超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
──アダルトゲイムギョウ界からルウィーに戻ってきたブランとエヌラスは、ロムとラムに質問攻めに遭いながらもプラネテューヌへ出立する用意を進める。元々、各国で無期懲役囚として服役する、という事情を説明するためにたらい回しにされていたのだ。それに、ブランがアダルトゲイムギョウ界に行きたいと言い出したのがきっかけで、予定が遅れている。表向きでは、ルウィーの守護女神として、協力者である神格者達に改めてお礼を言いたい、という形で出向いた。
実際はただの観光旅行だったものの、ユウコとソラには直接顔を合わせられたので良しとする。
エヌラスは両手に拘束具を装着されて、守護女神監視のもと、護送されていく。現状、取り決められているのは、その拘束具の鍵は四女神、ならびに四教祖が所有すること。女神候補生は、臨時で拘束を外す場合、教祖側からの承認を必要とする。
それに、エヌラスは何の不満もなかった。当然の処置として受け入れていた。
……なので。プラネタワーに到着するや否や、両手の拘束を解除された上に飛びついてきたネプテューヌにとても複雑な顔をしている。警戒心とか世間体とかそういうのは気にしないのか。
そして、どうしてかノワールやベール達もプラネテューヌに集まっていた。
「エヌラス、ひっさしぶりー! 元気にしてた?」
「あーはいはい、元気にしていましたよ。お前は相変わらずだな、ネプテューヌ」
「お、お姉ちゃん! ごめんなさい、エヌラスさん。わたしも引き止めようとしたんですけど、どうしてもって……」
「ネプギアも久しぶりだな。元気そうでなによりだ」
「はい! エヌラスさんも」
「あーもう、顔を見るなりいちゃつくのやめなさいよ。他の人達もいるんだから、ほら離れる」
「あーれー。んもう、ノワールったらヤキモチ?」
「違うわよ! ここで話すのも何だし、上で話しましょ」
「ここわたしの教会なんだけどなぁ。なんでノワールが仕切るのさ」
「あなたが仕事しないからでしょ!?」
ノワールの怒号が響く中、ネプテューヌ達はエヌラスを連れて上層階へとエレベーターで移動する。
「ミリオンアーサーとチーカマは?」
「お二人なら、今日はギルドの方に。生活費を稼ぐのもあって」
「そっか。ちゃんとしてるんだな──レオルド達は?」
「レオルドさん達なら、街の警備と修繕工事に。でも、確か今日は合同訓練とか言ってました」
リーンボックスの武装企業から派遣された軍事サービス。その警備部隊は現在、プラネテューヌに席を置いている。街の治安も保たれ、モンスター退治なども率先して引き受けているおかげで女神の仕事が少ないとネプギアが付け加えた。とはいえ平和な事に不満はない。
ネプテューヌがそれにつけ込んでサボる口実にしており、イストワールが頭を悩ませているくらいで、いつものプラネテューヌだ。
《いいかレオルド! カタパルトから射出後にステップステップ屈伸ステップ屈伸ジャンプエレベーターチャージャーステップステップ以下略インコースを攻めるように全速力だ! 理論上スタート地点から八十秒以内には敵ベースへ突入が可能だ!》
《なげぇよ無理だよ覚えられないどうすんだよわかりません!》
《だったらお手本を見せてやる! ウオオオオオオオオッ!!》
北方拠点、ベルスクでは武装企業警備部隊との合同訓練。そこではシャニがレオルドに戦闘機動のレクチャーをしていた。あっという間に姿を消す濃紺の機体を見送る守護女神近衛機兵団は、まばらな拍手を送っている。
《うわ、気持ち悪。なんだあの戦闘機動、ゴキブリかよ》
《カサカサカサカサ、ちょこまかとすばしっこいことこの上ない。キモい》
《貴様らぁぁぁぁぁぁぁ!!!》
《ぎゃーゴキブリ特務隊が襲ってきたぁぁ!! 逃げろー!!》
《貴様ら真面目にやる気があるのかバカどもが!! さっさと訓練を始めるぞ!》
警備隊長の怒声により、訓練開始。
──エヌラスが持ってきた荷物は、ネプテューヌ達へのお土産だった。
「ほら、ネプギア」
「ありがとうございます! あ、これって……」
《キュイキュイー……》
「ミニサイズのフォートクラブですか! わぁーい!」
目を輝かせて、ネプギアは両手で小型のフォートクラブを持ち上げる。自律駆動型の家庭用フォートクラブ。言ってしまえば、○ンバだ。突き出した前腕部のカバー内は細かい埃などを取るハタキになっている。水洗可能。口に当たる部位も掃除機となっている。満タンになったら交換ランプが点灯してお知らせしてくれる。
「小踊りしているネプギアちゃん、とても尊いですわ……ああ、わたくしの妹に是非……」
