※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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episode48 軍神咆哮。吸血姫、強襲

 多脚歩行戦車の群れの只中であっても退くことを知らぬ軍神は、愚かにも突撃してくる要塞ガニを逆に轢殺していた。長刀を振るい、節足を切り落とすなりブースターを吹かして膝蹴りでかち上げると担ぎ直して頭部から叩きつける。装甲のへこんだ一匹に押し潰される形で後続の三匹が進行を妨害された。

 

《震撃・陽炎!》

 アルシュベイトが召喚した武装は、城壁と見紛う重厚な大盾。下部のスパイクがそのままフォートクラブを叩き潰し、全長四メートルに及ぶ堅牢な防壁の前面には大量の反応炸薬装甲。

 

《リアクティブ!》

 左拳で大盾を裏から殴りつけると、炸裂する。正面のフォートクラブが一斉に発射されるベアリング弾によって蜂の巣にされて無残な姿となり、撃沈した。

 ノワールもその横からフォートクラブの関節部を狙った攻撃で無駄なく沈黙させていく。大振りな前腕の叩きつけを避けて、膝裏のケーブルを切断。右足を動作不能にさせると比較的脆い背部装甲の整備用ハッチにショートソードを突き刺す。撃破とまではいかずともこれで動きは封じることが出来た。軽々とその背中に飛び移ると、突進してくるフォートクラブを飛び越える。

 突撃強襲型『AC-フォートクラブ』は近接戦闘に重点された設計とされており、正面装甲は他のタイプに比べて強固なものが採用されていた。当然ながら地上における機動力も背面装甲に装備された突撃用ブースターである『アサルトチャージャー』によって段違いである。欠点は稼働時間か。

 重武装型HW-フォートクラブ。

 前線支援型RW-フォートクラブ。

 そして、魔導兵器搭載試作型フォートクラブ。異常事態を他の場所で警戒していたフォートクラブに要請したのか、まだまだその数は増えそうだ。

 

「どうするの、アルシュベイト!」

《是非もなし! 全て叩き潰す!》

 破竹の勢いでアルシュベイトはフォートクラブの群れの中へと突っ込む。まるで愚策、そう思えたが相手の砲撃がパタリと止んでいた。同士討ちを恐れて自動防衛プログラムが機能している。それに感謝しながらもアルシュベイトが正面の一匹を斬り上げ、もう一匹の脚部をへし折った。その背後に身を隠し、ノワールに来るようにサインを出す。

 フォートクラブのデザインは遮蔽物としても使用できるように設計されている。それは稼動不可能になっても味方の盾となって活用するためだ。つまり、構造上でフォートクラブは倒れた場合の自立復帰は望めない。

 

 とはいえ、これではジリ貧だ。このまま破壊を続けても生産され続けていては終わりがない。工場の機能を停止させてからが――しかし、この内部にはムルフェストがいる。正面には存在しないはずのフォートクラブ。

 

《ノワール、俺が活路を拓く! フォートクラブは“全て”引き受けた!》

「えっ、これ全部!?」

《お前は工場の電源を落としてくれ。配電盤は管制室にある。どうやら瘴気の正体はあの親玉のようだからな》

 危険だが、賭けるしかない。

 

《内部には神格者がいる。だが無用な接触を避ければ争いにはならんはずだ》

 

「つまらんことをしているな、軍神――!」

 不意に、影が降りた。それは輝く魔法の大剣でフォートクラブの群れを引き裂きながらアルシュベイトを見下ろす。

 ドラグレイスは隠れていた二人を鼻で笑った。

 

「内部にいる神格者がいずれかは知らんが、俺が引き受けよう。カニは喰い飽きた」

《感謝する、ドラグレイス!》

「貴様の礼などいらん。走れ小娘!」

 ドラグレイスの大剣が、アルシュベイトの長刀がフォートクラブを斬り伏せていく。ノワールに照準を向けた片端から撃沈されていき、頃合いを見てドラグレイスが跳躍した。フォートクラブの頭を踏みつけながら八艘飛びのように乗り継いで生産工場前に立ち塞がる魔導兵器搭載試作型フォートクラブと対峙する。

 

「退けぇい!」

 だが、片腕の前面に展開された防御障壁で魔力が拮抗してドラグレイスが弾き飛ばされた。血のように赤い魔法陣――それを見て、それが誰の手のものか即座に理解したようだ。上部装甲から射出されるのはワイヤーカッターが、全部で八基。移動用に使用されるものをより攻撃性に特化させた代物だ。本来であれば射出されるだけのそれがまるで自らの意思を持つ蛇のように振り下ろされていく。土煙が爆ぜ、爆風に煽られたノワールがよろけた傍にフォートクラブの砲撃が飛んできた。

 

「きゃあっ!?」

 吹き飛ばされ、群れの中に戻されたノワールを囲むフォートクラブはまるで獲物を前にした肉食獣のように一斉に視線を集中させる。恐怖に足が竦みそうなノワールの身体が、不意に浮いた。そして、自分が担がれているのだと気づくのに、時間を必要とするほどの速度で横からかっさらわれたのだとバイクのエンジン音で遅れて理解する。

 

「エヌラス……?」

「なんじゃこれは……」

《説明は後だ、工場の電源を落とせ!》

「へいへい。掴まってろ、ノワール」

 やる気のない声で後ろに乗せると、エヌラスはフルスロットルでフォートクラブの足元を抜けながら工場の扉をぶち抜いた。そちらに視線を向けた魔導兵器搭載試作型フォートクラブの頭を踏みしめてドラグレイスが続く。

 

