超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「…………えー、っと。それじゃ改めてミーティングを始めようと思うんだけど――そ・の・前・に、エヌラス。キミはどうしてそう平和的解決手段が暴力の一択しかないの!」
「武力による鎮圧が一番手っ取り早い」
《同意する》
「そうだな」
「そこの軍神と傭兵は黙らっしゃい! まったくもう、来週までスタジオ復旧で大忙しだよ。それに、キミも。なんでわざわざハンティングホラー召喚してまで飛んでったの?」
「知り合いでもなけりゃああまでしてねぇよ」
「あ、知り合いなんだ……」
平和とは一体……。お説教の後ろでネプテューヌがプルルートと手を叩いていた。
「わぁ~、ぷるるんだー! 元気にしてたー?」
「うん~! ねぷちゃんも元気そうでよかったよ~」
「でもエヌラスと一緒で大丈夫だった? 変なことされてない? あれ結構ロリコンの気配あるから気をつけてね!」
「……ちょ~っと遅かったかなぁ~」
――――――――空気が、凍った。
「……エヌラス、お前最低だな…………」
「……ぅわ…………」
《なんだ、その……お前の性的嗜好に口を挟む余地はないが……苦労してるな》
口々にドン引きが拭えない雰囲気の三人からの言葉に、エヌラスは床に横になっている。五体投地。煮るなり焼くなり好きにしろという無抵抗の意思表示。もはや弁解の余地がないサンドバックと化した。
「殺せ。俺を殺せドラグレイス……今なら間に合う。頼む」
「なら一息に」
《やめんかお前ら!? 早まるなエヌラス、大丈夫だ! お前がロリコンであろうと俺の友であることに変わりはない! しっかりしろ、今更お前が何を恥じる必要がある犯罪王!》
「追撃したいのか慰めたいのかどっちかにしろアルシュベイト!!!」
「マジ泣き!? そんな半べそかくほどなんだ!」
ナチュラルに人を死地に追いやるプルルートの天然ほんわかド外道発言に心を砕かれそうになりながらもエヌラスは復活する。決してロリコンであるということを認めたわけではないが、それでも折れかけた心の傷は深い。
「だいじょうぶだよ~エヌラス。あたしがぁちゃんとお世話してあげるからぁ~」
「ペット発言じゃねぇかふざけんな!」
それでも頭を撫でられて悪い気はしないどころかちょっと胸が温かくなる自分が憎い。男として生まれた悲しい性には逆らえなかった。行き場のない憤りを込めた拳が震える。可能なら自分を首の骨が折れるほどの勢いで殴りつけてやりたかった。
「じゃあ、ぷるるんはこっちの世界で変身できるんだ」
「ノワールちゃんもだよね~」
「えっ、ちょ……今言わないでよ!」
「そっか、ノワールもなんだ……」
「ネプテューヌ……」
どこか悲しそうな顔のネプテューヌに、ノワールは途端に胸が締め付けられる。謝るべきなのか、それとも――声を掛けようとして「ふーん」と呟いたネプテューヌは、笑いを堪えていた。
「じゃあもう、ノワールはエヌラスとそれはもうくんずほぐれつな関係なんだね!」
「へっ?」
「エロいなー、エロエロだなぁ。ノワールはエロの女神様だよー」
「アナタに謝ろうとか思った私が馬鹿だったわ……」
「なんで?」
「なんでって、それは……その……なんとなくよ」
プルルートを見て、ノワールを見て。アルシュベイトが納得したように頷く。
《取っ替え引っ替えか》
「そのようだな」
《生物として見る男としては本懐であろうが、人間としては度し難いクズだな》
「そうだな」
「もう殺せ。頼む殺せ。俺を殺せ今すぐ殺せ即死させろ、これ以上生き恥晒させんじゃねぇ……」
《妄言を言うな、エヌラス。生きることを恥と言っては死者に申し訳が立たん。生き抜くことが何よりの黙祷だ》
「その名言のタイミングは今じゃねぇんだよなぁぁぁぁ――!!」
「別に謝らなくてもいいよ、ノワール。自分の身体なんだからノワールが良いって思ったなら別に私は口を挟んだりしないってー! でも先越されちゃったなー……そこはちょっと悔しいかも」
「先を越されたって……」
「だいじょうぶだよ~、ねぷちゃん。エヌラスなら今夜も付き合ってくれるからぁ~」
「じゃあ今晩予約しておくね!」
「お姉ちゃん!?」
「ネプギアも一緒がいい?」
「えっ、えっと……その前に着替えたいかな……」
ぴっちり張り付いた服を見て、ネプギアが今は口論を繰り広げているエヌラスを盗み見る。アルシュベイトとドラグレイス相手に一歩も退かずに突っかかる様は怖いもの知らずもいいとこだ。というのもこの三人が何かと突っかかるのをユウコがセーブしている。
「はいはいはいはい、ハーイそこまで! これ以上口喧嘩してたら話が進まないよ! キミ達が集まるといっっっつもそうなんだから! はいそこ座る。そこは黙る。そこは並んで、説明するから終わるまでジッとしてなさい!」
「お母さんかテメェは」
《いや、委員長ポジションだな》
「口やかましい幼馴染の方が良くないか?」
「キ・ミ・た・ち、ホントマジ黙れよ!?」
ゴンッガンッベキッドゴォン――! 三人はフライパンで殴られて物理的に黙らされた。