「エヌラス、わたしにはー? 当然、超ビッグでスペシャルでエクセレントなプレゼントをくれるんだよね! いやぁ困っちゃうなー愛されキャラも大変ですなぁ」
「うるせぇ」
「雑っ!?」
「イストワール、先に渡しておく。ほい」
「こちらは……本のしおりですか?」
「ああ。いつも尻に敷いてるみたいだしな、ソレ」
「ありがとうございます、大事に使わせてもらいますね。よいしょ」
早速イストワールはエヌラスから受け取った青い栞を歴史書に差し込んだ。虫除けの加護とか色々と読書家には嬉しい機能が付与されている高級品。
「あら、久しぶりに顔を見たわね」
「お久しぶりですぅ、えぬえぬ」
「アイエフ、コンパ。二人にも土産だ、ほら」
コンパにはカチューシャ。アイエフにはブレスレット。いずれもマジックアイテムの一種だ。贈り物を渡される二人を見てネプテューヌがますます頬を膨らませている。
「むむむむむ~! だーかーらー、エヌラス! わたしの分はー? なんかないのー? ほらー、なんでも喜ぶよわたし、感謝感激流れ星だよ!」
「後で渡すから我慢してくれ」
「今渡してくれたらすっごく嬉しいんだけどなぁ。期待していいの?」
「んー、まぁ……自信ないけどな。それで? ノワールとベールもいるなんて俺は聞いていなかったんだが」
「ああ、そのこと? 気にしないで、遊びに来ただけ」
「……俺が来る日程に合わせてか?」
「ネプテューヌに言いなさいよ」
「ええ。偶然ですわ、偶然」
本当にそうなのだろうか。エヌラスは勘ぐってしまうが、二人が言うのなら信じるしかない。
「よーし、それじゃあブランも来たことだし。早速ゲームで勝負だ!」
「それじゃあわたし、お茶とお菓子の用意しますね」
「お願いねー、ネプギアー」
「はい! エヌラスさんもくつろいでてください。あ、ミニちゃんの初期設定とかしてあげないといけないのかな……」
《キュイー?》
「えへへへ、かわいいなぁ……おいでおいでー」
《キュイキュイー》
ネプギアについていく家庭用フォートクラブ──命名、ミニちゃん──が足元を掃除しながらついていく。
ミリオンアーサーとチーカマにプレゼントを渡せないのは残念だが、教会で待っていれば戻ってくるだろう。四女神がゲームをする姿をソファーでくつろぎながら眺める。
「そうだ! 勝った人が」
「却下」
「ねぷっ!? わたしまだなにも言ってないよ!?」
「どうせ俺をダシにするんだろ、知ってる」
「えー、ダメェ? わたしがんばるからさー」
「ダメに決まってんだろ何言ってんだこの女神」
「ちぇーケチー。いいもんねー、どうせ今日はわたしが独り占めするんだから」
ノワールとベール、ブランが顔を見合わせてアイコンタクト。静かに頷いて結託した。今ここにネプテューヌ討伐隊が結成される。ただし、ゲーム内で。
──結果は言わずもがな。三人に勝てるわけないだろ。
「もー!! みんな揃ってわたしばっかり狙いすぎー!!」
「あなたが油断するのが悪いの、よ!」
「ネプテューヌは強敵ですもの。仕方ありませんわ」
「そうね。残念だけど」
「うぅ~」
脱落したネプテューヌがエヌラスの膝に座り込む。
「負けちゃったぁ♪」
「その割に嬉しそうだな」
「慰めてくれたりしたらぁ、嬉しいなー」
「はいはい。ほら、これでいいか?」
「んふふ~、くすぐったい」
頭を撫でると、胸板に体重を預けてくる。負けてやることがないのを良いことに、ネプテューヌが今までの分を取り返すかのごとく甘えてきた。それに、三人が“しまった”という顔をする。
「くっ、何たるウカツですの……! 一番最初に脱落した人が自由になるのは必然……!」
「勝っても負けてもネプテューヌが必然的にお得じゃない! もー!」
「仕方ないわ。こうなったら次のラウンドで取り戻すわ」
「そうね、ブランの言う通りよ。そうと決まればこの勝負は私がいただくわ!」
「そうはいきませんわ!」
白熱する三人の勝負を後ろから見守っていると、ネプギアとミニちゃんが戻ってきた。
「お姉ちゃん、ジュースとお菓子持ってきたよ」
「ありがとーネプギア! はい、エヌラスも」
「ああ、悪いな。お前、俺の上でジュースこぼしたりするなよ?」
「というよりも、ネプ子。アンタ、人前でそんな風にエヌラスといちゃつかないでよ? 色々と問題になるんだから」
確かに。エヌラスはジュースを飲みながらネプテューヌに視線を向ける。
「二人っきりのときだけだから大丈夫大丈夫。安心して、アイちゃん」
「今、まさに二人っきりじゃない空間でイチャついておきながら何を言うかアンタは! エヌラスも。念の為言っておくわよ」
