超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ようやく起きてくるなり大あくびをしながらリビングに顔を出す二人に、ソラは呆れて物が言えない様子でため息をつく。
「やぁ、エヌラス」
「なんだ、帰ってきてたのかクソメガネ」
「おはよぉ、メガネくぅん」
「おはようございます女神様。エヌラス、顔洗ってきたら? ヒドイ顔してるよ」
「ついでに寝汗流してくる……くそねみぃ」
「アタシも一緒に行くわね」
べったりとくっついてそのまま脱衣場に向かうと、何やら二人で盛り上がっていた。ますます呆れる。
「はいはいはーい、お待たせ。麻婆茄子に焼きナスにー、今日の夜は揚げナスとナスの肉サンドを予定してるよー」
「うわぁ、テーブル紫一色……」
「カレーにナス入れよっかな。二人は? 起きた?」
「さっき起きてきて、今シャワー浴びに行ったよ」
「ふーん。じゃあ、先に食べてよっか。ぴぃちゃーん、ご飯だよー。あいちゃんこんちゃーん、ちっちゃいーちゃーん」
ちゃんと全員揃ってから手を合わせて昼食を食べ始める。それから間もなくして、湯上がりの二人が戻ってきた。アイリスハートは女神化を解除している。
「あーサッパリした。さてメシだメシー」
「スッキリぃ~♪」
「昼間っからイチャつきやがって。人がリギホウテンで真面目に視察してたってのに」
「うっせ、クソメガネ。適材適所だ」
「あーはいはい、そうですね。報告はお昼終わってからするよ」
「あいよ。いただきまーす」
「いただきます~」
「……なんでナスなんだ?」
最後に疑問を口にしてから、エヌラスは「まぁいいか」と皿を平らげた。
「ソラ、しょうが取ってくれ。あと醤油」
「自分で取れよ。ほら」
「サンキュ」
「エヌラス、しょうがぶっこみ過ぎ。醤油かけすぎ」
「こうして、こうして。こう。ガブガブ」
「ナスで練しょうがサンドイッチするやつ初めて見た」
「もうちょい味わって食えよー、もう」
乱暴な食い方をするのを見て、ソラとユウコが苦笑している。それを見ていたピーシェが自分の焼きなすを見て、真似していた。
「あー……はぐっ! ん~~!!」
「あらら、ぴぃちゃんもちょっとしょうが多かったかな。はいお水」
「エヌラス。真似しちゃうからもうちょっと普通に食えよ、っていうかもう食ったのかよ早いな!?」
「ユウコー、おかわりー」
「てめーでやれ!」
「ういっす……」
セルフサービスを強要されてエヌラスは渋々自分でご飯をよそう。
「えへへ~、なんかこういうの楽しいなぁ~♪」
「よいせっ」
「エヌラス~。はい、あ~ん」
「えっ? あーん」
隣に座るプルルートから差し出される焼きナスを、なんの警戒もなく口にするエヌラスが白米と一緒にかきこむ。
「美味しい~?」
「うん、美味い。もぐもぐ」
「あたしもぉ~、あ~ん♪」
「とは言われても、俺のナスもうねぇしな……ソラ、ナス貰うぞ」
「あ、おい! 食べていいなんて言ってないだろ!」
「うっせ、キャベツ食ってろ」
盛り付けの千切りキャベツを残っていた焼きナスに山盛り乗せられた。しかもご丁寧に醤油と生姜まで垂らして。ソラは渋々キャベツを頬張ることにした。
「プルルート、あーん」
「あ~ん……もぐもぐ~。えへへ、美味しいなぁ~」
