※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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episode42 お昼休みはウキウキ?

 電界突破によって熱を持った装甲の冷却に、排気口が蒸気を吐き出す。ただでさえ処理速度に特化した機能に拍車を掛けた武装を駆使するのだから機体が熱を持つのも無理はなかった。次元拘束を逆演算して再びロックしているバルド・ギアの頭上ではマジェコンヌとネプテューヌ=パープルハートとネプギア=パープルシスターが激戦を繰り返している。

 

 偃月刀の投擲、からの多重招喚によってもう一本の偃月刀でネプギア=パープルシスターの攻撃を跳ね除けた。

 

「貴様にはあの時の借りがあったなぁ!」

「マジェコンヌ、その宝玉は返してもらいます!」

「貴様のモノでは、あるまい!」

「それでも、返してもらいます!」

 回転して戻ってくる偃月刀をネプテューヌ=パープルハートが斬り落とす。それは魔術文字となって霧散した。

 

「おのれ、おのれおのれおのれぇ! これならばどうだぁ!」

 不意に冷気を乗せた風が吹く。そして現れたのは七重に召喚された偃月刀。その全てが回転を始めて二人に襲いかかる。先陣を切るネプテューヌ=パープルハートに続いてネプギア=パープルシスターが背中を預けた。予想通り反転して一直線に襲いかかってくる。

 

「M.P.B.L、出力全開!」

 そこへマルチプルビームランチャーを最大出力で放つ。最初こそ切り裂いて突き進んでいたが、威力を相殺し切れずに回転が弱まり、遂には押し負けて消し飛んだ。

 

「お姉ちゃん!」

 多重召喚に割いていた集中力の隙を突くように、一気に距離を詰める。魔法に長けたマジェコンヌは近接戦でネプテューヌ=パープルハートに遅れをとる。

 一閃が左手の宝玉を弾き飛ばし、返す刃で下から打ち上げた。

 

「クリティカルエッジ!」

 斬り上げの衝撃で渾身の一撃を防ぐことが出来ず、マジェコンヌは上空高くから地面に叩きつけられる。

 ネプギア=パープルシスターが取りこぼした宝玉を慌ててキャッチして地面に降りた。

 宝玉は透き通っていながら、その中で炎と氷が渦巻いている。それが荒れ狂う純粋な力の結晶であることに息を呑んだ。暴力性の塊である。

 

“これが、エヌラスさんの力の一つ……”

 魅入られるように、手を重ねようとして――ネプギアの手が、ネプテューヌに止められた。その魔性の魅惑に手を出したくなる気持ちは分かる。だが今しがた味わったばかりだ。それが、どれだけ危険な力であるのか。

 

「ネプギア、駄目だよ。これはエヌラスに、ちゃんと返してあげないと」

「……うん、そうだよね。マジェコンヌと一緒になっちゃうもんね」

「ぐっ……くそ、またしても……! だが、まだだ……まだ私は……!」

 立ち上がろうとするマジェコンヌに暴徒鎮圧用のネットが被せられた。

 

「な、なんだ!? くそ、何をする!」

《そこまでです。これ以上の戦闘は望めないでしょう、貴方も。おふたりとも、時間がありません。急いでください》

「は、はい!」

「ありがと、バルド・ギア。でも、どうして助けてくれたの?」

《私を信じる、と言ったのは貴方達でしょう。なら、私はその信頼に応えるだけです》

 Nギアの着信に、ネプギアは宝玉を手にして頷く。

 

「それでは、ソラさん。私達が居ない間、よろしくお願いします」

「悪さしたらみんなでねっぷねぷにしてやるんだからね!」

《ねっぷねぷってなんですか――って、行っちゃいましたか……》

 粒子の中に消えた二人を見送ってからバルド・ギアは網の掛けられたマジェコンヌを見下ろす。咄嗟に捕まえたはいいものの、さてどうするか……。思案にふける。

 

「私をどうするつもりだ」

《……考えてませんでした》

「おい、貴様ふざけているのか!?」

《いえ、真面目なつもりなんですが……生憎と殺生は好まないものでして》

 動きを絡めとっていたネットが消え去り、再び自由を得たマジェコンヌが立ち上がった。まだ戦闘を続ける意思があるのか、その手には杖が握られている。

 

「甘い奴め……」

《よく言われます。彼女達が不在の間は、できるだけ大人しく療養に努めてください。えーと……マジェ……》

「マジェコンヌだ」

《大変失礼を。マジェコンヌさん》

 軽い会釈でバルド・ギアが謝罪すると意外そうな顔をしていた。

 

「お前は良い奴だな。あの小娘は私の名前を訂正する気などさらさらないが」

《そりゃ、名前間違えたら謝りますよ……》

「だが、私は諦めんぞ。今日私を見逃したこと、いつか後悔させてやるからな。覚えていろ!」

 マジェコンヌが去っていき、焼け野原に立つバルド・ギアが青空を見上げる。

 いつか――そのいつかが自分に訪れるだろうか? 次という日は来ないだろうな、そんなことを思いながらバルド・ギアは空の青さに心奪われていた。

 

