超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
《さぁて、それじゃまずはビジネスの話をしようじゃあないか。といっても大した話じゃあないさ。そもそもにして商売道具なんてお互いこの体一つだろう?》
《然り。その通りだ、否定の余地などない》
《そもそも、なぜ俺達がこんなことをしたのか。疑問だろう》
《狂信の首謀者直々に言葉を賜りたい。何故、行動を起こした》
《ハハハ! そりゃあ当然。──愛しているからさ。信仰だけじゃ飽き足らない。この胸に宿る炎は誰にも消せやしない! 俺は女神グリーンハートを愛している! 俺はリーンボックスを愛している! 俺はゲイムギョウ界を愛してるんだぁぁぁぁ、ギャハハハハハ! ──だが、本当にそれだけでいいか? それだけで、本当にいいのだろうか? そうは思わないか、アルシュベイト》
四女神の信仰。加護の下、人々は安寧を謳歌する。ゲイムギョウ界はそれで万事こともなし。それに不平不満をこぼすのがプレジレントだった。
《ゲイムギョウ界を守る女神に守られるだけで、その信仰は果たして立証されるか? 誰が証明する? 言葉にしても壊れるほど愛しても、この信仰は、本当に女神の力になれるのか?》
自らの手のひらを見つめて、言葉を続ける。
《俺達は機械だ。目に見える全てがデータで処理される。だが目に見えないデータは、なんとも鬱陶しいノイズだ。魔法とかな》
《その言い分は分かる。続けろ》
《サンキュー。信じるものは救われる。ならばその信頼を一身に背負う守護女神は、誰が守るんだ? 世界の危機の、その矢先に立つ女神様は一体。誰が守ってくれるというんだ? 俺達は女神を愛している。だが、力及ばずだ。ただただ無力なままだ。助けてくれと部屋の隅っこでガタガタ震えるだけの迷える子羊だ。メー》
《……ふむ。女神を守るもの、か》
《そうだ、あとツッコミないとちょっと寂しいぜアルシュベイト》
《ご所望とあれば》
《話がわかるな、流石。さて……そこで、俺達狂信者。ハァドラインの出番ってわけだ。女神信仰の狂信者。過激派集団。俺達はこのゲイムギョウ界に争いをもたらす有害な存在だ。ならこれほどうってつけな舞台はないだろう? プラネテューヌのB2AM。ラステイションのアームドソウルス。そして、リーンボックスのアーマード・カンパニア。ルウィー、ひいては国家解体戦争。女神の代理戦争。そのために俺達は今日まで戦力を蓄えてきた。経済的に。戦力的に。技術的に。どこにも引けを取らない程にまで俺の会社は膨れ上がった》
《……そして、三国に戦争を仕掛けた》
《ま、元々ルウィーしか眼中に無かったがね。女神様が仲良しこよしな以上、結果的に全員に喧嘩を売る羽目になったわけだ》
ひらひらと手を振りながら、プレジレントは計画の全貌を明かしていく。
《……アルシュベイト。俺はゲイムギョウ界が好きだ。大好きだ。その中でもリーンボックスは最高だ。女神グリーンハート様は、言葉にならない“自由の女神”だ──だからこそ俺は思うのさ! 女神パープルハートも、女神ブラックハートも、女神ホワイトハートにも負けないってな! ああそうだ、誰にも負けるものか! 俺達の愛する守護女神が最高だ、このゲイムギョウ界で一番なんだ! それを証明するにはどうする? 当然だ、俺達の手で勝利を掴み取るだけのことだ! ハァァァンザップ、グロォリィィィィィッ!!! 女神グリーンハート様の信徒の力を見せつけてやるのさ! 俺達が、一番強いんだってな! アンタには俺達がついている、何があろうとこの信仰に殉ずる覚悟がある! あぁぁいしてるぜグリーンハァァァトッ、ははははは、ギャハハハハハハハ!!!》
机を叩き、プレジレントは身を乗り出す。
《お前だってそうだろうアルシュベイト! お前はグリーンハート様に協力している! 軍事国家アゴウと同盟を結んだとあっちゃ、こりゃあ黙ってもいられない! お前は何のために!》
《応ッ、答えよう! 俺は、俺自身の愛国心の為に! 御姫のためだ!》
《愛国心か、ハハハ! 愛は良いなぁ、この世の全てを無為にする最強の理不尽だ! そして理不尽は万物に平等だ! 公平だ、不平等だ、二律背反だ! だからこそこいつは止められない! 愛は理性で抑えられない、暴走してこその本能だ。違うか。違うか! 違うか、アルシュベイトォッ!》
《否! 断じて否! 貴様が言葉にする愛は、もはや己の正当性を主張するための詭弁でしかない! 愛は語るものだ、武器を手にする理由になどならん!》
《だったらお前の愛国心は、なんだ! その背にしているご自慢のサムライソードはなんだ! ええ、アルシュベイト! ご自慢の銃は!?》
《守るためだ! 愛とは無力なもの、ゆえに守らねばならん!》
《詭弁だな! 武器は武器だ、無慈悲な凶器だ! それに理屈をこねたところで結局は他人を傷つける理由でしかないだろう!》
《敵意を持つものに害をなす! 逆賊、討つべし! ゆえに我らは神罰の代行、女神代行の名を背負い、戦場へ赴くのだ! 女神の加護ぞあれ!》
