プレジレントは距離を詰めてくる。

 

《お前は戦った。お前は遠路はるばるここまで来た。俺の言う通りに武装企業の持つ戦力を越えてきた、俺の首を落とす為に。大した奴だお前はぁ! ハッハッハ、流石だよ! そんなお前を俺はひと目見た瞬間から気に入った! 大好きだ、一目惚れってやつだ! ギャハハハハ! 今のお前と戦うってのは、フェアじゃない。ああそうだ平等じゃない。こいつはビジネスマナーに反する。俺の主義に反する、犬のクソにもならない》

 シッシッと追い払うようなジェスチャーを交えて、プレジレントは続けた。

 

《綺麗なおべべで同じテーブルに着いて、にらめっこしながら商談を盛り上げるのがビジネスって奴だ。みすぼらしいお前も魅力的だがね、それじゃアゴウの品質が問われるだろう? 国王様って言うならそれ相応におめかししなきゃ話にならない》

《……ふむ》

 一理ある。プレジレントの言葉に、アルシュベイトは担ぎ上げた長刀を武装ラックへ担架して腕を組んだ。

 

《そう、そうそう。そうだ、それでいい。それにグリーンハート様のご友人、同盟関係とあったら、そりゃもぉうお前。アレだ、最高級のおもてなし不可避だ。だからアルシュベイト。まずは話し合おうじゃないか? 殺し合いも潰し合いも叩き合いも殴り合うのも蹴り飛ばすのもそれからでも遅くないだろう。まずはお前の身体を綺麗にしないとな。それと背中の武器も弾が無いんじゃあないか? うちで用意しよう。腰の……あー、ブースター? それも燃料が少ないだろうしな。使い切っているってんなら尚更だ。キャロライン!》

『お呼びですか、社長?』

《お色直しはどれぐらいで可能だ? 金は惜しまない、全力だ》

『二時間ほどです』

《一時間で完璧に仕上げろ》

『了解しました。ではそのように』

《いいか、俺の大事なお客様だ。一寸の不備も許さない。言葉を失う程の完璧な仕事だ。それ相応の報酬を支払うからには芸術品でも白旗を挙げるレベルで完成させろ》

『ええ。ええ、了解しています、社長。武装企業の威信にかけて必ず』

《さて……さぁて、アルシュベイト。お前さんにひとつだけ尋ねておきたい事があるんだがいいかい? なに、大したことじゃない。経験談だ》

《聞こう》

 

《全身エステは初めてか?》

《初体験だが、風呂は大好きだ》

《オッケェイ! それじゃ裸の付き合いといこうじゃないか!》

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