超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ベッドにアイリスハートを横たえさせる。ようやく首筋から口を離してくれた銀糸は血が混じって赤くなっていた。エヌラスは噛まれた痕をさすると、痛みに少しだけ顔をしかめる。手に付いた血を見つめていると、その手をとって自分の顔に当てて胸いっぱいに匂いを嗅いでいた。
「んっ~……ハァ……」
「……好きなのか、血の臭い」
「アナタのは、好きよぉ?」
「…………」
「照れちゃって……♪」
「うるせ……」
何も言わずに顔を背けた時は、照れたり何か隠し事がある時のクセのようなものだ。手のひらに付いた血を舐め取り、指先までしゃぶるとアイリスハートは舌を出して見つめる。エヌラスが顔を近づけると、首に手を回して額を合わせた。
「痛かったかしらぁ?」
「当たり前だろ、こんな──」
「いっつもこれよりひどい怪我してるのに?」
「…………」
「痛がるどころか、痛みなんて感じない顔して。死に物狂いで戦ってるのにぃ、アタシがこうしてちょっと噛みついちゃうだけで痛がるなんて、変よねぇ~?」
唇に付いた血を舐め取り、喉を鳴らして飲み込む。
「もしかしてぇ……アタシなら、痛いって言えば、やめてくれると思ってるんじゃないでしょうね? いくら優しいアタシでも、そぉんなお願いは聞けないわ」
「別に痛みを感じないわけじゃないんだぞ」
「それとも、痛がるフリでアタシを喜ばせようとしてるのかしらぁ?」
目を逸らそうとするエヌラスを覗き込み、アイリスハートは答えを待った。沈黙を貫こうとするが、背中に爪を立てられて顔をしかめる。
「答えないとぉ、うふふ……どうしちゃおうかしらぁ♪」
「……ほんっとお前は、良い女神様だよな」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。お世辞を言ってもだめよぉ」
「他の女神と違って、俺をちゃんと痛めつけてくれるんだから」
「痛めつけるだなんて人聞きが悪いわね」
「お前になら、殺されてもいいか。なんて、思うくらいに、は──イッデデデ!」
強く引っ掻かれてエヌラスが言葉を遮られた。アイリスハートの視線が熱っぽいものから打って変わって背筋が凍るような冷たいものになっている。楽しみを邪魔されたような不愉快さで。
「どうして、アタシの為に死のうとするのかしらねぇ。それで、誰が喜ぶの。死んだって許してあげないわ。死んでも許さない。どうせなら、アタシの為に生きてくれればいいじゃない? なのになぁんで死にたがるのかしら……諦めないが信条のくせに、生きるのを諦めてるじゃない」
「……もう、わかんねぇよ」
「……」
今まで聞いたことがない弱々しい声で、エヌラスが呟いた。
「俺が邪神と戦えば、アイツ等が死ななくていいんだろ。だったらそうするさ。最初こそ、ああ楽しかったな──俺はもう、ユウコ達を殺さなくて済むんだって……そう思ったら、自分のことなんかどうでもよくて。痛みも忘れて、それこそ時間も忘れて無我夢中でずっと戦ってきて。そんな俺が今さら、どう振る舞えってんだ。立ち止まって考えたって、もうわからねぇよ」
「わからないなら、それでいいじゃない。誰も、無理してくれなんて頼んでないんだから」
「変だよな。ずっと心地良いって、気持ちいいって思ってるのによ、胸の奥が息苦しいんだ」
「本当にもう、限界なのねぇ……」
誰かの優しさを受け止めることすら満足に出来ないほど。これまで無理をしてきたツケが回ってきた。元々無茶を通してきたような戦い方ばかりをしてきて、日常の振る舞い方を忘れてしまっている。きっと他の誰かの前でもこんな風に弱みを見せてこなかったのだろう。
「だいじょうぶよ」
頬を手の甲で撫でて、アイリスハートは頭を撫でて自分の胸に抱き寄せる。子供をあやすように優しく語りかけながら何度も耳元で囁く。
「エヌラス──だいじょうぶ」
「大丈夫なわけ、ねぇだろ……」
「よく言えましたぁ♪ いい子にはちゃ~んと、ご褒美あげないとねぇ」
谷間に埋めたエヌラスの頭を離し、今度は乳房に押しつける。
「んふっ。鼻息、くすぐったいわぁ……はぁい、ご褒美のおっぱいよぉ♪」
「ん……」
「あらぁ、どうしたのかしら。好きにしてぇ、いいのよ?」
「……」
「今さら遠慮するような仲でもないじゃない」
髪を梳くと乳首に吸いつき、舌で転がし始めた。空いている片方の胸にも手を当てて全体的に揉みしだく。ぎこちなくしていたエヌラスだが、少しずつ愛撫に熱が入り始めた。
胸から頭を離して、アイリスハートの顔を見上げる。慈愛に満ちた笑みを浮かべて頭を撫で続けていた。少しだけ息を乱して、目を細めている。
「──ん、は。ちゅ……痛く、ないか?」
「あっ……。う、ふふ。くすぐったいくらいよぉ」
「そうか。じゃあ、もうちょっと強くてもいいか……」
「んっ。あ……っ!」
甘く噛み、軽く先端を抓ると嬌声をあげてエヌラスの頭を強く押さえる。小さな痛みに眉をつり上げると僅かに赤く歯型がついていた。