「分かってる」
アイエフに注意されて、それからネプテューヌは渋々隣に腰を下ろした。コンパがエヌラスの肩を叩き、いつものほんわかとして笑顔を向ける。
「えぬえぬ、今日は何が食べたいですかぁ? 好きなもの、作ってあげるです」
「いいのか? じゃあ、そうだなー……オムライス……」
「ぷっ。エヌラスってば意外と子供っぽーい」
「うるせ!」
「ねぷぅ~~! あはははは、わしゃわしゃしないでぇ~! 頭が揺れる~!」
乱暴に頭を撫でられるが、それでもエヌラスからのスキンシップは嬉しいのか満面の笑みを浮かべていた。跳ねた髪はボサボサに散らばり、寝癖よりもひどいことになっている。
「オムライス、ですぅ? それじゃあ今夜は、えぬえぬの為に腕によりをかけて特製オムライス、作るです!」
「コンパ特製オムライス、楽しみにしてるぞ」
「はいですぅ」
「もちろん、デザートはプリンだよね! 楽しみだなぁ」
「ねぷねぷも、プリン楽しみにしてるですよ」
「買い出しとかあれば、俺行ってくるが……」
「ホントですか? それじゃあ、ちょっと見てくるです」
「それなら、アタシが同行するわね。エヌラスを一人で歩かせていたら、何をしでかすかわからないもの」
「厳しいなぁ、アイエフ」
「当然でしょ? 今は教会に服役中って立場なんだもの」
降参したようにエヌラスは両手を挙げた。触らぬ神に祟りなし。
そんなわけで──現在、アイエフと二人でプラネ商店街に買い物に来ていた。エヌラスは荷物持ちである。
「えーと? コンパから頼まれた物は、卵に牛乳……ほとんどプリンの材料ね」
「そうみたいだな」
「それじゃあ、ささっと買って帰りましょ」
「ああ」
商店街はすっかり元通りに復旧工事が終わり、元通りになっていた。とはいえ、首都方面を優先していたから当然なのだが。後は細かいところだけらしい。
アイエフは、二人で買い物をしている途中で思い出したように腕のブレスレットに視線を向けていた。マジックアイテムとしか聞いていないが、どういった効果があるのかまでは教えてもらっていない。
「ねぇ、エヌラス。コレなんだけど」
「ん? それか? ほら、両手の魔術刻印。覚えてるか?」
「クトゥガとイタカ、よね」
「ああ。それの制御補助装置みたいなものだ。以前よりも楽に扱えるはずだから、今度試してみてくれ」
「助かるわ。反動がキツいと思ってたのよ」
「それで、ひとつ思い出したんだが。アイエフ、後でスリーサイズ測らせてくれないか?」
「はぁ?」
「いや、変な意味じゃない。そんな人をゴミを見るような視線で見ないでくれ」
「……別に、かまわないけど。なんで?」
「服をそれ用に合わせて作ろうかと思ってるだけだ」
「それなら、いいけど。変なことに使わないでよ」
「使いません、誓います」
再びアイエフに降参すると、ちょうどクエストを終えて帰路についていたミリオンアーサーとチーカマの二人と出会った。そのまま教会まで戻る道中で、レオルド達とも。
《…………お久しぶりっす、エヌラスさん》
「ああ……」
《あのー……まぁ、その……どうですか、この新型ボディ。より戦闘向けに強化が施されてるんですよ》
「いいんじゃないか? 前よりも頼りになりそうで」
《そっすか。嬉しいっす》
どこか固く、ぎこちない会話。そんな二人にアイエフが呆れたため息をつく。
「エヌラス。今レオルド達は守護女神近衛機兵団として、イストワール様から配属されてるの。シロトラと女神達を交戦させないためにね」
「……そうか」
《なんか、申し訳ないっす。俺みたいなやつが、そんな重要な仕事任されて……本当はエヌラスさんみたいな強い人がやるべき仕事なのに》
「いや。いいんだ、気にするなよレオルド。俺には、こっちの方がお似合いだ」
両手をくっつけて、手錠に繋がれているフリをしてエヌラスはレオルドに笑みを向けた。
「あの時は、悪かった。今更謝ってもしょうがないけどな」
《いえ。俺の方こそ、すいません。シロトラ教官の暴走を止められず》
暴走……。果たして、本当にシロトラは暴走しているのだろうか。女神へ向けた狂信を露わにして、パープルハートの排除を目的として動き出した、あのロボットは。
「まぁまぁ。立ち話もなんだ、早く教会に戻ろう。私はもうお腹が空いて倒れそうだ」
「はは、そうだな」
《そっすね。俺達と違って皆さんはお腹が空く時間ですし》
「レオルド達はどうするの?」
《この後、隣町のハネダシティの警備に向かいます。最近、またモンスターが増えてきた報告があがってるので》
「本当なら、女神の仕事なんだけどね」
《いえ、気にしないでください。俺らも弾薬費とか稼がないといけないんで……》
世知辛い。