 

 

 ユノスダスでは白昼から犯罪取り締まり及び捜査に駆り出されていたエヌラスが眠気で半分やけくそになりながら仕事に精を出している。今しがたハンティングホラーで追い回していた軽犯罪者が事故って病院に搬送されたところだ。時間を見ると、そろそろ予定していたミーティングが近づいている。大あくびをもらし、エヌラスは一度宿へ戻った。

 

「あ、おかえり。エヌラス。もうそんな時間?」

「ああ。ユノスダスの教会に行くぞ。プルルートは?」

「……お昼寝中よ」

 寝ているプルルートを起こして、三人はユノスダスの中央市場を抜けて教会へ足を運ぶ。その途中で財布をスリしようとした盗人が半殺しにされたが、概ね問題はなかった。

 教会前ではドラグレイスが城壁に寄り掛かって待機している。そして、アルシュベイトもちょうど来たところなのか、上空からブースターを吹かして着地した。

 

「よぉ、ドラグレイス。アルシュベイト」

《エヌラスも来たところか》

「来るのが遅い」

「うっせぇ。こっちは返済で忙しいんだよ、テメェと一緒にすんな」

「自業自得だ、犯罪王」

「知ってら」

《……その少女たちも連れてきたのには理由があるのか?》

「仲間はずれはかわいそうだろ。そんだけだ」

 三人の後にノワールとプルルートが続く。ユノスダスの教会は城壁に囲まれており、その内部には学園のような敷地となっている。とはいえ規模は段違いだが。

 

「つうかテメェの生産工場だろうが、アルシュベイト。俺が来る前に片付けとけっつうの」

《そう言うな。フォートクラブが群生していては他国への出荷もままならん。補給を断たれて困るのは同じだろう。それを言えばドラグレイスも同罪だ》

「なぜそこで俺に責任が問われる。元はと言えば貴様が始めたことだろう、エヌラス」

「元々ガードロボの強化プランだったんだよ。そいつが何を間違えたかああなっちまったんだから仕方ないだろ」

《うむ。アゴウでは今も現役で稼働中だ。感謝しているぞ》

「ユノスダスでは良い迷惑だがな」

 和気藹々と、まるで戦争中であることを感じさせない朗らかな会話、内容はともかくとして。互いに敵である以前に、彼らは旧友であることをノワール達は改めて思い知らされる。

 

「そもそも生産工場の位置は記憶していないのか、アルシュベイト。何のための機械の身体だ」

《記憶をログと呼ぶのなら、その消去が物忘れということになるな》

「てんめ、さては生産工場の場所忘れてやがったな!?」

《はっはっは。スマン。俺とて多忙を極める身分だ、許せ》

「……仕方なかろう、そこの犯罪王はともかくな」

「おーうテメェどういうこったぁ? まるで俺が暇人みてぇな言い方は感心しねぇぞぉ?」

「違うのか? 女を口説くほど暇なのだろう」

「お”?」

「あ”?」

《お前ら、ユノスダスで戦闘行為は禁止されていることを忘れるなよ?》

 

「……仲、良いのね」

「そうかなぁ~?」

 途端に剣呑な二人の空気を鎮めて、アルシュベイトはユウコの待つ執務室の扉を叩こうとして――エヌラスに譲った。軽くノックすると、中から快活な返答が戻ってくる。

 

「いらっしゃーい! 待ってたよ! ささ、大したものは用意出来なかったけれどご飯食べよ!」

 

 そこには、豪勢な食事をテーブルに並べてふんぞり返る国王様がいらっしゃった。この野郎は人の気も知らずよくもまぁこんなパーティーテーブル用意しやがる。エヌラスがげんなりと目頭を押さえた。

 

 俺は食事の必要ないのだが。アルシュベイトは困惑した。

 

 俺はミーティングとしか聞いていないのだがな。ドラグレイスは腕を組んで嘆息する。

 

「……あれ? どうしたのエヌラス。全部食べてもいいんだよ? うちで自慢のシェフ達が腕によりを掛けて作ったんだから」

「睡眠不足と過労が重なって食欲ねぇんだよ……」

「勿体ないから食べてね!」

「今だけは飯の食えない身体が本気で羨ましいと思ったぜ、アルシュベイト……」

《俺は飯の食えるお前が羨ましいと思うがな、エヌラス。吐くほど頬張れ》

「おー、やったろうじゃねぇかフードファイト。望むところだ」

「あ、残したら持って帰ってもいいからね。タッパー用意するから」

 そこは家庭的なのね、ノワールがそう思いながらさりげなくエヌラスの隣に座った。

 美味しそ~。でもノワールちゃん、エヌラスの隣でズルいなぁ。プルルートはその反対側に陣取ることにした。

 アルシュベイトが座ろうものなら椅子が壊れる。ドラグレイスに関しては壁に寄り掛かった。大剣を背負い、腰を落ち着けることはない。

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