「ぴぃもー! ぴぃもあーんするー!」
「わたしもですぅ~」
「あ、あたしも」
「じゃあみんなであ~ん、しようね~」
「やったー!」
「ソラ、お前いつまでキャベツ食ってんだ?」
「ふごごごごご!」
「食いながら話すな、クソメガネ!」
「ふごー!」
千切りキャベツを頬張るソラはやるせない気持ちでいっぱいだった。
賑やかな昼食を終えて、みんなで後片付け。エヌラスとソラだけはお互いの情報交換。そこにはちびいーすんも同席していた。
「……パンドラ・イルバードは結晶体?」
「ああ。なんていうか、変なヤツだった。物腰柔らかい紳士的な」
「君と正反対ってわけか」
「俺だって紳士的な態度を取る時はあるさ。それで、リギホウテンは」
「今話した通りだよ、僕が得た情報は」
「ふむ……どう思う、イストワール」
「そうですね……(*_*)」
「定期的にガス抜きをしてるってことは、配管に圧力がかかってるってことだろ?」
「国中張り巡らされたやつから、毎日」
「どこに繋がってるか、だよな……」
「それでしたら、知っている方をご紹介しましょうか?(・∀・)」
「いるのか? そんなヤツ」
「はい。ルウィーで大臣を務めている方が詳しく知っているはずです」
話によると、建国の際にルウィーの技術が持ち込まれたらしい。だが、最近ではラステイション、リーンボックス、プラネテューヌ。四カ国すべての技術が導入されているようだ。
「決まりだな。とりあえず次の目標は」
「ルウィーでその大臣さんに話を窺うこと。でも大丈夫なのかな。国の運営に携わってる人なんだろう? そう簡単に会えるかな」
「最悪の場合、教会襲撃して拉致監禁で情報引きずり出す」
「法的措置受けたくなかったら、キミは黙ってろ」
「そ、そんな危険なことしちゃダメですー!!!ヽ(`Д´)ノ」
あくまでも最終手段として候補に挙げておくとエヌラスは念を押したが、そんなプランBがあってたまるか。できるだけ穏便に済ませたい。二人に怒られた。
「まずはブランさんに連絡してからの方がいいと思うんだけど」
「アポ取らなきゃ話にならねぇしな。さて、どうするか」
「それならぁ~、あたしが行くよ~」
洗い物を終えて戻ってきたプルルートがエヌラスに後ろから抱きつく。首にかかる負担に顔をしかめて、すぐに体勢を立て戻した。
「プルルート、危ないだろ」
「ブランちゃんにぃ、あたしから言うねぇ~」
「ああ、頼む。俺たちがいっても警戒されるだろうしな」
頬をくっつけてくるプルルートの腕を取り、自分の膝の上に座らせると頭を乗せる。エヌラスの腕をしっかり抱きしめて微笑んでいた。
「……なんかそうしてると、ぬいぐるみ抱いてるみたいだな」
「そうか?」
「そうだぁ、後でエヌラスのぬいぐるみ直さないとねぇ~」
「別にいつでもいいだろ」
「えぇ~。だってぇ、早くちくちくしたいぃ~。エヌラスに針を刺すの、楽しみだな~♪」
「……ん?」
「……ん?」
不穏な空気と一言にエヌラスとソラが顔を見合わせる。なにかおかしい気がする。
「でもエヌラス。お前はマジで一回刺されろ」
「刺しちゃっていいんだぁ~……?」
「ストップ。プルルート、加減はしてくれよ?」
(刺されるのはいいのか!?)
「もちろんだよぉ~。ちょっとだけだからぁ」
「そっかー。ならいいかー」
(いやいいのかそれ!?)
