※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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番外09 女神様といっしょ:ベール編2

 

 

 

 ──リビングでコーヒーを片手にくつろぐ大魔導師と、頭を押さえているエヌラスが向かい合って座っている。ユウコもエヌラスの隣に座り、その反対側にはベールとノワールが腰を下ろしていた。

 

「元気なようでなによりだ、エヌラス」

「出会い頭に人の頭蓋骨粉砕しようとするのアンタくらいだよ……」

 頭が割れるように痛む。しかし、正装で出歩く姿は珍しい。ユウコも疑いの視線を向けている。

 

「なに、公務の一環だ。覚えているか、緑竜会の吸血鬼」

「あー……シルヴィオの爺さんが連れてったとかいう」

「そいつから物理的に情報を吐かせて」

「拷問って言わないかそういうの?」

「残党がまだ潜んでいるという極秘情報を聞き出した」

「拷問っていうんじゃないか?」

「九龍アマルガム国王として見過ごすわけにはいかなくてな、暇つぶしがてら足を運んだ。ということだ」

「建前と本音が公私混同してないか師匠」

「いちいち人の話に口を挟むな」

「もるげっそっ!?」

 カップソーサーがフリスビーの如くエヌラスの顔面を直撃した。だが、それを噛んで受け止めている。

 

(犬みたい……)

(犬っぽいな)

(ワンちゃんプレイも良いですわね……)

「お前ら変なこと考えてねぇか? まぁとにかく、師匠はそいつら潰しに来たわけだ。場所は?」

「湖上合法カジノ都市、アクア・エデン。ついでだ、来い」

 拒否権など微塵も感じさせない威圧的な態度に、エヌラスはどうするか、と考える素振りを見せた。念の為ユウコに許可を確認すると、言うまでもなくゴーサイン。ベールはカジノ都市に興味があるのか、手を合わせていた。ノワールは興味を惹かれながらもラステイションへ戻らなくてはならない。予定していた時刻より大幅に遅れてしまっていた。

 

「カジノ都市も気になるけれど、私は戻らなきゃ。それじゃ、エヌラス。またね」

「ああ。ノワールも気をつけてな」

「それとベール。あんまり羽目を外さないように」

「あら。ノワールに言われたくありませんわね」

「う、うるさいわね。ユウコ、行きましょ」

「はいよ。言わなくても分かるだろうけれどさ、大魔導師。エヌラスもだけれど──間違っても沈めるんじゃないよ?」

 大魔導師は片手を挙げて答え、エヌラスも手を振って返事をする。ノワールとユウコが教会に向かい、残されたベールはカジノ都市について詳細を尋ねた。

 

「合法賭博都市」

「もちろんイカサマ野郎はぶちのめす」

「厳重な入島審査を通過した者のみが居住権を得られる人工楽園」

「ただし密入国者が後を絶たない」

「湖上に浮かんだ夜も眠らない都市だ」

「吸血鬼含めて」

「はぁ……なるほど……。つまり、ラスベガスですわね」

『正解』

 ラスベガスってどこ? とは全員が思ったが、フィーリングで納得する。

 

 

 

 アクア・エデン入島審査検問所。

 

「次の方──」

 詰め所から審査員が顔を上げて、大魔導師の顔を見た瞬間、死を悟った。

 

「言葉は必要か?」

「……お通りくださいませ」

「聡くて助かる。行くぞ」

 歩く超常災害。アダルトゲイムギョウ界最強の魔導師にして究極の暇神。それを目の当たりにした審査員は、間違いなく心臓が一秒以上止まっていた。

 顔パスで通過した大魔導師はアクア・エデンに踏み入り、ふむ、と唸る。時間は昼下がり。本分である顔を覗かせるまでまだ時間はあった。

 

「相手が吸血鬼ならば、今のうちに倒してしまえばよろしいのでは?」

 ベールの意見に、大魔導師は「いや」と手を振って否定する。確かに、理に適っている意見だ。道理である。そもそもこのカジノ都市自体、吸血鬼を閉じ込める檻のようなものだ。

 

「それはつまらん」

「つ、つまらないって……」

「お前もエヌラスと楽しみたいだろう。片付けるのは簡単な話だ。だが、それでは俺がつまらんしここまでわざわざ足を運んだ甲斐が無い。せいぜいバニースーツを手土産にするくらいだ」

「なんでだよ」

「マリーが着てみたいらしい」

「テメェ人の元カノをレイヤーにでもする気か!?」

「嫌いか、バニーガール」

「大好物だわふざけろハゲぇ!」

 マリー? 誰? ベールが首を傾げているが、エヌラスと大魔導師が目の前で激しい攻防を繰り広げている。

 

(美男子が二人、拳で語り合うシチュエーション……師弟関係にあるエヌラスと大魔導師の絡みもこれはまた、なかなかよろしいものですわ。ゲイムギョウ界ではお目に掛かる事はそうありませんもの)

 これを機に、こちらのゲームにも手を出してみよう。きっと質の良いものと出会えるはず。

 そんなことを考えているベールの目の前でエヌラスが半回転して、あわや地面に激突というところで片手で自らの体重を受け止め、大魔導師に蹴り返す。その足を半歩下がって避けると足を掴んで軽々と投げ飛ばした。

 