《ハハハハハハハハハ、ギャハハハハハハハハ!!! こいつぁ奇遇だ、俺達は女神の代理戦争をしていた。その俺の前に立つのは、女神の神罰代行ときた! 最高だ、最高の盛り上がりだ。お前は本当に最高のイレギュラーだよアルシュベイト! ああ最高だ、今まで感じたことのないボルテージだ! 最高にイカしてるよお前!》
《ならお前は、俺が今までに出会った誰よりもイカれている。だからこその狂信なのだろう》
《ああそうさ! 俺はとっくに愛に狂ってる! ぶっ壊れちまうほど愛してしまったのさ、守護女神ってやつを!! だから負けられねぇ! 俺が一番女神を愛してるんだ、文句があるか! ええ、アルシュベイト!!!》
プレジレントがテーブルに足を乗せて、仁王立ちしていた。
《貴様が愛を口にするのであれば、俺はそれに応えよう! 俺は御姫を愛している! 軍事国家アゴウ絶対勝利の女神、剣姫を!》
アルシュベイトもまた、同様にテーブルに立つ。
互いに大股で歩み寄りながら語気を荒げる。
《ハハハハ、そうかい! だが言葉を介して決着がつけられるほど俺達のラブコールはチンケなものか!》
《否! そうだろう、プレジレント! 俺はそのために来たのだ!》
《オーケーオーケー、その通りだ! そうだった! 俺とお前は戦うために出会った! 戦場でぶっ壊れちまうほど愛し合おうじゃあないかぁ、アルシュベイトッ!!》
やがて。二人は睨み合って立ち止まった。
アルシュベイトの網膜ユニットがプレジレントを睨む。狂信の首謀者。それは、あまりに純粋に過ぎた信仰の結果。
プレジレントのモノアイカメラがアルシュベイトを睨む。武神の彫像。それは、あまりに真っ直ぐな愛国心の結果。
《──プレジレント。貴様には負けん。負けられるものか》
《アルシュベイト。お前に負けるわけにはいかない。俺達の狂信を証明してみせよう。他でもないこの俺自身の力で》
プレジレントが手を差し出し、アルシュベイトはそれに視線を落としてから固い握手を交わした。互いの肩を叩く。
《お互い最高の戦場にしようじゃないか。健闘を祈るぜ、アルシュベイト》
《ご厚意、痛みいる。そちらの寛大なフェアプレイ精神に喝采を、プレジレント》
《ははは! さぁて、それじゃあお待ちかねだ! 場所を変えよう。ここは仕事場だからな。ヘイカモン》
そして、プレジレントに案内された場所はグランドマザーウィルの屋上だった。寒風が吹き荒ぶ高度でありながら、二人は地に足を着けて腕を組んで睨み合う。その様子は逐一中継されていた。
アルシュベイトは右肩の武装ラックから片刃型長刀を持ち上げ、地面に突き刺して腕を組み直す──剣礼。だが、それに対してプレジレントは腕を組んでふんぞり返っているだけだった。
《いい見晴らしだろう? リーンボックスの全景を望める最高の展望台だ》
《ヘリポートでは?》
《あー……そうとも言う。さて、それじゃあ……始めるか?》
《そちらは丸腰でいいのか》
《……──、俺のこいつが、丸腰に見えるってか。大した自信だ。俺達機械は全身凶器だろう? 鋼鉄のマニピュレーターに、鉄のシューズ。ボディビルも真っ青な鋼の肉体ってな》
《言い方を変えよう。貴様、武器はないのか?》
《あるさ。何言ってるんだ?
《──なに?》
《オーケィ、なら見せてやるよアルシュベイト。こいつが、俺の“ビジネススーツ”だ!》
プレジレントの背負う巨大なコンテナが開く──その中に収まりきらない質量の武装が飛び出していた。
二門の六連装ガトリング。バズーカ砲。リサイズされたハンドキャノン。マルチミサイル。
《いいぜ、アルシュベイト! 選ばせてやるぜ! どれがいい! こいつはどんなやつでも“穴あきチーズ”にしちまうイカした連射力だ! こっちもいい、“熱々のサーロインステーキ”にしてくれる! 風通しを良くしたけりゃ、このハンドキャノンは最高だ! そしてコイツは特に俺のお気に入りでね。エンシェントドラゴンだろうが“ローストチキン”にしちまう!》
《────》
ルーレットのように切り替えながら、続々とプレジレントは自らの武装を見せていく。
《さぁどうするアルシュベイトォ! オーダー!!》
《“全部”だ!!》
即答だった。それに面食らったプレジレントが固まる。
《どれか、などとケチな事を言うな社長! 貴様ご自慢の製品ありったけだ! 俺はそれに全身全霊で臨ませていただく! お互いの全力を出し切った後に立っていたものこそ勝者だ! 出し惜しみはいらん!! 全部よこせ、プレジレント!》
《は──ハハハハ!! 全部、全部と来たか!! お前はどこまで俺を喜ばせてくれるんだアルシュベイトォ! オッケェイ! そうまで言われちゃしょうがねぇ! オードブルからメインディッシュ、食後のデザートまで! 全部余さずくれてやるぜぇ!!》
プレジレントがマルチミサイルを掴み取り、上空へ二つ放り投げる。そして基部を取り出すと落ちてくる弾頭部分と連結させた。
《たらふく喰らいな、今日は大盤振る舞いの満漢全席だ!!》
《応ッ! 馳走になる!!》
アルシュベイトは突き刺した長刀を手にしてプレジレントへ突きつける。
《軍事国家アゴウ国王アルシュベイト! 推して参る、チェェェストォォォォッ!!!》
《ウェルカム・トゥ・リーンボックス! レッツ、パァァァリィィィィイイイッ!!!》