「さっきのお返しだ」
「ねぇ、エヌラス。もういいかしらぁ?」
「もうちょっとだけ。いいだろ?」
「続きはこっちも一緒に……♪」
アイリスハートの手が下腹部に伸び、そのままなぞっていくと陰茎を優しく包む。
ベッドに仰向けに寝転がるアイリスハートと指を絡めて、手を繋ぐ。ベッドが軋み、二人は身体がシーツに預ける。結合部を見つめながら受け入れる姿にエヌラスが覆いかぶさった。
月明かりに照らされる女神の肢体は言葉にならないほど美しく繊細で、完成された芸術品のように横たわっている。微笑みながら熱を持った下腹部を撫でて吐息をこぼす。
「あっつぅい……♡」
空いている左手を差し出すと、同じように手を繋いだ。離さないように力を込めて、しっかりと握りしめる。
腰を動かすと、熱く滾った愛液と肉壺の中で性器が擦れ合い、思わず声が出てしまっていた。幾度となく経験しても慣れない肉の触れ合いに、アイリスハートとエヌラスの吐息が重なる。
「んっ、ぁ!」
「っ、アイリスハート……!」
「はぁ……!」
しっとりと汗ばんだ身体を何度も突き上げる度に豊満なバストが揺れた。欲望を叩きつけるような乱暴な腰使いに、アイリスハートが少しだけ苦しそうに喘ぎ声をあげる。
「あ、っは! どうしちゃったの、エヌラス、んぅ! 今日は、随分と情熱的で」
「──っ、うるっせ。少し、黙ってろ……!」
自分の中でずっと抑え込んでいた感情が堰を切ったように溢れ出していた。抵抗を許さないとでも示すように痛いほど強く手を握りしめてベッドに押しつける。激しい動きにベッドの軋む音も一層大きくなり、アイリスハートが足をエヌラスに絡めていた。自分の身体に引き寄せるように。
「自分でも、どうしてるのか、ちょっとわかんねぇんだよ……! ああ、くっそ……! お前の、せいで……お前がそんな、優しくするから──!」
「んぁ、はぁぁんッ! アナタの、痛いのも、辛いのもぉ、アタシが受け止めて、あげるから……! だか、らぁぁ……! もぉっと、激しくしても──イイのよ?」
腰を浮かせて、何度も激しく肉棒を受け入れる膣を締めながらアイリスハートが快感に身体をよがらせる。その声が、仕草が、乱れる髪も、汗ばんだ身体も、鼻をくすぐる愛液の匂いも何もかもが愛おしい。止めどない欲望が自分の中で大きくなるのを感じながら、それを止めることができずにエヌラスは叩きつけるように腰を動かしていた。
やがて限界を迎えて、腰を打ちつけてアイリスハートの膣に射精を果たす。膣内で暴れるように精液を吐き出す陰茎を咥えながら、搾り取るように痙攣する肉壺にエヌラスが身体を預ける。
肩で息を整え、ベッドに身体を投げ出していたアイリスハートが上体を抱き抱えられて起こされた。背中に手を回して強く抱きしめられ、息苦しくなりながらもそれに勝る一体感を全身余すところなく感じていた。
「ぁ……はぁ……はぁ、はぁ……んっう……!」
顔にまとわりつく髪をエヌラスがかきわけ、頬を伝う汗を舐め取る。
アイリスハートも同じように舌を出して汗を舐め取ろうとして──それがエヌラスの目尻から流れていることに気づいた。左目にキスをすると、頬ずりをして見つめ合う。
「泣いてるの?」
「……多分な」
「そぉんなことも分からないのかしら、このおバカさんは」
「悪い……」
「謝ることないわよぉ。とぉってもいい顔してるわ……♪ 優しいアタシが、つい、いじめたくなっちゃうようなおいしそうな顔」
「……食べるか?」
「いただきまぁ~す」
貪るようなディープキスをしながら、喉を鳴らして混ざりあった唾液を飲み込む。
二人でシーツにくるまり、身体を寄せ合って窓から覗く月を眺めていた。肩に頭を預けていたアイリスハートが膝に座り込む。
「……月が綺麗ねぇ」
「そうだな」
「……それだけ?」
「お前の方が綺麗だ、って。言ってほしかったのか?」
「当たり前なこと言われても嬉しくないわねぇ」
「だろ。だから、俺は何もいわな……いふぇふぇふぇ」
「なにか上手いこと言いなさいよぉ。その小さな脳味噌必死にフル回転させてみなさいよ、ほらぁ早く♪」
「……気持ちよさそうに喘いでたお前の顔が忘れられない。いっふぇふぇふぇ!」
ぎゅ~、と強く頬を抓られてエヌラスは口を閉じた。しかし、急に笑い出す上機嫌なアイリスハートが目尻の涙を拭う。
「もう、大丈夫かしら?」
「……多分、な」
「辛くなったら、アタシのところに来なさいよ。着替え、置きっぱなしでしょ?」
「そういや、荷物そのままにしてたな……」
「うふふ、ワイシャツなんてアタシのパジャマにぴったり♪」
ふむ、と唸った。彼シャツの姿を想像して──深く頷く。実に良いものだ。
「じゃあ……辛かったり、無理そうだったら慰めてくれよ」
「ええ。アナタが望むなら、いつでも──ね」
抱きしめられて、アイリスハートは頭からシーツにくるまりエヌラスに顔を近づける。
「おやすみなさい、エヌラス」
「──愛してるよ、プルルート」
我ながら驚くほど自然に口から出た言葉に面食らった女神を抱きしめて眠りについた。