「さっきっからどんだけこの話で引っ張ってると思ってんの!? マジいい加減にしてよ!? 私はフォートクラブの生産工場その他の話がしたくて呼んだんだって! 別に、一緒にご飯食べて昔みたいに仲良くできたらなー、とかなんてそういうんじゃないからね! そうじゃなくて、単に頼りになる三人に声を掛けたらなんだよこのザマ! いい加減だよ! お願いだから喧嘩しないで普通に話させてよ! これだから男ってのは……」
「なぁエヌラス。俺は今ものすごい理不尽を言われている気がする」
「女はそんなもんだ。黙ってろドラグレイス」
フライパンで肩を叩いているユウコを前に、三人は正座しておとなしく黙る。ネプテューヌ達もまた椅子に座って赤丸を付けられた地図に注目した。
「ユノスダス付近のフォートクラブ生産工場は、このポイント。うち、被害者が多かった現場がこの周辺。そしてここから――ここまで。これをラインで結ぶと……」
生産工場は全部で三つ。それらはすべてインタースカイ方面、アゴウ方面、そして九龍アマルガム方面とを繋ぐ三箇所に設置されていた。線引すると、それぞれの国の補給ルートを阻む形での事件が起きている。
「見ての通り、うちの商業ルート。そしてキミ達の国まで続く街道まで被害が及んでるってわけ。アルシュベイト」
《うむ》
「フォートクラブの警備プログラムってどうなってるの?」
《本来であれば街道、つまり人通りの多いメインルートの警戒は含まれていない。あれはユノスダス近辺に出没するモンスター駆除の為にしかプログラミングされていないはずだ》
「街道に出没するってだけで異常事態ってこと?」
《バルド・ギアの用意したプログラムのバックアップはこちらでも確認した。その巡回ルートに街道及び補給ルートの警戒は含まれていない。そうなれば、第三者が手を加えたとしか考えられん》
「ふん、どうだかな。あの小僧のことだ、何か裏で工作したのかもしれんだろう」
《疑うのか、ドラグレイス。だから貴様はインタースカイの襲撃を?》
「本人に直接問いただそうと思ったついでに、討とうと企んでいたのだが貴様に邪魔されたのだ」
しかし、二人に謝罪の懸念はない。“こう”だと信じた道を簡単に譲るほど二人は軽い男ではないからだ。
「バルド・ギアは後回し。今はとにかく目の前の問題に取り掛かってもらうよ。ポイントをアルファ、ブラボー、チャーリーと呼称するからね。まず、インタースカイ方面Αにはエヌラス達。次に九龍アマルガム方面Βにはアルシュベイト。アゴウ方面Cにはドラグレイス」
《妥当だな》
「何故その配置にした、ユウコ」
「だって、こうでもしないとキミ達そのまま帰りそうだもん」
――変なところで勘がいいガキだな。ドラグレイスは舌打ちをもらしそうになったが、堪えた。自国を守るという名目ならばアルシュベイトもエヌラスもそちらへけしかけるだろうと高を括っていたが読みが外れた。可能ならばそのまま再びインタースカイへ進行して攻め落とそうとしていただけにドラグレイスは落胆する。
「ぷるちゃん達はどうする? うちで万が一に備える? それとも誰かについてく?」
「あたしはエヌラスに付いてくよぉ~」
「待ってても退屈そうだし、私もそうするよ」
「私もです」
プルルート、ネプテューヌ、ネプギアの三人はすぐさまエヌラスと行動することを決めたが、ノワールは何か考えていた。
「なら、私はアルシュベイトに同行するわ」
《ふむ……それはなぜだ?》
「ちょっと気になることもあるからね。今は敵同士だけど、刃を向けることもないだろうからこの機会に聞きたいこともあるし」
《それならば、今でなくともよかろう。何も二人きりにならずとも》
「私個人が気になってることだから、それでいいのよ。エヌラス、別にいいでしょ?」
「そこで俺に聞く理由がいまいちわからんが、お前がそうしたいなら別にいいぜ。アルシュベイト、万一にでもノワールに何かあったら、テメェを国ごと落とすからな」
《その言葉、肝に銘じておこう》
誇大妄想と受け取り、笑わなかった。アルシュベイトはそれを挑戦状として、宣戦布告として受け取り、ノワールの身の安全を絶対保証する旨を伝える。
「よし、話はまとまったかな。第三者が手を加えた可能性を考慮して、その犯人がまだ生産工場に居座っている可能性は高いから十二分に注意するように。回復アイテムや準備は怠らないようにね、雑貨なら商店街で揃えてくといいよ」
「ちゃっかりアピールしてんじゃねぇよこの守銭奴」
「他に何かあるかな?」
《ならば、俺から一ついいだろうか。今回の事態には俺の責任も含まれている。その原因解明の為に可能ならば施設そのものには極力損傷を抑えてほしい。無論、生産プログラム及び警戒プログラムのデータを収集する為だ》
「極端な話、それさえ無事ならば施設は落としてもいいのだろう?」
《極論ではそういうことだ。フォートクラブは我がアゴウの生命線でもある。その生産効率は多大な被害を被る旨、承知してくれ。自分勝手ではあるが、頼まれてくれるか》
「お前に頭下げられたら断れるわけねぇだろうが、アルシュベイト。善処する」
《お前の厚意に感謝する、エヌラス。我が
まだ決着は着いていない。それを終えるまで身勝手な死は許されない。ドラグレイスもそんなつまらない方法でアゴウを落とすつもりはないようだ。
「以上、ミーティング本格的に終了! 作戦終了時刻は制圧終了まで! 途中帰還はいつでも許可するよ。でもサボらないように。じゃあ、解散! 頑張って! 私は国内の統治で忙しいから」
フォートクラブ生産工場制圧作戦が開始される。