《貴様の相手は、この俺だぁぁっ!》

《――――!》

 長刀を叩きつけられて吹き飛ぶフォートクラブだが、その表面装甲には傷一つ付いていない。物質的だけでなく霊的防御、魔法防御にも対応した堅牢な装甲を前にしても、アルシュベイトは構える。

 

《悪戯に造られた命と言えど、俺はその造物主たる一人だ。ならば、俺が引導を渡してやる》

《――――》

《俺を恨め。俺を憎め。フォートクラブ。ただの機械である貴様を突き動かすものがあるのなら、それが貴様の生き様だ! ならば、俺は俺の魂で、全身全霊で迎え討つ!》

 退くことを知らぬ不退転の進撃。天上天下唯我独尊。我思う故に我あり――機械の肉体であっても尚、魂が叫ぶ。

 

《来いッ、アヴェンジャー! かかって来いッ!》

 俺は此処だと。貴様の敵は俺だと声高らかに吼える。それに応えぬ男はいない。

 フォートクラブもまた、未知数の脅威を前にして武装を展開する。幾何学文様の魔法陣からは砲撃魔法が荒れ狂う。呪法兵装は現実を侵食する。質量兵器に特化したアルシュベイトの武装では太刀打ち出来るはずがないのだ。だが、それだどうだと言わんばかりに“正面から”“叩き伏せる”超常現象をねじ伏せるほどの苛烈な一撃。不退転の進撃。鋼の鬼神にして護国の軍神!

 

《他愛なし! チェェェストオオオオッ!!》

《――――――!?》

 防御魔法陣を展開する。衝撃が襲う。踏みしめた六足が地面を削り、後退る。然しながら、ムルフェストの血を分けられたフォートクラブ、アヴェンジャーには傷一つない。魂の敗北だ。

 

《貴様の一撃、なっとらんっ! そのような腑抜けた一撃など千発撃ち込まれようが俺は倒れん! 魂の猛りはその程度か! 神の血を分けられてその程度かッ! ――ならば、貴様は生まれついての負け犬だ、チェェストォオオッ!!》

 二撃――三撃。一歩、また一歩と下がる。二歩、三歩とアヴェンジャーはアルシュベイトの一撃が打ち込まれる都度、後ろへ下がっていった。

 

《咆えろ、アヴェンジャー! 荒れ狂え、アヴェンジャー!》

《――――》

《俺が憎いか! 俺を恨むか! ならば貴様は怒れ! その逆鱗を突き立ててみせろ! 貴様が生きた証、貴様が生きる理由。この俺に、見せてみろォ!》

 例え無駄だと知っていても百発でも千発でも打ち込む。それが本当に無駄になるのは、彼の魂が敗北したその時だ。

 ――アヴェンジャーの装甲に一筋の亀裂が走る。ムルフェストの血を分けられておきながらの体たらく。無様の極み――アヴェンジャーが再起動した。

 

《――――ス――――》

《……そうだ》

《――――ス――ロス……――ツブ、ス――!》

《そうだ! その怨嗟、その怨恨! 生まれついて持った三千世界への憎悪!》

《ツブス、ツブス――! コォロォォォォォォス!!》

《よくぞ言った、アヴェンジャー! ならば、今この瞬間から貴様は、俺の敵だ! 誇れ、アダルトゲイムギョウ界最強の軍神が貴様に引導を渡してやるッ!》

《アル、シュベイトォォォ――!!》

《チェェェストォオオオオオッ!!!》

 起こりえうはずのない超常現象が、否。それはもはや奇跡だった。機械に“魂”が芽生えた瞬間である。ムルフェストの血を分けられ、憎悪を育み、機械の身体であってもその奥底に眠る一グラムに満たない霊的物質が奮え、起こされたのだ。

 他ならぬ“ただの機械”であるアルシュベイトの魂の咆哮で。

 

 生産工場前で繰り広げられるフォートクラブの群れとアルシュベイトの戦闘による余波が工場内を揺らしていた。施設に影響が出るほどの衝撃に、ドラグレイスが舌打ちする。

 

「チッ、あのバカめ! はしゃぎ過ぎだ!」

 もう少し静かに戦えというのも無理な注文だ。既にエヌラスは先行して姿が見えなくなっている。騎士甲冑の擦れる音に混じって、布を翻す音――次の瞬間、ドラグレイスは一陣の風で工場の壁面に叩きつけられていた。

 寝ぼけ眼を擦り、不機嫌で口をへの字に曲げているムルフェストが首を鳴らしている。その無邪気に振りまかれる殺意だけで常人は卒倒するだろう。

 

「カッ――くそ!」

「……あぁのさ、表であんなガンガン騒がれたらワタシ、全っ然寝れないんだけど?」

「それを、俺に言うか、ムルフェスト――!」

「誰でもいいの。とにかくさ、ちょっと静かにして?」

 指を鳴らす。その背面に浮かび上がる、空間の歪み。そこには黄金の矢が番えられていた。

 

「でないと、今、ここで、全員ワタシが倒しちゃうよ? “ティル・ナ・ノーグ”は見つかった、ドラグレイス?」

「生憎とまだ路頭に彷徨う有り様でな! 死ぬわけにはいかんのだよ、吸血姫!」

「上等☆」

「小癪な!」

 放たれる黄金の矢が突き刺さる。しかし、そこにドラグレイスの姿はない。大剣で地面を叩いて自らの身体を横に飛ばして避けたからだ。獣のように地を這いながら力を込めて跳躍する。

 爪で指の腹を切り裂いて、血風が舞う。それは赤いナイフとなってムルフェストの手に握られ、ドラグレイスの大剣と魔力の衝突による衝撃が工場の大気を震わせる。

 

「寝ぼけて殺しちゃったら、ごーめんねー?」

「もしそうなれば化けて出てやる、安心して殺せ!」

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