ツッコミどころはあるが、まぁ二人がほのぼのとしてるならそういうコミュニケーションなのだろう。ソラはそれ以上深く聞かないことにした。本音、巻き込まれたくない。
「複雑だなぁ……愛情表現」
「なんか言ったか」
「なにも言ってない。それじゃ、午後からルウィーに訪問してその大臣さんにお話しを聞いてくるってことで」
「賛成ー」
「はぁ~い」
「……本当に大丈夫かな」
一抹の不安がよぎる。
エヌラスの知る限りではルウィーは雪国。だが、プルルートに案内されたのは純和風の国。舞い散る紅葉がなんとも風情がある。これがこちらのルウィーのようだ。
「着いたよぉ~」
「はー、ここが……こっちのルウィーは和風なんだな」
「いやーいいね。故郷を思い出すよ」
「お前インタースカイ生まれだろ?」
「電脳国家になる前の話」
法整備やインフラ整備などに着手して仮想現実空間領域の確保がされるまでは、インタースカイもこうだった。とはいえ、エヌラスも馴染みがないわけではない。
「和服とか、いいよな」
「君は似合うだろうね。浪人とか」
「うっせぇぞピンメガネ」
「誰がピンメガネだ、この人斬り」
「人以外も斬ってる」
「ルウィーの教会はね~、たしかぁ……あそこのお城だよ~」
「それじゃ、行くか。終わったら少し散策もしたいしな」
ルウィー教会を訪ね、ブランを探す。プルルートがプラネテューヌの女神ということもあり、特に疑われるような素振りは見られなかった。
襖を撫でて、手触りを確かめるエヌラスにソラが眉をひそめる。
「なにしてるんだ?」
「ん? いや、どんな素材使ってんのかなと思って」
「あんまり勝手に触るなよ。失礼だな」
「へいへい」
「あ~、ブランちゃ~ん」
曲がり角から出てきたブランに、プルルートが手を振ると小さく返した。そして、エヌラスとソラの顔を見て不思議そうな顔をしている。
「こんにちわ、プルルート」
「こんにちわぁ~。えっとぉ、時間あるかなぁ?」
「あるように見える? 今はちょっと手が離せない用事があるの。悪いけれど」
「手を貸すか?」
「あなたの得意なモンスター討伐じゃないわ」
「生憎と、討伐以外も得意なんだ」
「寝技とかぁ~」
「プルルートシャラップ。そういうのを他の人がいる前で言うな。わかった?」
「はぁ~い」
「……はぁ。ノロケに来たなら帰ってちょうだい」
ソラが話を聞くと、どうやら最近ルウィーでもリギホウテンに関する問題が重く見られているらしい。国内の不平不満を解消しようにも、ブランは多忙を極めている。そのせいでここ数日は満足に寝ていないようだ。
「リギホウテンではモンスターと共存関係を築いているという話を聞いて、女神達もそうするべきだって声が相次いでるの」
「自然保護団体みたいなものか」
「ええ。だけど、仕方ないじゃない。女神は国を守らないといけないんだから。この前のモンスター大量発生を駆除した時も、大変だったわ……」
「そうなんだぁ~……」
「プラネテューヌではそういう話、聞いてないの?」
「う~んとねぇ~。あたしは聞いてないかなぁ~」
「ちゃんと国民の声に耳を傾けるのも仕事のうちよ」
プラネテューヌに借りを作りたくないブランは、こちらの協力の申し出を丁重に断った。
「それで? 何の用事なの?」
「それについては僕から。リギホウテンについて詳しく知っている方がいると聞いて」
「確かにルウィーでは配管の設置工事で協力したわ。プラネテューヌでもそうじゃないの?」
「そうだったかなぁ~?」
「しっかりしてくれよ、プルルート。お前女神様だろ?」
「あはぁ~、そうだよねぇ~。しっかりしてるよ~?」
「そんなことを聞きに来たの?」
エヌラスとプルルートより、ソラの方が話が早いと判断したのか。ブランはそちらに視線を向けた。メガネの位置を直し、ソラはリギホウテンについて話す。
「でもわたしが直接指示したわけじゃないの。うちの大臣よ」
「その人は今どちらに?」
「今は公務中で時間が取れないの。しばらくは無理ね」
「そうでしたか。どうする、エヌラス」
どうやらすぐには話が出来そうにない。少しだけ考える素振りを見せる。公務を中断させてまでの話でもなければ急ぎの用事でもない以上は無理をする必要もなかった。
「時間が空くまでルウィーの観光でもするか。気に入ったし」
「エヌラス、和食とか好きなの~?」
「和服も好きだし、基本的にそういうのは好きだな」
「そうなんだぁ~」
「だから、ブランの巫女服っぽいのも似合ってて俺は好きだぞ」
「な、なによ急に……! そんなことを言われても困るわ……」
「──エヌラス~?」
「ちょっと待ってプルルート。今のは違うんだ。純粋に俺が和服が好きだってだけなんだ」
「和服が好きなだけでわたしは好きじゃないの?」
「とても複雑な心境で答えると好きに決まってんだろ」
「……あ、ありがと」
エヌラスの顔が赤い。プルルートの笑顔が黒い。ブランも、少しだけ顔を赤くしてそっぽを向く。三人を後ろから眺めて、ため息をひとつ。
「エヌラス。やっぱお前刺されろ」
この天然たらしのジゴロめ。ソラはそんなことを思いながら、一刻も早く次元間通信の回復の方法を考えていた。