「その、エヌラスの元カノさんはどういった方なのですか? わたくし、興味がありますわ」

「思いつく限りの麻薬をぶちこんで煮詰めた綿菓子のような女性だ」

「絶滅危惧種でゆるふわ係数カンストした天然記念物」

「…………プルルートのような方ですの?」

「いや、あれより頭が吹っ飛んでる。ネジが吹っ飛んでるっつうか、理性蒸発してるみたいな」

「写真とか、ありませんの?」

「あるぞ。ほら」

 大魔導師が白のD-Phoneを取り出し、画面を手慣れた操作で動かすとベールに見せる。

 金髪。碧眼。ロングヘアー。そして負けぬくらいの巨乳。メイド服を着て、楽しそうに笑っている。の、だ・が・しかし。その背景が血みどろの殺人現場じみた屠殺場らしき場所なのは余りにもミスマッチが一周回ってベストマッチしていた。ほうきとモップを両手に持ってにこにこ笑っていられる状況ではないだろうに。

 

「え、ええっと。これはどういった状況なのでしょうか?」

「教会の掃除中だ」

「教会!?」

 精肉工場と言われた方がまだ納得する。

 

「それはそれとして、わたくしと属性がかぶってません? 金髪巨乳のロングヘアー、わたくしだって負けてませんわよ!」

 エヌラスと腕を組み、胸を押しつける。少しだけ不機嫌そうにむくれながら上目遣いで見つめてくるベールの腰に手を回しながら、エヌラスは頭を掻く。胸の弾力が腕を包み込むと、どうしても思い出してしまった。

 

(さっき、この胸で……してもらってたんだよな……)

「エヌラス、聞いてますの?」

「聞いてるよ」

「そうだ♪ エヌラス、わたくしもバニースーツを着てみたいですわ。見たくありませんの?」

「死人が出るぞ、その胸だと」

「見たく、ありませんの?」

「超見たい」

「欲望に正直だな、バカ弟子。ならしばらく楽しんでおけ。俺は少し話をつけてくる」

 大魔導師が跳躍すると、そのままビル群へと消えていってしまう。相変わらずやることなすこと超常現象がつきまとっているような相手に、エヌラスは緊張の糸を解す。深く息を吐き出す姿にベールはますます強く腕を組んでいた。

 

「さぁさぁ、エヌラス。そうと決まれば早速、今夜の宿を取りませんと♪ やはりそういった場所も充実しているのではなくて? わたくし、楽しみですわ」

「わかったわかった。頼むから腕を引っ張るな、胸を押しつけるな」

「あら? 何故ですか? ……ははぁ、エヌラス。もしかして──うふふ♪ 思い出してしまいますの? わたくしの、おっぱいで──気持ちよくなっていたのを」

「…………」

「あ、あら? もしかして……図星でしたの?」

「今から宿でギッシギシに泣かすぞお前……」

「…………」

 顔を赤くして押し黙るベールに、エヌラスは手を握って歩き出す。なにはともあれ、まずは着替えなくてはならない。女神の格好はどうにもこのカジノ都市に不釣り合いだ。否応なく人の視線を集めてしまう。羨望、或いは嫉妬の視線。すれ違う男性は美貌に目を奪われ、女性はその肢体に釘付けになっていた。

 

「ほら、ベールはなんだ……その。綺麗だし、スタイルいいし。胸、大きいし。脚も長くて太もも眩しいし、欠点言うこと無い身体してるだろ? だからな、ちょっと、着替えろ」

「そ、そこまで言うのでしたら。わたくしも着替えますわ……」

「じゃあ、ちょっと歩くか」

「……バニースーツ、ですの?」

「お前俺の話聞いてたか!?」

 

 

 

 エヌラスがベールと入店したのは、アクア・エデンのコスチュームショップ。コスプレだけでなく通常の衣類も販売している。アクセサリーショップも隣接しており、とりあえず服を買うだけなら此処で間に合う。利便性に富んだ店舗というだけあり、一般客も多かった。そしてやはりベールとエヌラスの二人は注目を浴びている。美女と野獣、という印象のこともあるが美男美女のカップルは嫌でも人の視線を集めてしまう。

 

「……やっぱ、目立つか」

「そうですわね。エヌラスは目立ちますもの」

「ベールもな。特に、胸が」

 ぽよん。たわわな胸が揺れる。揺らした、という方が正しいかもしれない。

 エヌラスが胸の内ポケットからサングラスを取り出して目元を隠す。

 

「じゃあこれで」

「……もっといけませんわ」

「マジかよ」

 ベールと店内を見て回り、衣装を見繕う。

 

「あら、これはわたくしの好みですわね」

「ドレスは目立つ。もう少し露出を控えてくれ……」

「その点はタイツやガーターベルトで抑えればよろしいのでは?」

「どっちにしろ、これはダメだ。似合うけど、ここいらで着るには目立つ」

 欲しければ買うが……値段を見て、桁がひぃふぅみぃー……馬鹿かなんだこの七桁。こんな高級品を店に置くなと言いたいが、ピンからキリまで品物を揃えているのがこのショップが繁盛している理由の一つでもある。

 

「エヌラスに合わせるなら、やはりわたくしもスーツがよろしいでしょうか?」

「でも、それだとベールは窮屈じゃないか?」

「あまり胸を押さえつけるような服は好みませんが、それがよろしいのでしたら」

「そうだなぁ……胸元を締めつけず、それでいて露出を抑えめに。かつ、ベールのお眼鏡に叶うような服か。うーん、どれか妥協しないと難しいな……」

「あら。諦め」

「ぜってぇ見つけてやる。金なんぞ知るか」

「……エヌラス、ここまでちょろいと不安ですわよ?」

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